青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

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好きなキャラをぶちこんでみました。


1話 異世界召喚

「わーい♪どら焼きの特売でこんなに大量に買えたぞ!のび太くんに見つからないように大切に食べよう!」

 

ある日、何時もの行きつけのお店の特売で、どら焼きを買い占め、上機嫌なドラえもんは

ウキウキ気分で帰り道を歩いていた。

 

すると突然、道の真ん中に光輝く魔法陣らしきモノが現れ、ドラえもんは全く気づかずにその幾何学模様のサークルに足を踏み入れる。

 

 

その瞬間ドラえもんの姿はこの世界から消えさった····

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

とある城の豪華できらびやかな広い王室の真ん中に、奇妙な魔法陣が描かれていた。

そこに複数の少女達がお互いに顔を見合わせ動揺し、訳も分からず混乱していた。

 

 

  「な、なに!?ここはどこなの!?」

   「ピナ···ピナがいない!?」

   「ここは···?先輩···?先輩!!」

 

 「静まれい!!王の御前であるぞ!!」

 

 

鎧を身に付け武装している兵士らしき男達に怒鳴られ少女達は一様に沈黙し、目の前の豪華に着飾った初老の男、王とおぼしき人物に注目した。

 

隣には魔法使いと言って差し支えのない衣装に身を包んだ怪しげな男が卑しい目線で少女達を見下ろし、ニヤつきながら王に媚びへつらっている。

 

王らしき人物は少女達を物を品定めする様な視線で見渡し、咳払いをして話をしだした。

 

「ウオッホン。よくぞこの世界に来てくれた異世界より召喚せし勇者たちよ····むっ!なんだ?そこの勇者達の後ろにのびている、奇妙な青いタヌキの獣人は!?」

 

訳も分からずにこの世界に召喚されてしまった三人の少女達はいっせいに後ろを振り向くと、確かにそこにはタヌキに似た丸っこい奇妙な存在がいた。

 

「うう~んっっ····あれ?ここはどこ?君達は誰?」

 

さっき迄まで呑気にウキウキした気分でどら焼きの入った紙袋を抱えて家路を急いでいたのに、突然見知らぬ場所に連れて来られ、見知らぬ人間が此方を一斉に凝視しているこの状況でもドラえもんは割りかし落ち着いていた。

 

何故なら彼は幾度も地球の、世界のピンチを自らの秘密道具と信頼している仲間達と共に乗り越えてきた確かな自信と経験が有ったからだ。

 

(う~ん···何やらお城の王室らしき場所に、

中世的な格好の人達、床には魔法陣と呼べるモノが描かれているな···そしてここに場違いな現代風の学校の制服の女の子達。1人はそれっぽい格好だけど···うむむむ····?

これはもしや、暇潰しにスマホで読んだネット小説のお約束···異世界召喚ってやつかな?まさか僕がこんな事に巻き込まれるなんて。大概こういうのはのび太くんの役目なんだけどな····)

 

冷静にこの状況を把握したドラえもんに、

周りを囲っていた兵士らは一斉にがなり立ててきた。

 

   「∆∇∉≅≠∞℘~ЦХ!!」

 

しかし、お約束どうり言葉が全く通じない。

 

「何言ってるのかさっぱり分からないなぁ。

まあ、異世界だしね。よーし!ここはあの道具の出番だ」

 

この世界の人間達の言葉が理解できないと知ったドラえもんはお腹にくっつけてある

四次元ポケットに丸い手を入れまさぐった。

 

「えぇ~と···うん!あった、あった。

『ほんやくコンニャク』~!!

これを食べれば言葉を理解出来て会話が可能になるんだ!」

 

取り出したほんやくコンニャクを食べるとたちまち目の前の異世界の人間の言葉が伝わってきた。

 

「何だ貴様は!?奇妙な姿をしたタヌキの獣人めっ!他国のスパイかっ!?国の命運をかけた召喚の儀式の最中に堂々と乗り込みおって!!」

 

卑しい視線で少女達を眺めていた魔法使いらしき男は憤慨し、ドラえもんにとって最大の禁句(タブー)を口にした。

 

それを聞いたドラえもんは当然、頭から煙を吹き出して洗面器が入りそうな位大きな口を開いて全力で抗議する。

 

「コラー!!誰が狸だって!!僕は22世紀の未来の世界で作られた子守り用のネコ型

ロボットのドラえもんだー!!」

 

 

   ・・・・・・・・・・・・・

 

 

しばらくの間、城の中を気まずい空気と沈黙が支配し、少し間を置いてから魔法使いらしき人物のこめかみに余りの怒りの為、血管が浮かび、大声でがなり立ててきた。

 

 

「ネ、ネコだとぉ~!?ふざけるなっ!!

