青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

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戦闘描写は難しい···気になった部分があったら是非教えてください。


10話 試し合い

電光丸をドラえもんから借り受けた佐天は実際の力を試す為、雪菜と試合する運びとなった。 

 

 

雪菜は雪霞狼(せっかろう)と変わらぬ感覚で訓練棒を構え、佐天はやや、右寄りに両手で電光丸を握りしめ相対した。

 

 

互いに見つめ合って対峙し、心地の良い緊張感が流れる。

 

 

(···やはり佐天さんは構えからして素人そのものですね。しかし、ドラちゃんのあの刀はコンピューターでほぼ、自動的に効率的な対処をしてくると言ってました···まずは牽制という意味で軽く突いて様子を伺いましょう)

 

 

先ず雪菜が先手を取って、牽制の為の何の変哲の無い軽い突きを佐天の胸元当たりに繰り出した。すると佐天の握っている電光丸の内部コンピューターが鋭く反応して佐天の身体を動かして対処してきた。

 

 

「わわっ!?か、身体が勝手に!これが電光丸の能力!?」

 

 

佐天は驚き、動揺してはいるが動きそのものは電光丸によって強制的に制御されて効率的な対処をしてきた。

 

 

雪菜の放った突きを佐天こと電光丸は棍の側面から刀の腹の部分で容易くさばき、その動きの流れのまま逆に突きをお見舞いした。雪菜はほんの一瞬、ハッとした表情を見せるも冷静にこれを難なく回避し、同時にそのまま佐天の左側面へと移動して今度は左下段からの払いを打ち出した。

 

 

佐天からは見えない死角の部分からの払いは直撃するかに思えたが、これも電光丸で一瞬だけ受け止めつつ、刀を滑らせて先ほど同様に突きを繰り出した。

 

 

「おっととっ!?わったた!?」

 

 

急な自分の意志とは無関係な動きに佐天は翻弄されているが、あくまで電光丸の内部コンピューターの判断は鋭く、カウンターを放つ。

 

 

雪菜は身体を小さく回転して避けて逆側からの右下段払いを放つ。

 

 

だが、これも鋭く反応されて、佐天はアクロバティックな動きで受けてカウンターで雪菜の脳天に刀が撃ち込まれ様としたが、紙一重で回避してバックステップで距離を取った。

 

 

「····す、凄い····」

 

僅かな時間での二人の無駄の無い流れる様な攻防に、シリカは唖然とした顔で二人を見渡した。

 

 

「ひっ、ひえぇぇ~·····!?あ、あんな動きが出来るなんてぇ···!」

 

 

佐天は普段なら到底こなす事が不可能な動きに驚きつつもどこか楽し気になっている。一方の雪菜は冷静な表情を崩さず、構えにも隙はなく一定の距離を保ちながら頭の中で巡るましく思考を回転させていた。

 

 

(成る程····流石ドラちゃんのひみつ道具ですね。軽い牽制や様子見での攻めでも的確に対処されて来ます···佐天さんの方は思ったとおり、あの電光丸からの強制操作によって自分の意志とは無関係に身体を動かされている。初めて行う試合に、初めて扱う武器という事もあって、完全に道具に翻弄され振り回されているだけですね···)

 

 

しばらく二人は目線を合わせた後、

雪菜は小さく息を吐きながら、摺り足で傍目からは分からない動きで距離を詰めていた。佐天自身は視力こそ驚異的に高まっていたものの、闘いに関しては図太の素人故、雪菜の繊細な動きに気がつかず、武器のリーチ差も相まって距離を分からない内に詰められ佐天の反応は遅れた。

 

 

雪菜は胸元への突きと見せかけて、棍の先端を少しせり上げて喉元へと突きを放つ。

 

 

だが、佐天自身の反応は遅れても電光丸そのものは反応して、これも容易く握っている佐天を振り回す形で対処してきた。電光丸の刀身の切っ先が棍に触れ、滑らせて突くはずが、武器同士接触するや否や雪菜は手首を捻って真っ直ぐな突きを螺旋状の動きに変化させて刀身を弾いた。

 

 

「なっ!?とっととっ···!」

 

 

佐天の身体はバランスを崩して雪菜から見て左側へと重心が寄り佐天の左側面はがら空きとなった。

 

 

