雪菜とシリカの試合···というには余りに熱を込めすぎた模擬戦は両者相討ちという形で終了した。
「雪菜さん、シリカさん二人共大丈夫ですかっ!?」
佐天が二人の身を案じて駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫です佐天さん」
「私も問題ありません。心配してくれてありがとう佐天さん。それと、助かりましたドラちゃん」
「うん!間に合って良かったよ」
「いやぁ~しかし、お二人の試合凄かったですよ!シリカさんはあんなに素早く動いて、ソードスキルとそれを囮に使っての駆け引きも見事で、雪菜さんはどんな動きにも対応してあんな格好いい技も持ってて私見惚れちゃいましたよっ!」
「テヘへ、まあ、全部簡単に防がれちゃいましたけどね」
「最後はシリカさんの予想外のカウンターにしてやられてしまいました····最後の最後に気を抜いて···やはり私はまだまだ未熟。自分のツメの甘さに腹が立ちます」
「まあまあ、自分を責めるのはそれ位にしてさ、みんなで休憩して甘い物でも食べよう」
「賛成、賛成!」
「私も賛成です!」
ドラえもんがおやつ休憩を提案すると佐天、シリカは大喜びで賛同した。雪菜はそんな二人を見て「しょうがないですね」とやや、呆れながらも一緒にテーブルに移動した。
ドラえもんはグルメテーブルかけからおやつにプリン・アラモードを注文した。三人の前に透明に輝く器の真ん中にカスタードプリン、その横にバニラアイス、キュイ、ミカン、サクランボ等の各種フルーツが添えられ各間に甘そうな生クリームが綺麗に飾られている。豪華な盛り付けに三人の食欲は大いに刺激された。
「さあ、召し上がれ♪」
「いただきまーす♥×3」
「ウフフ。みんな嬉しそうで何よりだ」
ドラえもんはどら焼き・アラモードを頼んでみんなを優しく眺めた。
ーーーーー
「はあぁぁ~·····美味しかったぁ·····♪」
「私、今とっても幸せですぅ····」
「本当に美味しかったです。いつも本当にありがとうございます。ドラちゃん」
「もう~雪菜ちゃんったら···そんなに畏まらくてもいいんだよ?もう少し気を楽にしていいんだからさ」
「そうですよ雪菜さん。もうちょっと気楽にいきましょうよ」
「佐天さんはもう少し気を引き締めた方が良さそうですね···今日の試合でもどこかお遊び気分が見え隠れしてましたし、やはりここは佐天さん用の特別訓練メニューを考案して明日から···」
「ええェ~!!ちょ、ちょっと待って下さいよっ!?今日みたいなのは
もうこりごりですよぉ~!!」
「····クスッ
佐天の気の抜けた発言に雪菜は上手くたしなめた。
「って、何だぁ···冗談ですかぁ····って、半分って何なんですかー!?」
「確かにドラちゃんの道具を使用しての今日の特訓はやり過ぎたと反省してます。ですが、佐天さんには体力トレーニングは必要不可欠だと私は判断します。あの電光丸は確かに素人の人間を所持するだけで達人の域にまで強くしますが、私の見る限り道具に振り回されて身体が全く追いついて居らず息も乱れて、ヘトヘトになっていました。最悪の状況を想定してしっかりと活用出来る様に佐天さん自身が強くなる必要があると私は苦言します」
佐天は先ほどの試合を振り返り「確かに」と納得する。電光丸の一方的な反応に振り回されて電光丸のコンピューター自体は効率的な動きを提供してくれても肝心の自分自身が全くついてこれずに無駄に力んでスタミナ切れになったのを思い出していた。
「わっかりました!雪菜さん、私しっかりとトレーニングを頑張ってやっていきます。でももうあんなアスレチックはゴメンですよ?」
「それは私もですよ。あれは我ながらやり過ぎたと反省してますから。あ、でももし機会があれば初心者コースから始めてみるのもいいかもしれませんね」
「フフフ、そうだね。スペシャル特訓用コースがハード過ぎただけでそれ以外ならしっかり適度に身体を鍛えるのにあれほど使い勝手がいい道具もないからね!」
「···私はもうあんなサメに追いかけられるのは二度と嫌ですよ·····」
シリカが若干トラウマ気味になって呟いた。
「そう言えば、電光丸も凄いですけど初めてドラさんに出会った時に振り回していたあの道具も凄まじい威力でしたよね?」
佐天が自分達三人が異世界に強制召喚された時を振り返り、その時ドラえもんが使用していた道具を思い出してた。
「いやぁ~あの時は恥ずかしい姿をみせちゃったね。ネズミがいたからつい·····」
ドラえもんは少し顔を赤らめて恥ずかしそうに頭を掻いた。
「あれはなんて名前の道具何ですか?」