どこからどうみてもタヌキの獣人そのものだろうがっ!嘘をつくならもう少しマシな嘘をつけっ!」

 

全く信じてもらえず、益々兵士達の敵愾心を煽る結果となった。

 

「ぐぬぬぬ···それよりもあんた達、恐らくそこの床に描かれてある魔法陣らしき装置を使って、違う世界から無理やりこの娘達を強制的にこっちの世界へ呼び寄せて連れ出したんだな?なんてひどい真似をするんだ!こんな事この僕が許さないぞ!」

 

「黙れぇい!!王の御前でなんたる無礼···

もはや尋問も不要!即刻首をはねよ!!」

 

ドラえもんと魔法使いらしき人物。そしてこの状況に一向に口を挟めず成り行きを見守る三人の少女達····

 

三者三様に緊張感が高まる中、一匹のネズミがドラえもんの足元に駆け寄ってきた。

 

 

      「チュゥ?」

 

 

「えっ····?な、な、な····ね、ね、ね、ね······

ネズミぃぃぃ~~~!!!!!!!!!!」

 

 

その小さなネズミを見たドラえもんは周りの人間の耳が痛くなる程の大声を張り上げ、天井まで届く程高く跳ね上がって仰天した。

 

「ぎぃああぁぁ~!!??ネズミ!ネズミ!怖い!!怖い!!!」

 

「な、なんだあの青いタヌキの獣人、突然喚きだしたぞ!?」

 

ドラえもんの尋常ではない慌てぶりにこの世界へ連れてこられた三人の娘達も、王らしき人物を護衛している兵士達も訳も分からず動揺する。

 

そして、ネズミを見て理性を失い、狂乱したドラえもんはポケットから2つの道具を取り出した。

 

「こ、こうなればぁぁ~『ジャンボ・ガン』と『熱線銃』~!!」

 

ドラえもんが手にしたこのジャンボ・ガンは戦車を一発で粉々に吹き飛ばし、熱線銃に至っては鉄筋のビルを一瞬で煙にして消し去る威力がある危険極まりない秘密道具だった。

 

子守り用ロボットが何故この様なオーバーキルで物騒な道具を所持してるのか?

 

理解に苦しむが、とにかくドラえもんは最も忌むべきネズミに対して周りの事など一切お構い無しにその凶悪な威力のひみつ道具を躊躇いなく奮った。

 

「ネズミ····滅ぶべしっ!!

目の前から消え去れぇー!!えぇーいっ」

 

丸いゴムまりの手で引き金を引くと、凄まじい炸裂音が木霊し、ジャンボ・ガンの弾によって王室の壁や床は瞬時に粉々となってデカイ穴が生まれ、熱線銃から放たれた熱線によって柱や天井が白い煙となって消滅してゆく。

 

「う、うわぁぁー!!な、なんだあのタヌキの獣人の使っている魔道具は!?」

 

「ひっ、ひいぃぃー!!!」

 

「ひっ、怯むな!王をお守りするのだ!」

 

余りの凄まじい破壊力を目の当たりにして兵士達は混乱し、一種のパニック状態に陥っていた。異世界召喚された三人の少女達もこの状況に唖然となり、一歩も動けず目を点にしていた。

 

「い、いかん···信じられん!なんという威力じゃ。こ、このままでは城が崩壊してしまう···む、どうやら幸いにも魔法陣はまだ無事な様じゃな。ならば、我が魔法でこやつだけ消し飛ばしてくれるわっ!」

 

魔法使いの男は錯乱して暴れているドラえもんを取り押さえるのは不可能と判断し、かろうじて無傷な魔法陣を使って魔法を発動しようとしていた。

 

「今から放つ、この異空間転移の魔法はこのワシでも何処へ飛ばされるかは全く皆目つかん危険な術よ。この青いタヌキの獣人め····

何処の彼方へと消え去るがいいっ!」

 

呪文を唱え魔法が発動し始めた瞬間、ドラえもんの顔面にネズミが勢いよくへばりついた。

 

     「チュウゥゥ~!!」

 

「ギャアァァァー!!!ネズミがぁー!!!」

 

