[WR]FGORTA YAMA育ちレギュ [66日22時間15分32秒]   作:HIGU.V

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今日はこどもの日ですね。
だからなんだという話ですが。


裏:ミストレス・Cに関して

謎の女怪盗ミストレス・C。彼女はかすかな縁を頼りに召喚された。

リソースが十全に確保できておらず、縁でのつながりで呼ばれにくくなっている、カルデアの召喚システムの中でだ。

 

「ある時は、謎の高貴なセレブ、またある時は冷酷な吸血鬼! 」

 

名前も名乗らず、彼女が必死になって考えた格好良い口上を高らかに宣言すると、唖然としたような雰囲気が漂ってくる。

 

全く失礼なことだ。このGroovyな格好良さが何故分からないのか。

しかしながら、彼女のマスターである、変わらずに褐色の肌の男性は、呆れを宿さない目で此方の事をただ見つめている。そうだ、これでいいのだ。

 

きっと彼は覚えていないのであろう。必死になってここまで来た自分のことを。でも、それでも良いのだ。

 

「その真の姿は、巷を騒がせる謎の女怪盗! ミストレス・C!! これも運命かしら、召喚に応じてあげたわ!!」

 

自身の真名である、ミストレス・Cを告げるものの、周囲は相変わらず今一つな反応だ。

気にすることなく、彼女はマスターへと近寄り、マスターの瞳をサングラス越しに覗き込む。空虚でいながら情熱的。そんな何度見ても忘れられないその瞳を見て安心する。彼は、今回も彼のままなのだなと。

 

そして、またいるのかと。彼と同じだが、それよりも少しだけ明るい色素の肌を持つ女性を一瞥する。だが、まあ良い。自分だって、またいるのだ。偶然が重なっているだけなのであろう。そうだと思いたい。

 

どちらにしても、掌の上で何度も踊らされるのは慣れている。

ミストレス・Cは帽子を自身の表情を隠すようにかぶり直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サーヴァントの勝ち組の証である水着。そして、それを纏うのは、まだまともな方のエリちゃんと名高い、大人となったカーミラの姿。それ自体はおかしいことではない。

 

サーヴァントはその英霊としての生涯を座に記録された存在。その情報をくみ取り、クラスという鋳型に鋳造されて召喚される。故に、生前全ての道具を持ってくることはなく、最も適した姿と道具を携えて現れるのだ。

 

しかし、記憶に関してはかなり個人差がある。生前の事すら朧気になっている特殊な生い立ちの者もいれば、他の聖杯戦争で召喚された記憶を明確に持っているものも。事実としてそんなことがあったのだと本を読む程度に知っているものもいれば、なるべく知らないでおこうと目を背けている者まで。

 

そして彼女は、その方面でのカテゴライズではとりわけ不思議な存在だった。

 

改めておさらいすると、実のところエリザベート・バートリーも、カーミラも一人の女の生きざまを基にしたサーヴァントである。名前こそ異なっているものの、所謂、通常とリリィの関係である。

そこに彼女自身の経歴から、カーミラという女吸血鬼が生まれ、彼女こそがそのカーミラであると歪められていき、汚れを知る前の少女としての姿と、妖艶な女吸血鬼の姿形に落ち着いたのである。

 

通常の召喚で呼ばれたエリザベートというのは、基本的には、わがままに自分のやりたいようにふるまう。マスターは彼女にとって、彼女の魅力を広めるという目的のためのプロデューサーやマネージャーであり、自分の役割であるアイドルであったり勇者にどっぷりとはまってしまうのだ。

 

そんな彼女は、この人理焼却においても何度も何度も召喚されていた。

特異点だけで3つ、他にも極小特異点を含めればその数は膨大。だが、野良ではなくマスターと契約をしたのは、『この並行宇宙』の中において、彼女の主観においては、全て同一のマスターとの契約だ。

 

『彼』との契約の際は、決まって未来のカーミラの精神性として召還される。彼女が嫌うエリザベートの身体に近い、やや若い姿で呼ばれたこともあった。それは『彼』と彼女を結びつけるものがそこに起因するからなのであろう。

 

そしてそれが変に作用したのか、彼女はその出会いを召喚が終わっても忘れなかったのだ。

彼女の主観は覚えている。朧気であやふやだが、『彼』と共に聖杯探索を駆け抜けて、そして『必ず志途中で死別する事』を。

 

彼女が召喚された旅は、全て一人の女の手によって終わりを告げていた。

 

それは自分が華々しく出演しデビューを飾った初舞台。脇役ではあるものの、存在感を誇示しながら演じた演目で、結局はその女のすべて掌の上だった。

まぁ、それは仕方がない。彼女の上司ですら、その女の掌の上だったのだ。

 

しかし、その因果が此処でも絡んでいるのならば非常に遺憾だ。

 