ギリギリの僅かな刹那のタイミングで電光丸からのカウンターをさばき、生じた僅かな隙を逃さず雪菜は右上段からの払いを放つ。

 

 

電光丸は佐天の身体を操って片寄った右脚の重心をスムーズに回転させて上段からの攻撃を受け止めた。だがそれを読んでいた雪菜は受け止められてた部分を始点にして棍を半回転させ左下段払いへと変化させ、佐天の右脚部分を狙って放った。

 

 

決まる。そう確信したがその瞬間、雪菜の視界から佐天の身体は消え去り雪菜の全身の細胞が一気に泡立った。

 

 

幾多の戦闘の経験から電光丸の反応に引けを取らぬほどの(はや)さで雪菜は佐天からの空中で半回転しながら放たれ首筋に迫る刃を寸前で身体を沈み込ませて回避運動し、勢いそのままに床に棍を叩きつけてその反動で棍を跳ね上げて佐天に打つ。

 

 

だが、これも電光丸の抦の部分で防がれた。

 

 

「あっ、あっ、あわわヮヮッ~!!?」

 

 

佐天はもう何が何やら訳が分からずにふらついていた。

 

 

雪菜は軽く小さなため息をついた。電光丸の能力がどれ程なのかを探りを入れたのだが、(ことごと)く対処され、ほんの僅かだが呆れる様に感心していた。

 

 

(佐天さんの膂力、疾さは共にごく平均的な女子そのもの····ですが電光丸による反応と対応力が余りに卓越している····今の所私の方から攻めて佐天さんの方は受けてからのカウンターに終始している···少しだけアドバイスして流れを変えてみますか)

 

 

二人の闘いの様子を伺っていたドラえもんは佐天にアドバイスした。

 

 

「佐天ちゃんー!!受けるだけじゃなくて、今度は自分から攻めてみようか!」

  

 

(ドラちゃんが先に言ってくれましたね。さて、どうなるか····)

 

 

「えっ?は、はい!やってみます!」

 

   

やや、躊躇いがちながら、佐天は上段に電光丸を大きく振りかぶって勢いよく突進してきた。

 

 

「とっ、とおりゃあぁぁ~!!」

 

 

どこか間延びした気合いを込めて佐天は電光丸を振りかぶった。

 

 

(やはり佐天さん自身(・・・・・・)の動きは大きく隙だらけ。しかし電光丸の強制動作で鋭く踏み込んでくる。今度は私からカウンターを仕掛けてみましょう)

 

 

雪菜は(はや)く無駄なく上から向かってくる斬撃を右側へ身体を動かして回避し、その動きと同時に先程よりも更に鋭く佐天の左肩を狙って打った。

 

 

だが、これも電光丸に無理矢理身体を引っ張られ、映画マト〇〇クスの弾除けシーンみたく下半身のみをその場で固定して上半身のみを巧みに動かし、寸前で躱して腰と腕を捻ってお返しとばかりにカウンターで上段から雪菜めがけて刀身を振ってきた。

 

 

雪菜は剣巫の得意技である霊視を使用し、一瞬先の未来を読んで縦方向に棍を回転させてこの攻撃を防ぎ、右脚で佐天の両足を払った。

 

 

「うわっ!?」

 

 

両足を払われて一瞬だけ空中に浮いて隙だらけの状態になったこのチャンスを逃さず、雪菜は両手を巧みに動かし棍を回転させて斜め上段から放った。

 

 

(これならっ!)

 

 

今度こそ当てたつもりだった。しかし雪菜の霊視を持ってしても先読みの叶わない超反応で身体を空中で半回転してこれすらも避けられた。

 

 

「これも反応して避けるのですかっ!?」

 

「ハァッ、ハァッ····たっ、助かったぁ~!!」

 

 

 

思わず口に出して動揺する雪菜。当の佐天は無理な動きを電光丸にさせられて息を激しく切らしていた。雪菜との攻防による緊張感も相まって自身の想像以上に身体に疲労が重なり始めている。

 

 

どうすればこの超反応を上回れるのか思考するが、慣れてきた佐天はその隙を逃すまいと積極的に突進して、何度も電光丸を縦、横、斜めへと斬り込んできた。

 

 

「行きますよぉ雪菜さんっ!う~りゃりゃりゃあぁぁー!!」

 

 