 

ドラえもんは更に錯乱して唖然としている少女達三人の周りを円を描くように何度も何度も高速で泣き叫びながら走り回った。すると魔法使いの放とうとしている魔法が発現し、ドラえもんと少女達三人がまとめて光輝くサークルに取込まれてゆく。

 

「なっ、なにぃー!?い、いかん!せっかく召喚した異世界の勇者達迄巻き込んでしまったじゃとぉ!?くっ、ダメだ!!魔法の発動が止められんっ!!」

 

 

ドラえもんと少女達三人は光に包まれ跡形もなくこの異世界から消え去った·····

 

 

その様子を一匹の不気味な風体をしたフクロウらしき鳥が天井の片隅でニヤニヤしながら見つめていた。

 

 

    「ホーホッホッホッ·····」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

魔法使いの異空間転移の魔法によって飛ばされた少女達は気がつくとそこは見知らぬ暗く深い森の中だった。

 

辺り一面草や樹木に囲まれ、冷たい風が吹き、容赦なく少女達三人の体温を奪ってゆく。辺りを見渡しても同じ様な風景で闇に包まれている。

 

少女達はお互い無意識に身体を寄せあい、身を縮み込ませて今のこの現状を必死で理解しようとしていた。

 

一つハッキリと分かるのは、この見知らぬ世界でこのままだと野垂れ死ぬという状況だけは三人ともすぐに理解してしまい、どうしようもない絶望感が全身を蝕んで行った。

 

「うう~ん···あれぇ?ここは?また別の世界へ跳ばされちゃったのかなぁ?」

 

遅れてようやく目を覚ましたドラえもんは周りをキョロキョロと見渡すと例の少女達に気がつき、声をかけた。

 

「あ、ねえねえ君たち、大丈夫かい?ここが何処だか分かるかな?」

 

「い、いいえ、私達もここが何処なのかさっぱり分かりません···先輩と何時もの様に帰り道を一緒に歩いていたら眩い光に包まれ、気がつくと城らしき場所で兵士の人達に取り囲まれて異世界から召喚した勇者だとか言われて、私も全く皆目がつかないんです···」

 

青と白の清涼感のある学校の夏服に身を包んだセミロングの美少女が同じく青と白の色をしたドラえもんに説明した。

 

「わ、私、皆とALOにダイブしてゲームを楽しんでいたら突然、光輝く魔法陣みたいなのに包まれて、気がつくとあの場所に居て···ピナ···」

 

三人の中で一番華奢で小柄な、髪を可愛く

ツインテールにしている美少女が瞳に涙を滲ませて不安気に呟いた。彼女の服装は赤を基調とし、胸当てを装着した如何にも異世界で活躍する冒険者風の服装をしており、三人の中でも一際異彩を放っている。

 

「あっ、私も私も!学園都市で初春と一緒に帰り道を歩いていたら同じ様に光のサークルに包まれて気がついたらあそこに居たんですよっ!!それで···その、あなたは一体···?

(どうみてもロボットだけど)」

 

三人の中で一番身長が高く、お(へそ)が丸出しの黒いスカートの夏服のセーラー服に身を包んだ美少女が艶のある綺麗で長い黒髪に白い花の形の髪飾りを揺らしながら興奮して事情を説明し、明らかにロボットであるドラえもんに誰なのかを聞いた。

 

「あぁ、ゴメンゴメン。ちゃんと自己紹介するね。僕は22世紀の未来の世界からやって来た子守り用のネコ型ロボット···ドラえもんって言うんだ。よろしくねっ!」

 

「未来の世界の子守り用のネコ型ロボットですか····(耳がないのに?)」

 

    三人共同じ想いだった。

 

依然として暗く冷たい風が四人の身体に突き刺さる。三人の内二人は学校の制服の夏服だった為、余計に身体が冷え込む。

 

「···は、ハックシュンっ!!うう~ん···ここは暗くて寒くてとてもかなわないなぁ···取り敢えずここはこの道具で····」

 

深夜の風に晒されて寸胴な体を震わせ、ロボットなのに大きなクシャミをしたドラえもんはお腹のポケットをまさぐる。

 

少女達三人も共に仲良くポケットに視線を集めた。

 

  「え~と···あったあった!これだ。

  『ポンプ地下室』!!」

 

ドラえもんは小さな箱の様な物を取り出して、地面をスコップで土を掘り箱を埋めた。

 

