─謝罪─
評価のコメント数制限が0以外になっていました。
気軽にどうぞと言いつつ非常に不便な思いを読者様にさせたこと、深くお詫び申し上げます。
修正いたしましたので、よろしければご利用ください
「報告ー!ただいま、花櫚殿が重症者を連れ、本部へと帰還しました!」
「なに?早急にここへ通せ」
下級の鬼の報告を聞き、鬼の四天王と称される
花櫚は私が目をかけている優秀な部下だ。そこらの妖怪程度に下手を打つはずがない
そう思いながら、花櫚が部屋へ来るのを待った。
「失礼します」
秒も待たない内に花櫚が部屋へと入ってくる。
「やけに静かではないか。いつもの態度はどうした?」
「こちらも可愛いがってる部下を傷つけられたもので、そう道楽的にはいられないのですよ」
「ほう、お前ほどの者がてこずるとは、相手の妖怪は誰だ?八雲か?神か?近異界の大妖どもか?」
「いえ、そのどれでもありません。しかし、敵は人間です。しかも、其奴は柿祢殺しの犯人でありました。」
「人間だと?それでは犯人は巫女だったのか?」
「いえ、巫女ではない、男の人間です」
花櫚が質問に答えると部屋の空気が一気に張りつめる。
「そいつは、強い霊力を持つ人間か?」
「いえ、奴からそのような力を感じることはありませんでした。しかし、奴は私が恐怖を感じるほどの能力を持っていると思われます」
「お前が恐怖を感じるほどの、か。その能力とは何だ」
「私が推測したところ、奴は他の者を"洗脳"させる能力を持っています。その能力により、奴は河童の"ひとり"を手中に収めています」
「洗脳だと?それにひとりだと?あ奴が人間の手に?」
「はい。私も部下も奴を他愛もない人間だと侮っていました。その結果がこれです。なんなりと処罰を」
花櫚はまるで罰を受けることを前提に首を下げる。
「よい。頭を上げよ。逆によくぞ無事で帰ったと褒めてやる」
「しかし、これでは私の面目が!」
「私がよいと言ったのだ。それでこの件は不問だ。報告は以上か?」
「…はい」
「もう下がれ。部下の顔でも見に行ってやるがよい」
「はっ。この花櫚、あなた様にきっとこの身を尽くすでしょう」
「ははは。その言葉、もう何百万回も聞いたわ」
「改めて、ですよ。それでは失敬」
花櫚は風のように去っていった。
「ふぅむ。他の者を洗脳する人間に、
顎に手を当て、しばしの間、何かを考え込む。
「これは私が行くべきか?いや、ひとりの相手をしてる間に人間に洗脳されてしまっては元も子もない。だからといって、適当な部下を連れていっても相手の戦力次第では足手まといになる。……気に食わぬが、茨木に相談するか」
茨木という者に相談することに心底嫌そうな顔をしながら、虎金はその者がいる所へ向かった。
「茨木、いるか?」
虎金は茨木の部屋へ入るが、その姿は見えない。
「あ、虎金様。ただいま茨木様は外に出ておられております」
中には使いの者しかいなかった。
「はぁ~~、なんと間の悪い」
額に手を当て、虎金は溜め息を吐く。
「何か御用でございましたら、伝えておきますが?」
「例の天狗殺しの犯人が割れた。それについて相談があるから私の部屋へ来るように伝えておいてくれ」
「なんと!例の事件の犯人が!…分かりました。そのように伝えておきます」
「あぁ、できるだけ早く来るように頼むよ」
「はっ!」
丑三つ時。
草木も眠り、妖怪たちがもっとも活発になる刻、雅とひとりは家を造っていた。
「ひとり、竹はまだいるか?」
「あぁ、まだもう少し必要だね。あと数十本は欲しい所だ」
その家は竹造り。幸い、材料には困らない。
しかもその建築の速さは土蜘蛛も目を見張るものだった。
「驚いたよ、ひとり。まさか、こんなに速く家を造れるなんて」
「へへ、器用だろ?」
「器用ってレベルじゃないな。夜明けには完成するんじゃないか?」
「ふふ、舐めてもらっちゃ困るよ。目標は暁までに完成だ。ほら、あんたも早く材料取ってきな」
「あぁ、行ってくる」
そうして本当に暁までに家は完成した。
「家具は追々調達するとして、まずは一寝入りだ」
「ほら、これ使いな」
そう言って、ひとりは雅に竹の枕を渡した。
「ありがとう。用意がいいな」
「当たり前だろ?あたしを誰だと思ってるんだい」
「河童のひとり、だろ?」
「そうさ。あたしはひとり。
ひとりは心の底から満面の笑みを浮かべた。
あぁ、この笑顔見るために俺は
雅は再び、そしてより深く、ひとりへと心酔していく。
それはまた、ひとりも同じことだろう。
どちらの想いが深いとか、強いとか、そのようなことはもはや関係ない。
彼らの世界には彼らしかいない。
先刻、友となった妹紅など、思考の片隅、世界の外側。
もし、彼女が二人の関係を絶とうとするならば二人は容赦なく彼女を排除しようとするだろう。
関係というものを、彼らは0と1とでしか考えない。
元来、関係とはそう単純なものでなく、幾重もの事柄が複雑に絡み合って成り立っているものだ。
しかし、彼らは違う。
彼らとって、味方は
既に彼らの世界は完成している。
そこには誰も入る隙はない。
彼女が彼の存在意義であり、彼が彼女の存在意義。
両者たり得るのは、共に両者たるため。
それ以上必要ない。
他の者に許されるのは外からそれを眺めるか、無視するか、だ。
何人たりともその世界を侵すことは許されない。
狭い狭い世界の中で、彼らは生きている。
なぜなら、
ようやく見つけた"生きる"ということ。
長年、求め、手にした"それ"を
否定されたくない
井の中の河童と人は、大海があることを知れども、知ろうとせず。
井の中で、共に幸せを享受する。
これを
少なくとも彼らが
歪んでしまっていることに
純粋であることに
間違いはない。
叩きに叩かれて、でこぼこでも、ぐにゃぐにゃでも、確かにそれは立っている。