転生勇者イセカイザー   作:楽雁つばさ

9 / 12
2-4「グレンチュリオン」

「…?」

何かに気がついたフレイナが、辺りをキョロキョロし始めた。

「どうしたの?」

と、聞いてみた僕も、気付く。

ズシーン… ズシーン…

遠くの方から、大きな振動が伝わってくる。

地震というには、なんというか、断続的なものだ。

僕が立ち上がるうちに、フレイナは窓から外を見た。

「わぁっ! イセくん、こっち来て!」

とても驚いた顔で、僕を呼ぶ。

「うん…?」

答えつつも、フレイナの隣に行く。

窓の外を見ると…。

「うわっ! なにあれ!」

巨大なモンスターが、街の中に居た。

怪獣…とでも言うべきか、大きな口に長い尻尾、太い後ろ足で地に立ち、背中にはヒレのようなものもある。

大きな足で建物ごと地面を踏みしめて、前進していた。

なによりも、大きい。

僕がカイザーと一体化しても、あれの半分ほどもないだろう。

「あんなモンスターも居るの…?」

言いながらフレイナを見ると、

「…あれ、もしかして…」

 

 

「…?」

何かに気がついたフレイナが、辺りをキョロキョロし始めた。

「どうしたの?」

と、聞いてみた僕も、気付く。

ズシーン… ズシーン…

遠くの方から、大きな振動が伝わってくる。

地震というには、なんというか、断続的なものだ。

僕が立ち上がるうちに、フレイナは窓から外を見た。

「わぁっ! イセくん、こっち来て!」

とても驚いた顔で、僕を呼ぶ。

「うん…?」

答えつつも、フレイナの隣に行く。

窓の外を見ると…。

「うわっ! なにあれ!」

巨大なモンスターが、街の中に居た。

怪獣…とでも言うべきか、大きな口に長い尻尾、太い後ろ足で地に立ち、背中にはヒレのようなものもある。

大きな足で建物ごと地面を踏みしめて、前進していた。

なによりも、大きい。僕がカイザーと一体化しても、あれの半分ほどもないだろう。

「あんなモンスターも居るの…?」

言いながらフレイナを見ると、

「…あれって、もしかして…」

彼女は魔法陣を浮かべて、本を取り出していた。

「…うん、間違いない」

ページを開いて、それを僕に見せる。

「見て。あのモンスター、きっとこれだよ」

薄汚れた本の中には、家を壊している大きなモンスターが描かれていた。

「…ま、ましまじゅう?」

「うん。増魔獣」

傍らにあった大きな文字を読み上げると、フレイナも真剣な顔で反芻する。

「普通のモンスターは、人間の持つ『負の感情』を浴び続けて、妖精が変異した姿のこと…ってことは、教えたよね?」

「う、うん」

「アレは、モンスターに人間を吸収させて、成長させた姿だよ。だから普通のモンスターより、ずっと大きいんだ」

「そ、そんなことができるの…?」

「うん。ずっと昔に禁止された魔法だよ。あんなことができるのは、大昔から生きてる悪い魔女くらいだよ。だから…あっ、ほら、あそこ!」

フレイナが指差す方向には、女性の人影が見える。

「多分あの魔女が、増魔獣を操っているんだよ」

たしかに、魔女と呼ばれた女性の身振りに合わせて、魔獣が動いているように見えた。

村の建物や木々を次々に壊しながら、ゆっくりと、前に進んでいく増魔獣。

なんというか、何かをしらみつぶしに探している…ようにも見える。

「…いかなきゃ」

呟きに振り向くと、フレイナは部屋から飛び出した。

「えっ、ちょっと、フレイナ!」

慌てて追いかける。

 

彼女は店の外に出て、大通りの前で立ち止った。

「ねぇ、行くって、まさか…」

追いついた僕が声を掛けると、

「…うん」

フレイナは増魔獣を指差す。

「危ないよ! あんな大きな相手に…」

「大丈夫」

心配する僕の前で、ニッと笑った。

「昨日の夜は、呼べるほど魔力が残ってなかったけど…」

手先から魔法陣を浮かべて、それを大きく、大きく広げる。

「あたしには、これがあるから!」

その中からは…。

「じゃーーん!!」

ええと、なんていうか。

物凄いものが現れた。

「みてよイセくん! これぞあたしの秘密兵器! おばあちゃんが残してくれた、超大型の魔装具!」

まず目を引くのが、連続した魔法陣。

魔法陣の書かれた円盤が何枚も並び、その全てを取り囲むようにして、更に楕円状の魔法陣が重ねられている。

「いつか、増魔獣があらわれた時のためにって、用意してたんだ!」

魔法陣の束の上から突出するのは、角が丸い多角柱。

その外周には、一方向だけ付けられた、太くて長い筒がある。

「その名も『炎剣グレンチュリオン』!」

…えっ?

