「…?」
何かに気がついたフレイナが、辺りをキョロキョロし始めた。
「どうしたの?」
と、聞いてみた僕も、気付く。
ズシーン… ズシーン…
遠くの方から、大きな振動が伝わってくる。
地震というには、なんというか、断続的なものだ。
僕が立ち上がるうちに、フレイナは窓から外を見た。
「わぁっ! イセくん、こっち来て!」
とても驚いた顔で、僕を呼ぶ。
「うん…?」
答えつつも、フレイナの隣に行く。
窓の外を見ると…。
「うわっ! なにあれ!」
巨大なモンスターが、街の中に居た。
怪獣…とでも言うべきか、大きな口に長い尻尾、太い後ろ足で地に立ち、背中にはヒレのようなものもある。
大きな足で建物ごと地面を踏みしめて、前進していた。
なによりも、大きい。
僕がカイザーと一体化しても、あれの半分ほどもないだろう。
「あんなモンスターも居るの…?」
言いながらフレイナを見ると、
「…あれ、もしかして…」
「…?」
何かに気がついたフレイナが、辺りをキョロキョロし始めた。
「どうしたの?」
と、聞いてみた僕も、気付く。
ズシーン… ズシーン…
遠くの方から、大きな振動が伝わってくる。
地震というには、なんというか、断続的なものだ。
僕が立ち上がるうちに、フレイナは窓から外を見た。
「わぁっ! イセくん、こっち来て!」
とても驚いた顔で、僕を呼ぶ。
「うん…?」
答えつつも、フレイナの隣に行く。
窓の外を見ると…。
「うわっ! なにあれ!」
巨大なモンスターが、街の中に居た。
怪獣…とでも言うべきか、大きな口に長い尻尾、太い後ろ足で地に立ち、背中にはヒレのようなものもある。
大きな足で建物ごと地面を踏みしめて、前進していた。
なによりも、大きい。僕がカイザーと一体化しても、あれの半分ほどもないだろう。
「あんなモンスターも居るの…?」
言いながらフレイナを見ると、
「…あれって、もしかして…」
彼女は魔法陣を浮かべて、本を取り出していた。
「…うん、間違いない」
ページを開いて、それを僕に見せる。
「見て。あのモンスター、きっとこれだよ」
薄汚れた本の中には、家を壊している大きなモンスターが描かれていた。
「…ま、ましまじゅう?」
「うん。増魔獣」
傍らにあった大きな文字を読み上げると、フレイナも真剣な顔で反芻する。
「普通のモンスターは、人間の持つ『負の感情』を浴び続けて、妖精が変異した姿のこと…ってことは、教えたよね?」
「う、うん」
「アレは、モンスターに人間を吸収させて、成長させた姿だよ。だから普通のモンスターより、ずっと大きいんだ」
「そ、そんなことができるの…?」
「うん。ずっと昔に禁止された魔法だよ。あんなことができるのは、大昔から生きてる悪い魔女くらいだよ。だから…あっ、ほら、あそこ!」
フレイナが指差す方向には、女性の人影が見える。
「多分あの魔女が、増魔獣を操っているんだよ」
たしかに、魔女と呼ばれた女性の身振りに合わせて、魔獣が動いているように見えた。
村の建物や木々を次々に壊しながら、ゆっくりと、前に進んでいく増魔獣。
なんというか、何かをしらみつぶしに探している…ようにも見える。
「…いかなきゃ」
呟きに振り向くと、フレイナは部屋から飛び出した。
「えっ、ちょっと、フレイナ!」
慌てて追いかける。
彼女は店の外に出て、大通りの前で立ち止った。
「ねぇ、行くって、まさか…」
追いついた僕が声を掛けると、
「…うん」
フレイナは増魔獣を指差す。
「危ないよ! あんな大きな相手に…」
「大丈夫」
心配する僕の前で、ニッと笑った。
「昨日の夜は、呼べるほど魔力が残ってなかったけど…」
手先から魔法陣を浮かべて、それを大きく、大きく広げる。
「あたしには、これがあるから!」
その中からは…。
「じゃーーん!!」
ええと、なんていうか。
物凄いものが現れた。
「みてよイセくん! これぞあたしの秘密兵器! おばあちゃんが残してくれた、超大型の魔装具!」
まず目を引くのが、連続した魔法陣。
魔法陣の書かれた円盤が何枚も並び、その全てを取り囲むようにして、更に楕円状の魔法陣が重ねられている。
「いつか、増魔獣があらわれた時のためにって、用意してたんだ!」
魔法陣の束の上から突出するのは、角が丸い多角柱。
その外周には、一方向だけ付けられた、太くて長い筒がある。
「その名も『炎剣グレンチュリオン』!」
…えっ?
