地面に足がつく。
さっきまでカイザーの屋根だったものが、僕の足になっている。
『こ、これは…?』
全身を見ると、僕の体は、機械のようになっていた。
その姿は人のようだけど、所々にカイザーの名残を感じる。
まるで、僕とカイザー、人間と車の特徴を、混ぜ合わせたかのような…。
ギュアツ!?
恐竜が、僕を見上げて驚いている。
なぜか、さっきまでより随分小さい。
「い、イセくん…?」
フレイナが、僕の足元に立っている。
その姿も小さくて…。
違う、僕が大きくなったんだ。
「イセくん…なの?」
"うん。…そうみたい"
『いかにも。…どうやらそのようだ』
言おうとした言葉が、別の声に遮られた。
"うん?"
『む?』
思わず漏れた声すら、遮られる。
いや、遮った言葉が、僕の口から出た感覚があった。
これはひょっとして…
…"僕は、育美良生だ"
『私は、転生勇者イセカイザーだ』
なんだこれ。
僕の言葉が、勝手に変換されている。
なんだか奇妙な感覚だ。そう思った直後、
グッ、グシャアーッ!
恐竜が、僕に突進してきた。
"そうだ、とにかくこの恐竜を"
『うむ、今はともかく、このモンスターを!』
突進を受け止める。
大きくなったおかげか、恐竜の動きを簡単に止められた。
『せいっ!』
前方に投げ返す。
ギュオンッ!
恐竜は地面に叩きつけられた。
すぐ立ち上がるけど、右の前足が、つちくれになってボロボロとこぼれ落ちる、
『…効いているようだな』
もしかして、今の僕は、とても強くなっているのかもしれない。
試してみよう。
グシャアーッ!
こぼれた前足に構わず、恐竜は大きく体をひねって、尻尾をこちらに向けた。
弾き飛ばすつもりだろうか。
そうはいかない、受け止めるぞ。
両腕を尻尾に向ける。すると、
『ボールド・ハンド!』
口が勝手に、言葉を叫んだ。
恐竜の尻尾が、僕の手に届く。
途端、両手が3倍ほどの大きさに、膨れ上がった。
『これは…!』
見覚えがある。
転落した時、膨らんでいたのを見た。
これは、カイザーのエアバッグだ。
それがなぜか、僕の手先から現れた。
…いや、なぜか、じゃない。
僕が今、カイザーと一体化している。
だから、衝撃に反応して、エアバッグが飛び出したんだ。
『ならば!』
しぼみ始めた両手で、尻尾を掴む。
思い出す。
カイザーの、左前のドアポケットには、雪道用の"タイヤチェーン"を搭載してある。
『スパイク・チェーン!』
叫ぶと、左腕に配置された"カイザーの左前のドア"から、チェーンが飛び出した。
それが尻尾に巻きついて、恐竜を捕らえる。
『なるほど』
思った通りだ。
どうやらカイザーに搭載された道具が、僕の体の一部として使えるらしい。
なら、次は…、
"三角掲示板"!
『デルタ・ブレード!』
右膝、つまり"カイザーのトランク"から、三角形の赤い板が飛び出した。
右手で掴むと、一直線上に伸びる。
『でやっ!』
デルタ・ブレードを振り上げ、恐竜の尻尾を切断した。
ギシャーーッ!
叫び声を上げた恐竜は、バランスを崩して、倒れる。
よし、次は非常用の…
"発煙筒"!
『スモーク・バトン!』
左足のふくらはぎ、元々は"カイザーの左後ろのドア"だった部分が開き、発煙筒が飛び出した。
左手で握り、恐竜の下に投げ込む。
すぐに煙が上がり、恐竜の体を上空に押し上げた。
ギ、ギュワッ!?
恐竜は空中に浮かんだまま、煙で体を覆われていく。
ジタバタするけど、動けないらしい。
これは、チャンスだ!
