[WR]FGORTA YAMA育ちレギュ [66日22時間15分32秒] 作:HIGU.V
メタ視点もカットも自在でできるとか、そら楽だよね。
構成上RTAパートでやってないところまで話が進んでます、すみません。
許してください! なんでもしますから!!(様式美)
既にチェックをかけられている。
カルデアの今状況は端的に言えばそういったものであろう。
首脳陣も、マスターチームも、バックアップスタッフも他大半が死亡したか、コールドスリープ中だ。皮肉にも人員が不足しているため物資は問題ない。
だが、魔力リソースすら心許ない、このままでは守護英霊召喚システム・フェイトも十全に使い切れないであろう。
そんなないない尽くしの中、たった二人だけ残ったマスターに全てを託す必要がある。その重圧を考えると、なんとも歯がゆいばかりだ。繰り上がりでカルデアの責任者になったロマニ・アーキマンは、技術局特別名誉顧問のレオナルド・ダウィンチの説明を補足しながら、痛感していた。だがその重さの性質は2人のマスター間で大きく異なっていた。
1人目、藤丸立香。
彼は本当にごく普通の家庭に生まれた、ごく普通の少年だ、レイシフト適性が高いこと以外、能力的に記載することがない。そうレポートに書かれている程の、まだ飲酒すらできない年齢の子供だ。
魔術のまの字も知らないままカルデアにつれてこられたが、高い適応力を持っているのか、元マスター候補で現デミ・サーヴァントのマシュ・キリエライトと契約。そのまま現地で協力者を見つけて、冬木の特異点の解決を成功させた。それなり程度だが魔術回路も有している。
言い方は悪いが、彼は普通の人間なので、しっかりしたメンタルケアをすれば大丈夫であろう。いや彼の背負う使命の重さの前に、何をしても大丈夫ということはないのだが。
問題はもうひとりであろう。
2人目、名無しのマスター。
経歴はほぼわかっており、裏取りもできている。カルデアに備品として購入された、魔術師の実験体の慣れ果てだ。
本来は人間の身体だったようだが、筋力や身体能力が異常に発達しており、身体を構成する物質が、通常の人間と異なっている。魔術師曰く記憶が正しければ、消化器系に手を加えただけで後はそのままというが、食してきたものが問題であった。
彼をスカウトしてきた調査員の報告では、彼のいた場所には大量の人とホムンクルスの骨や髪の毛でできた日用品があったという。
奴は食料の供給もなく、彼は何と20年近い時をあの場所で生きていたはずだ。
と件の魔術師は供述していた。その結果が
(食人に抵抗がない、サーヴァントと戦える身体能力を持ったマスターか)
御す事ができたのならば、なるほど戦力になるであろう。
レイシフト適正も藤丸立香と大差ない、魔術回路も少ないが持っている様子で、カルデアからのバックアップが有れば、複数のサーヴァントの運用も可能なはずだ。マスターが自衛能力を持っているのは、守りの特化したマシュと契約した藤丸立香とならび、生存能力を上げてくれる。
というよりも、冬木の特異点では、通信が不通であったが、先っほど上がってきたログを見ると、シャドウサーヴァント、しかもヘラクレス相手に、キャスターの支援がない中で、肉弾戦を挑んで勝ったというのだ。その際の負傷も回復していたが、藤丸チームに合流する前に、解決されてカルデアに帰還していた。
戦闘技術は、調査員の報告では不明だったが、カルデアのテストで、カラリパヤットの流れをくむ独自の流派に近いということがわかった。
本来剣や槍なども扱う武術だが彼はもっぱら素手。棒術はたまに練習していたが、素手ほど馴染まなかったとのことである。
影とはいえサーヴァントを倒すほど習熟された武術と肉体。純粋な優秀な魔術師がいない現状、成程ありがたいスペシャリストのはずだ。
(文字を読むことも書くこともできないどころか、社会で生活したこともない。所長には絶対服従の契約をしたらしいが、その所長ももういない。だからと言って今から改めて矯正をかけて備品として運用するのは、憚られるし不安も大きい)
しかし、それは何をしでかすかわからない肉食獣が、調教師なしで隣にいる。
そんな現状なのだ。幸いというべきか、魔術への抵抗力は弱いようなので、魔術師の職員にはその様に申し伝えるべきであろう。
追い風なのは、彼が所長と魔術的な契約をする前から協力的なことだ。報告書には、初対面こそ襲いかかられたが、それ以外では「まるで自分の意志がないかのよう」非常に従順で抵抗もしないとのことだ。
(可能であれば、このまま。でも万が一のときは)
