[WR]FGORTA YAMA育ちレギュ [66日22時間15分32秒]   作:HIGU.V

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立香の旅をずっと支えてきたサーヴァント達だ!

「私は悲しい、数合わせで呼ばれたのに、会話すらなく倒されるなんて」

 

バッサリと、一瞬で首をはねられた一撃で屠られて、ほとんど会話をすることもなく第4の離宮のトリスタンは切り捨てられた。ただただハロウィンで会う約束をしていたような気がするだけの男はそのまま消え去っていく。問答無用の見事な斬首であった。

 

「え、えーと、4つ目突破です」

 

それでもしっかりと状況を報告してくれるマシュ、流石に開幕速攻にもほどが会ったと思っていたが、仕事はこなしていた。

 

「もう、二人とも張り切りすぎよ」

 

「ですがここには大したものはないでしょう?」

 

「ああ、そのはずであろう」

 

マーガレットの言葉に対しても、悪びれた様子もない彼等は果たして本当にギリシャの英雄なのであろうか?

ともかく一瞬でこの場の刺客を倒してしまったので、先に進むことにした。

 

 

「だいぶ上ってきたけど、そろそろ折り返しかな?」

 

「どうでしょう。遠近感が狂っていて、近づいたのかどうかわかりにくいですね」

 

 

実際に何があるのかわからないが、こんな面倒くさいことをしなくてはならないことが、此処にいざなった相手からして、何かしらの意図があるのであろう。そこは立香にも確かに見えてきた部分であった。

 

正直なところ、黒幕の正体もなんとなくわかってきた。しかし動機、それが分からない。というよりも方法はもっとわからない。

 

敵の思惑に乗るということはあまり得意ではないのだが、それでも乗り越える必要があるであろう。

 

戦力としては、ジェミニ仮面というマシュも連携を取りやすい、強力な仲間が加わった。これで不足する場合は、根本的に問題があるのであろう。立香一行は第4の離宮を抜けて第5の離宮へと階段を駆け上がって……はいないが、しっかりと登っていた。

 

「あの、お二人は飛べるのでは?」

 

マシュは律儀に立香の後ろを歩くジェミニ仮面に関して、思わずという形でそう尋ねた。なにせこのような形の建物に態々付き合うだけでも驚きなのに、飛ぶことすらしないのだ、何か理由があるに違いない。

 

「お前たちを運んではいけないからな」

 

「はい、しっかり自分の足で進むことも大事です」

 

実際、敵が出てこないとのことなので、道中で魔力消費を無駄にする必要がないのも事実であった。マシュは納得して彼等と歩調を合わせて進むのであった。

 

 

 

「よう、来たか……待ってたぜぇ」

 

「ほう、なかなか骨のある男のようだ、P気をつけろ」

 

「はい、C兄さま」

 

今度こそ完全に見たことのない刺客を相手に立香は思わず身構える。

 

「俺はベオウルフ、細かい御託は良い、始めようぜっ! ぶん殴り合いをよ!」

 

筋骨隆々で上半身をむき出しにした筋肉質な大男。堂々たる佇まいは歴戦の猛者のそれを感じさせられる。少なくとも油断のならない相手であることは事実だ。

 

名前を名乗った以上、マシュは敵の英雄の正体をすぐさま看破する。

 

「ベオウルフ王! イギリス最古の叙事詩の登場人物です!」

 

「皆気をつけ……て?」

 

しかし、よく見ると、その男は目の前のテーブルの上に鉄板皿を置いて、何かの肉を焼いて食べていたのだから、不思議な光景であった。

 

「あぁ? これか? ドラゴンステーキだ」

 

もしかしたら、竜殺し特有の試合前パフォーマンスなのかもしれない。

 

 

「相手にとって不足はない!」

 

「行きましょう! 兄様、マシュも付いてきてください!」

 

「はい! 戦闘開始します!」

 

火蓋を切ったのは、ベオウルフの拳が、カストロの盾をとらえた音であった。

マシュよりも素早く動き、圧倒的に早い。それでいて、攻撃の邪魔にならぬような位置取りを意識した、盾使い。しっかりとその場に構えて、後ろに攻撃が行かないように守るマシュの使い方ではない、攻撃的に相手のリーチやスペースを狂わせる、盾の使い方であった。

 

実は、こうして同じ敵に挑むということは初めてであり、近くで戦うということもなかったマシュは、しっかりと、盾サーの先輩の動きを観察する。

 

今彼女がこの体な理由も不明だし、この経験が後に役立つかもわからなかったが、上昇志向の塊である彼女は自分のものにしようと、必死だった。

 