「け、剣…?」
フレイナの言葉を、思わず聞き返してしまった。どう見ても剣とは呼べない見た目だからだ。
魔法陣は、履帯と転輪。
多角柱は砲塔、長い筒は主砲。
そう、これはむしろ…
「…戦車、だよね?」
「…せんしゃ?」
フレイナは首を傾げる。
「剣だよ、剣! それと、専用の運搬車!」
…ううん、ああ、なるほど。
つまり、砲身の部分が剣で、それ以外の部分は、剣を動かしたり振ったりするための機械、ってこと…なのかな。
確かに、火砲やカノン砲と呼ばれる武器は、人力で持ち上げるのが困難だから、最初から牽引用の車輪が付いていることが多いけれど…。
「…いやぁ…これはどう見ても戦車…だと思うなぁ…」
僕の愛車カイザーすらも優に越える、巨大な車体。
タイヤじゃなくてキャタピラだったり、砲身も、剣と呼べるような平たい形状ではなかったりするけれど…。
「…まぁ、なんでもいいか…」
ここ魔法が実在する世界。物の捉え方の違いなんて、気にしても仕方ないか…。
気を取り直して、僕はフレイナに聞いてみる。
「これなら、あの増魔獣をやっつけられるの?」
大事なのは、そこだ。
そう思ったけれど…、
「…正直、あたしもわかんない」
フレイナは苦笑して答えた。
「時々練習してるから、操作することは出来るけど、実際に戦闘するのは初めてだし…」
言いながら、フレイナは真剣な表情になる。
「でもこれは、おばあちゃんやお母さんが、あたしに残してくれた力なんだ」
僕に微笑んでから、その車体に触れた。
「あたしの受け継いだ力が、あたしたちの魔法が、誰かを助けるためにあるって、証明するために」
その瞳に宿るのは、決意。
「そのための、グレンチュリオンなんだよ」
グレンチュリオンの砲塔のハッチが跳ね上がった。
中には座席のようなものがある。
「だから、行くね」
フレイナは、グレンチュリオンに乗り込んだ。
履帯の魔法陣が輝き、車体を大きく震わせる。
エンジンをかけた車両のように。
「炎剣グレンチュリオン! 前進!」
フレイナの声と共に、グレンチュリオンは力強く走り始めた。
ギャリギャリギャリギャリ…という、履帯の地を踏み締める音と共に。
「…やっぱり、戦車だよなぁ…」
思わずそう呟いてしまうけど。
彼女の決意を秘めた目を見たら、僕だって、何もしないわけにはいかない。
誰かを助けるための力、か…。
フレイナの言葉を思い出して、僕は左腕の機械を見る。
「僕の力も、そのためにあるんだよね?」
機械は応えるようにして輝いた。
僕の前に、カイザーが現れる。
「…うん、僕らも行こう!」
僕はカイザーに乗って、グレンチュリオンの後を追いかけた。
グレンチュリオンは、ある程度増魔獣に接近すると、建物の物陰に隠れた。
砲塔を旋回、砲身を上げる。
その延長線上には、増魔獣の目らしき部分。
「炎剣突きィー!」
ズドォーーン!
強烈な発射音と共に、砲身から弾が発射された。
グオーーーッ!
狙い通り、目を撃たれた増魔獣が、苦痛にもがいて倒れる。
「よし、まずは命中!」
キューポラから半身を乗り出して、ガッツポーズをするフレイナ。
その眼前に。
「アタシのグロルドンに何するんだい!」
先ほどまで増魔獣に乗っていた女性が、跳躍して迫っていた。
「わわっ!」
フレイナは慌てて魔法陣を展開、それが障壁となって、女性を食い止めた。
女性というより、少女というべきだろうか。随分と体躯が小さい。
あれが、フレイナの言う『増魔獣を操る魔女』…なんだろう。
「ぐぐぐ…」
魔法陣を盾に、少女の突進から身を守るブレイナ。
「ほう…? 懐かしい形式の障壁魔法陣だねぇ…」
少女はそれを見て、余裕そうな感想を漏らした。
「今時そんなのを使うなんて…。田舎の魔法は進歩がないねぇ」
「う、うるさいっ!」
やがてフレイナは、魔法陣の壁で少女を押し返した。
少女は反動を利用して、くるりと宙を舞い、足元に魔法陣を浮かべて空中に立つ。
「その魔装具も、随分と野暮ったいデザインじゃないか。…なんなら、アタシがオシャレにしてやろうか?」
少女は身振り手振りを大きくして、余裕を見せている。
「余計なお世話! 古くったって、あたしの魔法は大切な力なの!」
対するフレイナは、魔法陣を浮かべて、砲塔を旋回させた。
少女を狙うつもりだったようだけど、
「おっと」
少女には避けられてしまう。
「このぉ!」
それでもフレイナは、グレンチュリオンの砲門を、なんとか少女に合わせようとする。
けれど、少女はちょこまかと動き回るので、標準が定まらない。
「あはは、こっちこっち!」
やがて、フレイナは砲身を動かすのをやめた。
「おやおや、鬼ごっこは終いかい?」
「…まぁね!」
ズドォーーン!
答えると同時に、グレンチュリオンは主砲を発射した。
勿論、その標準は少女に定まっていない。
「バカかい! どこを狙って…」
けれど。
グギょオーーっ!!
砲弾は、増魔獣の体にヒットした。
「グロルドン! …なァるほど、いい度胸してるじゃないのよさ」
少女は不適に笑って、増魔獣へと跳躍する。
「上等じゃないか。ちょっと遊んであげるよ! グロルドン!」
その腹に付いた、宝石のようなものに、少女が触れる。
「巨獣合身!」
少女は、宝石の中に取り込まれた。
立ち上がるグロルドンは、大きな叫びを上げながら、姿を変えていく。
両足の間隔が短くなり、頭が右腕に、尻尾が左足になる。
そうして、姿の変貌が終わった時。
「ウィーーーーーーーッ! チッチッチッチッ!」
増魔獣は、巨人の姿になっていた。