[WR]FGORTA YAMA育ちレギュ [66日22時間15分32秒]   作:HIGU.V

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裏:他者との関わりについて

「うーんアンタは、そうね、クマね! 」

 

「クマ? クマとは何だ? キャスター? 」

 

「では、今夜は熊の出てくるお話をいたしましょう……ええ」

 

 

森の中を進む一行は、散発的に襲いかかってくるウェアウルフやワイバーンとの戦闘を終えて、一息ついていた。哨戒中のフランス兵が追われていたのを助けた形であり、既に助けられた兵士達は任務に戻っている。

休息が必要な人間は、3人しかいない現在のカルデア一行であったが、無理をする必要もないために、こまめに小休止を挟んでいた。

 

「エリザベートさんは、人を動物になぞらえて呼ばれるのですね、先輩は子イヌですし」

 

「ドラゴン娘らしい悪趣味な行いですね」

 

「なによ、アンタも似たようなもんじゃない!!」

 

どうやら、清姫とエリザベートは仲が悪いようで、事ある毎にこの様に衝突している。立香は、歴史上の英雄と協力して戦うと聞いた時に思った光景とはまるで違う現状に少しおかしくなる。

 

「ますたぁ、エリザベートさんがうるさかったら、言ってくださいね。静かにさせますから」

 

「うるさいのはアンタでしょうが!!」

 

「二人共、肉食うか……あ、こっちじゃない、これだ」

 

そんな二人の間に座っているのに、我関せずと肉を食べているシンドバッドは、酷く人間的にみえる。懐から取り出してた肉を持ち替えて、エリザベート達の前に差し出す。

 

「え、コレなんの肉よ?」

 

「さっき倒した、ワイバーン?」

 

「シンドバッドさん、それはエリザベートさんが食べたら共食いになってしまいますよ」

 

「清姫!! アンタね!」

 

「問題なのか?」

 

「アンタも、レディにひたすら肉を押し付けてるんじゃないわよ! クマ!!」

 

道中から休みなく周囲に肉を配っているのだが、戦闘が終わっても、同じ様に肉を配り歩くシンドバッドに、流石のエリザベートも堪忍袋の緒が切れた様だ。マシュですら既に言葉を出さずに動作だけで断っているのだから。

最もさっき迄渡していた、ひと晩かけてキャスターと共に加工した肉ではなく、先程ただ焼いただけの肉なので仕方がない側面もあるが。

 

「あ、子グマではないんですね。確かにシンドバッドさんは先輩より年上ですしね」

 

「フフフ、皆楽しそうね!」

 

「マリアあれには関わっちゃいけないよ」

 

戦闘の合間の一息で、これだけ笑い会える旅。カルデアの戦力はフランスに付いたときよりも6騎も増えているのだ。最初は緊張していた立香の表情も何度も戦闘を切り抜けたからか、朗らかなものになってきている。

 

 

「いいチームですね。この局面で気負い過ぎていない」

 

「だろ? 自慢のメートルがリーダーをやってるからな」

 

新たに仲間になったゲオルギウスも、総評するほどには、即席のチームにしてはまとまっていた。

 

だが、打倒すべき黒いジャンヌには、バーサクサーヴァントという強力な配下が存在している。此方が互角以上に戦えているのに、相手にはまだ余裕がある。気を引き締める必要があるのは事実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シンドバッド君!また君は前に出て!!』

 

「ゲオルギウスが守ってくれてる。いまは殴る時だ!」

 

立ち寄った街で、待ち伏せと挟み撃ち。さらには敵の切り札とも言える邪竜ファヴニール。決戦もかくやという戦力のぶつかり合いが始まってしまった。

カルデアは現在ファヴニールの攻撃により半壊した市街地で乱戦をする立香達と、開けた場所にて追ってきたマルタを足止めするシンドバッド一行に分かれて戦っていた。

 

