[WR]FGORTA YAMA育ちレギュ [66日22時間15分32秒]   作:HIGU.V

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いつになくダイジェスト風


裏:見るべきものに関して

「ラーマ様」

 

それは、シンドバッドには理解ができない光景であった。

 

道中いくつもの敵を倒し、そしてこの離れ小島のようなところまできて、ワイバーンと門番を倒して、ようやっとたどり着いた目的地。

 

なんでも怪我をしているラーマと同じサーヴァントで、その結婚相手がいるとのことだ。

 

インド神話という、すごい強いやつらがたくさん出てくる話の登場人物であり、だからきっと強いので助けに行こうという位だった。

しかしシンドバッドは、本人から心臓の殆どをつぶされて弱っている中、ラーマがいかにシータという女性を大切にしているかを語り聞かせられていた。

正直色々よくわかっていなかったが。

 

うんうんとうなづく程度であったが、コサラの少年王の価値観はシンドバッドには遠すぎたものの、好きな人のために頑張ってるということはよくわかったし、ラーマとしても、生まれはともかく、戦士足ろうとするその姿勢に多少は気を許していた。

まぁ、少なくとも奥さんを兄弟でシェアするよりは、3人の奥さんがいるほうが彼の価値観的には理解しやすかった。

 

だからこそ、このアルカトラズで、全ての障害を叩き潰した後、シンドバッドに担がれて、シータに会ったとききっと喜ぶであろうと、シンドバッドは単純に思っていたのに。

 

あまりにも運命は残酷であった。シータに近づくにつれて、ラーマの五感が喪失していく、音も聞こえず温度もわからない。そんな状態になってもなお、彼はシータを探して呼び続けていた。

 

シンドバッドは知る由もない、此処に来たのはラーマの呪いを解けるような、彼の生前を知る英雄の力を借りるためであったこと、離別の呪いの効果は絶対的であることも。

 

シンドバッドが見たシータという少女は、ラーマと似たような衣装の服に身を包んだ、マシュよりも幼く見える女の子であった。

しかしこちらと目が合った、というよりも肩に乗っかっているラーマの顔を見た瞬間から、印象は様変わりした。

 

そう、語彙力に乏しい彼ですら、花が咲いたように、そう表現したくなる程に表情に色がついた。奇跡を祝うかのように、彼女は顔色を変えて駆け寄ってきたのだ。

 

シンドバッドは、直ぐにラーマを下ろして壁に寄りかからせるが、ラーマは自分の状況にも、何よりも目の前の探す人に気づいた様子もなく、シータを呼び続ける。

 

手を握り、胸に体を預けても、愛おし気に彼の頬を両の手で押さえても、シータの愛にラーマは気づくことはないのだ。

 

「ずっと、お慕い申しております。今までもこれからも」

 

「シータ!! どこだ! 僕は、君が! 君さえいてくれればよかったんだ!!」

 

 

シータは、サーヴァントとしてここに呼ばれた、ラーマの霊基に乗っかる形でだ。

だから状況はよくわかっている。どちらかしか存在できないということも含めて。

 

呪いの方もラーマの姿を生前をよく知る人物と、強い治癒があれば治るであろうと、そういう初見であったが、シータにはわかってしまう。

既にラーマはほとんど死んでいるのだ。それ程の呪詛と技を受けたのだ、そもそも凡百どころか1流のサーヴァントでさえ即死である致命傷を受け、辞世の句程度ではなく、数日生き延びていることが異常なのだ。

 

ラーマ様はこのまま自分が遠ざかったら、きっと死んでしまわれる。そういう確信が彼女にはあった。

 

「皆様、ラーマ様をここまでお連れ頂き誠にありがとうございます。私はラーマ様とお話は出来ませんが、お姿をみて、こうして確かめられた。それがとても幸せです」

 

そしてそれだけ言うと、意を決したように、ラーマの唇に、己の唇を当てる。彼女の体は、サーヴァントが消えるかのように光の粒子になっていき、それがラーマの体を包み込んで、最後はまるで何もそこにはなかったかのように消えてしまった。

 

その光景を前に誰も口を開かなかった。

 

しかし、ラーマのまぶたがゆっくりと開き、そして目に焦点が戻る。彼は静かに立ち上がる。

 

「……なぁ、大丈夫か」

 

シンドバッドは、先程までの死んでいるようなラーマと受ける雰囲気の差に驚きながらも、何とかそう尋ねる。

 

