転生勇者イセカイザー   作:楽雁つばさ

5 / 12
1-5「勇者」

地面に足がつく。

さっきまでカイザーの屋根だったものが、僕の足になっている。

『こ、これは…?』

全身を見ると、僕の体は、機械のようになっていた。

その姿は人のようだけど、所々にカイザーの名残を感じる。

まるで、僕とカイザー、人間と車の特徴を、混ぜ合わせたかのような…。

ギュアツ!?

恐竜が、僕を見上げて驚いている。

なぜか、さっきまでより随分小さい。

「い、イセくん…?」

フレイナが、僕の足元に立っている。

その姿も小さくて…。

違う、僕が大きくなったんだ。

「イセくん…なの?」

"うん。…そうみたい"

『いかにも。…どうやらそのようだ』

言おうとした言葉が、別の声に遮られた。

"うん?"

『む?』

思わず漏れた声すら、遮られる。

いや、遮った言葉が、僕の口から出た感覚があった。

これはひょっとして…

…"僕は、育美良生だ"

『私は、転生勇者イセカイザーだ』

なんだこれ。

僕の言葉が、勝手に変換されている。

なんだか奇妙な感覚だ。そう思った直後、

グッ、グシャアーッ!

恐竜が、僕に突進してきた。

"そうだ、とにかくこの恐竜を"

『うむ、今はともかく、このモンスターを!』

突進を受け止める。

大きくなったおかげか、恐竜の動きを簡単に止められた。

『せいっ!』

前方に投げ返す。

ギュオンッ!

恐竜は地面に叩きつけられた。

すぐ立ち上がるけど、右の前足が、つちくれになってボロボロとこぼれ落ちる、

『…効いているようだな』

もしかして、今の僕は、とても強くなっているのかもしれない。

試してみよう。

グシャアーッ!

こぼれた前足に構わず、恐竜は大きく体をひねって、尻尾をこちらに向けた。

弾き飛ばすつもりだろうか。

そうはいかない、受け止めるぞ。

両腕を尻尾に向ける。すると、

『ボールド・ハンド!』

口が勝手に、言葉を叫んだ。

恐竜の尻尾が、僕の手に届く。

途端、両手が3倍ほどの大きさに、膨れ上がった。

『これは…!』

見覚えがある。

転落した時、膨らんでいたのを見た。

これは、カイザーのエアバッグだ。

それがなぜか、僕の手先から現れた。

…いや、なぜか、じゃない。

僕が今、カイザーと一体化している。

だから、衝撃に反応して、エアバッグが飛び出したんだ。

『ならば!』

しぼみ始めた両手で、尻尾を掴む。

思い出す。

カイザーの、左前のドアポケットには、雪道用の"タイヤチェーン"を搭載してある。

『スパイク・チェーン!』

叫ぶと、左腕に配置された"カイザーの左前のドア"から、チェーンが飛び出した。

それが尻尾に巻きついて、恐竜を捕らえる。

『なるほど』

思った通りだ。

どうやらカイザーに搭載された道具が、僕の体の一部として使えるらしい。

なら、次は…、

"三角掲示板"!

『デルタ・ブレード!』

右膝、つまり"カイザーのトランク"から、三角形の赤い板が飛び出した。

右手で掴むと、一直線上に伸びる。

『でやっ!』

デルタ・ブレードを振り上げ、恐竜の尻尾を切断した。

ギシャーーッ!

叫び声を上げた恐竜は、バランスを崩して、倒れる。

よし、次は非常用の…

"発煙筒"!

『スモーク・バトン!』

左足のふくらはぎ、元々は"カイザーの左後ろのドア"だった部分が開き、発煙筒が飛び出した。

左手で握り、恐竜の下に投げ込む。

すぐに煙が上がり、恐竜の体を上空に押し上げた。

ギ、ギュワッ!?

恐竜は空中に浮かんだまま、煙で体を覆われていく。

ジタバタするけど、動けないらしい。

これは、チャンスだ!