「け、剣…?」

フレイナの言葉を、思わず聞き返してしまった。どう見ても剣とは呼べない見た目だからだ。

魔法陣は、履帯と転輪。

多角柱は砲塔、長い筒は主砲。

そう、これはむしろ…

「…戦車、だよね?」

「…せんしゃ?」

フレイナは首を傾げる。

「剣だよ、剣! それと、専用の運搬車!」

…ううん、ああ、なるほど。

つまり、砲身の部分が剣で、それ以外の部分は、剣を動かしたり振ったりするための機械、ってこと…なのかな。

確かに、火砲やカノン砲と呼ばれる武器は、人力で持ち上げるのが困難だから、最初から牽引用の車輪が付いていることが多いけれど…。

「…いやぁ…これはどう見ても戦車…だと思うなぁ…」

僕の愛車カイザーすらも優に越える、巨大な車体。

タイヤじゃなくてキャタピラだったり、砲身も、剣と呼べるような平たい形状ではなかったりするけれど…。

「…まぁ、なんでもいいか…」

ここ魔法が実在する世界。物の捉え方の違いなんて、気にしても仕方ないか…。

気を取り直して、僕はフレイナに聞いてみる。

「これなら、あの増魔獣をやっつけられるの?」

大事なのは、そこだ。

そう思ったけれど…、

「…正直、あたしもわかんない」

フレイナは苦笑して答えた。

「時々練習してるから、操作することは出来るけど、実際に戦闘するのは初めてだし…」

言いながら、フレイナは真剣な表情になる。

「でもこれは、おばあちゃんやお母さんが、あたしに残してくれた力なんだ」

僕に微笑んでから、その車体に触れた。

「あたしの受け継いだ力が、あたしたちの魔法が、誰かを助けるためにあるって、証明するために」

その瞳に宿るのは、決意。

「そのための、グレンチュリオンなんだよ」

グレンチュリオンの砲塔のハッチが跳ね上がった。

中には座席のようなものがある。

「だから、行くね」

フレイナは、グレンチュリオンに乗り込んだ。

履帯の魔法陣が輝き、車体を大きく震わせる。

エンジンをかけた車両のように。

「炎剣グレンチュリオン! 前進!」

フレイナの声と共に、グレンチュリオンは力強く走り始めた。

ギャリギャリギャリギャリ…という、履帯の地を踏み締める音と共に。

「…やっぱり、戦車だよなぁ…」

思わずそう呟いてしまうけど。

彼女の決意を秘めた目を見たら、僕だって、何もしないわけにはいかない。

誰かを助けるための力、か…。

フレイナの言葉を思い出して、僕は左腕の機械を見る。

「僕の力も、そのためにあるんだよね?」

機械は応えるようにして輝いた。

僕の前に、カイザーが現れる。

「…うん、僕らも行こう!」

僕はカイザーに乗って、グレンチュリオンの後を追いかけた。

 

 

グレンチュリオンは、ある程度増魔獣に接近すると、建物の物陰に隠れた。

砲塔を旋回、砲身を上げる。

その延長線上には、増魔獣の目らしき部分。

「炎剣突きィー!」

ズドォーーン!

強烈な発射音と共に、砲身から弾が発射された。

グオーーーッ!

狙い通り、目を撃たれた増魔獣が、苦痛にもがいて倒れる。

「よし、まずは命中!」

キューポラから半身を乗り出して、ガッツポーズをするフレイナ。

その眼前に。

「アタシのグロルドンに何するんだい!」

先ほどまで増魔獣に乗っていた女性が、跳躍して迫っていた。

「わわっ!」

フレイナは慌てて魔法陣を展開、それが障壁となって、女性を食い止めた。

女性というより、少女というべきだろうか。随分と体躯が小さい。

あれが、フレイナの言う『増魔獣を操る魔女』…なんだろう。

「ぐぐぐ…」

魔法陣を盾に、少女の突進から身を守るブレイナ。

「ほう…? 懐かしい形式の障壁魔法陣だねぇ…」

少女はそれを見て、余裕そうな感想を漏らした。

「今時そんなのを使うなんて…。田舎の魔法は進歩がないねぇ」

「う、うるさいっ!」

やがてフレイナは、魔法陣の壁で少女を押し返した。

少女は反動を利用して、くるりと宙を舞い、足元に魔法陣を浮かべて空中に立つ。

「その魔装具も、随分と野暮ったいデザインじゃないか。…なんなら、アタシがオシャレにしてやろうか?」

少女は身振り手振りを大きくして、余裕を見せている。

「余計なお世話! 古くったって、あたしの魔法は大切な力なの!」

対するフレイナは、魔法陣を浮かべて、砲塔を旋回させた。

少女を狙うつもりだったようだけど、

「おっと」

少女には避けられてしまう。

「このぉ!」

それでもフレイナは、グレンチュリオンの砲門を、なんとか少女に合わせようとする。

けれど、少女はちょこまかと動き回るので、標準が定まらない。

「あはは、こっちこっち!」

やがて、フレイナは砲身を動かすのをやめた。

「おやおや、鬼ごっこは終いかい?」

「…まぁね!」

ズドォーーン!

答えると同時に、グレンチュリオンは主砲を発射した。

勿論、その標準は少女に定まっていない。

「バカかい! どこを狙って…」

けれど。

グギょオーーっ!!

砲弾は、増魔獣の体にヒットした。

「グロルドン! …なァるほど、いい度胸してるじゃないのよさ」

少女は不適に笑って、増魔獣へと跳躍する。

「上等じゃないか。ちょっと遊んであげるよ! グロルドン!」

その腹に付いた、宝石のようなものに、少女が触れる。

「巨獣合身!」

少女は、宝石の中に取り込まれた。

立ち上がるグロルドンは、大きな叫びを上げながら、姿を変えていく。

両足の間隔が短くなり、頭が右腕に、尻尾が左足になる。

そうして、姿の変貌が終わった時。

「ウィーーーーーーーッ! チッチッチッチッ!」

増魔獣は、巨人の姿になっていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。