[WR]FGORTA YAMA育ちレギュ [66日22時間15分32秒]   作:HIGU.V

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裏:作戦と教育について

第5特異点の観測自体は、意識不明のマスターが居る中も続けられていた。ロンドンに続き、比較的近代であり、観測も安定していたために、彼らが戻り次第すぐにでも探索に取り掛かれる状況ではあった。

 

しかしながら先のロンドンでは、毒性の空気の中に雑に無防備にマスターを放り出すということをしてしまった為に、より正確な測定をできるように彼らは全力で取り組んでいた。

 

そんな空気に押され当然のように、マスターである立香も準備に勤しんでいた。

 

「はい、そうです。姿勢はそのまま、力を抜いて下さい」

 

「う、うん、わかった」

 

具体的には乗馬である。シミュレーターで作った荒野において、立香は召喚したばかりのサーヴァントであるアルトリア・ペンドラゴンオルタ(ランサー)と共に、彼女の愛馬ラムレイに乗る練習をしていた。

 

すこしばかり恥じらいながら、それでも前にまたがるアルトリアの腰に腕を回しながら、立香は揺れる馬上の人となっているのだ。

 

なにせ、次の特異点はなんとアメリカ大陸そのものである。これは今まで旅してきたフランス、西ヨーロッパとは比較にならないほどの広さだ。場合によっては移動が間に合わなくて、苦しい状況になるということも想定しなければならない。

 

そういった意味で、このタイミングでのアルトリアの加入は非常によい追い風だった。

 

立香は一般的な現代日本人の少年であり、乗馬経験は殆どない。いつか行った牧場体験で1度だけ乗ったのが、馬だったかポニーだったかロバだったか覚えていない位だ。

 

「バランスのとり方は良いですね、何かご経験が?」

 

「えっと、先輩のバイクの後ろに乗ったことはあるくらい」

 

それでも、彼は彼なりにしっかりとした体幹をもっており、多少の訓練をすれば超長距離の移動ではなく、隣の町までの移動くらいならば、馬上でも問題ないであろうという程だ。

 

最初はハラハラと不安げに視ていたマシュも、いまではその視線に込める熱を変えている。今まで急を要する移動は彼女が立香を抱えて走っていたので、そのお役目も基本的には御免になるということであるのが、彼女は少しだけ寂しかったのかも知れない。

 

 

「うん、ありがとう。アルトリア」

 

「いえ、サーヴァントとしてマスターの障害を排する為に全力を尽くす次第ですので」

 

「それでも、お礼は言わないとね、言える時にお礼を伝えないと」

 

立香は、少しばかり此処数日経験した出来事を思い出しながらそう漏らすのであった。

 

「……マスター。私にこのような贖罪の場を与えて下さったことに感謝しております」

 

「ロンドンで頼まれたからね、来てほしいなって思った」

 

立香はアーサー王という存在の強力さを知っている。しかしロンドンでの経験で自分には移動ができるライダーがいればより早く移動できるのじゃないかと思った。

 

そして、あのロンドンで出会ったこのアルトリアと、彼女が消滅前に少しだけ話して、消えゆく鎧の破片を託されて彼女と縁を結んだのだ。願わくば呼んで欲しいと。それだけが交えた会話だが、約束は此処に果たされた。

 

そう、藤丸立香は縁に恵まれているのだから。彼が思っている以上に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、リツカ訓練お疲れ」

 

「シンドバッド、ありがとう」

 

訓練を終えて夕食を取りに来た立香はシンドバッドから水を受け取った。マシュや他のサーヴァント達は連携の話があるということでまだ残っている。本当は立香も残るつもりだったのだが、体を動かしていたために、空腹と休息が必要と判断されたために、一人で先に食事を取りに来ているのだ。

 

「って、あれ? それって果物の缶詰じゃない?」

 

「ああ、食えるようになった」

 

「へー……長い旅だったんだって?」

 

立香は目ざとくシンドバッドの食べていた物が、今までの肉系の何かではないことに気が付き尋ねると、少しばかり逡巡が伺えるがはっきりとした答えが帰ってきた。

 