「ああ、そうだな。僕は……いや、私は、いいや違うか。余は大丈夫だ」

 

ラーマは本当にわずかばかり感じられた唇のぬくもりと、彼の頬に垂れた涙を感じ入るかのように再び目ををつぶると、すぐさま王と戦士の顔へと戻る。

 

結局のところ、今回もまたシータとは会えなかった。だが、シータは己に会えたようだ。

それだけあれば、コサラの王は幾らでも戦える。シータがくれたこの十全な体をもって、この特異点の悪逆を打つ。

 

いつものことだ。

 

 

「行くぞ、シンドバッド。余は今完全に復活した。この身を使うとよい」

 

シンドバッドは、最後まで圧倒されていた。

 

それは単純にラーマの力強い在り方にではない。

 

彼の情緒では、シータとラーマ。永遠の求め合い続け、それでいて永遠に手にすることが出来ない。しかして一切の陰りも弱りも見せず、無限に輝きつづけるその愛の形は、全く理解できるものではなかったのだから。

 

 

それは、彼のサーヴァントにも聞くことはできないような。そんなものであり、聞いたとしても言葉を濁してしまう、人としての愛の在り方だった。

 

愛は盲目、目を曇らせてしまえば周囲は見えない。しかし、曇った目で相手を見ることができなくなる。

それでも双方に愛があるのなれば、それは何事からも勝てない愛であったのであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

油断がなかったと言えば、なかったが、しかし慢心が皆無だったと言えば、嘘になる。

 

リツカは、その光景を前に一瞬だけ動きを止めてしまっていた。

 

「呵々、取った!」

 

アメリカに来てから2度目の敵サーヴァントとの闘い。こちらには味方の中で戦闘をするサーヴァントが数多くそろっているのに加えて、ジェロニモ、ロビン、ネロとこの特異点で出会ったメンバーもいる。

対して相手の数はわずか2名。2VS7の戦力比でこちらには、彼自身という指揮官がいる。自身の周囲には守るようにマシュといつでも支援ができるようにナポレオンが控えている。

故にフィンマックールがアルトリアとネロにロビン。ディルムッドがえっちゃんとジェロニモで戦っている形だった。

 

戦況は派手さはないこそ、こちらが堅実に有利に進んでおり、ディルムッドの槍の呪いなど、いくつか気を付けるべき要因はあるが、それも軽傷程度であれば、ナイチンゲールによる治療ができる。

 

だからこそ見逃してしまった。確かに一切の油断はなかったが、楽観はあったのだ、どうにかなるであろうと。

既にこちらの威力偵察は済ませている敵が、それよりも増強された此方に多少の手勢だけで飛び込んできた理由を。彼は深くまで読み切らなかったのである。

 

決壊は一瞬だった。戦闘は佳境に入り、フィンへととどめを刺すべく、ロビンとネロが切り結びにかかった。アルトリアも襲い掛かろうとした刹那、彼女はその直感に従って、チャージを即座に辞めて、ラムレイをその場にひきとどめた。それは英断であったが、伝達は間に合うことがなかった。

しかして、その感じたことを周囲へと共有する前にロビンとネロの体が近寄った瞬間、二人の胸から、長い槍が突如として生えたのだ。

寸分狂いなく霊核を貫いている一突き。それでもネロは勢いを殺さずフィンを打ち取って見せた。

 

「ロビン!」

 

ジェロニモは、共に戦ってきたロビンの無残な散り様に一瞬だけ意識を向けてしまう。

元より兵士ではなく戦士として育てられた身の上、だまし討ちを受けた仲間の復讐で立ち上がった男だ。わずかばかりでも気を取られてしまうのは、彼の生前の経験ゆえに仕方あるまい。

そしていつの間にか見えぬ影は彼の懐へと潜り込んでいたようで、先程と同様に核を、恐らく手刀で貫かれる。恐ろしすぎるほどの技の冴えだった。

えっちゃんはわずかに眉を動かすも、だからこそなるべく早い、安定化を。そのためにリスクを残せないと、バーサーカーらしからぬ冷静な判断で、ディルムッドの首を跳ねると、すぐ様、アルトリアの元へ飛び退く。

 

「全く見えませんでした。そちらは」

 

「ええ、私もです」

 