それはある意味、この変な空間である場所の解決というよりも、事態に深刻さをそこまで感じていないからの余裕とも言える。

 

「しゃらくせぇ!」

 

「力はヘラクレス並みか! 化け物じみているなぁ!」

 

「ですが、ボディがガラ空きです!」

 

ポルクスが目にもとまらぬ速さで、死角へと回り込み、すぐさまその剣で胴を打つ、それすらも、ベオウルフは動物的な反応で無理やりに対応してくる。

 

だが、マシュはそれが自分に求められた動きなのだろうと、構えていた力を一気に開放して、その盾の質量と勢いで押しつぶすように、上から抑え込む。

 

「そうか! マシュは重量級だから!」

 

「いくぞ、ポルクス!」

 

「はい、兄さま!」

 

「効くかああぁぁ!」

 

マシュのシールドの重量と勢いにすら耐えて、そして、ジェミニ仮面のコンビネーション攻撃にすら耐えていたが、それでもダメージは深刻であったようで、マシュを弾き飛ばすも、膝をついている。

 

Pはすかさず、剣ではなく自慢の拳を膝をついているベオウルフの顔へと叩き込む。彼女がいた時代では反則ではなかった。殴りやすい位置にいる方が悪かったのだ。

 

「ぐぅ!」

 

「やりましたっ!」

 

「ああ、見事なワンツーだったぞ」

 

Pの攻撃により、無事に5つ目の離宮を退けることに成功したらしい。

 

「やったね、マシュ。お疲れ様」

 

「先輩、お話があります」

 

鎧とラウンドシールドを纏って戦うために、普段はともかく、戦闘中は布製の服のジェミニ仮面よりもはるかに重い彼女は。先程の聞き逃せない一言を放った立香にそう詰め寄るでのあった。

 

 

 

 

 

 

「よ、よくぞここまで来ましたね、立香、マシュ」

 

 

たどり着いた第6の離宮にいたのは、冥界を写す鏡を持つファラオである、ニトクリスであった。天空神ホルスの化身でもある彼女も、このような狂った場所にいる。

それが立香にとっては自身の考えに、確信を持つ事に至れた。

 

「そっか、やっぱりここ、冥界だったんだね」

 

「ええ、空の色もそれっぽいですし、やっぱりそうだったんでしょう」

 

「それっぽい試練もやってるし」

 

マシュと二人で納得する。エレシュキガルに会いに行った時みたいなことをやらされながら、紫色の空を見上げると、目の前のニトクリスは不思議そうな顔をしてこちらに対して言葉を投げかけてくる。

 

「え? 違いますけれど?」

 

まさかの全否定である。これには立香とマシュの二人は驚くしかあるまい。なにせやっと話が見えてきたと思ったら、全然違ったのだから。

 

「め、冥界編と混ぜた感じじゃなかったんだ」

 

「あなた方は冥界にどんな偏見があるのですか!?」

 

ごもっともではあるのだが、状況が状況ゆえにその誤解も仕方なかったのかもしれない。なにせ立香にもマシュにも心当たりが多かったのだから。

 

「それで、お前は我等と戦うのか?」

 

「地の利は我等にある、神殿に作り変えても居ない以上……」

 

 

ジェミニ仮面は、獲物を構えて、油断なくニトクリスを睨んでいた。事実冥界でもなければ、ファラオの神殿でもないこの場で、しかも屋内で戦士と戦うとなると、彼女にとっては非常に不利な戦いになるのは事実である。

 

「確かに私がこのまま戦えば負けてしまうでしょう!」

 

ニトクリスは戦闘による逸話があるものではない、それは当然の帰結だ。

 

「それでも私はファラオ! 引くわけにはいかないのです!」

 

それは彼女の矜持であり、この場を任された責任というものであった。

 

「かかってきなさい、ギリシャの戦士たちよ! ナイルは時として嵐の海より恐ろしい物です!」

 

しかしながら、開幕のPの一撃により決着がついてしまった。

 

「っく!! 負けました!」

 

メジェドの攻撃がマスターを害するリスクをマシュが無力化してなくなるうえに、速き二人の戦士を前に彼女が勝てる訳もなかった。

 

そして彼女もまた、特に致命傷を負ってはいないが、体が消えていくようだ。

 

「うーん、皆さん帰られちゃうのね」

 

「こんなところにいられますか! 」

 

「まぁいいわ、また来てくださいね?」

 

マーガレットの見送りで、ニトクリスは消えていく。マーガレットは惜しんではいるものの、なんというか、形だけ聞いているという印象を受ける。悲しんでいる風でも残念である様子もないのだ。それは一体どういうことなのだろうか?