    「これでよし。それっ!」

 

ドラえもんが手動スイッチを押し入れると、ボォンッと爆発音と一緒に地面が軽く揺れ響いた。

     

     「きゃあっ!?」

 

少女達は驚いて思わず声を出してしまう。

 

「あ、ゴメン、ゴメン。驚かしちゃったね。これは地下室を作る道具なんだ。

さっ、この出入口から地下室へ避難しよう。ここは暗くてとても寒いからね」

 

先ほどドラえもんが埋めた箱の場所に金属製の蓋の出入口が出来上がっており、蓋を開くと階段が見えた。

 

  「さあ皆遠慮しないで入ってよ」

 

ドラえもんを先頭に三人は困惑しながら地下室の階段に足を踏み入れる。

 

  「三人とも、ここが地下室だよ!」

 

そこは天井がとても高く、ライトが付いていて明るくそして何より果てしなく広かった。

 

 

「····う、うわあぁぁぁー!!スッゴく広~いっ!!」

 

「こ、これはどのような仕組みなんでしょうか····?」

 

「出入口から奥までが全く見えないですね····」

 

 

三人共、右や左の奥行きや、高い天井へと頭を忙しなく動かし、目と口を開いて驚愕し、余りに常識外れなドラえもんの秘密道具の力に呆気に囚われていた。

 

 グ、グッグゥゥ、キュルルル~~~~!

 

すると夏服のセーラー服を着ている黒髪ロングの少女のお腹から健康的なお腹の虫が広い地下空間に鳴り響き、他の三人が一斉に注目する。

 

「·····あっ、ハハハハっ·····お恥ずかしい····

安心したら何だかお腹が空いちゃって····

ゴメンなさい!あ~本当に恥ずかしい!!」

 

あっけらかんと言ってみたものの、やはり恥ずかしくなり、セーラー服の少女は真っ赤になった顔を両手で覆って狼狽えていた。

 

「だ、大丈夫ですよ!じ、実は私もお腹が空いちゃってて····」

 

「何とか堪えていましたが、私もです····」

 

少女達三人はお互いの顔を見渡して思わずニッコリと笑い合った。

 

「ウフフ···さっきまで訳が分からないまま、

見知らぬ異世界からこの森の中へと跳ばされた状況でみんな緊張してたんだもの。

お腹が空いて当然だよ。さっ、取り敢えずご飯にしよう!」

 

ドラえもんは再びポケットに手をやり、中から絨毯とテーブルとソファーを取り出して設置し、最後にテーブルの上にチェック柄のテーブルかけを取り出して拡げた。

 

   「『グルメテーブルかけ』」

 

「あのぉ···これは一体何の道具なんですか?」

 

どう考えてもお腹の小さいポケットから物理的に収められない程の大きさの品物が次々と出てくるのをただ、唖然としながら見ていた小柄なツインテールの美少女は躊躇いがちに訪ねた。

 

「うんこれはね、食べたい物が何でも出てくる便利な道具なんだ!え~と、冷たい風に吹かれて寒かったから何か、体が暖まる物がいいな。よーし、熱々の豚汁とおにぎりと

卵焼きにタコさんウィンナーを四人分!あとお茶も」

 

ドラえもんがテーブルかけに向かって注文するとテーブルかけの上から注文した料理が熱い湯気と香ばしい匂いを立てて出てきた。

 

「うわー♥美味しそう!これって食べて良いんですか!?」

 

「もちろんだよ。その為に注文したんだから。さっ、冷めない内に皆で食べよう」

 

長方形のテーブルの真ん中にドラえもんが1人用のソファーに座り、向かい合って三人も仲良く大型のソファーに並んで座って手を合わせた。

 

「「「いただきます!」」」 「はい、召し上がれ」

 

皆一斉に熱い湯気が立つ豚汁を啜る。

 

「「「美味しいぃ~!」」」と、三人並んで感嘆の声を上げた。

 

「このおにぎりの適度な塩気と旨味がたまんないっ~!口の中に入った瞬間に柔らかくほぐれて最高!」

 

黒髪ロングの少女がおにぎりの美味しさに思わず感激の声を上げる。

 

「卵焼きも甘くてとっても美味しいです♥」

 

「タコさんウィンナーも食感が良くて脂の旨味がたまりませんね」

 

他の二人も負けじと卵焼きとタコさんウインナーの感想をウキウキとしながら述べた。

 