前方には強大な敵がいて、後方から聖女マルタが狂化されて襲いかかってくる中で、戦力の分断を提案したのはナポレオンだ。

即座にその状況判断でマスターを分けて行動するように進言、立香も同意して、ロマニも承諾し、数の多い立香組が市街地で2騎のサーヴァントとファヴニールを相手取り、シンドバッド組がマルタを足止めしているのだ。

 

 

現地のサーヴァントは、カルデアからマスターである二人を通してバックアップを受けることで、戦力が底上げされる。元々が聖人でありながら、騎士としての在り方としても一流のものとされるゲオルギウスは、同じく竜退治の逸話を持つマルタ相手に、一歩も引かない戦闘をしていた。

 

だが、マルタの宝具開帳により、彼も宝具を合わせる。かつて聖女マルタの沈めたタラスクが、ゲオルギウスのアスカロンを押し返している隙を見逃さず、術者であるマルタへとシンドバッドは殴りかかった。それをロマニに何度目かの注意を受けているのだ。

 

 

杖を手放したマルタは腰を低く落として、軽くステップを踏みながら構えた。まるで拳闘士のような構えに、聖女とは何かを考えたくもあるが、シンドバッドにとってはそもそも宗教の定義すらあやふやだ。ただ、杖を持っているより素手のほうが強いのだろう。

 

「せいっ!」

 

大きく背中をそらして上から打ち下ろしてくる拳を、シンドバッドは左手を内側に潜り込ませるように捻り、腕で絡め取るように外側に弾いて逸らす。そのまま右脚を小さな円弧を描くように蹴り上げて彼女の側頭部を狙い撃つ。

マルタも直様反応し、視線すらよこさずに左肘で蹴りを受け止めるどころか、そのまま彼のスペースに入り込みエルボーを入れてくる。シンドバットは即座に脱力し、上げた脚から踵を落としつつ、打ち込まれる肘を肩の上へとそらす。

 

崩れたバランスで打ち下ろすマルタと、両手でそらしながらそのまま足払いを掛けるシンドバッド。

当たり負けしたのは、シンドバッドであったが、やり取りにおいては彼の思惑が通った形だ。交差の直後、間髪入れずに二人はすぐさま体勢を立て直した。

拳の距離では分が悪いことを自覚したシンドバットは、直様蹴り主体で戦えるように脚を小さく使い距離を保つ。逆にマルタは、ステゴロ上等とばかりに勢いそのままに飛び込んでくる。

 

「ハレルヤッ!」

 

「重いッ! が! アイツほどじゃない!!」

 

蹴りの合間に打ち込まれた拳は彼の胴体に吸い込まれるように入るが、そのまま体の軸を起点に回して、拳を滑らせる。合わせて来る連撃も両腕を重ねてから弾き出し、勢いをつけた掌底で横へとずらす。ブレる軌道はごくわずかほどだが、できたスペースへと体を滑り込ませて掠められつつも躱す。

マルタの攻撃を捌いた彼は、そのまま彼女の胸へと飛び掛かりながらの膝を叩き込む。全力を込めた攻撃だが、マルタはダメージと言うよりも質量差による衝撃で後ろへと下がる。

 

再び距離ができるが、その刹那タラスクの断末魔が双方の耳朶へと届く、僅かばかりにマルタの瞳孔が動いた瞬間に彼はその場から飛び込むように姿勢を低くして踏み出し、地を這うように駆け寄る。

当然のように放たれたマルタの迎撃の拳を、まるで見えているかのように身体の側面で弾いて飛び上がって蹴りを叩き込む。低め、低め、真ん中、回して反対へと続けた連続攻撃。だが、聖女を投げ捨てたマルタはその程度では沈まない。

 

彼女が反撃へと移ろうとした瞬間、彼女の真上から、巨体が降り注いだ。それが目の前の男のサーヴァントによる援護であることに気づくと同時に、彼女は地面に倒れ伏したのである。

 

 