 

立香の考えにまた違和感が浮かび上がるものの、必要なのはこの先である。

 

「それにしても、これで6つ……あと半分ってところか」

 

「え? 12個もあるのですか?」

 

立香的にはここは冥界だと思っていたので、7個かなぁなんて希望もあったが、それが潰えた以上、12個の可能性が出てきたわけではある。それは御免被りたいし、いい加減疲れも出てきたし、不在にしているカルデアも心配だ。連絡も復帰しないのである。

 

「安心して頂戴、次で最後よ?」

 

マーガレットは、にこにこと笑いながら立香へとそう告げる。長かったこの離宮の旅ももう終わるというのだ、それは苦労が報われるというものである。

 

しかしながら唐突である、冥界でもないのに7個しか無いなんて。

 

 

「それじゃあ、もうひと頑張りだ」

 

「了解です! 先輩!」

 

 

最後の離宮、その前まで何とかたどり着いた立香達。確かに気が付けば、いつの間にか欧州ぽいつくりの城も近くにある。山もほぼ頂上で、この離宮からは渡り廊下のようなもので、白とつながっている。

 

「長かったですねぇ……」

 

「うん、本当に」

 

「なんだもうへばったのか、人間」

 

「もう、兄様そう言ってはダメですよ、二人共もうひと頑張りですから、頑張りましょう?」

 

 

やいのやいのと会話しながらドアに声をかけるものの、ふと立香は気づく。

あれ? いつの間にかいままで先頭で案内をしていたマーガレットの姿が見えない。しかしそんな疑問は扉を開けた瞬間に吹き飛んだ。

 

これまでの離宮は内部のインテリアもシンプルで、中世風の建物というイメージをそのままハンコで押したような形だった。しかしここは違う、まず部屋が暗いのだ。オレンジ色の垂れ幕までかかっており、紫色の間接照明までが反射する煙のようなものまで焚かれている。よくわからない祭壇もあり、周囲にはマリーゴールドの花が積み上げられている。

 

見たことのないが、何となく雰囲気が伝わる異国のお祭りのそれだった。

 

「え?」

 

「こ、これは!?」

 

二人が呆然としながら足を踏み入れると、ジェミニ仮面はふわりと二人の前に出て、油断なく武器を構える。

 

するとその瞬間にバタン! と大きな音を立てて背後のドアが閉まり、部屋中の蝋燭がおびただしいほどの数火が灯っていく。

 

「よく来ましたね!」

 

吹き抜けになっている建物の、上の階の手すりの上から声が響く。

右手を上に上げた、シルエットだけ見えるが、顔は全く暗くて見えない。

 

人間の形のシルエットではない、まるで巨大な何かを背負っているような、明らかに数人分の横幅がうごめいている。

 

「誰だ貴様は!」

 

「姿を見せよ!」

 

その異様な姿にジェミニ仮面は、鋭い声でそう言うが、張り詰めた様子はない。ただ、そう聞いてみただけという所の物が大きいのだ。

 

「お祝いをすると飛んできましたねー!」

 

「あ、この声は」と立香は思った。そしてマシュも、察してしまった。

 

「とぅ! ようこそ! 私の離宮へ! 歓迎するわ! お祝いですもの!」

 

そこにいたのは色とりどりの装飾に身を包んだ一人の女であった。蝋燭の炎がついに部屋全体を照らすと、その全貌が見えてくる。

 

全身を最低限覆い隠し、過剰な装飾を身に着けたその女は、金髪と羽飾りを揺らしながら、情熱的に踊っていた。

 

「ディア・デ・ムエルトスの祝いですね! おねーさん! 恰好間違えちゃったわ!」

 

ケツァルコアトルがサンバカーニバルの格好で踊っていた。

 

「えーっと、マシュ!」

 

立香は、先程ジェミニ仮面の前に突き放された分、マシュを前面に出すことにした。サーヴァントの後ろに隠れるのが、マスターの仕事なのだから。

 

「え、えーっと。お久しぶりです、ケツァル・コアトルさん。その格好は?」

 

「ええ、今日は死者を呼ぶディア・デ・ムエルトスね! お祝いをするって聞いたから、気分が上がってたらこんな格好になってましたー!」

 

それは違うのだが、マシュは一つずつ確認していく。

 

「えっと、ディア・デ・ムエルトス、死者の日は8月の物で、多分これじゃないです」

 