「ウフフ···皆遠慮せずにおかわりもしてね!」

 

ドラえもんは共に大冒険を経験した仲間達の顔を思い浮かべながら優しく微笑んだ。

 

余りにも美味しかったのでみんな次々とおかわりをして最後に熱いお茶を啜り、冷えた身体はすっかり暖まり、お腹も満たされて三人共とても幸せな気分を満喫していた。

 

 

「はぁ~···美味しかった!ごちそうさまでした。え~と、ドラえもんさん!」

 

「どういたしまして。えっと···そう言えばまだ名前を聞いていなかった···」

 

ハッとした顔になった少女の1人が立ち上って自己紹介を始めた。

 

「これは失礼しました。落ち着いたので遅ればせながら、自己紹介を···私の名前は

姫柊雪菜と申します。彩海学園中等部3年生の15歳です。よろしくお願いします」

 

三人の中でも特に落ち着きと品のある出で立ちで自己紹介を終えた雪菜は隣の黒髪ロングの少女に視線を送った。

 

「はい、次は自分ですね。私は佐天涙子って言います!棚川中学に通っている現在中学

1年の13歳です。皆さんよろしく!」

 

明るく元気に自己紹介した佐天はウィンクしながら、最後に小柄でツインテールの髪型をした少女に視線を送る。

 

「え、えっと私は綾野珪子と言います。

とある事情から特殊な学校に通っている現在···その···14歳です···」

 

遠慮がちに恥ずかしそうに自己紹介を終えた。佐天と雪菜の二人は共に巻き込まれた少女の年齢を知って互いに唖然としている。

 

「·····え、えっと····綾野珪子···さん?私てっきりあなたの事、小学生位かなぁ~って思ってました···スミマセン·····」

 

「わ、私も佐天さんは私よりも年上のお姉さんだとばかり思ってました····」

 

「こ、この三人で一番年上が私で、一番年下が佐天さんでしたか···私よりも身長があるので、てっきり年上だとばかり···綾野さんは私の一つだけ年下ですか···」

 

三人の間に何とも気まずい空気が流れる。

 

しばらくの間三人共顔を見合わせ、思わず

一緒になって笑い合った。

 

そして全員、気持ちを一つにしてソファーから立ち上がって正面に座っているドラえもんに向かって頭を下げて礼を言った。

 

 

「「「助けてくれてありがとうございました」」」

 

 

ドラえもんは三人の大きい声でのお礼に思わずお茶を吹き出す。

 

「オットト···いやいや、そんなに頭を下げなくてもいいよ。僕には便利な道具があったからどうにか出来ただけ何だから···」

 

謙遜して照れるが結構満更でもない気持ちに包まれたドラえもんは少し思案して、改めて三人にこれからの行動指針を提案する。

 

「え~と···姫柊さん、佐天さん、綾野さん。

僕らは皆、いわゆる異世界に跳ばされてここに居ます。まだどうすればここから全員元の世界に帰れるのか検討もつきません。 

だけど、僕が必ず何とかするから一緒に行動しませんか?」

 

「は~い!ぜひぜひ、お願いします!何しろドラえもんさんがいなかったら、私達全員野垂れ死ぬのは確実ですから····それとあなたの事はドラさんって呼んでいいですか?後々、私の事はちゃん付けでお願いします!!」

 

「ウフフ···分かったよ。別に好きに呼んでいいからね」

 

「そ、それじゃ私はドラえもんさんをドラちゃんって呼んでいいですか?それと私の事は名前呼びでお願いします」

 

「私も、私も!ドラえもんさんって呼びたいです!それと皆さん、私の事は『シリカ』って呼んで下い」

 

皆一様に自己主張して呼び方を決め合った。

 

「それじゃ改めて···雪菜ちゃん、佐天ちゃん、シリカちゃん。皆よろしくね!」

 

      「「「はいっ!」」」

 

    皆満天の笑顔で返事をした。

 

「さてと···お腹も膨れて自己紹介も終わった事だし、お風呂と寝床の準備もしなくちゃね」

 

お風呂と聞いて三人共ワクワクした面持ちになる。

 

「ワーイ。やった~お風呂だー!!···って、

えぇ~と嬉しいですけど、この地下室のどこにそんなのあるんですか?」

 

