[WR]FGORTA YAMA育ちレギュ [66日22時間15分32秒]   作:HIGU.V

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シェイクスピアの作品引用は諦めました(ゲッソリ)
そのせいで予定より短くなってしまいました。

A Midsummer Night's Dream 位しか原語ではまともに読んでないです……
翻訳版もヴェニスの商人位しか読んでないのです……

読んだ理由? 学校で読まされただけです。他意はありません。
これだけははっきり真実を伝えたかった。


裏:積み重ねに関して

「以上が、マスターの今までの冒険となります……あの、今宵は此処まででよろしいでしょうか?」

 

特異点の中の、セーフハウス。そこの一室で何故か今までの冒険のあらましを話すことになったシェヘラザード。それは彼のマスターが、何故か作家陣に妙なインスピレーションを与えられたからである。

 

彼女自身が語ってもいない話も、語ってしまえば宝具にすることができるように、作家のサーヴァントは、作品という自身の制作物として扱うことで、他のものを宝具にする事ができるのだ。

この辺りは、正直何故そんなことができるのかと考えるだけ不毛なのであろう。

 

既に夜半を回っており、自然と此方の手狭な書斎は、シンドバッドのサーヴァントと作家勢で占領して、生活空間の方を、ジキル氏とモードレッドに立香のサーヴァント達がと棲み分けが出来ていた。

 

既に先程まで、時々その時作者はどう思ったの感覚で、質問をされていたシンドバッドは眠りについている。特異点の中では、彼はしっかりと任務に忠実だ。質問に答える時以外はトレーニングをしていたし、今も部屋の隅で丸くなって寝ている。ミストレス・Cの犬2匹と一緒に寝る姿は、まるで野生動物のようだが、その犬達にのしかかられて、少しばかり息苦しそうだ。

 

睡眠は娯楽であるサーヴァントにとっては必ずしも必要なものではない。マタ・ハリも椅子に腰掛けて何やら本を読んでいるし、ミストレス・Cに至っては、何かの地図に赤いインクで経路を書き込んでいる。ある種仕事をしているのは自分だけだった。

 

「ええ、吾輩は結局2回聞く事になりましたので、今日は完璧ですな」

 

「俺も一先ずは問題ない」

 

その言いぐさでは、また必要になるようだが、別に話がつまらなくても、疲れても死ぬわけではないので、彼女はそこまで大きなストレスを感じていなかった。そもそも生前から一晩程度ならば、行為の後に、死のプレッシャーに苛まれながら寝ずに語り聞かせることができるのだ。

彼女にとっては、腰掛ける椅子が硬い事くらいしか、マイナス要因がないこの状況ならば問題はない。

 

「そうですか。それでは私も休ませていただこうかと」

 

「まぁまて。世界有数の語り手がシンドバッドの冒険を語ったんだ、物書きの端くれとして対価を払わないのは道理が通らない」

 

「対価は、既にマスターの礼装の宝具化という形で頂戴しております」

 

「いえいえ、それは吾輩がやりたいと言い出したこと。むしろお付き合いを頂いている所に、資料としてとんでもないものも出された。作品を返すだけで済ますのは、筋が通りませんな」

 

 

正直、この二人の男性の異様なテンションの高さと、ものを書くのが好きなのか嫌いなのかわからないような姿勢は、苦手なのである。だが、無碍に出来ないので、先を促す。

翌朝、マタ・ハリに相談した所『貴方も似たようなものでしょ?』 と返されて凹むのは別の話。彼女だって、語る際に恐怖を覚えたというのに、新しい話を意欲的に仕入れ続けているのだから。

 

 

「それで、何を下さるのですか? }

 

「そうだな、アイツの持っている礼装だが、全ての由来はわかっているか?」

 

「はい、ワイバーンとファヴニールの鱗の肌着と、ローマ兵の武装で鋳造したすね当て、牛皮と海の神の加護がある布で作った手袋ですね」

 

「そうだ……どうやら、お前は、というよりサーヴァントの方は大凡察しているようだな。だが、あえて断言してやろう」

 

アンデルセンは、話を始めた途端、本を閉じて此方を見るマタ・ハリと、カードをいじりながら此方を見ているミストレス・Cを見て、口にしてないだけで、わかっていることを確認する。

 

 

