[WR]FGORTA YAMA育ちレギュ [66日22時間15分32秒] 作:HIGU.V
吹きすさぶ砂嵐の中、カルデアを筆頭としたサーヴァント集団は、左翼側から、正門へと強襲をかけていた。現地の兵力とその指揮をするハサン以外、それら全ての戦力が今此処にいる戦力であり、この特異点で最大の戦闘集団と言っても過言ではなかった。
「藤太! もっと飛ばせないの!?」
「ええぃ、三蔵よ。お前も馬には乗れるだろうに!」
「軍馬は無理よ! こんなに早いと落ちちゃうでしょ!」
愉快なやり取りをしているペアも居るが、アーラシュも騎乗もないのに馬に乗っているし、ベディヴィエールは慣れた様子で、左手だけで手綱を握っている。
「見えてきました、聖都の守備隊です」
「うん、俺達の任務は兎に角撹乱。手空きができたら壁を超えるけどハサン達が内応するのを待つべきだと思う」
正直な所戦力としては、女神となったアーサー王以外はこれだけのメンバーがいればどうにかなるであろうし、その女神もディオスクロイを全力で支援すればどうにか出来なくはないであろう。ギリシャ神話の英雄で神核を持っているというのはそれ程なのだ。
故に1番の問題はどの様に侵入するかというところであった。なんとあの聖都はペラペラ喋る騎士たちから得た情報からすると、悪意のある攻撃は一切受け付けない、エクスカリバー由来のものでは壊せないとのことであった。
ナポレオンの宝具を試しても良いかも知れないが、それでも恐らく難しいとのことであり、一先ずは周囲の戦力を殲滅して正門前を確保して、敵を誘引するのが目的だった。
「カルデア! 此処は通しません!」
「ガウェイン卿……」
そして、当然のようにこれだけの戦力を前に、出てくるのは円卓の騎士である。不夜のギフトが効果を発動していない中、彼はそれでもこの場で王のために全力を賭してこの場を守るのだ。
前方に立ち塞がるその影を見て、立香は一瞬だけ戦力を検討するが判断を下す前にエンジン音が大きくなり、自分たちを置き去りにする赤い影。
「リツカ! 俺が行く!」
シンドバッドがボンネットに立ちながらそう言ってくる。マスターの居ないサーヴァントでこの場でガウェイン卿と戦うには最低2名以上を残す必要があり、自衛のこと、そしてシンドバッドのサーヴァントの性質、それらを総合的に判断して、彼はこの分担が最適と判断する。
「此処は俺に任せて、先にいけ!」
「それは、死亡フラグだよ! でもまかせる! アルトリア!」
「承知しました」
立香は自分をのせているラムレイとアルトリアに右から抜くようにお願いして、後は任せることにした。他のメンバーも付いてきているのを確認して。
「オラァ!!」
「太陽が中天に無いからと、甘く見たな! 」
シンドバッドは、まっすぐに敵に近づく車の先端から、タイミング良く飛び上がる、その時速数百キロという速度の助走をつけて、ガウェインに向かって思い切り飛び掛かり拳を叩きつけたのだ。
ガウェインはすぐさま迎撃か、回避かの判断を迫られる。普段であれば攻撃を躱して首を取ることも出来たであろうが、あの質量が此方に迫っている以上、万が一防がれた場合、此方が不利になると考え、攻撃をガラティーンでいなしつつ飛び退いた。
「この程度の攻撃しかできないサーヴァントが、私を止めるなど!」
「俺は人間だ! お前らみたいな奴が嫌いな人間だ」
マスターがいの1番に飛び込み、それを追撃するように車が突撃する、そんな5世紀の騎士からすれば意外過ぎる攻撃。それによって出来た隙は非常に大きかった。
すれ違う瞬間か、その前に高く飛び上がっていたのか。双子座の戦士ディオスクロイ。彼らに向けてシンドバッドは全力で叫んだ。
「令呪を持って命ずる! ディオスクロイ! 宝具だ! やっつけろ!」
「ようやくか、人間! その目に焼き付けよ」
「我らの絶技を!」
ディオスクロイの宝具、それは唯のコンビネーション攻撃である。しかしながら、それはギリシャで勇を示し、星座になった双子の絶技だ。加えてポルクスの神核とそれとつながったカストロの神格も神霊そのものの出力まで上がり、あらゆる防御を貫く攻撃となるのだ。
「「
単純にして強力無比。2名による同時の剣技と言うだけであり、何かしらの防御でそれを受けるのは非常に困難なのだ。
ガウェインもすかさず上からの強襲へと対応すべく聖剣と、なによりその膂力で受けるが、手数と何よりもその速度での攻撃、こちらのガラティーンの真名解放をも許さぬ連続攻撃に、凌ぐだけで精一杯であった。
そもそも、この宝具を受けて立っていられるだけで、十分に破格なサーヴァントである証左なのだが。
嵐のような連撃を何とか受けきり、反撃をとばかりに太陽の聖剣へと魔力を回そうとした瞬間、踏み込み姿勢を低くした彼が見据えた先に3人の女が見せつけるように車の上に立っていた。
「その姿はあまりにも優美……あくまでも上品……そして、あからさまにセク・スィ!」
その姿は此処からでもわかるほどに、妖艶で。