二人は背中を合わせて周囲を警戒する、姿は見えぬが、既に3体を殺めている敵だ。

どれほどの陰形であれ、本気で臨戦中のサーヴァント達が警戒したところを欺くのは困難である。

となればと、二人はそのまま警戒を緩めず、すぐさまマスターへと向かう。

 

立香も当然の如く、目の前で突如起こってしまったその信じられない光景を見ていた。傍らに控えるマシュと共に。

 

「マスター、敵です! 推定アサシン! ジャック・ザ・リッパーとは違って、本当に見えないタイプかと思われます!!」

 

「う、うん。そうだ、まずは敵の排除だ」

 

立香は自らと周囲を奮い立たせるかの様に大声を上げた、それはつまりこの場において、ほぼほぼ見ればわかるものであった、彼が本当に指揮官そして精神的支柱であることを示している。さらにマスターとも呼んでいる。

 

これで、現地人をマスターにしあって、本人は遥か後方にいるなどといったことをしていなければ。確実にこの場に立っている立香という存在が、ここにいる戦力のボトルネックであり生命線であることは明らかだ。

 

もちろん、正体不明の敵に味方がやられた直後だ、周囲を奮い立たせる方が、パニックになり逃げ出したり、縮こまるよりはずっと良いであろう。

 

「メートル!!」

 

立香はその声にとっさに、本当に無意識的に令呪を切った。誰に向かって放ったのか、何を願ったのかは大まかすぎるものであるが。

只々『頼む! 』と強い意識でナポレオンを見ながら念じたのは事実だ。

 

その結果ナポレオンは何かによって貫かれた左腕から胸にかけて強烈なダメージを受けたが、その場に相手を引きとどめていることに一瞬だが成功したのだ。

 

「マシュ!」

 

それは誰の言葉だったか、すぐさまナポレオンの方角へと向き直ったマシュは、背後にマスターをかばって盾を構える。

その瞬間ナポレオンの大砲から、強烈なエネルギーが照射され、辺りを包み込んだ。

 

 

これが事の顛末である。立香のある種初めての痛敗である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メートル気を落とすな、判断自体に間違いはなかった。敵のサーヴァントを見かけた以上、全力で挑むのは間違いないし、全く予見していなかった」

 

 

なんとか自陣に戻って、サーヴァントを治療できるナイチンゲールに親の仇を見るかのような目で視られながら治療を受けたナポレオンから、立香は静かに話を聞いていた。

 

 

「確認していた敵にそういう逸話を持ったサーヴァントがいない以上、最善を尽くしてた」

 

ナポレオンの言うことはある種の正解であり間違いでも会った。

 

これがサーヴァントを用いた超常の力のぶつかり合いである以上、どんな攻撃も可能性としてありえるのは事実だ。

しかし、一切感知できない暗殺や、この世界を次の瞬間に破壊できるような宝具を警戒してたら何も出来ない、ある程度は割り切って動くしか無い。

 

 

「そんな、はずはない、俺は見える目に頼って魔力でみんなを支えるしかできないのに、それもいまいちうまくできてなくて」

 

「いや、メートルは少なくとも戦いを始めたのはカルデアにきてから。訓練も受けていない新兵と同じだったのに、1年もしないでここまで来てる、それは十分誇るべきだ、月並みな言葉だがな」

 

「なぁに、1度や2度の失脚程度でへこたれる必要はない……それに俺がメートルの目をほめすぎたのもある、少しでも自信になればと思い称賛してたが。加えてこの特異点での不調に気づいて、そのままにしていたのも問題がある」

 

ナポレオンとしては、完全に友軍を失ったのは伏兵の存在に気づかないで誘引された指揮官の責任であり、この場合の指揮官は立香ではなく、ナポレオンであった。なにせ彼はマスターから任されていたのだから。

 

「取りこぼしたくないならこの先を考えるべきだ。やれることをやれ、やれる範囲のことをやれ、それだけだ」

 

成り上がり、追放され、そして舞い戻った。そんな輝かしいながらも、人間味あふれた波のある人生を送った彼だからの言葉。

 

「ああ、わかった。そうだよね、ナポレオンに教わって、軍団の動かし方とかを考えるだけ、無理があったんだ」

 

そう彼はあくまで人類最後のマスターの一人。兵を率いての戦いをするものではない。

ナポレオンが戦略レベルで動くのならば、リツカはその上の方針決定のレベルで動くべきというものだ。

 

 