互角に立ち回れている高揚感に支配されて自分の体力を考慮せずに勢い任せに刀を振るうも常に冷静な判断力で雪菜は回避しながら思考を絶えず続けている。

 

 

(佐天さんの体力切れを狙ってもいいのですが、それでも恐らく電光丸に強制的に動かされて逆にこちらの体力を削られる羽目になる可能性が十分にある····これではもはや、佐天さん自身が電光丸を動かす道具扱いになっていますね·····そうかっ!なら佐天さんと電光丸を切り離せば····!試してみましょう」

 

 

 

雪菜はバックステップで一旦距離を作り、槍術の基本の構えをして静止する。

 

 

それをチャンスと捉えて佐天は自身の意志で電光丸で踏み込んで突きを放った。

 

 

雪菜は霊視で突きの速度とタイミングを見極めてギリギリ当たる寸前まで佐天を引き寄せる。

 

 

「·····ここですっ!!」

 

 

雪菜は電光丸の切っ先を棍の先端で押さえ、向こうが刃を滑らしてくる動きを上手く利用し、刃の軌道に合わせてすかさず螺旋の動きで絡め取って捲き込み、電光丸を弾いた。

 

 

「きゃああっ!?」

 

 

槍の代わりの棍を巧みに操り見事に佐天の手から電光丸を切り離して無力化に成功し寸止めで棍の先端を彼女の喉元に向けた。

 

 

 

「ありゃ······?ひえェェ~!!ま、参りましたぁぁ~!!降参!降参ですぅ~!!」

 

 

遠く床に転がる電光丸を見て佐天は慌てて降参し、雪菜は試合に勝利した。

 

 

「お二人共ご苦労様です。ケガをしないか私もう心配でハラハラしましたよぉ···」

 

 

シリカは試合に夢中ににりつつも、二人がケガをしないかと胸を痛めていたのだ。

 

 

「いやぁ~アッハハハ····私は大丈夫ですよ。かすり傷一つありませんから。心配してくれてありがとうシリカさん!」

 

 

「····私も問題ありません。ありがとうございますシリカちゃん」

 

 

雪菜は佐天から電光丸を切り離すことで勝利した。だが、当の本人は結果に満足できずに悶々としていた。

 

 

(本気を出さなかったとはいえ、結局ああして佐天さんから電光丸を切り離して無力化することでしか対処出来ないとは我ながら情けない結果ですね。

自分の未熟さに腹が立ちます····それにしてもドラちゃんの道具の効果は凄まじい···素人がただ道具を持っただけであそこまで強くなれるとは···もし、これが仮に私の敵対する勢力に知られ渡ったらどうなるかなんて想像したくないですね)

 

 

結局の所、電光丸を所持した佐天に有効打を打ち込めず、苦肉の策として無力化することで辛くも勝利を拾っただけの結果に満足行かない雪菜だった。

 

 

「どうだった。雪菜ちゃん、佐天ちゃん。感想は?」

 

 

「いやぁ~本当に凄いですね、この電光丸って道具。結局負けちゃいましたけど、雪菜さん相手にあれだけ粘れましたからこの道具は非常に気に入りましたよ!」

 

 

「フフフ。それは何よりだよ。それは佐天ちゃんに貸して上げるから上手く活用してね」

 

 

「えっ!本当にいいんですか?こんな凄い道具を····ありがとうございますドラさん!」

 

 

「雪菜ちゃんもこの道具を試して見るかい?」

 

 

「····いえ、すみません。私は、私自身の力を優先的に用いて戦い、先ぱ···いえ、元の世界へ帰りたいと考えてますので。····あっ!その、決してドラちゃんの道具の力や佐天さんの試合を否定して貶めるつもりはありませんので···誤解なさらないで下さい!」

 

 

「ウフフ。大丈夫だよ雪菜ちゃん、ちゃんとわかっているからさ。ねっ、佐天ちゃんもそうでしょう?」

 

 

「はい!勿論ですよ!雪菜さんは確か···攻魔師···?と、剣巫···?でしたか?その幼少からの鍛練で培った力で戦うのは宣告承知してますから気にしないで下さいよ」

 

 

「····ありがとうございます。でも次こそは必ずあんな苦し紛れのやり方ではなく実力であの電光丸の力を上回ってみせますからね!」

 

 