そして、今回のこの人理焼却という大舞台での彼女は、ヒロインではあるものの、汚れ役だ。いままでは座では兎も角、召喚される彼女が持っている記憶は、フランスで操られて戦ったものだけだ。カーミラとして召喚される以上、そうなるのは当然だ。

 

全ての旅で共通して、彼女は2番目か3番目に呼ばれる。フランスで縁を結ぶ以上、それは仕方がないのだ。1人目はずっと決まっている。

 

どうやら、彼女のマスターである『彼』には名前はないが、自分や1番目のようなサーヴァントとの相性が良いようだから。

 

『成し遂げた』今の彼女ですら全てを鮮明に覚えているわけではない。それでも彼女は、どんな形で彼と出会っても、楽しく良い関係を築けた。1番目がそう導いているのか、決まって優しくて、積極的で、情熱的に求めて。自身の美しさを何よりも見つめて認めてくれるマスターだった。

血を吸っても死なない程度ならば怒らない。それでいて、戦闘の際にも無茶な指示はほとんどしない。

 

 

呼ばれる前から好きなのではない。今まで呼ばれた際に、記憶は殆ど持ち越せていなかったからだ。それでも呼ばれる度に毎回好きになってしまう。

座での彼女は、何度も何度も好きな本を読むように、打ち切りになってしまったところまでの経験を反芻し続けていた。

 

擦り切れるほどそれを繰り返していった彼女は、禁忌としていた方法を行う。

それは自身とエリザベートの同一視。メカにも勇者にも鬼にも魔女にもアイドルにもなる謎すぎる存在エリザ。その存在によって、自分を変革。

 

もともとあった自身の可能性である、城を求めるために怪盗業にいそしむ姿に、エリザベートの記憶を持ち込んで、彼女は【バートリ・エルジェーベト】という真名をミストレス・Cとすることで、エリザベートでもあり、カーミラでもあるという状況でこの場に召喚されたのだ。

 

────あのエリちゃんならば、こんなことやりかねないであろう。

という人々の期待に満ちた願望と

────カーミラ様は水着でこんなこと多分しないし、こんな恥ずかしい名前を付けない。

という信仰を利用して現れた、エリザとエリザとエリザとエリザとエリザとカーミラが合わさり最強となったエリザベート。

 

それをサーヴァント界のトップカースト、水着サーヴァントという型に詰めるだけ詰め込んで、召喚されたのだ。

彼女はミストレス・Cである限り、エリザベートでもある可能性と、カーミラでもある可能性の両方を有することができるのだ。

さながら名前を告げたら、姿を消さなければならない怪盗のように。

 

そういう信仰により自らを霊基を変えた彼女は、おぼろげながらも何度も見たこの並行宇宙の記憶と、この世界で自身が召喚された特異点でのエリザとカーミラの双方から見た記憶と共に召喚されている。

 

その為エリザベートのスキルもある程度は使え、カーミラとしてのスキルも使える。竜でも吸血鬼でもあり、その気になれば負担は大きいが勇者にもなれる。

 

────うーんアンタは、そうね、クマね!

────あら、処女は2人しかいないのね

 

力を求めて、より明確な成果を求めて走り続ける。

彼女のマスターは、そう強い決心と決意をもって歩み続けると、必ずより大きな倒錯性を持ったサーヴァントを召喚してしまう。

 

彼の呼ぶサーヴァントは全て『愛が歪んでしまっている』

 

崇高な目的の為自分の身体を手段とし、愛を受け取れなくなった女。

手に入らない物の為に、身体を差し出し欲しい愛を遠ざける女。

自分の快楽に若さを求め、残虐な手法で処女の血を浴びる女。

 

段々と外れていっている。彼女を呼んだということは、あまり猶予は残されていない。

 

 

このままでは、『自らの悦楽という愛のために、何もかもを犠牲にする女』が呼ばれてしまう。

 

名前は会う度に異なるが、今生での名はシンドバッド。それはもう関係ない、彼女にとってはマスターでしかないのだ。

マスターは人理修復の偉業を成し遂げなくても、良いのだ。

 

 

背負った罪の精算のために、自らの価値を高める偉業(誰かの自慰行為)に付き合わなくてよいのだ。

 

人間自身の価値は、誰かに愛されることでも満たされるのだ。自己肯定をするのに、偉業はいらない。

既に分水嶺ぎりぎりだった。黒にするか、赤にするかで水着をじっくり選んでたら、危うく遅れるところだった。

 

 

必要なのは、目的はそのままでも、覚悟を鈍らせること。ここにいてもよいのだと思ってもらうこと。帰ってくることを意識させること。

既に1人目は最初の目的を、自身の生存の為この一度の死で終わりにしたいということを、諦めかけている。

ならばこそ抱き込むしかない。2人目もたまに見る顔だ。彼女は幸せな家庭さえ築ければよいのだ、どちらでもよいならば協力はこぎつけられる。

 