ならば、これからも考えなければならない。なにせ、今までは図らずとも目的は同じだが、着地点は異なるアメリカ軍との共同戦線を一時的に張っていたが。

別段それを今日明日で解消するわけではない。しかし、アメリカ軍を抜きにして、敵の首級を取る戦力が揃いつつあったが、それも潰えたのだから。

 

だが、敵のサーヴァントは今戦った謎のアサシンと、1度だけ戦場で相対したクーフーリンのなれの果てのような姿のあの王と。メイヴという女王。

そして同様に遠くからこちらを見ていることを気が付いた、ナポレオン曰く、アルジュナと呼ばれていた、インドの授かりの英雄。

 

「ああ。まかせたぞ、メートル」

 

「うん大丈夫。だってサーヴァント相手に話して協力をもらうのが俺の役割だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

「とった!」

 

響いた声は幻聴だったか、本物だったか。

その致命の一撃確かにシンドバッドの胸を貫くものであった。

果たして本当に、不意の一撃をシンドバッドがよけられたのはあまりにも多くの幸運が重なっていたからである。

 

1つは敵の消耗が激しかったこと。敵は霊核にヒビが入るほどのダメージを受けており、まさに満身創痍。

しかして、その襲撃者は技量で戦うタイプであり、傷ついてなお一定以上の脅威度は持っている。それでもキレや技術が何段階か劣るのは事実であった。

 

2つは、護衛していたビリー・ザ・キッドの存在だ。

彼は車を降りたこの場所に嫌な予感を明確に感じており、ホルスターに手をかけたままでいた。彼の認識を技の発動を見てから引き上げる宝具に十分間に合うほどに。

 

最後は、襲われたその技への返し方を、シンドバッドはしっかりと教わっていたからである。

 

命を刈り取る槍を彼は耐えしのぎ、攻撃を叩き込んできた相手へと向き直る。

ロマニを通じて話は聞いていた、姿を見せないアサシンのような敵がいると。

だが、シンドバッドは知っていた、目の前にいるのは、決してそんなアサシンではない。

 

「沙悟浄……なんで、敵に」

 

「うむ? なにやら誤解があるようじゃが、改めて名乗ろう」

 

シンドバッドのその呟きに疑問符を浮かべつつも、その敵はバレてしまった以上意味はないと高らかに名乗り出る。

 

「儂の名前は李書文。ランサーとして現界しておる。別に魔術王の聖杯に請われたわけではないが、霞の中彷徨い、その果に殺しに正義を掲げない王の下でこの槍をふるっている」

 

それは、即ち敵だ。そうわかってもシンドバッドの脳は一瞬追いつかなかった。

 

「名も知らぬマスターよ、わが絶技の元に死ね」

 

李書文はそれだけ言うと、既に素人目にも見えるほど、ボロボロの体で拳を構える。

槍はすでに弾き飛ばされて使えるようなものではないが、それでも彼の徒手空拳はそれだけで十分に脅威だった。

 

「沙悟浄、俺だシンドバッドだ!」

 

「知らぬわ、くどい」

 

「そうか、覚えてないんだなあの旅の事は俺しか」

 

シンドバッドの言葉に取り付く島もなく、襲いかかる李書文。こちらにはラーマもビリーも彼自身のサーヴァントもいる。

こと数で言えばシンドバッドを入れて6人だ。

 

それならば、既に李書文にとってこの場は死地。1つでも多くの命を刈り取る為に、時間は惜しかった。

 

「っく!」

 

「ほう!? まさかお主もか」

 

李書文の冴え渡るその八極拳の絶技をシンドバッドは、教わった動き通りに返していく。理に基づいて放たれる拳故に、その理を知れば多少だが動きはわかる、勿論初撃だけだが。

 

力は条件が重なり、こちらと互角程、技はこちらが劣る。だが、総合戦力では此方が上。

 

なにせ、李書文は相対している男の背後で油断なく剣を構えているラーマと、銃を構えているビリーにも意識を残しているのだ。

 

シンドバッドは、すぐさま加勢に来ない仲間を少しだけありがたく思った。此処までに自分の武術は沙悟浄に習ったと言っていたからであろうか?