「問題なのは、肌着でもすね当てでもない。双方ともそれなりの逸話がついている以上、このまま書いてやればそれなりになるであろう。だが、グローブ。これだけはものの種類が違う、なにせこの布は海の神ではない、航海の神の物なのだからな」

 

その言葉に、3人共「ああ、やはりか」という顔で肩を落とす。ミストレス・Cは手首を返してカードを投げるとアンデルセンの足元に刺さる。彼は一瞥だけして拾うことをしなかった。

 

「なんなら、牛皮の方もそうなのだろうよ」

 

「ちょっと! 予告状を投げたのよ!? 拾いなさいよ!?」

 

「うるさいぞ、竜の娘。処女じゃなくなって粋がっているのか? 生憎俺は盗まれて困るようなものはないから、予告状など出しても無駄だ」

 

その言葉に、一瞬顔を赤くするものの、直ぐに座り直して髪を耳にかけるようにかきあげて冷静さを取り戻すミストレス・C。その姿に、少しだけアンデルセンの目が開くものの、その間にシェヘラザードが一番近かったので、予告状を拾って読み上げていた。

 

「取り上げるべきなのかしら? だそうです」

 

「いや、それは止めたほうが良いであろう。あの男は今まで奪い続けてきた男だ。何かを奪われてしまえば、それに変な影響を受けるだろうよ。まぁ礼として差し出せるのはその助言くらいだ」

 

「現状維持ってことじゃないの」

 

マタ・ハリからすれば、何も変わっていないではないか。と呆れを覚えるのは当然だった。

 

「いや、無理矢理にでも止めるべきではないということがわかったのならば、それでよいであろう」

 

「確かに……あのような手に入れ方をしたのならば、きっとそうなのでしょう」

 

「それに俺が書くのは、奴の物語だ。今までの生き様と、これからの生き様を描けるようなもので。それぞれの礼装には変に価値を与えたりしない。銘を刻まなかった製作者の意図にあえて乗っかってやろう」

 

 

勝手に盛り上がって、勝手に話を収めた。まさに語るだけ語ったアンデルセンだったが、もとよりシェヘラザードは何かが欲しいわけでもなかったので、そのまま引き下がった。今はやるべきことに早く着手するべきなのだ。

 

 

「それでは吾輩からは、ふむ。何もありませんな。ですがそうですな。貴方の語りは私達ではなく、彼のために語っているのでしょうな。なにせ浮かんでくる情景がどうにも彼の表情などが妙に多かったわけですからな」

 

 

語り自体の感想をさっくりと告げたシェイクスピアは、そのまま執筆に戻ってしまう。それに不満があるわけではなかったが、図星を指されたかのような不快感があったのは事実だ。だが、蒸し返すことなく、小さくため息を吐いて火急の仕事に戻る。

 

 

「マスター、そのままでは寝苦しいでしょう、どうぞお使い下さい」

 

「ん……きゃす……ありが……と」

 

それは寝ているマスターの顔のそばで横座ると、軽く揺り動かし、耳元でそう囁いて。自らの膝の上に彼の頭を導くこと。少しだけまどろむように呟いた彼の上から、一言つぶやき小人で犬をどけると。ゆっくりと頭をなでる。

 

「お休みなさい、どうか良い夢を」

 

 

 

 

「あれで、マスターを目的のために利用していた悪女をやるつもりだったのよ? 笑っちゃうわよね」

 

「そうよね! というかスピエルドルフじゃなくて、私が布団に成ればよかったわ!」

 

「新人さん、これはね、順番なの。明日は私よ?」

 

 

その様子を見ていた二人は思わずそう言わずにいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァ! 」

 

巣穴から無数に湧き出てくる虫の様に、狭い通路の四方八方より押し寄せるホムンクルスの群れ。その頭をシンドバッドはこともなげに一撃で粉砕する。

 

敵の首魁の一人、Pことパラケルスス。その本拠地にて彼らは戦っていた。パラケルスス本人には、立香のサーヴァントとモードレッドが敵を守る敵と共に相手取っており、シンドバッドはそんな彼らが十全に戦えるように背中を任されている形だ。

 

無造作に叩きつけられる人の成損ないのようなずんぐりとした丸いボディの腕をシンドバッドは、もはや避けることもせずに、下から脚で蹴り上げて、外側に弾き出しつつ頭部を肩を巻き込む様に蹴り飛ばす。