(やっぱり雪菜さんってやたらと好戦的で自分の技に誇りがあるタイプだなぁ····)

 

 

「そのぉ···疲れているかも知れませんが、次は私と何方か試合をしてくれませんか?」

 

 

少しシリカが申し訳無さそうに試合を希望した。

 

 

「でしたら私が相手をしましょう。正直な所シリカちゃんの演武を見せられて機会があれば立ち合ってみたいと考えてましたので丁度良かったです」

 

 

「は、はい!雪菜さん、胸をお借りします」

 

 

「今度はシリカさんが試合ですか。さっきの技、スゴかったですもんね。二人共頑張って下さいね!」

 

 

こうして次はシリカと雪菜が試合をする事になった。

 

 

シリカがドラえもんから貸してもらった硬質のゴム製ナイフを構え、雪菜も棍を佐天の時同様に構え対峙した。

 

 

「それでは···行きます!」

 

 

シリカが先攻ダッシュして雪菜との間合いを詰めようとした。棍と短剣ではリーチの差は明らかでその差を足の速さで埋めようとする。

 

 

シリカが足を急ブレーキをかけて一瞬雪菜もそれに合わせてしまい、僅かな隙が生まれた。そこをシリカは見逃さず雪菜の背後に急旋回して間合いを詰め、ダガーを繰り出す。

 

 

雪菜は咄嗟に棍を短く持ち直してこれを難なく防ぎ、シリカは間初入れずにまたも高速移動しながら常に自分の攻撃の届く範囲を見極め、雪菜を中心にして周囲を回り隙を伺っている。

 

 

そんなシリカの戦い方を雪菜は冷静に分析していた。

 

 

(先程の演武の時よりも明らかに速く動いていますね。スピードには私も些か自信はありますがシリカちゃんの方がより疾い····!佐天さんの時は速いというより無駄が無い動きに対してシリカちゃんは逆にわざと無駄な動きをフェイントにして本命の動作を隠している感じがします)

 

 

シリカは素早い動きで雪菜を翻弄しつつ、ダガーに力を込めてまだ誰にも見せていない短剣のソードスキルを発動させ様としていた。

 

 

(雪菜さん相手に長引かせるのは悪手。だったら最初から全力で惜しみ無くまだ見せていないソードスキルを連続で叩き込むのみっ!行きますよ!)

 

 

シリカは更に脚の速度をはね上げ、未知のソードスキルを発動させた。 

ハイ・スピードで雪菜の左側面へと移動し発動。

 

 

(トライ・ピアース!!)

本来なら鎧の隙間を縫う様に3連続の刺突するのだが、今回は雪菜の身体の部分を3つに分けて突いた。

狙うは左側の肩、腕、手の甲を狙って鋭く放った。

 

 

雪菜は躊躇う事無く霊視を使い一瞬先の未来を読み、シリカがどの様な攻撃を仕掛けるのかを読んで冷静に対処する。左腕を狙ってくるのが分かったので素早く棍の中程に手を寄せて梃子の原理で回転させてこれをいなした。

 

 

(くっ!霊視を使わざるをえない速さ!!本人の小柄さと相まって余計に速く感じられます)

 

 

(やっぱり反応して簡単に防がれた。なら、これでどうですかっ!)

 

 

デモンストレーションで見せた驚異的な跳躍力で右側、左側と交互に行き交い振り向き様にダガーの斬撃。雪菜もただ、様子見するだけでなく、棍を短く持って対応し、シリカの攻撃をさばきつつ、カウンターで応戦。シリカもそれを寸前で避け、次のソードスキルを密かに発動させた。

 

 

(ダガーが光ってる。また何かソードスキルを発動するんですね)

 

 

如何に速く動こうともソードスキルを発動させようとすると得物が光を纏って輝いてスキルを発動するのが簡単に露見してしまうのはデモンストレーションの時に既に分かりきっていたので、シリカはそれを逆手に取ってフェイントに使用した。

 

 

ダガーにエネルギーの塊が蓄積して輝くがシリカはギリギリまで発動させず、正面から跳躍して上段に斬り込んできた。雪菜は難なく反応して突きを放つが、その突きがシリカを捉えたと思った瞬間に彼女の姿がまるで蜃気楼の如く消え去り雪菜の突きが虚しく空を切った。

 

「なっ!?」

 

完全に捉えた。そう確信した棍を見つめるも、雪菜は背後からの圧迫感(プレッシャー)を鋭敏に感じ取る。

 

 

(シャドウ・ステッチ!!)

