[WR]FGORTA YAMA育ちレギュ [66日22時間15分32秒]   作:HIGU.V

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裏:突撃癖に関して

「レイシフト完了、成功です」

 

『周囲に敵影もない、一先ずは安心という所だね』

 

「ここが……百年戦争の時のフランス」

 

現代人にとっては、なかなかに見ることのできない透き通るような青い空、どこまでも広がる緑の地平線。だが、空には見た事もないような円環が浮いている。

 

「あれは……なんでしょうか? 当時のフランスでは観測されていた気象現象でしょうか」

 

『いや、そんなはずは、ってああ! シンドバッド君どうしたんだい?』

 

「偵察に行く!!」

 

「ああっ! 先輩、シンドバッドさんが走り出してしまいました!!」

 

「うん、わかる、俺も走り回りたい気分になったもん」

 

「いや、メートルこれは」

 

目の前の丘に向かって急に駆け出したシンドバッドを見つめながら、弓兵のサーヴァントナポレオンはそうつぶやく、彼の感覚がここは既に戦場であると告げていた。

 

それは直感と呼ばれるほどの物ではなく、単純に自身の積み重ねてきた経験という名の知識からくるものであった。

 

「恐らくだが、あの丘の向こうに何かいるかもしれない。」

 

「ま、マスターお待ち下さい、そんなに急いでは死んでしまいます」

 

ナポレオンがその様に警告するも、アラビア風な貴婦人のシェヘラザードは高いヒールの靴のまま、駆け出していってしまったマスターを追いかけている。サーヴァントなのに、マスターに追いついていない辺りがシュールである。

 

「向こうはギャグみたいになってるけど、大丈夫かな、マシュ」

 

「さ、さあ私には何とも。ドクター、スキャンの結果は」

 

『この反応は……そんな信じられない!!』

 

「ど、どうかしましたか?」

 

『竜種だ! 竜種の反応がある、15世紀のフランスにいるはずがないのに」

 

「えーっと、恐竜の生き残りみたいなかんじ?」

 

そんな風にのんびりとした感想を持っていた立香だったが、小高い丘の先から緑色の羽の生えたトカゲが姿を現したことにより、事態は一変する。

 

 

「ど、ドラゴンだ!! 本物!?」

 

「マスター、正しくはワイバーンです。」

 

「早くいかないと、あいつが囲まれるぞ」

 

「シンドバッド! 止まって! ストップ!!」

 

そう必死に叫ぶも声は届かない。当然だ、彼は適当に走り出したのではない、敵に向かって走り出していたのだから。なし崩し的に始まってしまったレイシフト先の初戦闘、立香はここ数日何度も頼んでいるお決まりの文句から指示を出すことにした。

 

「ナポレオン! ドラゴンに攻撃して! 」

 

「ダコール!」

 

大砲を構えたナポレオンの砲撃で一気に敵の数が減り、密度が下がっていく。そんな敵集団の中で、踊るように低く飛ぶワイバーンへと掴みかかり、流れるような動きで牙を折り、翼を折り戦闘不能にしている、シンドバッドの様子は只々異様だった。

 

話には聞いていたしマシュとの模擬戦でその動きも見ていた。だがそれは訓練であり、想像のような出来事を前に、足が竦んでしまいそうになる自分とは対照的に、水を得た魚のごとく、嬉々として戦場に躍り出ている、もう一人のマスターの姿。

その蹴りは硬そうな鱗を物ともせずに打撃を与えている。後ろからの攻撃には、見えているかのように体勢を低くして爪と牙を躱す。体勢を崩したかと思えば、彼のキャスターのランプの魔人のような精霊が現れて吐息を吹きかけて、とどめを刺している。

 

倒している数はこっちのナポレオンの方がずっと多い。マシュに守ってもらっている自分の方が、ずっと損耗は少ない。ゲームだとスコアが上なのはきっとこちらの勝ちであろう。それでも、彼の動きに見とれてしまった。

 

 

人間ってあんなになれるんだと。

冬木で見たキャスターやセイバーなどと違う人間でも、あんな事ができるのであれば、俺もあんなふうになりたいな。そう、幼い頃テレビの向こうのヒーローへ憧れるように、立香はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャンヌ・ダルクと合流したカルデア一行は、情報を集めるため、森の休息を終え、ラ・シャリテの街へと進軍していた。その途中で、竜を操る魔女、黒いジャンヌ・ダルクが現れたものの、様子見であったようで、ワイバーンをけしかけた後、シンドバッドに殴られて、撤退していた。

 

 

『シンドバッド君、何度も言うけれど、君はマスターなんだよ!!』

 

「そうだな」

 