これで決める!
デルタ・ブレードを地面に刺し、右手を空ける。
『アンブレ・ライフル!』
叫ぶと、今度は右腕の"右前のドア"から、傘が飛び出した。
左手で中心を握ると、傘は一度輝き、細長い銃に変化する。
柄だった部分がグリップになった。
右手で持ち、構える。
『イセカイザー・フィニッシュート!』
叫びながら、引き金を引いた。
ライフルから巨大なビームが出て、空中の恐竜にヒット。
恐竜は、つちくれになって爆散。
その中心には、小さな蛇が居た。
『あれは…?』
小さな蛇は、笑顔でペコリと頭を下げて、ゆっくりと降下し、地面に溶けていった。
「すごい! すごいよ、イセくん!」
フレイナが、僕の足元でブンブンと両手を振っている。
「あんな大きなモンスターを、退治するどころか、浄化までしちゃうなんて!」
どうやら、僕が恐竜を倒したことに興奮してるらしい。
でも、
"いや、僕はただ、夢中でやっただけで…"
『なに。私はただ、できることをしただけさ』
相変わらず、僕の言葉が勝手に変換される。
…というか、いつまでこの姿なんだろう。
戻りたい、と思うと、頭に言葉が浮かぶ。
『逆転生』
そのまま口に出すと、僕の全身は光に包まれた。
大きな光の中から、一部の光が分離し、それが僕の姿、つまり"大きくなる前の僕"になる。
残った光は、僕の左腕に集まって、ガントレッド状の機械になった。
「…あっ、戻れた。…よかった…」
なんだったんだろう、今のは。
僕の意識が、カイザーと一つになって、カイザーが僕の体になったかのような、感覚…。
「ねぇイセくん、今の、どういう魔法なの!?」
フレイナが、目をキラキラさせて、僕をみていた。
「あの大きさで魔法陣が出なかったってことは…魔法じゃないのかな? 召喚術? …あっ、でもイセくんが変身してたから…、装機術? それとも錬金術かな? 体の中から武器が出てきてたし…、あっ、それともイセくんは、都の傀儡使いなの!?」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
そんなに捲し立てなくても。
「僕はただ…なんていうか、自分の車と融合した…というか…」
なんて言ってて、思い浮かんだ。
なんというか、この表現が一番正しい感じがして。
僕の肩書き。それを一言で表すなら…そう。
「…勇者」
言葉に出して、妙にしっくりきた。
そうだ、今の僕は。
「僕は、勇者だよ」
ーー予告ーー
ーー勇合転生を成し、転生勇者となったイセカイザー。ーー
ーーしかし、突如齎された自分の力に、良生は戸惑ってしまう。ーー
ーー「どうして僕は、こんな力を…」ーー
ーー次回、転生勇者イセカイザー 第二話!ーー
ーー『その名は! ファイヤーイセカイザー!』!!ーー
ーー生を転じて、勇者となれ!ーー
フレイナの、『これでバッチリ!イセカイザー 』!!
イセくんと、カイザー。
融合すると、『転生勇者イセカイザー』になるんだよ!
大きくて、しかも強い!
モンスターを一発で浄化しちゃうんだ!
イセカイザーは、腕や足に「ドア」がついているんだよ!
ドアが開くと、中からいろんな道具を取り出せるんだ!
左腕のドアからは『スパイク・チェーン』!
巻きついて、ガッチリ捕まえちゃうよ!
右膝のドア、トランク、っていうところからは『デルタ・ブレード』!
剣みたいな長い棒で、ズバッと切っちゃうんだ!
左足のドアには『スモーク・バトン』!
不思議な煙で、相手をググッと押し上げちゃうぞ!
右腕のドアには、大きな銃『アンブレ・ライフル』!
モンスターを一発で浄化できる、すっごく協力な銃だよ!
強くてカッコいい、イセカイザー!
これからも、応援よろしくね!