メンタルケアなどの療法は、社会性を持っていないと効果が薄い。可能であれば、彼を一人の人間としたいが、不可能であった時、彼が獣として動き出したときは、ロマニとしても決断が必要になるであろう。
藤丸立香は、昨日大変な冒険をして、信じられないような事態に巻き込まれながらも、いつもどおり空腹で目が覚めた。現金な自分の体に苦笑しつつも、彼は昨日、先任の後輩であるマシュに案内された食堂に向かうことにした。
道すがら、彼女のピンクブロンドの髪を見つけたので、一緒に談笑しながら食堂に入ると、今後は保存食を食べることになると張り紙がされていた。急に自分の置かれた状況を再認識しながらも、自国のありがたい諺に従い、食事を受け取った。腹が減っては戦ができぬのだ。
マシュと共に座って食べようかと振り向くと、まばらな人の中に、大柄な人物がなにかの缶詰を前に座っているのを見つけたのだった。
「あっ! 俺と同じマスターの……」
「ん? 昨日の……」
「ここ座っていいかな?」
「ああ」
一瞬マシュと視線を合わせてから、大柄な男の前に座る。立香は基本的に食事は大勢で取る派だった。
「俺は、藤丸立香。まだまだわからないことばかりだけど、一緒に頑張ろう」
「私は、先輩のサーヴァントのシールダー・マシュ・キリエライトです」
「よろしく頼む。魔術とかよくわからないが、それなりに鍛えているつもりだ」
改めて自己紹介をするも、名前を聞き出せなかった。立香は一瞬昨日名前を聞いてて、自分が忘れているだけかと思ったが、生まれてこの方人の名前を思い出せなかったことがないので、どうにも腑に落ちなかった。
「(先輩、この方はお名前をお持ちでない方です)」
「(へー、そういう人もいるんだ、不便じゃないのかな?)」
すると、できる後輩マシュ・キリエライトが左耳に囁くように回答をくれた。なるほど名前がないのか。見た所日本人ではなさそうだし、外国のどこかにはそういう所もあるのだろう、立香はそう納得した。
いただきますと小さくつぶやいてから、彼は自分の食事に手を付ける。立香は朝はご飯でもパンでもシリアルでも全く問題はない派なことを深く感謝した。ふと前を見ると、たまにスーパーで見るような輸入品の缶詰を持ち上げて覗き込んでる男がいた。
「えーと……缶詰の開け方わかる?」
「缶詰? 皮を剥いて食べるのか?」
「あぁー、ちょっと貸して」
どうやら、缶の開け方がわからなかったようだ。缶切りが必要なタイプかと思えば、立香の知るようなプルトップ型であった。まあ缶詰を開けられない人もいるだろう。立香はそう納得して変わりに開封した。プシュッという軽い音とともに、蓋が外れて中のピンク色の肉がみえる。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
男性は缶を受け取り軽く礼を言うと、缶を持ち握りつぶした。空いている上面から押し出された中身にそのままかぶりついた。随分ワイルドだな、お皿に出せばいいのにと思ったが、非常事態だし節約をしているのかと納得して食事に戻る。
「先輩、今の缶詰はお肉ですか?」
「確か、スパムっていうソーセージの腸に詰めてないやつだったはず、元々はアメリカの軍事レーションだったかな?」
昔にテレビで見たようなうろ覚えの知識で、立香は質問してきたマシュに返した。すると、男性の方も此方に向いて話を聞いている様子だ。
「食べたことない肉だが、すぱむというのか」
「外側にそう書いているから、多分そうだよ」
「あの、何故その缶詰だけを3つも食べているのですか?」
マシュの質問に確かにと立香は、改めて疑問に思った。食べ方もわからない、なにかも知らない。それなのに、同じものが3つもある。好物なのかと思えばそうでもないらしい。
「何でも良いから肉を頼んだらこれが出てきた」
「バランス悪いね、それ」
「俺は肉しか食わないから、沢山あるのを頼んだ」
「お肉しか食べないのですか?」
「ああ。だが肉なら何でも良い」
怖そうな見かけの男性の、ちょっとしたおマヌケエピソード。そんなふうに言えるこの談笑で。
立香は、ぶっきらぼうながらも、しっかり受け答えを返してくれるので、なんかゲームでそんな種族いたなぁ程度に思っていた。
だから、この先本当に何の肉でも良い。ということを知った時どうなるかなんて全く想像していなかった。
「マシュ! 次は上からくる!」
「了解です、迎撃します!!」
シミュレータールームに、金属同士がぶつかりあったような甲高い音が響き渡る。マシュは構えた盾に伝わる衝撃に怯むことなく、デミサーヴァントとなり強化された膂力で弾き飛ばそうと力を入れる。
しかし、踏み込み力を入れようとする一瞬で、盾に感じていた重さは消え去ってしまう。
直様追撃が来ると盾を持ち上げて敵影を確認しようと覗き込む。