『じゃあさっきは何で、あのジャンヌに殴りかかったんだい!?』

 

「そのほうが早いからだ。アイツが親玉なんだろ? 捕まえて殴れば聖杯とやらがどこにあるか、教えてくれるだろ。リツカ、マシュ、肉食うか? 良い感じに焼けたぞ」

 

 

確かに、敵の大将と見られる存在が単独で行動した上で、ちょっかいを掛けてきた。それだけならば、全戦力で敵を無力化する意味は出てくるであろう。しかし、それにしてもワイバーンの群れの中を掻い潜るように前に出て、サーヴァントと一騎打ちである。

 

 

「私は結構です。戦闘直後なので」

 

「俺はもらう。あ、美味しい。ワニの肉みたいな感じで淡白だね」

 

「結構いけるよな? キャスターとジャンヌに、ナポレオンも食うか?」

 

『シンドバッドくん!! 聞いてるのかい!?』

 

 

それは人間が行うにはリスクが大きいことであり、指揮官が難色を示すのは当然であったが、人員が限られている現状、ある程度仕方ないところがあった。

 

「まぁ、ドクトゥール。一概に間違った判断じゃなかったぞ。増援が来たら一息で此方に戻れる位置取りで戦っていた。何よりひきつけてくれてたおかげで盾のお嬢さんがメートルを十分に守ってくれたから、俺もスムーズに戦えた」

 

通信元のDr.ロマニは、シンドバッドに怒っているのだが、彼本人はどこ吹く風で、今倒したワイバーンの肉を支給されたナイフで捌いて、串に挿して火で炙っている。慣れた手付きの彼をかばうのがナポレオンという、不思議な構図だった。

 

「あの、シェヘラザードさん、彼はさっきもワイバーンを調理してましたが、何時もこんな様子なのですか?」

 

「えぇ……マスターは目の前に食べ物があると我慢できないようなので」

 

 

シェヘラザードはジャンヌの問いに苦笑しながらそう答える。人理を救う旅という重すぎる使命を背負っている、最後の数十人の人類だ。先程話を聞いたときは、もっとこうプロフェッショナル集団のような印象だったジャンヌ・ダルクだったのだが、既にアットホームな空気にやや馴染めないでいた。

 

 

『あー、あー、シンドバッド君。ワイバーンの皮膜と牙も回収してくれよ? 」

 

「レオナルド、わかっている。さっき言われた所だな。腐りやすい所以外は持って帰る。皆で食べるといい」

 

『ほら、ロマニもうすぐカルデアの食堂でワイバーンステーキが期間限定で追加されるみたいだ、そんなカリカリしてちゃだめだぜ? あと私のことはダヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ」

 

『レオナルド!!』

 

「ほら、マシュ一口食べなよ」

 

「は、はい、先輩それなら一口だけ」

 

 

泡沫の夢のような、特異点修復の旅で、彼らは確かに笑いあえる時間があったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たどり着いた、エ・シャリテの街。そこに待ち構えていたのは、2人のバーサクサーヴァントだった。方やドラキュラという概念に多大な影響を与えたヴラド三世。もう一方は女吸血鬼の象徴とも言えるカーミラ。

 

いや、実のところ戦闘の火蓋を切ったのは、正体不明のアーチャーだった。その何者かの矢を雨のように降らせる宝具で一気に距離を詰められてしまったのである。

 

なんとか、目の前の敵に対処しながら、敵を倒していくのだが、今まで順調だった戦いと大きく違う点があった。それはナポレオンという、カルデアの一番の火力がアーチャーの対処に釘付けになっており、実質的に機能していないということだ。

 

彼らには知る由もないが、黒いジャンヌが戦ったこともあり情報をある程度抜かれてしまっていた。敵の元帥がカルデアへの対策として、強力な砲兵の無力化を図るという、オーソドックスながら有効な一手を打ってきた結果であった。

 

ジャンヌとマシュでバーサクサーヴァントを抑えている間に、シンドバッドとシェヘラザードが立香を守りながらワイバーンを削っていく。しかし、ジワリジワリとカルデアが損耗していく。火力が足りていないのである。まさに敵の狙い通りの戦況の推移であった。

 

 

「っくぅ」

 

「マシュ!! 」

 

そしてついに均衡は破られてしまう、マシュがカーミラの吸血をまともに受けてしまったのだ。膝をついて怯んだマシュは、それでも懸命に盾を構えてはいるものの、体制を崩しているのは一目瞭然であった。

 

 

「隙をみせたわねっ! 血よ、血よ、血よ! 永遠の美、久遠の宴、老醜は刻の果てに! 」

 

「カバーは任せろ、キャスター!」

 

「むかーし、むかし……」

 