「ああ。ベトナムって所から、インドって所まで。西遊記っていう話を再現した旅だって」

 

「えぇ……なにそれ、俺とぜんぜん違う感じでヤバイね」

 

立香とて流石に読んだことは絵本程度でしか無いものの、西遊記の話は知ってる。その旅を再現ということは、かなりの時間の旅であったのであろう。

 

立香は自分の、あまり口にするべきではない気もするが、さわり程度に経験したことを離す。1週間の戦いの話を。

 

「そっか、リツカも大変だったんだな」

 

「そうでもないさ、俺は色んな人に支えられてないと歩けないことを改めて知っただけだよ」

 

立香はなんとなしに、シンドバッドの方を改めて見る。彼は食事を既に終えているがリツカの話に付き合っている。サーヴァント達が近くにいない食事の場合、彼は直ぐにサーヴァントの元へと行ってしまうのだが。やはり相手にも心境の変化があった様子だなと彼は改めて結論づける。

 

「リツカ、俺は皆のために頑張る。俺は……たくさんの人を食い物にして生きてきたから。でも罪滅ぼしとか、そういうのじゃない。皆のために戦いたいから、戦う」

 

「シンドバッド?」

 

「うん、言いたかっただけだから」

 

そう言うとやはり彼は立ち去ってしまう、どうやら今の言葉を言いたいがために残っていたようだ。少しばかり釈然としない思いを覚えたものの、立香は仲間が何か成長した、それが嬉しかったので良しとするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特異点に到着して直ぐに現地の武力衝突に介入したカルデア一行。戦いは収束し、匂いのひどい戦場跡から少しばかり離れた所で、今後の方針を決めるための話し合いをしていた。

この特異点の状況は非常にシンプルであったが、別の意味で非常に複雑な状況にあった故に。

 

「────っていうのが、私が聞き出した情報よ。軍人さん相手は話して大丈夫な話を聞き出すのは簡単だし、信憑性はそれなりにはあるはずよ」

 

戦闘中に感じた手応えと、何よりも戦闘の後にマタ・ハリが聞き出してきた話を判断すると、この特異点は2つの勢力に分かれて争っている様子だ。

 

1つはケルトを名乗る軍勢。雑兵はそうでもないが、サーヴァントと名乗る恐ろしく強い指揮官には手も足も出ないので、戦線はジリジリ後退していると。

もう一方の軍勢、アメリカ軍という現地勢力を母体とする組織の指揮官が言っていた。

 

「整理すると、ケルトが侵略者で聖杯を持ってる可能性が高い……ってところかな?」

 

「はい、マスター。私もそうなると思います」

 

こういった話し合いの場で、まとめ役かつ主導するのはやはり立香である。戦力を多く抱えるマスターという意味でも、社交性という意味でも彼が適任であった。

 

「メートル、それならこの後はアメリカ軍に協力するのか?」

 

「そうするのが良いと思う。現地のサーヴァントが協力してくれてるのかもしれないし」

 

立香の内心というよりも判断は既に大まかに固まっていた。今回はきっとアメリカ軍に協力して、ケルト軍を倒すという形なのだろうと、少しばかり頭痛を覚えながらそう感じていた。

 

「リツカ、本当にアメリカ軍って味方なのか? あの油臭いやつ、ロンドンで戦ったやつだぞ。それにシェヘラザードが言ってた、まだアメリカって国は小さい時期だって。でもあいつら凄いしっかり戦ってたぞ。それって何時もロマンの言ってる歪みってやつじゃないのか?」

 

此処で意外な意見をシンドバッドは主張してくる。今までこういった場では、「おう」と「わかった」と「なにすればいい?」くらいしか言ってこなかった彼の意見である。

しかし、それは考えて然るべきであった。

 

「オケアノス、あの海では聖杯を持っている勢力と、倒すべき勢力は異なってました。無尽蔵のケルト兵は聖杯による可能性が高いですが……」

 