このソードスキルは相手の懐や背後に忍び寄って短剣の峰や柄で3回殴る打撃スキルで強襲、奇襲に最適なスキルで、シリカはこれをギリギリまで発動を送らせ、敢えて正面から斬り込み、カウンターを受けるタイミングを見定めてスキルを解放。スキルによる半強制行動により、雪菜から見るとまるで蜃気楼の如く姿が消え去って背後へと移動していた。 

 

 

(これならっ!)

 

 

シリカは確実に当てられると確信した。がっ、雪菜は幾多の戦闘経験から背後からの存在に咄嗟に反応してしゃがみこんで棍を後ろ手で脇に抱え込み、棍の先端を地面に打ち付け、その反動で、そのまま棍を背後から脇へ伸ばしてシリカの装備している胸当てに当てた。

 

 

「なっ!?きゃあっ!!」

 

 

スキルによる特徴でフェイントを仕掛けて完全に裏をかいた筈だった。

だがこれにも雪菜は見事に対応し、しかも当てる部分にも配慮して手加減する余裕を見せた。

 

 

「す、凄い·····」

 

佐天は高まった視力で誰よりも細かく二人の攻防と駆け引きを見つめ、息を洩らした。両目を淡く緋色に輝かせながら····

 

 

胸当てに棍を当てられ、たたらを踏みながら着地し、シリカは次の一手の為、再び高速移動を始めた。

 

 

スキルでの使用ではないラウンド・アクセルの動きで雪菜の周囲を高速回転で囲み、死角から斬撃を仕掛けるが雪菜に容易くさばかれた。

 

 

(スキルによる動きを通常に真似て仕掛けるのは良いのですが、その動きは既に見切りました。スキルの強制行動と比べれば驚異とは思えません!)

 

 

シリカは雪菜の対応力に圧倒され思考に迷いが生じ、動きが一瞬鈍る。それを見逃す程雪菜は甘くなく、繊細に棍を操り、シリカの右腕の衣服の袖に棍を忍び込ませそのまま手首を捻って螺旋のうねりで衣服を絡めとり軽量のシリカを投げ飛ばした。

 

 

「なぁっ!?きぃああぁぁー!!」

 

 

「ええぇっ!?嘘でしょう!?棒であんな巧みにシリカさんを投げるなんてっ!?」

 

 

投げ飛ばされたシリカは動揺しつつも何とか壁を蹴って態勢を整えて再び雪菜と向かい合った。雪菜は依然として構えを崩さず、心の乱れも無く正に明鏡止水の面持ちで研ぎ澄まされていた。

 

 

シリカは息を整え深呼吸し、今までの仮想空間での経験を反芻していた。

 

 

(フゥ·····落ち着け、私。····雪菜さんは私以上に生身での戦いに身を投じてきた本当の強者····ただ、速度を上げただけじゃ簡単に対応される····なら、おいそれと対応しづらい動きで攻める!!」

 

 

雪菜との攻防がシリカを、綾野珪子を、SAO時代の【シリカ】へと目覚めさせ、この瞬間にも彼女を成長させていた。

 

 

シリカはさっき迄の激しい動きは影を潜め、ただ正面から真っ直ぐに雪菜を見つめながら歩いてゆく。

 

 

····穏やかだった。闘志も過剰な気負いも感じられずただ正面から歩んでくるシリカに雪菜は僅かながらも違和感を感じ取った。

 

 

(何ででしょう···シリカちゃんからは何かを仕掛ける気配が感じられなくなりました·····

ただ私の所へ歩いてくるだけ····?遅い····?

いえ、遠い·····!?····いえ、違います!これは·······低いっ!!)