これで決める!

デルタ・ブレードを地面に刺し、右手を空ける。

『アンブレ・ライフル!』

叫ぶと、今度は右腕の"右前のドア"から、傘が飛び出した。

左手で中心を握ると、傘は一度輝き、細長い銃に変化する。

柄だった部分がグリップになった。

右手で持ち、構える。

『イセカイザー・フィニッシュート!』

叫びながら、引き金を引いた。

ライフルから巨大なビームが出て、空中の恐竜にヒット。

恐竜は、つちくれになって爆散。

その中心には、小さな蛇が居た。

『あれは…?』

小さな蛇は、笑顔でペコリと頭を下げて、ゆっくりと降下し、地面に溶けていった。

 

 

「すごい! すごいよ、イセくん!」

フレイナが、僕の足元でブンブンと両手を振っている。

「あんな大きなモンスターを、退治するどころか、浄化までしちゃうなんて!」

どうやら、僕が恐竜を倒したことに興奮してるらしい。

でも、

"いや、僕はただ、夢中でやっただけで…"

『なに。私はただ、できることをしただけさ』

相変わらず、僕の言葉が勝手に変換される。

…というか、いつまでこの姿なんだろう。

戻りたい、と思うと、頭に言葉が浮かぶ。

『逆転生』

そのまま口に出すと、僕の全身は光に包まれた。

大きな光の中から、一部の光が分離し、それが僕の姿、つまり"大きくなる前の僕"になる。

残った光は、僕の左腕に集まって、ガントレッド状の機械になった。

「…あっ、戻れた。…よかった…」

なんだったんだろう、今のは。

僕の意識が、カイザーと一つになって、カイザーが僕の体になったかのような、感覚…。

「ねぇイセくん、今の、どういう魔法なの!?」

フレイナが、目をキラキラさせて、僕をみていた。

「あの大きさで魔法陣が出なかったってことは…魔法じゃないのかな? 召喚術? …あっ、でもイセくんが変身してたから…、装機術? それとも錬金術かな? 体の中から武器が出てきてたし…、あっ、それともイセくんは、都の傀儡使いなの!?」

「ちょ、ちょっと待ってよ」

そんなに捲し立てなくても。

「僕はただ…なんていうか、自分の車と融合した…というか…」

なんて言ってて、思い浮かんだ。

なんというか、この表現が一番正しい感じがして。

僕の肩書き。それを一言で表すなら…そう。

「…勇者」

言葉に出して、妙にしっくりきた。

そうだ、今の僕は。

「僕は、勇者だよ」 

 




ーー予告ーー

ーー勇合転生を成し、転生勇者となったイセカイザー。ーー
ーーしかし、突如齎された自分の力に、良生は戸惑ってしまう。ーー
ーー「どうして僕は、こんな力を…」ーー
ーー次回、転生勇者イセカイザー 第二話!ーー
ーー『その名は! ファイヤーイセカイザー!』!!ーー
ーー生を転じて、勇者となれ!ーー




フレイナの、『これでバッチリ!イセカイザー 』!!

イセくんと、カイザー。
融合すると、『転生勇者イセカイザー』になるんだよ!
大きくて、しかも強い!
モンスターを一発で浄化しちゃうんだ! 

イセカイザーは、腕や足に「ドア」がついているんだよ!
ドアが開くと、中からいろんな道具を取り出せるんだ!

左腕のドアからは『スパイク・チェーン』!
巻きついて、ガッチリ捕まえちゃうよ!
右膝のドア、トランク、っていうところからは『デルタ・ブレード』!
剣みたいな長い棒で、ズバッと切っちゃうんだ!
左足のドアには『スモーク・バトン』!
不思議な煙で、相手をググッと押し上げちゃうぞ!
右腕のドアには、大きな銃『アンブレ・ライフル』!
モンスターを一発で浄化できる、すっごく協力な銃だよ!

強くてカッコいい、イセカイザー!
これからも、応援よろしくね!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。