「見事です……マスター、よく私を止めてくださいましたね」

 

動けなくなった彼女は、合流したゲオルギウスにより守られたシンドバッドへと声を投げかけた。

敵意がないと判断したのか、ゲオルギウスも剣より手を離さないものの、警戒を緩めている。聖女らしからぬ戦い方をした彼女へと事実を指摘しない優しさを、聖人の彼はきちんと持ち合わせていた。

 

「ここから先に、かの竜殺しがいるわ。ひどい呪詛を受けているけど、聖人が二人もいれば解除ができると思うわ」

 

「何と! 聖女マルタ。貴方は、斯様になってもやはり聖女なのですね」

 

「この杖を持つ私は聖女マルタですから」

 

 

聖女と見紛う微笑を浮かべた聖女が、そう告げると、ゲオルギウスの後ろにいたシンドバッドは彼女に近寄って声をかけた。

 

 

「あんた、強いな。俺の攻撃が殆ど効かなかった」

 

「聖女ですもの……ただ、次にあったら、負けないからね、覚えてなさい」

 

「ああ!! 次はオレ一人で倒してやる」

 

拳を交わした者同士、通ずるものがあるのか、雌雄を決したばかりなのに穏やかな別れであった。

既にワイバーンは全滅している以上、シンドバッド組の戦闘は終了と見てよいであろう。

 

「マスター。終わったと報告しましょう」

 

「うん、わかった。ロマニ!! 終わったぞ!!」

 

『元気良い通信ありがとう。立香くん達も、サーヴァントを撃破して撤退するところだ。ポイントを示すからそこで合流してくれ』

 

「あと、竜殺しって奴の場所を教えてもらったぞ」

 

『確認してるよ、その件も合わせて、合流したら作戦会議だ』

 

 

ファヴニールという巨大な障害こそ現れたが、カルデアはむしろ勢いづいていた。

3人は、急ぎ合流地点へと駆けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、道中のどこかでの一幕。

 

「にしても、ジャンヌ・ダルクにマリーアントワネットとはね。因果なもんだ」

 

 

仲よさげに前方を歩くジャンヌとマリーを見つめながら、ナポレオン・ボナパルトはそう呟いてしまった。思わず漏れた独り言であったが、隣にいたマシュと彼らのマスターの耳には届いていたようだ。

 

「あれ? ナポレオンって二人より後の時代の人じゃなかった?」

 

「あ、確かナポレオンさんの奥さんは」

 

「マリー・アントワネットは、まーなんだ俺の2番目の妻の大叔母、まあ、遠い親戚ってことになるのかね」

 

「へぇー、そうなんだ」

 

資料によれば当人同士に面識はなく、死後にこんな形で会うとは双方考えていなかったであろう。

 

「でも、何でジャンヌまで?」

 

「そうだなぁ、長い話になるのだが……」

 

「聞かせてください。是非!」

 

「うん、俺も聞きたい!」

 

 

 

立香組がその様にナポレオンのカリスマ性の補強として使われた2名の女性の話をしている中、前方を歩く当事者である、マリーは突如ジャンヌへと抱きついて、頬にベーゼを送っていた。フランスらしく白百合が咲き誇っていると言えるだろう。

 

「っな!! 何をするんですか!」

 

「ふふ、どう? 良かった?」

 

「良かったかどうかではなくてですねっ! こういうのは結婚を前提とした」

 

「あーあ、出てしまったか、マリアの悪い癖が」

 

「あら? 皆さんはしないのかしら? こう、ハートがぐぐーーってなったらしちゃうものでしょう? 」

 

 

呆れるアマデウスと、周囲へと同意を呼びかけるマリー。そして顔を赤くしながら必死に問い詰めるジャンヌ。

全く異なる様相の3人を見ながらシンドバッドは隣にいるシェヘラザードへと、感じた疑問を問いかける。

 

 

「なあ、なんで女同士でキスしてるんだ?」

 

