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多くの皆様がこの作品を読んで下さっていることに感謝と御礼申し上げます。これからもご愛読頂けましたら幸いでございます。
例の騒動から十日ほど経ち、雅たちは何の襲撃も受けず、平穏な日々を過ごしていた。
「ひとり、魚取ってきたぞ」
「あぁ、そこにおいといてくれ」
住まいは変われど、生活は以前と変わらなかった。
ただひとつ変わったとすれば、食卓に筍が多くでるようになったくらいだ。
「ふぅ。 何してるんだ?」
「蚕を育ててるのさ。これから布を作るのに必要だろ?」
「そんなもんどこで取ってきたんだ」
「それは、乙女の秘密だよ」
「けちだなー。教えてくれたっていいだろ?」
「蚕なんて何処にでもいるよ。特にこの郷にはね」
「そんなもんかー」
会話を終え、雅は縁側に座り、一息吐く。
こういった日々がいつまでも続けばいいなぁ
ただただ純粋に彼はそう思った。
八雲邸にて紫はその日ようやく動きを見せた、布団の中で。
もぞもぞと蠢く布団に影がさす。
「いい加減、目を覚ましたらどうだ?」
「ぐぅーぐぅー」
「わざとらしい狸寝入りをするな!」
「もう、うるさいわね。後一週間だけ」
「どれだけ眠るつもりだ!ただでさえ、お前は眠り過ぎだというのにこの期に及んでまだ惰眠をむさぼる気か」
「惰眠とは失礼ね。今後の計画のために力を貯めてるのよ」
「とにかく!もう起きろ!」
その人物は布団をひっぺがした。
「あぁ、私の可愛い布団ちゃんが」
「何が可愛い布団だ。その愛情を少しでも式に分けてやれ」
「あら、その事に関しては貴女も人のこと言えないんじゃない?
「ふん、それはあいつらが出来損ないだったからだ。しかし、今回手に入れたのは今までの木偶とは違うぞ。彼女らは童として非常に優れた器だ」
「あら、後戸の神様は怖いわね。人をまるで道具のように」
「戯けたことを。あのままあの子らを放っておいても、見世物になって終いだ。私が有効に活用してやったのだよ」
「そういうことにしといてあげましょうか」
「論点が逸れたな。いいから起きろ」
「何をそんなに急いでるのかしら?」
「貴様、今この局面がどれほど重要か分かっているのか?」
「あなたこそ、今は幻想郷における一つの転換点にしか過ぎないのよ」
「一つの転換点だからこそ、重要なのだろうが!」
「いいえ、これはただの転換点。これからいくつも生まれるであろう内の一つでしかない。最も重要なのはこれから行われる大結界の作成及び外界からの独立よ」
「あぁ、それが第一だろうな。だが、この幻想郷の情勢が変わる分岐点である今も重要出ない訳がないだろう!」
「落ち着いて、お茶でも飲みましょう。そんなに気を張らなくても大丈夫よ。万事、上手くいくわ」
「なぜそう言い切れる」
「だって、もう駒は揃っているもの。後は正しい手順で指すだけ。もし、どこかで不具合が生じたとしても、私
「大した自信だ。だが、悪くない。うん、その理論は悪くないな」
「でしょう?さ、お茶でもしましょう。悪いけど淹れてくれるかしら」
「お前の家なんだからお前がもてなせ」
「まぁ、なんて面の皮が厚いの」
「全く、お前と話してると会話してる気がせん」
「あら、誉めてもこのお菓子はあげないわよ」
「あぁもう好きにしろ」
こうして賢者の会合はお茶会へと移行した。
今日も今日とて日が暮れる。
妖怪の山の捜索班は郷全土をくまなく、休みなく捜索するが、目的を見つけることが出来なかった。
「今日も成果は無し、か」
「既に奴の能力下にいるのかもしれませんね」
「それは厄介だな」
指揮を担当する虎金とその補佐である花櫚は今日の報告の整理をしていた。
「鼻も効かぬか?」
「ええ、匂いでの追跡も不可だと聞いてます」
「奴の能力で器官に異常を来したか」
「器官には異常は見られませんでしたが、おそらく奴らのものだけを無意識下で認識していないのかと思いますよ」
「ふむぅ。打つ手なしか?」
「数秒、いえ数瞬さえ奴らを捉えることすらできれば私が追えるんですけどねぇ」