「うん、シリカちゃん。あれはジャンボ・ガンに熱線銃っていうんだ。
ジャンボ・ガンは一発で戦車を吹き飛ばし、熱線銃は一瞬で鉄筋ビルを煙にできちゃうんだ!」
「えっ?」「へっ?」「はいィッ!?」
雪菜とシリカと佐天は思い出していた。あの時、城の壁やら天井やらを簡単に破壊して穴だらけにしていたのを···
ドラえもんの口からあの2つの道具の威力を正確に知って三人は目を点してしまう。
「へぇ~それは凄ーい····って、とんでもなくヤバいじゃないですかぁー!!ネズミに対してオーバーキル過ぎませんかっ!?」
「佐天ちゃん。ネズミを殲滅するにはこれぐらいしなくちゃいけないと僕は思うんだ!」
真顔で語るドラえもんに三人はドラえもんの元いた22世紀の未来の世界のネズミとは?という疑問と子守り用なのに何でそんなに物騒な道具を所持しているのかと思ったが何となく聞くのはタブーと感じて、シリカが話題を変えた。
「え、え~と、その2つはちょっとおいといて···ドラえもんさんが元の世界で大冒険した時に使用したひみつ道具って他にどんな物があるですか?」
「私も興味がありますね。お借りしているこの槍と棒以外にも使いやすくて有効な道具があったら是非知りたいと思ってました」
「はいっ、はーい!私もこの電光丸はとっても気に入りましたけど他に何かあるのか気になりまーす!」
雪菜も佐天も興味津々になって前のめりになっている。
「ウフフ。よぉ~し!それじゃ僕が元の世界での大冒険で使用したひみつ道具を少しだけ見せてあげるね!」
「わぁ~い!とっても楽しみぃ♪」
「凄くワクワクしますね!」
佐天とシリカはどんなひみつ道具が出て来るかウキウキしている。
ドラえもんはポケットから先ずシートを取り出して広げ、その上にかつて大冒険で使用したひみつ道具の一部を出し広げた。
「ジャァーン!!これが主だって冒険や戦いに使った道具だよ」
広げた布の上に色々な道具が並べられた。出した道具はお馴染みの物で、
タケコプター 通り抜けフープ テキオー灯
取り寄せバッグ 桃太郎印のきび団子
翻訳コンニャク 空気ピストル 空気砲
ショックガン スーパー手袋 瞬間接着銃 ひらりマント 透明マント 石ころ帽子
ビッグライト スモールライト 尋ね人ステッキ お医者さんカバン などを出した。
「うわーうわー!!色々沢山ありますねー♪この昔懐かしい竹トンボみたいなのは何です?」
佐天はワクワクしながらタケコプターを手にした。
「それはタケコプターって言って、空を自由に飛べるんだ!」
「えっ!?空を飛べちゃうですかっ!?試してみていいですかっ?」
「もちろん良いよ」
「やたー!空まで飛べちゃうなんて!」
「私、仮想空間で飛んだ事あったけど、現実で飛べるなんて思いませんでしたよ♪」
「····空を····飛ぶんですか····」
空を飛べると聞いて喜んび、興奮している佐天とシリカとは真逆に雪菜は暗く沈んだ面持ちになった。
三人はドラえもんからタケコプターの使い方を教えてもらって早速試してみた。
「えっと、頭に付けてっとっ····」
「うっふふ♪空まで飛べちゃうなんて楽しみですよね雪菜さん♪」
「えっ?え、ええ·····そ、そ、そうですね"ぇ~······」
「頭に付けたらすぐ横のボタンを押せば飛べるよ!最初は危ないから、みんなで手を繋いで飛ぼうねっ!」
「はぁ~いっ♪×2」 「··········」
ボタンを押すとどんどん身体が地面から浮きあがり、ドラえもんを筆頭に佐天、シリカ、雪菜の順で手を繋いで約10メートル程の高さまで飛んだ。
「あっ、浮いてる!飛んでる!?私達、本当に空を飛んでるぅ~!!」
「わっ、わっ、わぁ~とっ、飛んでる私、飛んでますよっ!佐天さん、雪菜さん!!」
二人は手を繋いでるとはいえ、本当に空を飛べている事に大変驚き、喜びあった······だが雪菜は·····
シリカは手を繋いでいる雪菜の手が震えているのに気がついた。最初は何時も落ち着きのある雪菜も感動しているのかと思ったが、どうも様子が違う事に気づいた。
「雪菜さん?どうかしたん····」
「いっ、いやぁー!?たっ、高い!?高いっ!!高いのはイヤー!!降ろして!降ろして下さいィィーー!!!暁先輩ィ助けてぇー!!」
何時もの雪菜からは考えられない程取り乱した様子にみんな唖然としていた。
恐怖の余りにパニックを起こして手を繋いでいたみんなは雪菜の暴走に巻き込まれて、地下空間を変則飛行する羽目になった。
「なななっ!?雪菜ちゃん落ち着いてー!?」
「ちょっ!?雪菜さん!もしかして高いの苦手だったんですかぁー!?」
「そうですぅー!!高いの苦手で怖いんですぅーー!!ゴメンなさーいっ!!