広いポンプ地下室周辺をざっと一通り見渡した佐天涙子は怪訝な顔でドラえもんに尋ねた。何しろこの空間にはドラえもんがポケットから取り出したふかふかの絨毯に座り心地の良いソファーと長方形のテーブルしか設置しておらず、殺風景で寂しい雰囲気を醸し出していて、後は出入口の階段位しか見当たらなかったからだ。

 

そんな佐天にドラえもんは優しく微笑みながらポケットに手をやる。

 

「ウフフ···それはね、佐天ちゃん。この道具を使うのさ!『壁紙ハウスシリーズ』~!!」

 

ポケットから複数の巻いた紙を取り出して出入口の隣に順番に紙を広げて次々と壁に張りつけていった。

 

「ドラさん、ドラさん!それってどんな道具何ですか?」

 

瞳をキラキラ輝かせてドラえもんに迫る佐天涙子はこの三人の中で一番好奇心が強く誰よりも興奮していた。

 

「うん、これは壁に張るとね、それぞれの用途に応じた特殊な空間の部屋が出来るんだ。入って見てよ」

 

「はーい!それじゃお二人も一緒に行きましょう♪」 

 

佐天は知り合ってまだ1日も経っていない姫柊雪菜とシリカこと、綾野珪子の手をグイグイと引っ張って、こぼれそうな位の笑顔で壁紙ハウスの中へと入って行く。

 

「は、はい···!

(この人の強引さはリズさんに似てる!!)」

 

「少し落ち着いて下さい佐天さん!(この人は何だか、凪沙ちゃんに似てますね···)」

 

好奇心旺盛、天真爛漫で積極的な佐天の仕草にシリカは若干尻込みし、雪菜は少々呆れながら二人揃って、元の世界の友人の姿を彼女に重ねていた。

 

壁紙入浴場に足を踏み入れるとそこはスパリゾートを思わせる高級感溢れる贅沢な作りになっており、お風呂はライオンヘッドの口から天然温泉が溢れる程流れだし、とても広くて泳げる程の規模であった。

 

   「ゴクッ···す、凄いです···」

 

圧倒的な設備の豪華さにシリカは唾を飲んでため息をつく。   

 

「どう?気に入って貰えたかな?」

 

「いやいや!?ドラさん、気に入るも何もこんな豪華なお風呂なんて、私初めてですよ!?こんな贅沢していいんですか?もしかしてこれって夢ですか?幻なんですか?」

 

ドラえもんの道具の凄まじい恩恵に、佐天は困惑して軽く現実逃避した。

 

「さっ、佐天さんこれは紛れもなく現実です。しっかり気を持って下さい」

 

一見冷静そうな雪菜もドラえもんの底知れない道具の力に密かに戦慄を覚えていた。

 

(これって仮想空間じゃないよね?ちゃんとここは現実だよね?)

 

実はシリカも自分は、何らかのバグが発生した他のVRMMORPGの世界に巻き込まれたんじゃないかと勘繰り、自分で自分の頬を密かにつねっている。

 

「夢でも幻でもないから安心してよ

佐天ちゃん。あと、隣の壁紙寝室の中はふかふかのベッドが用意してあるから皆ぐっすりと休めるよ」

 

 三人共もう夢心地の気分に浸っていた。

 

「それじゃ皆ゆっくりと温泉に浸かって疲れを取ってね!」

 

「···ハッ!待って下さい。あの···よかったらドラさんも一緒に入りましょうよ!お背中流しちゃいますよ~♥」

 

意識を現実に戻した佐天涙子は大胆な提案をする。

 

   「えぇっ!?い、イヤ僕は····」

 

「ちょっ、ちょっと佐天さん!?なんて事を提案するんですかっ!ドラちゃん困ってるじゃないですかっ!」

 

佐天の大胆な提案に割りかし冷静だった雪菜は結構動揺し頬を赤らめた。

 

「いやいや···姫柊先輩···ここは恩人であるドラさんの背中くらい流すのが礼儀ってもんですよ?」

 

「恩人に礼をするのは分かりますが···それと私の事は名前呼びで構いません」

 

「わ、私もドラえもんさんのお背中流したいです!」

 

若干、おいてけぼりな感じのシリカも佐天に負けじと大胆な自己主張をした。

 

三人共皆、ドラえもんに深く感謝していて、どうにかこの恩義に報いたいと思っていたのだ。

 

そんな佐天の提案にドラえもんは何も言えず、顔を真っ赤にして一人そそくさと壁紙押し入れの中に入り、布団にくるまって就寝するのであった。

 

 

 

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