読者様との解釈違いがあると思いますがご了承ください。
キャラもできるだけ崩壊しないように気をつけます。
それでもよろしければどうぞお楽しみください。
「今日はもう遅い。釣りは終わりだ。とっとと里に帰れ」
大地が夕陽で染められる刻、男は河辺に座る少女に里へ帰るよう促したが…
「里にあたしの家なんてないさ。それともあんたが泊めてくれるのかい?」
「なんだ、捨て子か。まぁお前くらいの子どもなら養ってやれる余裕はある。よし、俺と帰るぞ」
「ククク…面白い奴だね。からかっているのかい?それともほんとに気づいてないのかい?」
「何言ってんだ。ほら、帰るぞ」
男が手を差しのべるが、少女が手をとる気配はない。
「そりゃできない相談だね。あたしは河童だ。ここがあたしの住処。あんたと里で住む必要なんてないのさ」
「悪いがそんな世迷い言に付き合ってる余裕なんてなくなってきた。引っ張ってでも連れて帰るからな」
「ちょっ!ちょっと!」
男は少女の腕を引っ張り、山を下る。
自らが妖怪だと宣言する少女を男は自分を特別な存在だと思い込んでいる子どもだと思った。
しかし、少女は本当に河童である。ただ、彼は人型の妖怪を見たことがなかったのだ。だから
そんな世間知らずの彼にされるがまま、気がつけば里付近へと河童は連れてこられていた。
「ここが俺の家だ。これからお前が住む場所でもある」
「ちょいと待ちな。里から大分遠い所だね。村八分でもされてるのかい?」
「あぁ、ここは余所者には厳しいらしい」
「へぇ。あんた、どこから来たんだ?」
「お前に言ってもわからないと思うが、未来の京都から来た」
「はぁ、京から来たのかい。それも未来の」
「馬鹿げてるだろ?」
「いや、ここでは
「あいつ?」
「まぁまぁ。話は家に入ってからしようや。陽はとっくに暮れちまってるからね」
男と少女は家に入り、飯の支度を終え、夕飯を取りながら話をした。
「さっきあんた、未来の京から来たって話したね」
男は飯を掻き込む手を止め、頷いた。
「と、云うことはだ。あんたは外来人ということだね」
「外来人?」
「
「連れてこられるって…誰にだよ…」
「妖怪の賢者、八雲 紫にだよ。うさんくささを身にまとったスキマ妖怪さ」
「お前、ちっこいのに物知りだな」
「はっ!だから言ってるだろ?あたしは河童だ。見た目は幼くともれっきとした妖怪なのさ。それに少なくともあんたよりは長く生きてるね」
「はいはい。そうだなお前は河童だ」
「やっと理解したかい?あんたは妖怪を家に─」
「そうだ一ついいことを教えてやろう」
「なんだい?いきなり大声出してさ」
「河童はな、緑色の肌をしていて手の水掻きが発達していて頭に皿があるんだ、ぜ…」
男が言い切る前に少女は被っている帽子を脱いでいた。
「頭に皿ならあたしにもあるよ。小さいがね」
確かに少女の頭にはつむじ大の皿があった。
「あっ…あっ…」
男は驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。
「やれやれ、ここまでしないとわからないのかい。ま、仕方がないか、外来人だから」
「俺を…食うのか…」
男は脂汗を滲ませ、酷い貧乏ゆすりしながら呟いた。
「絞り出した言葉がそれかい?悪いがあたしは人を喰う趣味はないよ。ただ、河童は雑食だ。あたし以外の奴らだったら尻子玉抜かれて喰われてたろう。運が良かったね。会ったのがあんたとあたしで」
そう言い終えると河童は立ち上がった。
「な、なにするんだ?」
「帰るんだよ、畔へね。あたしの住処はあそこさ。ま、これからむやみやたらに人里の外で見知らぬ人に話しかけたり、家に上げないたりしないこったね。妖怪は皆あたしみたいにお人好しじゃないんだ。」
少女は戸を開き、外へ出ようとする。
「ま、待ってくれ!」
男は震えた声で叫んだ。
「なんだい?まだ何かあるのかい?」
「名前…お前の名前を教えてほしい…」
「……『ひとり』だ。皆あたしをそう呼ぶ」
河童は帽子を深く被り直し、そう答えた。
「じゃあな。人間。せいぜい長生きしなよ」
そう言うとひとりと名乗った河童は夜の闇へと溶けていった。
俺がここに来てから今日で約1ヶ月くらいか。電子機器はおろかカレンダーすら持ってないので正確な日にちはわからない。
わからないと言えば昨日の河童だ。
妖怪の癖して俺を食わずに出ていった。そのうえ長生きしろと激励までしてきやがった。