死者の日自体は、現世に戻ってきた死者を払ったり退けるのでなく、ともに楽しむお祝いであり、よくハロウィンやお盆などとの共通点が語られるが、夏の祭りである。

文化的にスペインが入ってきて、カソリックが広まっても広く親しまれているお祭りである。

 

「この飾りはどうしたのですか?」

 

「がんばりましたー、お菓子も用意して、お花も置いて、半分は野良ジャガーにやらせましたけどね。今はもう帰ってるから安心してね」

 

「な、なるほど。それは安心です」

 

これ以上場の混沌具合が上がってしまえば取り返しがつかないことになってしまう。そういう意味では安心であった。

 

だが、ともかく理由は何であれ、目の前に立ちふさがっているのは事実。しかも今回は自分のサーヴァントすらいない状態での戦いだ。

 

シンドバッドは奇襲をついて、神をルールで縛って倒していたけれど、ここにはそれができるほどの敵はいない。どうするべきなのかと悩むが、

 

「行くぞ! P!」

 

「はい兄様!」

 

ジェミニ仮面は問答は終わったとばかりに切りかかっていく。

 

「んー!相変わらずのヒールねぇ!」

 

この場にえっちゃんが呼べればと思った立香であったが、Pの剣がかすった瞬間にその考えは変わる。ダメージが通っているのだ。

 

「そうか! サンバで来ているから、戦う神の側面が前に出て! 絶対的な善性が失われているんだ!」

 

「サンバだからですね!」

 

立香は天啓を得たとばかりに、敵へと向き直る、無敵性がなければ十分戦える敵である。

 

「行くぞ! マシュ!」

 

「はいっ! 先輩!」

 

広いとは言え室内の中で戦う4人が入り乱れて、部屋の飾りがどんどん壊れて、より混沌とした内装へとなっている。立香はそれを少しだけ後ろめたく思いながら、戦いへと集中するのであった。

 

 

 

「空中技だと!」

 

「さすがのコンビネーションね!」

 

戦いは既に佳境に入っていた、両者ともに傷を負っており、戦況は互角。数で勝ることを考えれば、こちらが押されているといっても過言ではない。

 

数で勝っていて、戦力が優位ではないということは、敵は各個撃破という至極まっとうな選択肢で、いずれ有利になることができるのであるのだから。

 

しかしサンバケツァル・コアトルはそんなことをせずに、観客を盛り上げるように派手な技をかけて、そして技を受けてのやり取りを続けていた。

 

「マシュ! 令呪をもって命ずる! 思いっきり飛び込んで、押し込めっ!」

 

「了解です! はぁ!」

 

立香はこのタイミングだとばかりに、マシュに令呪で支援する。着地の衝撃を殺す為に、体勢に一瞬の隙が生まれた瞬間を見逃さなかったのである。気合を入れた掛け声とともに、彼女は突撃していく。

 

「真正面から受け止めまぁす!」

 

しかしケツァル・コアトルの力の前ではマシュの突進は受け止められてしまう。それでも令呪の力を受けてマシュは踏ん張る。このタイミングこそが勝機だと、いままで連れ添ったマスターの声でそう、確信したのだから。

 

「もう2画合わせて命ずる! マシュ踏ん張れ!」

 

「はいっ! マシュ・キリエライト! 全力で行きます!」

 

それでもカタログスペックで劣っている以上、この均衡は一瞬で崩れるものであった。だが、いつも彼がやってくれていた、強敵の意識をそらす行為。それを今回はマシュがやったのだ。

 

後はきっと決めてくれるはずだ。

 

 

「畏れよ」「崇めよ」

 

「天にて輝くもの導きの星」「我らは此処に降り立たん」

 

「『双神賛歌!』」

 

あらゆる防御を貫くその攻撃は、見事にケツァル・コアトルへと致命的なダメージを与える。まるで本来はこうしていれば倒せたのだというように、彼等の全力の一撃は確かにケツァル・コアトルへと通じ、見事勝利していた。

 

「お見事でーす!」

 

しかし、彼女は倒れても尚、楽しそうに笑っている。

彼女はそのまま何も言わずに消えていった。

 

まるで自分の役割を終えたかのように。

 

 

「さて、立香、マシュ」

 

「次が最後です、行きましょう」

 

ジェミニ仮面は、今の戦闘で宝具を発動したが、それでも正体に関しては何も言わずに先へと歩き出した。立香は終わりが近いことを感じながら、マシュと共に歩き出す。

 

きっとこの先に答えがあると思いながら。

 




今週中に最後まで行きます。

改めて好きなヒロインは?

  • シェヘラザード
  • マタ・ハリ
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  • 玄奘三蔵
  • ポルクス&カストロ
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