pixivでも同じ内容をあげとるんでよろしく。
決断
地表の71%が水で覆われた青き星。人類はそんな世界で文明を発展させてきた。
しかし、そんな人類の繁栄は、突如海より出でた異形の敵『セイレーン』の出現により一変した。
世界の90%の制海権は奪われ、人類は孤立し、生存を脅かされる。
圧倒的な力を有する外敵に対抗するため、四大国家と呼ばれる『重桜』『鉄血』『ロイヤル』『ユニオン』が過去のいざこざを水に流し、軍事連合『アズールレーン』を創設。
さらには四大国家以外の国々も全国で連合を作るべきだとし、アズールレーンを中心とした世界連盟『
人類のあらゆる英知を結集した彼らの活躍により、セイレーンの攻勢を食い止め、制海権をある程度取り戻すことに成功する。
しかし―――
「失礼します。イラストリアス様、プリンスオブウェールズ様、エンタープライズ様宛に、ロイヤル参謀本部から報告がございましたのでお伝えに参りました」
ロイヤル式の豪華な部屋でティータイムのなか、部屋に入ってそう言ったのはメイドのベルファストだった。
「『ロイヤル本土近海ニテ鉄血ノ艦隊ヲ発見。KAN-SENガ1隻、量産型駆逐艦ガ2隻。コレヨリ攻撃ヲ開始ス。本部モ警戒サレタシ』という連絡が、ロイヤル参謀本部に本日の午前7時に届いたそうです」
その報告に室内の空気はどんよりとする。
「無駄な争いをどうして……」
イラストリアスからは、鉄血と開戦以来ずっと口にしているその言葉が漏れる。
「それで、戦闘の内容は?」
プリンスオブウェールズがひきつった顔で尋ねる。
「まず、敵艦を発見した軽巡ニューカッスル様率いる第二哨戒班が先制攻撃、あとからその近くで演習を行っていた戦艦デュークオブヨーク様率いる部隊も加勢されたそうです。こちらの戦力は第二哨戒班の軽巡2隻・駆逐艦4隻とデュークオブヨーク様の部隊の戦艦1隻・重巡2隻及び量産型駆逐艦3隻の計12。鉄血は重巡プリンツオイゲンと量産型軽巡2隻の計3隻です」
(相手は数としては4分の1。しかもそのうちKAN-SENは1隻しかなくて、あとは量産型か。)
「完全に有利だな」
私がそう言うとベルファストは首を縦に振る。
「その通りでございます。さらにロイヤルは先制攻撃を仕掛けることに成功しています。」
「結果は?」
その問いにベルファストは少し言葉が詰まる。
「敵の損害が轟沈1・中破1、いずれも量産型軽巡だったのに対し、ロイヤルは量産型駆逐艦2隻が轟沈・量産型駆逐艦1隻が大破・駆逐艦クレセントが中破・駆逐艦コメットと軽巡カーリューが小破です」
沈黙が室内を覆う。
「これが鉄血の"新技術"だというの……」
「だろうな。しかも前よりも強くなっている」
開戦からすでに半年。
ロイヤルとの戦闘が実質的に始まったのはアイリスが降伏した4か月前ではあるのだが、この4か月の間に起きた7回の戦闘で確実に鉄血の力は増していた。
「我々は彼らの持つ"新技術"を甘く見すぎていたようだな」
——―新技術。
この戦争の元凶ともなった力。
私たちが互いの国のいざこざを水に流し、各国がそれぞれの思惑を捨て、アズールレーンをや
つまるところ人類同士の争いをしている余裕がなかったからだ。
しかしその敵が弱体化した今、各国にはその余裕ができてしまい、それぞれが自らの思惑を優先した。
それは新技術、つまりセイレーンの技術に関してもそうだった。
人類よりも遥かに発展したその技術を使えば、被害を減らせるうえ、セイレーンの殲滅が遂行できる確率も上がるだろう。
鉄血はそう主張した。
これだけ聞けば納得できてしまうのだが、セイレーンの技術の解明が最も進んでいたのは鉄血が、このアドバンテージを生かして世界の覇権を握ろうとしているとしたらどうだろう。
実際のところ新技術の情報を明かさずに、自国だけでこの技術を完成させようとしていた。