「だめだ!! 下!!」
「──ッくぅ!! 」
その瞬間に、まるで地面に這いつくばっている程に体勢を低くした敵が、盾の隙間より突進を仕掛けてくる。腹部へと伝わる衝撃に、マシュの口から空気が漏れるが、無理矢理組み付いてきた敵へと膝を入れることで、なんとか引き剥がす。
手応えは軽いが、初めてマシュから攻撃を当てることができた。
「大丈夫!? マシュ!」
「はい! 損傷軽微、問題ありません! ですが……」
「シンドバッドもノーダメみたいだね、人間ってすごいな」
彼らは今、訓練ということでシミュレーターで模擬戦闘を行っていた。傍らには、万一の際に止めに入れるようにと立香のサーヴァントのナポレオンと、シンドバッドと命名された彼のシェヘラザードが控えている。
そう、
「本当にサーヴァントと戦える程度の戦闘能力のようだな」
「ええ、マスターですもの」
立香とマシュは、マスターであるシンドバッド一人と戦っていたのだ。戦力の確認という意味もあるのだが、これには仕方ない事情があった。全員参加すれば数で勝る立香、というよりもナポレオンの攻撃をいかに避けるかになってしまう。
ナポレオンを除いた場合は、マシュがシンドバッドに抑えられている合間に、手数が圧倒的に多いシェヘラザードの精霊に立香が囲まれて終わってしまう。
訓練として成り立つのは、この組み合わせしか無かったのだ。
「にしても、俺のマスターの目は大した物だな。だんだん敵の動きと、盾のお嬢さん両方を見れるようになってきている」
「ええ、私のマスターも決め手は兎も角、体力は問題ないようですね」
二人は、目の前で繰り広げられる攻防を見ながらそう述べた。
そう話しているのだが、二人の間には3メートルほど間が空いていた。
マシュの盾を踏み台に立香に肉薄しようと宙を舞うシンドバッドを見ながら、ナポレオンは、シェヘラザードの方に話しかけた。これだけ離れていても普通の声量で会話ができるのはサーヴァントの所以であろう。
「というか、そんなに離れなくとも良いんじゃないか? マドモワゼル」
「すみません、臣下を大事にされていらっしゃったようですが、王相手はどうにも……」
シェヘラザードはナポレオンにというよりも、王相手にはどうにも距離をとっていた。
まもなく実質的な最初のミッションである、第一特異点へと突入する前の僅かなインターバル、後で思い出話しにできそうな光景の中で。
シェヘラザードが思い出すのは、昨晩のことだ。
「お邪魔しますね、マスター」
彼女が初めて入ったマスターの部屋は、私物が一切ない無機質な部屋であった。それも仕方がないであろう、彼自身がここで就寝するのが初めてなのだ。持ち込んだものも全て没収されている以上、なにもないのは当然であった。
シェヘラザードは改めて、自分を呼んだ今生のマスターを見る。彼女からしては比較的馴染みのある日焼けした浅黒い肌、鍛え抜かれた筋肉質な身体。年の頃は本人も正確にはわからないとのことで、20と少し位だろうか。
彼の前に腰掛けながら、彼女は部屋に自分を害する危険がないことを確認し終えて一息ついていた。その様子を見たマスターは改めて口を開く。
「キャスター。さっきは、ありがとう」
「いえ、貴方に仕える者として微力を尽くしただけです」
口元は隠れたままだが、それでも相手に伝わるように、目尻を下げ微笑を浮かべながら彼女はそう口にした。嘘ではなかったが、明確な本音ではなかったからだ。
「それで、キャスターと呼べば良いのか?」
「はい。そうお呼びください」
「俺は……名前はない。好きに呼んで」
「お名前をお持ちでない……それは」
先程、あの燃える街で聞いてはいたが、目の前の男性は年齢の割に、恥じらう純朴な少年のように朴訥な所があり、話していると年の頃より幼く感じる。
そんな彼が、自身の名前を持っていないことに対して、何ら思っていないことは、ひどく歪に感じるのであった。
「いえ、承知いたしました。それではマスターとお呼びいたします」
「わかった。よろしく」
「はい、此方こそよろしくお願いいたします」
だが、既に契約は結ばれている。彼女の望みは死なないこと。基本的にサーヴァントとして呼び出された以上、最終的な終わりは死であることが多い。それでも彼女は死なないことそれを目的としているのだから。
「マスター貴方は……このような状況でも、怯えや恐れというものがないのですね」
「よくわからないから。キャスターは怖いのか?」
「ええ、とても恐ろしいことです」
「そうか」
彼女はマスターが本当に話すことに慣れていないことを、このやり取りで確信した。少年ですらない、まるで幼子のような受け答えだ。きっと、それほどしか人と関わってこなかったのであろう。