イヤァー!?」
「ゆ、雪菜さんだっ、大丈夫ですから、落ち着いてェ~!?そんなにしがみつかれたら落ちゃいますからぁー!!」
「ムギュウゥ~!?わっ!わっ!?
雪菜ちゃんヒゲを引っ張らないでぇ~!?
取れちゃうぅ~!!」
「ちょっ!?雪菜さんっ待って待って!!
そ、そこスカートだから!掴んじゃダメえェェー!!」
雪菜はすぐ隣で手を繋いでいた小柄なシリカに全力で全身にしがみついてジタバタしながらの超アクロバティック飛行させてしまう。
「おっ、落ちちゃう!落ちちゃいますぅ~!!ドラえもんさーん!アスナさーん!ピナァー!!助けてぇ~!!?」
ドラえもんにはヒゲだけでなく口の両端を引っ張って伸ばしてしまっていた。
「もがあぁ~!?雪菜ヒャン待ってそんなとこヅガンだら伸びるぅぅ~!!」
佐天に至ってはセーラー服のスカートを掴まれてしまい、両手で必死に抑えながら雪菜に懇願していた。
「スカート!スカートだから!掴んでるのはスカートだからダメー!!取れちゃう、見えちゃうからダメェ~!!!」
雪菜はみんなに交互にしがみついたり掴んだりしてなお、一層泣き叫んだ。
「紗矢華さーん!!暁センパーイ!!助けてぇぇ~!!高いのはイヤァァ~!!」
天井の高い地下空間の端と端を何度も行き交い、上下に変則飛行を繰り返すこと数分後···三人は大変な目に合いながら何とかしがみつく雪菜と共に無事地面へと着陸するのだった·····
ーーーーー
「う"う"んん~ヒドイ目にあった····」
「ううぅ····気持ち悪い·····」
「···········」
ドラえもん、シリカの二人はソファーの上でグロッキーになって横になっていた。
「皆さん、申し訳ありませんでした!!」
雪菜は地下室の冷たい床の下で縮こまって見事な土下座をして皆に誠心誠意に謝罪していた。
シリカは雪菜に全身を羽交い締めにされて超アクロバティック飛行する羽目になって気分が悪くなり、顔を青くしてぐったりとしている。ドラえもんはヒゲと口の両端にバンソーコーやらガーゼ等を当てて舌を出して目を白黒させている。
佐天に至っては二人がもたれているソファーの後ろで耳まで真っ赤にして隠れながらスカートを履き直していた。
「ゆ、雪菜ちゃんって高い所が苦手だったんだねぇ·····」
「う"う"ぅ····スミマセン····隠すつもりはなかったんですがどうしても言えなくて····」
「で、でも雪菜さん私との試合ではあんなに高くジャンプしてたじゃないですか?」
「いえ、その自分でジャンプする分には問題ないのですが機械が絡んだりしているとどうにも耐え難く····本当にスミマセン!!」
「ま、まあ···人には苦手な物の一つや二つあるものですから···あ、アハハ。そ、そんなに気にする事ないですよ?
(こんな形で初春の気持ちを理解するなんて····元の世界に戻ったら謝ってスカートめくりも1日1回だけにしとこ)」
ピーピーピー!!