妖怪は人の敵じゃなかったのか?それともあいつだけ異常なやつだったのか?それとも──
色々な考えが感情と共にぐるぐると廻る。
「考えても仕方がない、か」
別にいいか。もう会うこともないだろう。
「暇だな。釣りにでもいくか」
男は身支度を整え、川へと向かった。
「さすがに昨日の今日ではいないか…」
男は辺りに誰もいないことを確認した後、岸に腰を下ろし、釣り竿を構える。
─ポチャン─
浮きが水面へと浮かぶ。
辺りは静寂で聞こえるのは鳥の鳴き声か河のせせらぎ位だ。
それにしてもまさか妖怪にも人に似ている奴がいるとは…。俺が見たことがあるのは巨大な狼やら蟲やら人目で妖怪だとわかるやつだけだ。
だが、昨日のひとりというやつは違った。言葉も通じるし会話もできる。それに頭の皿以外は人間そのものだった。
今でも頭の皿さえなかったら人間だと信じられるくらいだ。
「本当に妖怪だったのか…?」
もしかして頭に何か仕掛けがあったのかもしれない。俺はそれにまんまと騙されてあいつを妖怪だと…。
「お、人間じゃないか。こんなところで何してるんだ?」
「!」
男は声の元へと振り替える。が
違う。ひとりじゃない
知らない女だった。
人か?妖怪か? わからない。とりあえず反応せず様子を伺おう。無視だ。
視線を水面へと戻した。
「なんだよ。つれないじゃないか。教えてくれてもいいだろ?」
「…」
「釣りかい?生憎だがここじゃ雑魚しか釣れないよ。それに─」
気味の悪い気配が背後から漂う。しだいに恐怖が腹の底から湧いてくる。
「誰の許可を経てここで釣りなんかしてんだ?」
男は直感で理解した。
し、死ぬ。ここで。俺は、
死死死死
「止めな。そいつはあたしの知り合いだ」
妖怪が男を手にかけようとした瞬間、ひとりが妖怪の腕を掴み止めた。
「邪魔するなよ。早い者勝ちだろ?」
「そういう話じゃないんだよ。失せな」
「そうかそれじゃてめぇからころ─」
妖怪が動きを見せようとするが、既にその頭部はひとりの手に納まっていた。そして
「ぎゃあぎゃあとやかましい奴だね」
容赦なく踏み潰した。
「さて、あれほど忠告したのに懲りないやつだね。そんなに死にたいのかい?」
「…別に死んでもいいさ」
「よく言うよ。こんなに震えてさ。昨日だってそうさ。あたしが妖怪だと分かったら喰われると怯えてただろ。本当は死にたくなんかないんだろ?」
「…」
「まぁいいさ。家まで送ろうと思ったが止めた。死にたいのなら助けなければよかった」
「俺は…」
「…なんだい?」
「俺だって死にたくなんかないさ!でも一日生きるのだって苦しいんだ。里には入れやしない。食料だって自給自足だ。妖怪に怯えながらな。餓死も考えたさ。でも空腹が襲ってきたらそんなこと考えられなくなった。それにここに来てからのまともな会話なんてお前が初めてだ。それまで罵声しか聞いてこなかった。死にたいと思った。でもいざ死ぬとなると怖くなったんだ。震えが止まらなくなった。生きたいと思った。でも生きるのも辛いんだよ…」
大声で捲し立てた男はいつの間にか涙を流していた。
「…あんたの名前、聞いてなかったね。なんていうんだい?」
「
「雅か。あたしの名前覚えてるかい?」
「ひとり、だろ?」
「よく覚えてたね。じゃああたしから一つ質問だ」
「なんだ…?」
「死にたい癖になんであたしを養おうとしたんだ?」
「…それは、
「
「あぁ、単なる生きるための理由付けだよ。お前みたいな少女と一緒に住めば俺に死ねない理由ができる。お前を育てることが俺の生きる目的になると思ったんだ」
雅の言葉をひとりは黙って聞いていた。
「最低だろ?俺のエゴにお前を巻き込もうとしたんだよ」
「そうかい。よし、それじゃあたしがあんたと一緒に住んでやるよ」
「は?」
こいつ今何て言った?一緒に住むだと!?ふざけてるのか!?俺は人間であいつはようか──
「ほら立ちな!男がいつまでもみっともない格好してんじゃないよ!」
ひとりの碧色の瞳がまっすぐ俺を見つめている。
差しのべられた手を俺ははいつの間にか握っていた。
立ち上がったとき、打ち付けるような風が若葉の香りと共に俺の体を突き抜けていった。
動きや三人称視点は一マス開けず、心情などに段落を落としてます。
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