「うふふ、誘惑はお嫌いかしら?」
此方を魅了する浅ましい女のそれで
「今宵は……どのようなお話をしましょうか?」
豊満な体つきであった。
「……見事ッ!」
良いものを見た。ガウェインは受けた攻撃に対してそう素直に評した。恐らく先程の双神の剣技に対してのものであろう。
ガウェインはその攻撃を前にして身体が完全に硬直して、特に顔と目線を動かせなくなってしまったのだから。
「死になさい」
そしてそんな彼の隙を見逃すことなく、ポルクスは無慈悲にガウェインを切り裂いた。見事な逆袈裟斬りであったが、カストロの顔からは流れるはずもない、冷や汗がたれていた。
シンドバッドも、よくわからなかったが、少しだけ寒くなったので気を引き締めて先を目指すことにするのであった。
「ポルクス、カストロありがとう。二人はやっぱ強いな」
「今更気づいたのか? 人間」
「ええ、マスターどんどん頼って下さい」
心強い自分のサーヴァントと、また少し仲良くなれたのを感じて、シンドバッドは笑顔で車に飛び乗るのだった。
「今だー!! 梯子をかけろ!!」
「矢は降ってこない! 今のうちなんだ!」
「熱した鉛を降らせてやれ!」
「梯子を崩せ! 正門は鉄壁だ!」
攻城戦、それは多くの犠牲を攻勢側が払う、出血を強いられる戦いである。それが力なき唯の民であれば尚の事だ。勿論戦闘を生業としているものも居るのであろう、だが兵の質という観点で見れば、聖都側は連合軍の3倍ほどであり、地の利まで得ている。言う成れば盤石な守りを崩すことは出来ない、そんな命の浪費であった。
もちろん、ハサンが影に忍び入ろうとしているが、この都市は善でないもの、招かれないものを受け入れない。都市ではなく所有者の居る道具なのだからある種当然ではあろう。
それでも戦闘中であり何かしらの穴はあるはずと、どうにか、どうにかして同朋の命を燃やしてえた時間で、経路を見つけようとハサン達が走る中、別のところでもその声を聞き続けていた女性が一人いた。
「そっか、アタシが呼ばれたのって、この時のためなのね」
「どうした、三蔵!」
「藤太、いい? このまま真っ直ぐ走らせなさい! 合図したら右に曲がるの、立香! マシュ! アタシは向こうに行って来るわ!」
「三蔵ちゃん!?」
立香達のラムレイを旗艦とする艦隊のように、カルデアとその同行者達は正門を目指して外壁を沿うように駆けていたが、突如三蔵は緩やかに曲がらずに、隊列を離れるように動き始めた。
立香はその動きをみて、様々なこの旅で見てきた英雄たちを重ねたが、だからこそ何も言えなかった。ただ少しだけ拳を握って、そして笑って頼むことだけが彼に出来たことだった。
「頼んだ! そしてこっちは任せて!」
「ほら、藤太、今よ!」
「ええい! ままよ!」
そして藤太の操る馬は正門の姿を捉えるべく、戦場の真ん中へと駆けていく。三蔵には声が聞こえてしまったのだ。
彼女が何時も指針としているどうするべきかという声が。その声は壁を壊せとも、皆を助けろとも言っていない。砂漠の向こうに行け、あの砦に行けと言ったきりだったその声がいま再び彼女の耳に届いたのだ。
思うままにせよと。
三蔵は聞いてしまったのだ、この地に住む純朴で善良な民の声を。この戦場で自分の無力と仲間の無事を思いながら無謀に挑むものを。苦しみ逃げたいと嘆くものの声を。
だからやるのだ。それは彼女がそう決めたからであって、ここで命を捨てるべきだと言われたからではない。彼女は人の道を間違えることはない。
それは彼女の意思によってなるべきものであり、だからこそその声が聞こえた瞬間に彼女は好きなようにすることに決めたのだ。
「アタシね、今とっても嬉しいの。アタシの旅で得たものが色んな人の考えをつくって、皆を動かして、頑張っているんだもの!」
「おい、三蔵! 馬の上に立つな!」
「天竺への旅でも、そこの修行で得たものも、持って帰って広めたものも」
彼女は思い出す、あの天竺への旅路を。愉快な弟子たちと共に巡った時に失敗し、笑い合いながら目指した旅路を。
「また、天竺をめざしたことも! だから、弟子が頑張ってるのだから、師匠はもっと格好良い所見せないとね!」
経典を集めたことを、人としての自分は捨てるべきものではなかったことを、無邪気に慕ってくれた弟子達がいたことを。
「見えた!」
二人の乗る馬は正門を捉える。この聖都を守る絶対の防壁。あらゆる害意が通じないその門を。彼女は何百何千と呟いた言葉を口にして、構えを取る。そして優しく柔らかく手を添えると、それを解放した。
「ファイナル・釈迦如来掌!!!」
それは彼女の霊基のキャパシティを超える一撃だった。それは光よりも早く届く慈愛であった。相手を救いたいという慈愛が形どったものであり、そのまま門戸を吹き飛ばし、聖都の守りを崩す一撃であった。
そしてその代償は大きい。彼女は力尽きたかのように落馬し倒れ込んでしまった。身体からは、サーヴァントが座に帰る前触れのように、金色の粒子が溢れ出している。藤太は慌てて馬を止めると彼女に駆け寄る。