「ああ、マスター……その説明は、その、非常に難しいお話になります」

 

最近口づけを、性的な興奮を満たすために行うものだと教わったばかりの彼にとって、彼女たちの行いとは、全く理解できるレベルになかった。彼には色々と下地となる知識がないのである。

 

 

「おや、こっちのマスターは見た通りの堅物なのかい?」

 

「そういうわけでは……ないのですが、ああ、なんと説明いたしましょう」

 

「貴方もベーゼをしないの?」

 

「されるのは好きだぞ?」

 

「ま、マスターいけません!!」

 

自分の主人のフォローを精一杯しようとする彼女だが、肝心の庇われている側が状況を全く理解してなかった。

主従二人のそのやり取りに毒気が抜かれたように、クスクスと笑みを浮かべるマリーは。浮かべた笑みをそのままに、シンドバッドへと問いかけた。

 

「ねえ、シンドバッドさん。いいえマスター。貴方はマスターになる前に何をしていたのかしら?」

 

「ん? お前のマスターはリツカだろ? 」

 

「今は、目的を同じとするサーヴァントとして聞いているの。お答えいただけるかしら?」

 

シンドバッドは、一度横のシェヘラザードを見るが、彼女が目線を下に逸らすのを見て、自分で答えるところなのだとわかり、頭をひねる。何を言えばよいのかわからないのだ。

 

「ずっと一人で山で修行してた。じゃダメか?」

 

「立香さんからもそう聞いているわ、そうじゃなくてどんな物が好きで、何がしたくてここにいるの?」

 

シンドバッドは、その時の感想を言葉にするのならば、考えたことがない。であった。目的はある。自分の今まで積み上げた全てがいらないものじゃないって自分が思うために戦っている。だけど、やりたいこととか好きなことというのは、彼にとっては次元が異なるトピックだった。

 

「……強くなりてぇ。ああ、そうだ。キャスターに教えてもらった話みたいに。俺は強くなりたい」

 

それでも言葉を紡ぐのであれば、擦り切れてしまうほど小さな記憶を始まりとする、格好良い動きを自分もやってみたい。それだけだった。

 

「ナポレオンみたいに凄い銃も打てないし、この前の槍野郎みたいに無茶苦茶に槍を出せないけど、強いやつに勝ちてぇ」

 

負けてもいい、生きているのならば。だけど強くなるのをやめて勝てなくなってしまったら、彼の価値はそこで止まってしまうことになる。それは彼にとって死ぬことよりも怖いことだった。

 

 

「そう。それじゃあ、その目的を見失っちゃダメよ? ハートがぐぐーーってなったら、我慢をしないでね。そうすればきっと、後悔だけはしないでいられるわ」

 

微笑みとともにシンドバッドの両手をとって、彼の顔を見上げながら、彼女は彼に向けてそう結んだ。

 

「わかった。ありがとうな、マリー。お前良いやつだな」

 

「ふふっ、貴方もねシンドバッド」

 

そう言ってマリーは再びジャンヌの隣に舞い戻っていった。揺れて風とともに舞い上がった、彼女のシルバーブロンドの髪が陽の光に照らされてキラキラと輝いているのを見たシンドバッドは、自分でもよくわからない気持ちが心のなかで動いたのを僅かだが感じ取った。

 

ただ、サーヴァントと現代に生きる人間が、少しばかり言葉を交わした。

これはそれだけの話であり、それだけの事実であった。

 

 

 

 

 

 

 




裏パートが長引いてRTA感が損なわれそうで、怖いっすね。
元から無い可能師が)濃いすか?

本当は、2話でやるつもりだったんです。
RTA3話くらいに裏1の予定が伸び伸びになっただけなんです。

というか、鯖最大10騎とか、縛りでもなんでも無いよね?
単騎で走ってる人とか、単騎で走り終えて、2周目駅伝してる走者もいるのに。

作者にとっての書き分けが縛りの可能性が?
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