もし昔アズールレーンで決めた条約で、実際にセイレーンの技術を使用する際はあらかじめ各国の許可をとることが決められていなければ、今すぐにでも新技術を導入していただろう。
その野望を止めるため……と言えば人聞きはいいが、どの国も結局自らの思惑を絡ませてこの問題を扱った。
重桜もロイヤルも、そしてユニオンも。
そしてその自国ファーストの風潮は四大国家だけでなく、アイリス、東煌、北方連合などの大国、そして世界中に広がった。
そして遂に7か月前、鉄血は
アイリスと鉄血の国境問題を利用し、鉄血の国際的地位を下げて、鉄血の新技術導入を延期させようというユニオンの策だった。
これに賛同したユニオン・ロイヤル・そして鉄血と仲の悪い北方連合と当事者のアイリスで、鉄血を追い詰めた。
彼らはこれに反発しアズールレーン、
『レッドアクシズ』という新たな軍事同盟を作った。
そしてその1か月後、鉄血はアイリスに宣戦布告。
すべての悲劇の始まりだった。
「ああ、間違いなく強くなっている」
プリンスオブウェールズがそう続ける。
「鉄血は開戦当初の時点でアイリスがたったの2か月で降伏するほどの力を持っていた。アズールレーンを抜ける前からひっそりと新技術を開発していたとしても、加盟中に大胆な実験はできなかったはず。本格的に実験を始めて1か月でアイリスを追い込む技術力。我々は彼らを完全に見くびっていた」
新技術とそれを操る力を十分にもった彼らと、人類の力だけでしか戦えない私たち。
この戦いの行方はアズールレーンにとって、決して明るいものではないのだろう。
「エンタープライズ様。重桜にはこのことをどう報告するつもりなのです?」
イラストリアスが私に尋ねる。
「重桜はもはやアズールレーンを、いや、ユニオンとロイヤルを信用していない。これ以上の虚偽の報告は、重桜からの雀の涙ほどの信頼でさえも失わせることにつながるだろう。どうか慎重に決めてほしい」
「わかってるさ。ただ重桜が東煌を侵略している以上、これを見過ごすわけにはいかない」
私の今の言葉が純粋な正義から来たものではないことは、ここにいる誰もが分かったことだろう。
鉄血と友好的で、同じような思想を持っている重桜をユニオンはよく思っていない。
重桜もまた鉄血を、そして鉄血の肩を持った重桜を追いやろうとしているユニオンを、アズールレーンを、
重桜の東煌侵略は、アズールレーンや
そしてその事実に対して東煌を守ろうという気持ちよりも先に、重桜を追いやる供述ができたという考えに走った我々に、果たして正義はあるのだろうか。
鉄血に越されまいと自らの技術を極めるのではなく、鉄血を陥れる方向に事を運んだ。
もし我々がその向上心を持っていれば、セイレーンを殲滅し、平和な世界を創れていたのではないか。
そんなことを考えてしまう。
(だとしても、今更引き返せない。)
沈黙の部屋に受話器を取る音が鳴る。
「……ユニオン統合参謀本部に伝達。以下の内容を重桜に連絡されたし。"ロイヤルと鉄血が、ロイヤル本土近海にて戦闘。ロイヤルの損害、大破1・中破2に対し、鉄血の損害、轟沈1・大破1"……以上だ」
受話器を置くと、また部屋に沈黙が走る。
もう後戻りはできない。
「それが……ユニオンの、いえ、エンタープライズ様の選択なのですね」
イラストリアスが私に告げる。
「そうならば仕方あるまいな」
プリンスオブウェールズは席から立ちあがり部屋を出ていく。
では私は紅茶を取りに行ってまいります、と言ったベルファストも彼女についていく。
弱体化したとはいえ強大な敵を前にしてなお、人類は人類同士で争う。
しかし、それもまた未来を賭けた戦いであることは否定できないのだ。
見直しはしてないニャ。誤字脱字があったら教えてくれなのニャ。
評価もよろしくニャ?
少しでも暇がある指揮官は感想も書いてくれるとありがたいのニャ!
アズールレーンをやったことがない君!
ゲームをインストールして指揮官になってよ?
かわいい子がたくさんいるよ!?
ではまた次回。