「真の敵は別にいる可能性か、そうだよね、あのロボットはこの時代どころか、今にもないもんね」

 

マシュのつぶやきに乗る形で、立香は状況を再認識する。いままでの特異点はまず味方と合流してという形だったので、どうしてもその方向で考えてしまったが、全てが敵の可能性もあるのだ。

 

「ですがマスター。少なくとも我々だけで双方の軍勢を破るのは難しいでしょう」

 

アルトリアは今回から参加したメンバーであるが、生前は王であったためにこういう場でもしっかりと助言をしてくれる様子で、共通認識を示した。

 

そう、戦力としては十分なカルデアだが、数を相手にする場合は、マスターの魔力量がそのまま上限となってしまう。最終的に息切れを起こしてしまうために避けるべきケースである。

サーヴァントは戦闘機であり、補給無しに獲得できる戦果は限られている以上、可能な限り重要な目標に向けるのが正しいのだ。

 

「話が通じそうな王は、その大統王のほうでしょう。ケルトの方はその……基本的に野蛮です」

 

シェヘラザードが独自過ぎる視点だが、それもまた計算に入れるべき所だ、聞いた話では全く、少なくとも先の戦場も確認できたことで。ケルトには一人も人間がいないのだ。それは明らかに異常が関連していることの証左である。自国民は街で正常に活動しているとしても、兵士全てをまかなえる状況にあるのは聖杯か何らかの正すべきからくりがある。

翻ってアメリカはもう視てすぐに分かる、星条旗カラーのロボットと歩兵の混成部隊。明らかにおかしいが、現地で生活しているであろう価値観の人間が指揮をとっており、人間の匂いがするのだ、率いている大統王という頭の悪いフレーズが引っかかるものの、人間が統治している可能性が高い。

 

「今後戦うには情報以外にも、味方の軍が要るとおもいますよ」

 

「ローマみたいな感じになるかなぁ」

 

段々と話が進んでいく中、ロマニより観測結果をまとめた情報が伝えられる。それはケルト軍の侵攻が進んでいくほど、この特異点が人類史より剥離が進んでいくことだ。

 

「ケルトは敵なんだね、でも俺達で戦ってもキリがない」

 

立香は、判断を下すべき情報は集まったと感じた。

するべきことは情報と戦力の確保だ。そして恐ろしいことにこの場所は北アメリカ大陸の中部。先程の兵士は大西洋沿いから逃げてきたという。この特異点のスケールは本当に大きいのだ。

 

「リツカ、俺とミストレス・C達で、大統王に会ってくる」

 

「シンドバッド?」

 

シンドバッドが出した結論は、リツカの脳内の片隅にはあったものだ。

 

「俺達じゃ、この数の敵を全部倒すのは無理だ、俺達を狙いに来るならなんとかなるかもだが、数が多すぎるとできない。サーヴァントが来たら難しい。でもここを放っておけないんだろ?」

 

最適解ではある。最善な方法ではない。だが、400マイル位南に大統王の本拠地があるという言葉は2つの意味を表している。

 

1つは、立香がラムレイに乗って移動するのは不可能ではないが、厳しいということだ。2日程かかる距離だ。

 

そしてもう1つは、この広いアメリカ大陸スケールだと、首都の首の皮一枚まで戦線が押されてしまっているということだ。

 

それはつまり、戦線の維持は立香の強力な面子が、情報を探るのは足の早いシンドバッドがやるべきことであると意味している。

 

「そうだね、シンドバッド頼む」

 

なにより情報収集に優れたサーヴァントが2名もいる。適役と言わざるを得ない。だが、ローマとは違う程のスケールだ。情報を探るだけでローマの移動距離の1/3以上かかるのは厳しいと言わざるを得ない。

あの、立香でも知ってるし、憧れたこともあるスポーツカーは魔力で強化すればものすごい速度を出せるとのことだし、この形が最適だ。

 

『観測の方は任せてくれ、本当は戦力の完全な分割は悪手だけど、アメリカではそうも言ってられない、やっぱり事前の想定通り、完全に別行動になりそうだ』

 