 

しかしそんな事はどうでも良かった。目の前の敵を止めるためにシンドバッドは駆けた。

 

自分よりも鋭い拳が本気で殺しに来る。だが、シンドバッドには李書文に勝っているものがあった。それは、命のやり取りの密度だ。シンドバッドは、人生の8割以上をいつ殺意が降り注ぐかわからない時を生きてきた。

 

年月や数では負けるであろう、だが、人生においての比重に関しては、勝っている。それは僅かな時間に全てを出し切ればという話だ。

 

だが彼はやってのけた。それは彼が強いと言うよりも、敵が弱っていた以外にないであろう。

 

決着は本当に一瞬だった。予め決めていたかのように、李書文の出した腕を、シンドバッドは下にはじいた。そして回してきた逆腕を上にはじく。

 

ああ、この技か。彼を彼たらしめる技。なんということだ。

 

そして、李書文の空いた懐に、人間ならばこうすれば緩んでしまうとシンドバッドが教わった部分に、強烈な肘鉄が入る。

 

「見事、やはり同門のものか。いや只の同流か、まぁどうでもよい」

 

負けたことを何も気にしていないように、李書文は身体が粒子になっていく中、笑いながらそう告げる。

 

あの優しく厳しく、何でも知っていた沙悟浄ではなく、武の道の邁進が全てであるその姿に、シンドバッドは、今更ながらに別人であることを強く認識できた。

 

「人類最後のマスターよ。星はお主でないものが集めるであろう。なれば、お主は技を磨け。あやつの言う通りな」

 

 

シンドバッドは只々、あの旅を思い出して、そして『敵』を屠った残心をそのままに消える金色の光を見つめるのであった。

 

 

 

 

たどり着いた、ワシントンDC。

ケルトを無限に量産する土地であり、聖杯によって異常強化された狂王クー・フーリンの本拠地である。

 

南からは停滞をさせるような軍勢で攻め、北には将と王を置いて攻め立てる。

単純なもののある程度は判断力がある敵の軍団は、明確に決戦をかけに来たアメリカ軍に関して、その数でもって対応をしていった。

 

その隙間をすり抜けるように、彼らは此処に居るのだ。

立香は、いまだに少し重いが、だいぶ落ち着いてきた体を引きずって、サ―ヴァントだけを連れて、敵の本拠地に来ている。

狙うは大将首ではなく、彼らの持つ聖杯である。

 

既に自分達は、アメリカ合衆国の為ではなく、人理修復のために戦うことを改めて決意していた。

 

「行こう、皆」

 

そして決戦が始まった。事前の打ち合わせ通り、アルジュナはカルナが封じる。メイヴは、えっちゃんとアルトリアで圧力をかけつつ、狂王はラーマを中心にビリーの援護で、そして退路の確保をシンドバッドとそのサーヴァントが、マシュはリツカの護衛であり、ナイチンゲールは突っ込みすぎないようにお願いして、基本は衛生兵である。

 

カルナとアルジュナが上空へと飛び去った後、打ち合わせ通り、シェヘラザードの宝具が周囲を包み王を殺す物語たちが襲い掛かる。

この場に残った敵は王であるが、聖杯で強化されているのか、これまでのように殺し切ることは出来ず、耐えきられた。しかし橋頭堡はできたとばかりに、攻撃は開始される。

 

 

敵戦力としては、とにかくクー・フーリンが圧倒的な膂力と致死性の攻撃をこれでもかというほどにばらまいてくる点において非常に凶悪だ。速度もすさまじい。

しかしラーマは一度戦い敗れたものの、今はそれよりもシータの力を得て、圧倒的に気力が充実している。おいそれと自由に動き回らせない。

出先をくじき続けるビリーの射撃も取り回しが良く、回転の速い宝具の真名解放で、明確に仕事をこなしていた。

 

しかし彼らはある程度の耐性はあるものの、気を付けなければならないのは、やはり女王メイヴの魅了だ。

それこそが最も警戒しなければいけないものであり、口を酸っぱくして言われたためか、シンドバッドも、今回は敵へと殴りにいかないほどだ。

 

 

立香も片時もメイヴより視線を切らないように、敵集団とややいつもより距離を置きながら、マシュと共に戦況の確保に努めていた。

 

「マスター!伏せて!」

 

マシュは時折飛んでくる、上空からの流れ弾や棘槍の防御に専念して、攻撃に参加できていない。

 

それでも充分以上の活躍をしており 、彼女自身も神経をすり減らしながら戦っていた。

 

なにせ彼女は最終防衛ラインとして配置されることはよくあるが、その場に彼女のみがということは、経験としてそこまで多くなかったのだ 。

 

 

 