だが、それもシェヘラザードの支援によりマシュは何とか攻撃を耐えきる。直様、離れた所で旗を掲げるジャンヌに合わせて、立香は応急手当の礼装を発動させる。

 

立て直しこそしたが、やはりギリギリであった。

 

『立香くん、シンドバッドくん!! 敵の増援だ!! 』

 

「また、ワイバーンですか!?」

 

『いや、すごいスピードで捕捉しきれなかった! コレはサーヴァントだ!』

 

 

だが、ロマニから伝わる声が状況の悪化を知らせる。既にギリギリの状況だ。こちらのサーヴァントが敵を撃破できなければ、最悪無理やり撤退することも視野に入れなければならない。

 

「ジャンヌ!! 上だ!!」

 

どこから来るか見回していた立香は、視界に一瞬写った黒い影に反射的に叫ぶ。

 

「A――urrrrrrッ!!」

 

「ッ!! 問題ありません!! 立香さん! 危ない!」

 

乱入してきた全身黒い甲冑姿の男により、ジャンヌは更に弾き飛ばされてしまう。立香は思わず駆け寄ろうとするが、ジャンヌがその場を離れたことにより、敵のサーヴァントがフリーになってしまったのだ。

 

「血を求める!」

 

孤立した立香へと手をのばすヴラドと、慌てて身を捩る立香。走馬灯のように彼の脳裏に目の前の光景が焼き付く中、間髪入れずに割り込むものがあった。

 

 

「俺が相手だ!」

 

シンドバッドが、懐にしまっていたワイバーンの牙を思い切り投擲したのだ。それはヴラドの槍に弾かれるものの、場の流れを変える一手だった。

 

 

「貴様、人間の身で余に歯向かうか」

 

「かかってこい! 化け物!!」

 

 

地面から瞬時に生える槍という、非日常的がすぎる攻撃の中、シンドバッドは、まるで攻撃の形が予想できるかのように、紙一重で避けていく。蛇のように撓る身体で、濁流のように迫る攻撃の合間をすり抜けて行く。

隙を見つけ魔術で敵をひるませ肉薄するも、彼の攻撃では、到底強力なサーヴァントを滅せるわけがなかった。

 

 

拮抗したのも束の間、離れた場所にいる立香にも伝わってくるような、冷たい魔力の放出とともに。ヴラドが宝具を放っていたのだ。

 

 

血塗れ王鬼!!(カズィクル・ベイ)

 

「ぐはぁ!!!」

 

「シンドバッド!!」

 

「マスター!!」

 

ヴラドの身体より離れた無数の杭に貫かれ、後ろに飛んでいた勢いをさらに加速させ、ボールのように弾け飛ぶ。まともな人間ならば助からない。そう思える一撃だった。

 

中空に吹き飛ばされた彼は、何事かを呟く。するとそのタイミングで、真上に何かを投げていたシェヘラザードと場所が入れ替わる。

彼女は空中にいるままに、ランプの魔人のような精霊を呼び出して、ヴラドにけしかけているようで、暫くは大丈夫だ。

 

立香は急いで、シェヘラザードのいた場所へと目を向ける。きっとシンドバッドは場所を入れ替える戦闘服に登載された礼装を起動したのだ、彼はそしてそんな状況でも生きていた。

白い液体を身体中に掛けられた彼は、流した血とその液体にまみれていたが、膝を付きながらも立ち上がった。

 

 

「ドクター!! シンドバッドは!?」

 

『宝具を食らったんだぞ!! でも、何とか生きているよ。ああそうか、ヤムリカ女王の乳か!」

 

「問題ねぇ!! こんなの肉食ってれば治る!!」

 

 

ふらついた足元のまま、彼は懐から本当に肉を取り出してかじる。隙だらけだとワイバーンが襲いかかるのを地面に倒れ込んで避ける。直様起き上がり、ワイバーンの群れの中で彼は攻撃を躱している。立香の周りには、曲刀を持った小人のような精霊が守っているが、マスター二人が無防備な状態だ。

 

だが、彼らがここまで持ちこたえたことは、即ち生存への活路が開けたということだ。

 

その声は、鈴のように凛と美しく、高らかで、何よりも広く響き渡った。

 

 

「咲き誇るのよ、踊り続けるの! いきますわよ!! 百合の王冠に栄光あれ(ギロチン・ブレイカー)!」

 

 

ガラスの馬を駆る王女が、その声とともに宝具を開帳した。

二人の周囲を飛んでいたワイバーンたちが、馬の走る後に生まれるクリスタルに飲み込まれて、弾け飛ぶ。

戦場に生まれた新たな混乱の渦は続けざまに、新たな流れを生み出してく。馬にはもう一人男がしがみつくように乗っていたのだ。

 