ロマニも許可を出した以上、立香はせめて次に会う時は皆で笑って会えればと思った。

それが叶わない事など知る由もなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

情報収集という大事な任務を任されたシンドバッドは、全く心配しないで、人生はじめての快適なドライブという物を楽しんでいた。

ロンドンでも乗った車というこの乗り物は、霧の街を移動するだけのよくわからないものであったが、このアメリカではまるで違った。どこまでも真っ直ぐ伸びる人が進んだ形跡のある街道を、青い青い空を眺め自然に酔いしれながら風を感じるのだ。

 

それは、旅というものに楽しみを見出したばかりの彼の感性を大きく刺激した。非常に性能の良い車といえど、この時代のアメリカ大陸の西半分は開拓はほとんど進んでいない。当然悪路を行くために震動は激しいのだが、彼はそんな事が気にならないほどに楽しんでいた。

 

「どうかしら、マスター。ドライブというのも悪くないでしょう? 本当は摩天楼の夜景に映える車だけど、まぁ草原を走るのもいいわね」

 

「うん! 楽しいし気持ちいいな。ミストレス・Cが隣にいるから余計に楽しい!」

 

「ええ!! そうよね! マスターはわたしと一緒に居ると、嬉しいのよね」

 

彼のサーヴァントにして、運転手のミストレス・Cもごきげんであった。なにせこれは自分にしか出来ないこと。自分を必要としてくれる上に、このドライブデートができるのは自分だけ。

それを全力で楽しんでくれているのだ、彼女としてはようやっと春がきたような感覚だ。

 

気分を良くした彼女は、右手を少し滑らすかのように、彼の太ももに伸ばすと何故か掌ではなく、指先に柔らかい感触が突如現れる。

 

「きゃぁーこれすごい揺れて怖いわー」

 

「死んでしまいますー」

 

なんと、霊体化して、車体の後ろあたりに座っていたであろう二人が、いつの間にかシンドバッドの両太ももの上に横座りで腰掛けて、肩にしなだれかかっているのである。

 

「うん、二人共。揺れるなら捕まってくれ」

 

「はぁーい!」

 

「ありがとうございます」

 

シンドバッドは優しくそう言うと、二人の腰に手を回して、姿勢を安定させるように抱き寄せる。大柄な彼だからこそできることであった。既にミストレス・Cからはマタ・ハリの髪で彼の顔すら見えない。

 

「ちょ、ちょっと! あなた達サーヴァントでしょ!?」

 

「旅程の1/3が過ぎましたので……」

 

「調子に乗って飛ばしすぎたのね」

 

「ドライブデート中くらい我慢しなさい!!」

 

なにやら言い争いが始まったのをシンドバッドはにこやかに笑いながら見つめている。

ふと空を見つめる彼は、思いついたことを口にする。

 

「やっぱり、みんなと一緒が一番楽しい」

 

その言葉で、3人は少しだけ顔を見合わせると言い争うのをやめて、二人は彼の胸板を撫でる作業に、一人は運転に戻るのであった。

 

 

 

 

「……いや! なんでよ! 不公平よ! 」

 

だが、やはり納得行かないのか、怒りが再燃したミストレス・Cに向けてシンドバッドは姿勢を起こして顔を覗き込みながら誘う。

 

「ねぇ、今夜星をみながら草原を走りたい、二人で。だめか?」

 

「し、仕方ないわね。魔力を消費しないように休んでなさい!」

 

一瞬で機嫌が良くなったミストレス・Cを満足気に見ながら、シンドバッドは頷いて背もたれに体を預けるのであった。

 

 

 

 

「どんどん、質が悪くなってるわ、きっとあの女のせいよね」

 

「ええ、きっとそうです。私達は悪くないはずです」

 

 

いいえ、違います。あなた達の教育の賜であり、お師匠様は関係ないです。






乗馬もスポーツカーも乗ったこと無いから適当に書いてます。
違和感あったら言って下さい。
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