 

 

シリカは雪菜の手にしている棍の長さを見極めて彼女の制空圏にゆっくり(・・・・)と歩み、制空圏に触れるや否や自然な感じで倒れ込んだ。

 

 

床にぶつかる寸前に足先に力を入れ、地面スレスレの高速の超低空の突進突きをシリカは放った。

 

 

剣巫の霊視はあくまでも目で確認出来る対象の一瞬先の未来を読むもので、如何に強力であっても目視確認出来なければ余りに無意味。知らずにシリカは霊視の弱点を突いていた。

 

 

懐を掻い潜って足元に突進してくるシリカに気づいた雪菜はかろうじて反応し、棍の先端を床に突き刺して、その反動で空中へ飛び、ギリギリにシリカの超低空からの突きを逃れる。

 

 

「まだですっ!諦めません!!」

 

 

シリカは左手を床に叩きつけ、そこを起点にして身体を一回転しっ、遠心力を利用して強く地面を繰り上げ空中に逃れた雪菜を追撃した。

 

 

(はや)いっ!しかしっ!」

 

 

雪菜は下から迫りくるシリカの突きを棍でいなそうとするがシリカの本命は別にあった。

 

 

いなす動きの棍にダガーを擦る様に引っかけ、それを足場にして蹴って更に雪菜より上空に跳躍する。

 

 

「私の更に上をっ!?」

 

 

雪菜より天高く跳躍して地下室の天井に身体を捻って蹴りを放って加速し、雪菜の頭上に迫りながらシリカはソードスキルを発動させた。

 

 

「ハァー!!ここだぁー!!グラヴィティ・マグナム!!」

 

 

『グラヴィティ・マグナム』それは短剣上位のソードスキルで弾丸の如き速度で敵の脇を通り抜け、背後から斬り掛かる4連撃。

 

 

二つの攻撃をフェイントに使い、本命のソードスキルに今の自分の全てを注ぎ込んだ。 

 

 

空中で逆方向に突進して背後を取ったシリカは勝利を確信した。だがっ、

 

 

「私は···負ける訳にはいかないんですっ!」

 

 

雪菜は迫りくるシリカのソードスキルに対抗するべく八雷神法(やくさのいかずちのほう)を使用した。

 

 

八雷神法(やくさのいかずちのほう)。それは獅子王機関の高神の杜で仲間達と共に厳しい修行で身に付けた呪式戦闘術で、素手で魔族と対等に渡り合える程の力を雪菜はその身に宿していた。

 

 

若雷(わかいかづち)土雷(つちいかづち)鳴雷(なるいかづち)伏雷(ふしいかずち)!!」

 

 

雪菜は霊気を原料に呪力を手、足、肘、膝に纏ってシリカの本命のソードスキル、グラヴィティ・マグナムの4連撃を攻撃的防御で全て迎撃し、相殺して防いだ。

 

 

全て迎撃相殺されたシリカは、驚きの声を上げる。

 

 

「そ、そんな全て防がれたっ!?」

 

 

「これで終いです!火雷(ほのいかずち)!」

 

 

雪菜は掌底に呪力を高密度に集中させてシリカの胸当てに放った。

 

 

「ぐうぅー!!私もあの人みたいに···

明日奈さんの様にっ!!」

 

 

ここで、シリカはSAO生還者の意地と根性を見せた。カウンター気味にダガーの斬撃を雪菜に放ち、辛うじて相討ちの形になった。

 

 

二人は着地の事などすっかり頭から忘れてしまっていて、お互いバランスを崩していた。そこをすかさずドラえもんがポケットからひみつ道具を取り出した。

 

 

「二人共危ないー!!『救命クッション』ー!!」

 

ポヨンッ!! 「きゃっ!?」

 

「うひゃっ!?助かりましたぁ~!!」

 

 

フリスビーの様に救命クッションを投げて見事にシリカと雪菜を救い、無事、ケガ一つせずに試合···と呼ぶには白熱し過ぎた二人の対決はこうして終わりを迎えたのだった。

 

 




捕捉説明。今回佐天ちゃんの能力の発動を期待していた方申し訳ありません。
雪菜との試合では雪菜は全く本気ではなく殺気もなかった為、電光丸の威力もそれ相応の出力なので佐天の能力は発動までには至らなかったのです。
本人も道具に振り回され、翻弄されて危機を感じていなかったので。
ただ、シリカのお披露目の際発動描写を入れたのは佐天が無意識に彼女から実戦の匂いを感じた為とシリカと雪菜の試合も実戦を感じさせたので発動の描写を入れたのです。期待を裏切る展開であったなら申し訳ありません。以前にも書いたのですが本作品は作者である私が書くことに変わりありませんが皆様と共に作っていけたなら幸いです。これからも応援よろしくお願いします。



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