ブチリと肉が弾け飛ぶ音とともに、ホムンクルスの頭部と腕部が弾け飛び、機能を停止した。既に新手に背後を取られているが、彼は動きが見えているかのように蹴り上げた足をそのまま振り抜くと身体を後ろに垂れ込む。

 

そして、素早く軸足に体重をかけて踏み込むと身体が宙に浮いていく。地面に無防備に倒れ込むような形になるが、攻撃を飛び越えるように躱すことが出来た。軽やかに地面に衝撃を殺しながら肘で着地すると。そのままそれを起点に周囲に足払いを欠ける。

2体ほどバランスを崩した敵に向かい、直様二頭の犬が獲物へと食らいつくように襲いかかる。それを確認したのち、素早く背後の様子を見ると、ジンが吹く炎の後ろで、妖艶に舞続けるマタ・ハリと、涼しげに語っているシェヘラザードが見える。

 

「まだまだいくぜぇ!」

 

余裕があることを確認して、目の前の一回り大きなホムンクルスに飛びかかる、自身よりも二回りは巨躯な重量を乗せた打ち下ろしに対して、彼は馬鹿らしく真っ向から打ち合うように、拳を合わせる軌道で迎撃する。

しかし攻撃が当たるよりも前に、その赤い目に向けて銃弾が打ち込まれる。ミストレスの支援だ。シンドバッドは膝をさらに落とすことで、豪腕が振り下ろされる攻撃の下に潜り込むように飛び込んで、狙いがそれて空振らせた拳に合わせるように、落ちてきた顔へと突き刺すように拳を叩き込んだ。

 

水風船が割れるように頭部が吹っ飛んだホムンクルスは、断末魔を上げる間もなく絶命し、膝をついた。

 

「どんどんかかって来やがれ!」

 

此方が4人であり、半数が最低限の自衛ができる程度の戦闘能力しか持たない。それでいて敵方は30はくだらない数湧いてきている。

だが、既にシンドバッドはサーヴァントの支援を受ける必要を感じなかった。もちろん今のミストレスのような形はありがたいが、シェヘラザードやマタ・ハリによって弱らせなくとも、十分以上に戦えている。

 

彼は握りしめた自分の拳を強く意識する。この手を包む服は、肌に張り付く冷たい服は、硬いのに軽い靴は、自分を強くしてくれている。でもそれ以上に戦いそのものへの慣れが出来てきた。

 

こと人型の敵に関しては、20年近く命のやり取りを頻繁にしてきた。それが、この旅が始まり、様々な形の敵や、非常に強い人型のサーヴァントとの戦闘経験を得て、そして何より正しい身体の動かし方や技を見ることが出来た。

 

それらが重なり合い、膨大な戦闘経験によって培った戦闘法が、武術としての形をより作っていき、今実っていった。

只々集めていった高く積み上げていた塔を、この人理修復という旅路の中で、多くの敵と同時に叩く技、強敵からの攻撃を耐える技と、より先鋭化していき、ついに形が整っていったのだ。

 

今の彼は、考えるよりも先に体が動いて、するべき動作を想像できる。そしてそのとおりに体が動く。何よりもそれを抵抗なく彼は受け入れて動けているので、まるで以前とは別人のように、鋭く有効的な無駄の少ない動きができているのだ。

 

威力そのものは足りないであろう。だが攻撃力そのものは別段いらないのだ。仲間が、誰かがフォローしてくれるのだから、庇い合い、助け合ってそうできる状況を作る。そうすれば良いことを、彼は学習したのだから。

きっと今ならば、フランスで稽古をつけてくれたゲオルギウス相手でも、勝てなくとも負けることなく体力の限り戦えるであろう。

 

背後でマシュの守りと、それにぶつかる光がせめぎ合う波動を感じて、自分の体の形の影が足元に伸びていく。

後ろを振り向く必要もない。マシュとリツカなら耐えきってくれるだろうから、そしたら直ぐにナポレオンがドカンとうって、モードレッド卿とえっちゃんがズバッと切ればこっちの勝ちだ。

 

戦っている敵に、この逆光に怯む様子がないのが残念だが、彼は足を軽く踏み鳴らしてから、深く踏み込み、風のような速度で残党の処理に移るのであった。

 

 

 

 

 

 

 




どうでもいいけど、戦闘の時のシンドバッドの声帯は勝手にイアソンの物になる。
アラサーの男性の必修科目の影響ですね。
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