「三蔵、お前これは、何故そこまで無茶をした」
「ねぇとーた……アタシがんばったよね」
既に声も聞こえていないのかこちらの問いかけに返さない三蔵は、それでもたおやかな笑みを浮かべながら砂嵐の舞う聖地で見えるはずもない空を見ていた。
「頑張ったごほうびにさ、今度は、どっかの雪山に召喚されて、そこでまたでしをとって、しゅぎょうするの……きっとたのしいわ」
そこでは、立香もマシュもきっと一緒だ。これで3番弟子までそろう。一緒に御飯を食べて砂漠なんかを歩いてみて、雪山を行くのも良いかも知れない。
「おとうとでしができれば、きっともっとがんばってくれるよね」
ちょっとだけだけれど、前に見たときより成長していたいつか取った弟子は、このキャメロットの地では自分はいらないだろうと、そう思えるほど仲間に囲まれて、奥さんとも仲良くて。なによりも、とっても楽しそうに旅をしてて。
だから、次の旅があったら、そこでは弟子としてもっと導くのだ。
「ああ、そうだな」
「ごくうたちもさいしょは、てきだったもの、きっとだいじょうぶよ……」
そう言って彼女の身体はエーテルとなり溶けていった。彼女が残した最大の成果は確かにカルデアへと繋がったのであろう。大金星である。ならば、この旅路の弟子である彼がすることは一つ。
ここで破られた門を守りに戻ってくる敵の騎士たちへと、たらふく米を振る舞うだけだ。
「さて、やるとするか!!」
「見事であった……ベディヴィエール卿。お前の忠義然と受け取った」
「勿体なきお言葉です……我が王……よ」
女神ロンゴミニアド、圧倒的な力を持ってしまった女神へと至ったアーサー王はしかし、カルデアを前に敗れ去った。あらゆる攻撃を通さない、真名を知ったマシュの盾と、アーサー王の死因たるエクスカリバー、そして単純な戦力の数によるものであったが、女神は破れ、今ベディヴィエールから聖剣を返されたのだ。
これにより、彼女は滅ぶ。この世界の果てで一人死にゆくのだ。聖剣を渡し塵のように消えた一人の忠義の騎士へと、彼女は少しばかり思いを馳せたが、残された時間を使うべくこの場まで来た3人の人間をみる。
小さい。吹けば飛ぶほどの人間だ。とびっきりの善性を持つものが2名と、人間らしく汚れた者が1人。そうだ、人間はこうして多くのものが混ざり社会を作り繁栄した。こうして神を倒すように。良いものだけを残すということが、自分の好みによる選別だったのだと、改めて理解する。
「カルデアのマスターよ」
「なんだよ」
「なんだ」
魔術王と視点を共有した、神となったアルトリア。自分は魔術王の前に、いや、彼の用意した7つ目の特異点の絶望を前に膝をついた。だが、それを越えたとしても……ならばこそと彼女は言葉を残す。
「良きものよ、星を集めよ、どんな時も輝く星を、己の手で」
それは、最後の路へと至る為のものだ。その前の原初の地獄を乗り越えねば意味はない、しかして……彼が今まで集めてきた星全てが輝かねばその後はないのだ。後1つで見つかる星は多くはないであろうが、それでも探し続けるのだ。星見の魔術師よ。
「己の路を刻むものよ、磨け自分を、刻みつけるように、語られるように」
それは、最後の先のためだ。この旅路の果てに待つ者たちのために。多くのものが待つところまで彼は行かねばならないのだから。原初の地獄とその先を超えてまで、彼は跳んでいかねばならないのだ。星見の英雄よ。
「……どういう意味?」
「……全くわかんねぇ」
怪訝そうな顔を浮かべるが、伝えられるのは此処までだ。
「次の特異点、それは原初の地獄。紀元前の人が神と袂を別たった時代。そこに魔術王は聖杯を送り込んだ。その聖杯こそが、魔術王の在り処を示す唯一の標となる」
この言葉があれば、カルデアはたどり着くであろう。
ついぞ姿を見せなかったあの者や、懐かしいあの者が何をしているかは知らないが。それでも行ってもらわねばだ。
女神ロンゴミニアドは、一気に消えゆくカルデアの者たちを見ながら玉座へと体を預けて人類の未来を思うのであった。
明日からバビロニア! 目標通り5月中に入れるぞ。
6月もモチベのため更新を止めたくないのですが……どうでしょうかね?
更新頻度と分量に関して
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短くても毎日更新してよい
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多少短くても隔日位で
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今と同じ量で週2,3回
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分量増やして不定期
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完結まで貯めてその後毎日