そして、均衡が崩れていく。ライダーとはいえ、男に乗る者であるメイヴは、ラムレイの機動力に翻弄されていき、その隙をえっちゃんの雷撃に付かれ、あとは流れるように傷を負って倒れ伏した。

 

しかしながら後一撃で止めという所で、クー・フーリンの他のものを何も視ない、一切の被弾を厭わない割り込みと攻撃により、ラーマを含め一時的に下がらざるを得なくなる。

下がらざるを得なくなる。

 

合流こそ許してしまったものの、油断なくカルデアは相手を見つめる。

 

しかしその判断は間違いだった。すぐにでも襲いかかるべきだったのだ。

 

リツカは自身の熱が上がる錯覚を覚えながらも、幻聴のように響く声に従う。

 

聖杯を入手した、クーフーリンを倒すべきだと向き直るが、しかしパスを通じてナポレオンから、そして何よりも、ロマニからの通信が入る。

 

『大変だ! リツカ君! シンドバッド君! 急いでくれ!! 魔神柱が複数連なって召喚された!! 侵食の速度が速すぎる!! このままじゃこの特異点が持たない!!』

 

もう時間がない、それはしっかりと認識した。だが、こちらももう負けるつもりはない、戦って倒すだけだ。

 

ちらりとシンドバッドを見ると、彼はキメラ相手に蛇のような動きで首へと巻き付き、首の後ろから肘を叩き込み、一撃で絶命させていた。

見られている事に気が付いたようで、軽く頷くと、向こうも承諾したようだ。

このマシュの盾の死角でかわされたやり取りで、勝利の算段は建てられた。

 

3人の1流のサーヴァントによる近接戦闘、アーチャーによる支援、時々殴ってくる衛生兵。そんな状況でも、敵は、狂王はしぶとく耐えていた。

攻撃の速度は傷を受けてなお加速していき、予断を許さない状況が続く。

 

「マシュ、足に力を入れて、飛びかかれる準備を」

 

「了解です、マスター。お任せください」

 

だが、マシュもそんな中でさえ立香を信じて動いてくれる。しっかりと足で踏ん張りいつでも飛びかかれるように構える、そして決定的なタイミングは来た。

 

「陽の眼を持つ女! 」

 

甘く香るような気がするほどの色香が、桃色の風とみまごうほどの濃度で、立香の背後より、敵の動きをわずかばかり拘束する。

 

 

その女の舞を、それを感じた瞬間、マシュは立香の意図を察知して飛び込む。

彼女の盾という獲物は近接武器の質量としては最大級の物だ。それに押しつぶされるようにぶつけられれば、さすがの狂王も姿勢が崩れる。そしてそこに、魔力に一切の不満のないラーマの宝具が炸裂する。

 

 

負けじと迎撃のゲイ・ボルクを投げてくるが、巨大な看護師のメスによりその動きは大きく減衰させられる。

 

結局はよける間もなく、ラーマの刃に貫かれ、クーフーリンは消滅するのであった。

 

 

『やっぱり、聖杯を回収しても、聖杯によって生み出された異物を倒さないと特異点は修復されない!』

 

ロマニのその声に、反応するかのように、目の前にその白い衣装を血と煤でボロボロに汚したサーヴァント、アルジュナが現れる。

 

「皆!!」

 

「いいえ、私は敵ではありません、そして恥を忍んで申し上げます。私にその令呪で命じていただきたいのです。魔神柱を討つようにと」

 

そんな姿でも華のような香りを漂わせる彼は、やや遠慮げに立香に告げる。それは味方になるという宣言であった。

 

「約定と彼らに頼まれたのです。業腹ではありますが、助力いたします。せめてもの罪滅ぼしです」

 

立香は、アルジュナの契約を受け入れる。アルジュナは、微笑を浮かべて、鏃を取り出す。

 

「私としても人理を滅ぼすのは忍びないのです。今回こそ私情を優先させてしまいましたが、次があれば貴方に付き従いましょう。マスター」

 

「ありがとう、アルジュナ。

……令呪を持って命ずる!! 宝具で魔神柱を倒して!!」

 

そこから発した光は魔神柱を確かに滅ぼした。

 

お見事。そんな誰かの声を聞きながら、カルデアは第五特異点の修復を完了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次からみんな大好き第6特異点。
シンドバッド君の最後の1枠も召喚されるよ!!
皆は誰かわかったかな?
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