「まぁ、そう焦るな。いずれ気を抜いて尻尾を出すはずだ。奴の目的がこの山ならばな」
「そうだといいんですがね」
夜も更け、絶好の肝試し日和なこの頃。
時代錯誤な着物を纏い、竹林を闊歩する娘が一人。
その黒髪は月明かりに煌めき、その面はまさに美麗極まるものであった。
その娘はやがて池にとどまり、水面へと屈み、水を弄ぶ。
そのうち、もう一人、そこへやって来た。
「おい」
声をかけられたので、黒髪の少女は顔を上げる。
赤い瞳の少女と目があった。
燃え上がるような真っ赤な瞳だった。
「どちら様?」
そう尋ねるとその少女は鼻で笑い
「藤原、と言ったら分かるか?」
と答える。
「藤原、その名前の人間は多すぎて覚えてないわ」
「そうか覚えてなくても別に構わない。お前が輝夜であるならそんな些細なこと、どうでもいい」
「あら、私のことを知っているなんてとんだ長生きな生き物もいたものね」
「ああ、おかげさまでな。死ねなくなったよ」
「へぇ、もしかしてお仲間なのかしら?」
「仲間? はははは!私とお前が!?天地がひっくり返ってもそんなことなりはしないなぁ!」
「お盛んね。もう真夜中よ、少しは静かにできないの?」
「あぁ、お前をぶっ殺して静かにさせてやるよ!」
妹紅は辺り一面を業火で吹き飛ばした。
それと同時に妹紅の体も爆散する。
たちまち、辺りは無人になった。
かのように思えたが
「誰かは知らないけど、売られた喧嘩は買うわよ?」
跡形もなく焼き消えた輝夜という少女の肉体がそこにはあった。
そして、妹紅もまた大きな炎を上げ、肉体を構築させる。
「私の父はお前によって汚名を被せられた。だが、そんなこと、この藤原妹紅にとってもはやどうでもいい!」
妹紅はさらに炎を巻き上げる。
「なら、なぜこんなことをするの?」
「それは、これが私だけによる私のためだけの復讐だからだ!」
炎の噴出の勢いを利用して輝夜に思い切り殴りかかる。
輝夜はそれを避けきれず、頭は捻じ飛ばされた。
だが、頭部を失ったのにも関わらず、今度は輝夜が妹紅の頭を掴み、捻じ切る。
共に死屍累々の戦闘スタイルであった。
死にながらも殺し、また死ぬ。
「良い。良いわ。理由はどうでもいいけど私も屋敷に押し込められて退屈だったの!ちょうど貴女みたいな遊び相手をずっと求めてたのよ!」
「相思相愛ってかぁ?いいねぇ!なら、望み通り嫌になるほど殺してやらぁ!」
先ほどの静けさが嘘のように竹林には爆音と閃光が交差していた。
二人の喧騒の近くに一つ人影。
「まさか、ここに私たち以外の蓬莱人がいるなんてね」
その人物は月の賢者であった八意 永琳である。
「あの娘が摂取したのは帝に送ったものに間違いないわね。それ以外あり得ない。この地上にあの薬を作る技術があるとは思えないし」
永琳は何かと思案を巡らす。
とにかく、ここの住人らに存在がバレることに問題はない。いざとなれば皆殺しにすれば良いだけ。
だけど、万が一にも月の連中に捕捉されるのだけは避けたい。簡易ではあるけど結界を張っておきましょうか。
永琳は竹林の大部分に結界を展開する。
「これだけ広く取って入れば、どれだけ暴れたとしても大丈夫そうね」
それにしても、あんな輝夜の顔、久しぶりに見たわ。
楽しそうで嬉しそうな顔。
やはり、
永琳は思わず笑みをこぼす。
宿命の二人の喧騒は簡単には終わる気配を見せなかった。
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いきなり、爆音が鳴り響き、雅は飛び起きる。
「な、なんだ!」
「あたしが様子を見てくる!雅はここで待ってな!」
「いや、俺も─「だめだ!危険過ぎる!」
「…俺の能力があれば敵だとしてもバレない」
「だとしてもだ!あたしはあんたに傷ついて欲しくない!」
「それは俺も同じだ。ひとりに、傷を負わせたくない」
「…あぁ、もう分かったよ。決してあたしから離れるんじゃないよ」
「それはこっちの台詞だ」
そして二人揃って真夜中の竹林の散策を開始した。
それが彼らの命運を分けるとも知らずに……
たとえ、ここが人生における重要な分岐点であると分かったとしても、どの道が最適解であるかは分からないだろう