突然、絨毯の隅に置かれていた衛星ロケットからの画像を映し出す機械からお知らせ音が鳴り響いた。
「何事ですかドラちゃん!?」
雪菜が一気に険しい表情でドラえもんに尋ねる。
「ああ、大丈夫だよみんな。これは衛星ロケットからの画像を分析して安全ルートの構築が一通り終わった事をお知らせするアラーム音だから」
ドラえもんが衛星ロケットのモニター画面を見て色々ボタンを押すと機械の後部から、今いる地上の森の全体図が載った地図が出てきた。
テーブルの上に地図を広げてみんなに見せた。
「こんなに広い森の中に私達跳ばされたんですね····」
「さすが異世界。私の想像を遥かに越えてたわ」
ため息混じりにシリカと佐天がぼやいた。
「これが地上の地図····私達が今居るのはどの辺りですか?」
「え~と、今僕達が居るのが丁度この真ん中辺りの巨大な樹木の側で、ここから西方面へと行けばこの広大な森を抜けて、人のいる町へとたどり着けるよ。だけど割り出されたルートは3つあって、一番比較的安全なルートはタケコプターで空を移動したなら大体1週間前後で、歩きだと3週間以上はかかる計算になっちゃうんだ」
ドラえもんの説明を聞いて、自分のせいで移動に時間がかかる事に胸を痛めた雪菜はみんなに平謝りしてきた。
「す、すみませんっ!!私が足を引っ張ってしまって···が、頑張って高い所でも何でも耐え抜いてみせますから!」
「雪菜さん、そんなに思い詰めなくてもきっとドラえもんさんなら他の手段を用意してくれますよ」
「そうですよ雪菜さん。シリカさんの言うとうり、他にも便利な道具、あるんでしょう?」
決死の想いで高い所でも我慢しようとする雪菜に対してシリカと佐天はドラえもんなら他にも移動手段があると確信して聞いた。もちろんドラえもんは笑顔で答えた。
「エヘヘ、まあね~。空がダメでも陸から高速移動すれば良いのさ!え~と···あった。これこれ、『何でも操縦機ハンドルタイプ』~!」
「もぉーやっぱり便利なのあるんじゃないですかぁ~ドラさんも人が悪い。それにしても何だか車のハンドルみたいですね」
「ウフフ。ハンドルみたいじゃなくて本当にハンドル何だよ。これを取り付けた物体は何でも操縦出来ちゃうんだ!土管とか、ベッドとか、そこのソファーだって乗り物に出来るよ!」
「わぁ~面白そうです♪」
「はいっ、ハーイ!!操縦してみたいです!そういうの私、結構得意何ですよ?」
佐天はドラえもんから何でも操縦機を受け取りソファーの横の肘立ての部分に取り付けた。
「あとは真ん中のボタンを押せば普通に操縦出来るよ!」
「真ん中のボタンですね」
ボタンを押すと道具を取り付けられたソファーが少し浮かび上がり佐天は大喜びではしゃいだ。
「おおぉ~!!これは面白いですよっ!シリカさん、雪菜さん後ろに乗ってみて下さいよ~」
「うわぁ~ソファーが乗り物になるなんてっ♪ほら、雪菜さんも!」
「シリカちゃん····ありがとう···」
佐天に誘われてシリカが気にして、まだ落ち込み気味な雪菜の手を引いてソファーに乗り込んだ。
「操縦機のハンドルを前に倒せばスピードが出て、手前に引けば減速するから最初はゆっくりとやってみてね!」
「はーい!ではでは行きますよ。出発進行!」
佐天はゆっくりとハンドルを前に倒すと少し浮き上がったソファーが前に進んだ。
「進んだ、進んだ!!わぁ~♪これ面白い!どうですか?これなら移動に何の問題もないですよね雪菜さん」
「これ位の高さなら雪菜さんも大丈夫みたい。良かったですね」
「佐天さん、シリカちゃん、ドラちゃん····みんなありがとう····」
みんなの気づかいに胸が一杯になる雪菜だった。
「よーし!それじゃボチボチ、ちょっぴりスピードアップしてみますかっ?それぇ~♪」
「えっ?ちょっと、佐天さん安全運転で·····」
「よく考えたらこれ、ソファーだからシートベルトが有りませんから···って聞いてます?佐天さん!!」
「何人たりとも···私の前は走らせねえぜぇー!!シャッハァー!!」
シリカが言い終わる前に文字どうり、浮かれた佐天がスピードを出すとまるでF1並みのスピードが出てしまう。二人は必死でしがみついて悲鳴を上げるが、テンションがアゲアゲ状態な佐天は気にも止めずに地下室を端から端まで見事なドライビングテクニックを披露して大爆走した。
結局この後、シリカと雪菜から正座してこっぴどく説教を受ける羽目になる佐天だった。
「やれやれ調子にのる所は本当にのび太くんによく似てるなぁ····」
どこか懐かしむ様にみんなを見守るドラえもんだった。
皆さんの意見、感想が自分のモチベーション維持に非常に必要なのでよろしければ是非よろしくお願いします!