4人目にあの女が来たら、その時点で彼はすべてを投げ出してあの女に溺れる。そうしないためには、彼はこれ以上自らの価値を勝ち取る必要がないと思って貰う必要がある。

 

だからこそ、一通りの自己紹介が終わり、マスターが退出したマスターの部屋で、彼女はこう紡ぐのだ。

 

「マスターを私たちのものにしたいのだけど?」

 

言葉はもう少し選ぶ必要はあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、マスター。どうすれば彼女は幸せになれたと思う?」

 

カルデアのライブラリー、その資料閲覧スペース。半個室の狭いソファーに寄り添って二人で座りながら、マタ・ハリは己のマスターにそう問いかけた。

 

彼女が見ているのは、生前の自分をテーマにした作品。女の悲劇的で情熱的な刹那の人生を描いた、映像作品だ。

作品自体に文句は実のところそんなにはない。主演の女優は可愛らしいし、フィクションが交えられてるが、大まかに自分の人生をドラマティックにしている。

 

ここまで恋が多い尻軽じゃないのだけどとは思いつつ、彼女は一緒に映像を見ていたマスターへと声をかける。

 

「男に好かれない姿の方が良かった。このマタハリは、綺麗だから男が沢山きてわからなくなった。だから、欲しい物はあるのに、最初に諦めた」

 

マスターはたどたどしく、ゆっくりとそう口にした。既に映像は本編が終わりスタッフロールが流れるばかり、文字が読めないシンドバッドがそれを読めるはずもないが、じっと画面を見ていた。まるで見た映像を必死に思い出すように。

 

「マタハリは負けないようにしてた、だから大きく勝てなかった」

 

それは奇妙な視点ではあったが、ある種彼の理解できる範囲でかみ砕いた内容だった。

 

美しい少女は、実家が貧しくなっても勉強を続けられた、しかし後援者からのセクハラに耐えかねて、中退した。結婚適齢期になった彼女は、お見合い新聞で年齢が離れたよく知らない男と結婚して浮気と暴力に苦しんだ。

子供が死んだことを責められたが、彼女は耐えてしまった。残った子供も連れて行かれたのは、当時の時代背景的には仕方のないことではあるが。

 

「負けてよかった。一回全部投げて、ほしいものを取りに行けばよかった」

 

その後も美しさを武器に多くの男に寄りかかり、多くの止まり木を作った。

しかし、彼女が欲しかったのは、立派な止まり木ではなく、細く貧しくとも枯れそうでもよいので、木に巣を作る事だった。

 

彼女はその場その場で、しっかり負けない選択肢を選んでいたが、それがゆえに大きく勝てなかった。それだけだ。

 

 

「うふふ、ありがとう……そうね、普通の幸せを得るには普通で良かったのよね、きっと」

 

「でも、マタハリより、マタ・ハリのほうがずっと綺麗で、俺は好きだ」

 

シェヘラザードとマタ・ハリの二人は、シンドバッドと既にそれなりに長い時を過ごしている。物事というものをそもそも知らなすぎるこの青年に、多くのことを教えて、ある種育ててきたとも言える。

女性への態度や接し方は、かなり二人の希望通りに導いてきた所は多々ある。それでもこの手のものは元来の気質による所は大きいのも事実。

 

つまり、マタ・ハリは優しく甘やかすことを中心に接してきた結果、普段は紳士的に優しく接してくるのに、サラリと言動の端々で口説いて来る上に、機会があれば獣のように求めてくる一途な男性になってしまった。

 

「あぁ、マスターだめよ。ここはお部屋じゃないわ。昨日と違って、ずいぶん荒々しいのね。でも、その通りなのかもね」

 

マタ・ハリは自分の腰に回った腕が抱き寄せるのではなく、持ち上げようと力の入れ方を変えたのを覚えてから、マスターの唇に指を当てておあずけをする。

シンドバッドは大人しく、そのおあずけをきく。ダメと言われたら我慢するしかないのだ。

 

「ああ、マタ・ハリは綺麗だ。俺のところにいる限りはずっと一緒にいて欲しい。戦いが終わって帰るまででいいんだ。いなくなるまで、いなくならないでくれ」

 

「ああ、もう。甘えん坊ね、マスター」

 

生来から出来ていたが、サーヴァントの身になってより軽やかに、それでいて確かに自身の重さを意識させるように、彼女はシンドバッドの膝の上に腰を乗せる。そしてしなだれかかると、耳元に小さく囁いた。

 

「マスター、部屋まで運んで頂戴。脚が痺れて動けなくなったの」

 

「わかった」

 

サーヴァントという不思議な生き物でも、脚はしびれるのか、シンドバッドはまた一つ賢くなり、彼女を横抱きで持ち上げ、部屋を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本日のまとめ

カーミラがエリザベートの皮をかぶり、カーミラとエリザベートで手を組み、エリザベートの力を持って、カーミラの姿でミストレス・Cの名前で現れた。
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