ある男と河童の道理外   作:ありそーす

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人生の選択肢に()()などない










訂正


前話のひとりの能力について修正


修正前

知を与える能力



修正後

道を示す能力


ご了承ください。


第十四話

雅が紫に捕らえられた頃、ひとりたちの戦場にも変化が訪れた。

 

「私は助太刀しろとは言ってないはずだが」

 

「別に助けに来たわけではないわ。()()()()仕事よ」

 

虎金の横に一人の女性が立つ。その姿を見て、ひとりは冷や汗を垂らした。

 

「茨木‥華仙か…」

 

鬼の四天王が二人。いかにひとりが強者といえど、その二人を相手にするのはほぼ不可能に等しい。

 

「万事休すか…」

 

「否、詰みよ」

 

紫は捕らえた雅をひとり見せつけ、王手をかけた。

 

「雅!」

 

()()()()()()()()()

 

「なぜ放っておいてくれない!あたしたちはただ、普通に、暮らしたいだけなんだ!それ以外なにも求めていないじゃないか!」

 

()()がいけない と言っているのよ。さて、貴女には選択権があるわ」

 

「なんだって…?」

 

「もし貴女がこの男を諦めてくれるなら、私はこの男を殺さず、逃がしてあげる」

 

「それは─「貴女はこの男と生きることが全てだと()()()()()()()。」

 

「もう一度言ってみろ…!二度とそんな口叩けないように地獄の底へ沈めてやるぞ!」

 

「そう。ならこの殿方も一緒に連れて行こうかしら」

 

紫は右手を雅の首へかけ、握る。

 

「がっぁぁぁ!」

 

「雅!」

 

「動いたらこの男の首を刎ねるわよ」 

 

「くっ!」

 

「待て!八雲 紫!」

 

虎金が二人の間に割って入る。

 

「何かしら?できるだけ簡潔に話してちょうだい」

 

「その二名は我々、山の妖怪が追っていた者だ。助太刀はありがたいが引き渡し願いたい」

 

「そうね、嫌よ。先に私たちが追っていたもの。横取りしにきたあなたたちはすっこんでいなさい」

 

「貴様、下手にでれば調子に乗りおってっ……」

 

虎金の鳩尾に華仙の一撃が入る。ひとりとの戦いで消耗していた彼女を沈めるには十分な威力であった。

 

「邪魔者いなくなったことだし、話を続けましょうか」

 

「……本当に雅を見逃してくれるのかい?」

 

「えぇ、約束は守るわ」

 

「ひとり!…がっ!」

 

雅が叫ぼうとすると紫の手?が口を塞いだ。

 

()()()()()()() でしょう?」

 

 

「そうか。雅、あんたは生きたいか?」

 

「モガモガ… ひとりと生きられないなら死んだ方がいい!」

 

「そうか…。それを聞いて安心したよ」

 

ひとりは帽子を脱ぐと、拳を振り上げ、自らの皿に向けて思い切り振り下ろした。

 

「あの世でまた会おう、雅」

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めろぉぉぉぉぉ!」

 

ひとりが拳を振り下ろす直前、怒号と共にひとりの体になにかがぶつかった。

 

ひとりはバランスを崩し、ぶつかってきたそれと一緒に倒れた。

 

「ちっ、一体なんだって─「駄目だ!ひとり殿!そんなことをしては駄目だ!」

 

ぶつかってきたのはいつかの河童であった。ひとりの胸倉を掴み、先程の行動を咎める。

 

「邪魔するんじゃないよ。あんたから頭を飛ばされたいか?」

 

「それでひとり殿が死なぬと言うのなら、どうぞ飛ばしてください!」

 

「彼を殺すのならばまず私から!」「いえ、私が!」「俺が!」

 

「「「「「「ですから、どうか死なないでください!」」」」」」

 

いつの間にか多くの河童たちがその場に居た。

 

「何なんだい、これは…」

 

「私が()()()()()

 

紫が雅を華仙の方へ放り、ひとりの方へ歩み寄る。

 

「言ったでしょう?貴女が拒んでいるだけで、()()は貴方を拒んでいない」

 

「今更…」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そんなこと─」

 

─パサッ─

 

紫は少し汚れた本のようなものをひとりの前に放った。

 

「あ、それは私の!」

 

 

「貴女を真っ先に止めた彼が書いていた日記よ。中を見れば分かるように捏造もしていない。正真正銘の証拠よ」

 

ひとりは手に取り、それを裂いてやろうと思った。だが、その前に紫に取り上げられ、無理矢理中身を見せられた。

 

「あっ…」

 

そこには彼が書いた自らへの想いが綴られていた。

 

 

自分が河童たちの社会から拒絶されていないこと。

 

山の妖怪も一部を除いて自分に好意的であること。

 

自らの居場所があること。

 

そして著者から向けられた恋愛感情。

 

 

それを見て、ひとりは一瞬

 

 

安心した

 

 

「今、少し安心したでしょう?貴女にはちゃんと()()()()があったのよ」

 

 

「あ~!私の秘密の日記がよりにもよってひとり殿に見られてしまった~!」

 

ひとりの思考は完全に停止していた。沸き上がる感情を押し殺すために。

 

「貴女が彼に固執していたのは拠り所が()()()()()()()()()()

 

「違…」

 

その否定の声は彼女から発されたとは思えないほど弱々しいものだった。

 

「もしこの河童たちがまったくの赤の他人であればこれ程貴女は動揺していない。動揺しているのは、貴女が彼らに対し悪くない感情を持っているから。そうね、楽しそうだったものね、あの時の宴会」

 

「あ…」

 

「その時の()()だって貴女が()()()()という意思から起こった。それって貴女が彼らに対し好意を持っていないと起こらないでしょう?」

 

ひとりはもう何も言えなくなった。

 

「恋心なんて所詮あの男へ想っている己に酔っていただけ。酔いから覚めれば、いかにそれが脆かったか思い知る」

 

呆然とするひとりの頬を紫はゆっくりとなぞる。

 

「貴女は彼を愛していたのではない。ただ、彼を()()()()()()()()()()()()()()()()。それを─」

 

 

 

 

()()()()()()()

 

 

「さぁ、決めるのは貴女よ。彼を諦めれば、彼の命は助かるし、貴女も居場所を失わない。()()()()()()()()()()

 

 

 

夜が明け、辺りが緋色に染まり始める。

 

 

大いなる選択の刻、その妖怪らの行く末を

 

 

太陽は見届ける 

 

 

 

 

 




()  とはなんぞや?

何をもってそれを  ()  とす?


その意味を今一度吟味せしめん
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