「さて、こちらもやるとするか。死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)!!」

 

その男が馬から降り、指揮棒のようなものを降るうと、戦場に音楽が鳴り響く。その音楽は、まるで質量を持つかのように、周囲のワイバーンの動きを止め、何よりも敵の全てのサーヴァントの膝をつかせた。

 

「メートル!! 今は引くぞ!!」

 

「マシュ!! 撤退だ!!」

 

弓兵とはいえ、軍史に燦然と輝く天才ナポレオンは、引き際を見誤らなかった。ここで得た時間という資源は攻勢のためではない、撤退のために費やすべきだ。

彼のマスターも同意した様子で、直様走り出す。

 

 

「マスターの皆さん! 私の馬車にのってくださいな!」

 

「ありがたい、撤退支援は任せてくれ、シェヘラザードは馬車の守りを! マシュも今は馬車に乗り込め!!」

 

 

引くときは迷わず、一斉に。ナポレオンが檄を飛ばす中、カルデア一行は無事に初めての敗走に成功したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に撤退し、仲間が一気に増えたカルデア一行。一先ず細かい情報の共有は明日に回し体を休めることにしようと、焚き火の周りに寝床の準備をしているときに、ジャンヌは、カルデアのマスターであるシンドバッドに声をかけていた。

 

「シンドバッドさん」

 

「なんだ」

 

周囲は忙しく動いており、彼らの動きを気にする者は、彼の後ろで静かに佇むシェヘラザードだけだ。

 

「先程の戦闘、ありがとうございました。お怪我の方は?」

 

「だいじょうぶだ」

 

事実彼の傷はほぼ、快気していた。馬車の中でも一心不乱に肉に齧りつき、見る見る間に傷がふさがっていき、顔に血色が戻っていく様は見ている側が、あっけにとられるほどの回復速度であった。

 

「一つお尋ねしたいことがあります。何故貴方はあの黒鎧のバーサーカーが襲いかかってきた時、ヴラド三世に挑みかかったのですか?」

 

「なんで?」

 

「貴方は人間です。確かに立香さんより鍛えてはいらっしゃるでしょう。ですが、あまりにも無謀です」

 

 

その通りであった。直前にロマニに注意もされていた。それでも彼はジャンヌの抜けた穴をカバーするために、立香を守るために、ワラキアの英雄の英霊へと挑みかかったのである。

 

「貴方と立香さんは失われてはならないのでしょう? それなのに、何故貴方は一番に危険に飛び込むのですか?」

 

 

そう、マスターとはチェスで言えばキングの駒。攻撃に転用することはあってはならない。それを取られてしまえば終わりなのだ。そもそもレイシフト適正を持っているものが2名しかいない現状ですらまずいのであり、2名いるから片方は死んでも大丈夫というわけでは断じてない。

 

「目の前に、倒すべき敵がいる、そいつを倒さないと、俺は生きていくことができない」

 

「……!」

 

「よくわからないけど、7回強いやつを倒さないといけないのに、こんな所で死ぬならどうせ勝てねぇ。だから倒す」

 

「それは……」

 

 

ある側面においては真実であろう。藤丸立香が誠意を持ってサーヴァントを御して力にしている。段々と片鱗を発しているその生来の目の良さも相成って、彼はきっと司令塔になるのであろう。

だが、目の前の彼はサーヴァントがいれば埋もれてしまう強さ。それしか持ち合わせていない。ならば、戦いの中で生き残るには、戦うしかないのだ。足りぬのなら死ぬなら、足らすしかないのである。

 

既に生きている人類は数十名、その中で生きていくには、価値を示さなければ、アイデンティティは消え去る。人は人に必要とされて人になれるのだ。彼が人であるためには、必要とされる必要がある。そう彼は言いたいのだ。

 

 

「マスター、そろそろ今日は眠りましょう……」

 

「うん」

 

 

ジャンヌは、シェヘラザードの囁きに顔を綻ばせるシンドバッドを見て、自分に言えることがあるのかとは思いながらも、それでも口を開いた。

 

「シンドバッドさん、最後に1つだけ。貴方がそう言ってしまうことが、周囲を悲しませる。そのことをどうか覚えていてください」

 

「? わかった、気をつける」

 

いつか、貴方がこの言葉の意味を受け止めて考えてくれる時に、ふと思い出してもらればと思います。

彼女は音にしないで心のなかでそう呟き、彼らに背を向けたのであった。

 

 

 

 




葛木先生もキャス子の支援前にセイバーに殴りかかってたしセーフ!

あと、ナポレオンのフランス語をカタカナにするとすごいダサい……ダサくない?
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