「もう少しお話しませんか? マスター」
「ああ、こういうときは好きなものを聞けばよいのだったか?」
「ふふっ……そうですね、その通りです。私は安全と安心が好きです。この状況で望めるものでは……あまりないのですが」
「そうだな」
「嫌いなものは……死んでしまうこと、です……特異点で死んだらカルデアに戻れますが、それでも死んでしまうのは恐ろしいことです」
「何もなせないまま死ぬのは怖い。俺はやっと、生きるを始められた。『俺も死ぬのが怖い』よ、キャスター」
だからこそ、人と関わる際に誰しもが身につける、社交性の仮面を彼女のマスターは持っていなかった。それ故に彼女はわかってしまったのだ。彼が先程あの燃える街で、何故果敢にあの恐ろしい影に挑んでいたのか。
「マスターは、今までどう過ごされてきたのですか?」
「ずっと、同じところで、同じことをしていた」
「いつ終わるのか、わからないまま……ですね? 」
「そう。戦う練習をして……恵みを食べて、倒して食べてた」
無限とも思える繰り返し。それが無為に終わらぬように、意味あるものにするために。それが彼にとっての手段と目的だったのだ。彼女にとってあの朝を求め、そのためにあらゆる手を尽くした絶望の日々と。擦り切れてしまった志があったのだ。
王の改心を願い出た彼女がやがて擦り切れた先に求めたのが、死ぬことなく生きることであるのならば、長年を禁忌を重ねながら無為に繰り返した彼が求めたものは、犠牲を上回るほどの自身への価値であった。
自身のすべてを費やしても、何も変わらない日々に、いつかを期待するしかない。
彼女はそれを経験したものとしてひどく共感してしまっていた。
なにせ、彼も擦り切れ始めている。
あの、勝鬨を上げた時、彼は歓喜に満たされていた。だが、それだけだ。
彼女にとっての一夜が明けただけ。彼はこれから、証明を続けなければならない。彼女が擦り切れてしまったように、彼もきっと摩耗していく。より強い敵をよりたくさんの敵を、無為にした日々の積み重ねが無駄でなかったかを示すために、その間に磨いた技を用いて。
「マスター。貴方はこれから沢山の苦難に出会うでしょう。それでもどうか、無理をなさらずに。ご自愛くださいね」
「ああ、わかった。キャスター」
もうわかっている、彼女がサーヴァントとして呼ばれてしまうことが、そもそもの彼女自身の望みと最もかけ離れていることに。
なればこそ、彼女が求めるのは絶対的な消失と言う名の、もう死ななくて良い救済であろう。
だから彼女は、触媒などで無理矢理呼ばれない限り、基本的に現界することはない。
彼女の望みが叶わないからだ。だが、今回彼女は召喚された。自身と近しいマスターに。
自身を座から消す事などできるはずもない、方法も知らない。
だが、
語られるものがいなくなれば、彼女はもう死ななくて良くなるのだ。
彼女とて、自身が呼ばれた意味を理解している。人理を修復する責務、それは果たす為最善を尽くしましょう。ですが……
──マスターが、自身の価値を証明することに疲れて、目的がすり替わってしまった時は───
一緒に終わってくれるように、命令してくださいね、我が王。
「たくさんお話すべき事はございますが……閨で先程の続きと共にお話いたしませんか? 」
「……ああ! そうだな、キャスター」
明かりの消えた部屋で彼女は語る。生前に千と一度語った『殺されない為の物語』ではなく。これから毎日紡いでいくのは『共に終わる為の物語』を。
それは目的こそ違うが、生前と変わらない。家族も自身も既知も未知も、あらゆる手段を使い主君に取り入るのが彼女の生きる術なのだから。
そら(アガルタと終局の記憶も経験も情報もない中、人理焼却を知ったら)そう(改心前黒幕らしく、行動する)よ。
不夜キャスさんは、秩序・中庸なので、マスターには従うけど思うところはあるんですよー、多分。
大くん改めシンドバッドは、フィーリングでつけた名前です。キャプテンの中に入ってても、まあ別人だし良いでしょ。
冒険を志して、満足してやめたくなっても冒険に行かされて、やめて女と一緒に帰った男であれば誰でも。
ようやっと舞台設定の説明終わったし次回からサクサクイクゾー!
Q.不夜キャスさん裏切ったん?
A.別にそうじゃなくて、目的を決めただけ。
Q.シンドバッドはどうなるの?
A.自分の決めたことをやりきれば、セーフ。諦めたら……ナオキです。
Q,つまりどういうことだってばよ?
A.人理焼却が完遂されれば、その後もう誰も死なないですよね?
Q.でもそれって根本的な解決になってませんよね?
A.何の問題ですか♂
Q.エッチなことしたんですね?
A.「はい」