青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

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今回はシリカとドラえもんがメインです。


14話 シリカの受難 

佐天涙子が秘められていた能力を発動させていた頃、シリカは壊れてしまったドラえもんに翻弄されていた。

 

 

「オッペケぺぇの~?ラリラリラァァ~♪」

 

 

「待って、待ってぇ~!ドラえもんさぁ~ん。何処に向かって走ってるのぉ~?これ以上進むと佐天さん達と合流するのが難しくなっちゃいますよぉ~!!」

 

 

必死で走って追いかけて、タックル気味にドラえもんに抱きついて動きを止めようとすると、

 

 

「キャァァー!!エッチィィ~!!」

 

 

「なっ、な、な、何言ってるんですかぁ!?わ、私エッチなんかじゃありませんっ!!」

 

 

かと思うと、突然立ち止まって奇妙な踊りを披露したりと、シリカの精神をゴリゴリと削る始末だった。

 

 

「ふえぇぇ~!!もうどうすればいいのぉ!?雪菜さぁ~ん、佐天さぁ~ん、ピナァ~!!」

 

 

ここが魔物達が魍魎跋扈(もうりょうばっこ)している場所だと分かってはいたが、そんな事はお構い無しに大声で泣き叫でしまう。

 

 

·····そして当然。

 

 

「グルゥ~!!」 「ギュルゥー!!」

 

 

シリカと壊れたドラえもんの前に巨大で凶悪な面構えの額にデカイ角を生やし、二本足で立っている兎に遭遇してしまう。兎達は全部で三匹で大きさは推定4㍍から5㍍で眼に狂気をはらんで二人を見つめ、口から牙を覗かせて涎を垂らしていた····

 

 

「ひっ、ひゃあァァァー!!う、兎の化け物ォォ~!!」

 

 

仮想空間で自分よりも圧倒的に巨大な怪物(モンスター)達と戦い、葬ってきたが、やはり先ほどの黒蛇の時といい現実(リアル)で対面してしまうと相手の迫力と威圧感に圧倒されてしまって怖じ気づいてしまい何も出来ずただ震えてドラえもんにしがみつくしか出来ないシリカだった。

 

 

「ゴルアァァー!!」

 

 

三匹の内の一匹が咆哮を上げて二人に襲いかかってきた。シリカは目に涙を溜めて、完全に戦意喪失している。だが、壊れたドラえもんは冷静にポケットをまさぐって何やら手袋の様な道具を取り出し装着した。

 

 

「スーパー!パワー!スーパー!パワー!!」

 

 

ドラえもんが両手に装着したのは『スーパー手袋』。この道具は両手にはめると腕力だけでなく全身をとんでもなく強化して信じられない怪力を発揮出来る22世紀脅威のひみつ道具である。

 

 

襲いかかってきた兎の魔物は二人に対してその巨体から強烈な蹴りを放ってきた。

 

 

「シャアァー!!」

 

「い、イヤァァー!!」

 

 

シリカが絶望して泣き叫ぶ。だが、その蹴りをスーパー手袋をはめたドラえもんが片手であっさりと受け止め、そのまま兎の魔物を頭上に掲げてブンブンと簡単に振り回した。

 

 

「グルゥ····?ギャウワァァ~!??」

 

「へっ·····?えええェェ~!??」

 

 

兎の魔物は自分よりも遥かに小さいタヌキの獣人とおぼしき奴に何故こうも軽々と振り回されているのか全く理解出来ずひたすら翻弄され、シリカは目の前の出来事に理解が追いつかずただ、ただ驚いて叫ぶだけだった。

 

 

「マわス、マわス、グゥ~ルグル~♪

キョウモどったんっ、ばったん、オオサワギぃっ~!!」

 

 

正気を失っているドラえもんは片手で掴んでいる魔物を右へ、左へと地面に叩きつけて(もてあそ)び、更にグルグルと回して最終的に空の彼方へと投げ飛ばした·····

 

 

「ギョウワワァァァー!!??」

 

「キャハハハー!?!バイバーイきーん♫♪♬」

 

「あわわわァァ····ど、ドラえもんさんやり過ぎなんじゃ·····」

 

 

シリカは尻餅をついてただ、唖然とするしかなかった。他の二匹は余りに信じ難い場面につい、傍観していたが正気を取り戻すと怒りに燃え咆哮する。すると周りの地面から兎達が這い出して次々と仲間達が集まりあっという間に囲まれた。

 

 

当然シリカは顔面蒼白になり、へこたれるが、一方のドラえもんは舌を出しながら何やら太極拳の様なスローな演舞をして気合いを込めていた。

 

 

「フゥ~♪フォ~♬アチョォ~♫」

 

 

それが兎の魔物達の気にさわったのか、眼を血走らせ一斉に雄叫びを上げてドラえもんに向かってきた!!

 

 

「グルガアァァァ~!!!」

 

 

ます、最初に一匹が真っ正面から額の角を向けて、ドラえもん目掛けて突進し、左右からの二匹が蹴りを放ち、残り数匹は兎らしいジャンプ力で空中から襲いかかってきた。

 

 

「きゃあぁぁードラえもんさーん!!」

 

 

巨大な兎の魔物達が一斉に襲ってきたのを目の当たりにしたシリカは勇気を振り絞って、腰に備え着けてあるダガー(真剣)を携えた。だが、ドラえもんは気合いの雄叫びを吐きながら猛烈なラッシュ(連打)を繰り出した!!

 

 

「ドラァー!!ドララララララララララララララララララララララララー!!!!!!!ドラァー!!」

 

 

無数の拳(丸いゴムまりの手)がマシンガンの如く打ち出され兎達を打ちのめして行く!!

 

 

「グブベェッ!?」

 

「ギョウワァァ~!!!」

 

「ゴブッ!?」「グバッ!?」

 

「ギベェッ!!」「ギャウウー!!?」

 

 

正面から襲ってきた兎は角をへし折られ顔面に無数の拳を受けて原型を失い、左右から蹴りを放ってきた兎達は蹴り脚がグチャグチャになって悲痛な叫び声を上げ、ジャンプして空中から襲ってきた複数の兎達は全身に無防備にラッシュを受けて骨が砕け散り、口から血や汚物をまき散らかしながら、無惨に吹き飛ばされ地面に叩きつけられた······

 

 

「あっ···あわ、あわ、あわわわぁぁ······ど、ど、ドラえもんさんクレイジー過ぎますゥゥ·····」

 

 

目の前の惨状にシリカは無駄と分かっていても訴えるしかなかった。

 

地面に横たわってピクピクと痙攣していた兎達は悲痛な断末魔の叫びを一声上げて次々と消滅していった。

 

 

「えっ!?な、何これ?死体が残らずに消えた!?これってもしかして仮想空間のシステムと同じ!?

ここってゲーム空間なのぉ!?」

 

 

シリカはドラえもんの攻撃を受けて横たわった兎達が死体を残さずに光の粒子を伴って散って行く様を見て頭を捻った。後には大小の大きさとそれどれ輝きの違う石と何やら兎の肉らしき物体や、毛皮とおぼしきアイテムが残されていた。

 

 

勝利したドラえもんは手袋を外して何故かマラカスを持って喜び、奇妙な踊りをして歓喜していた。

 

 

「ぐれーと、グレート♪ビクトリー!!」

 

 

「どっちにしても分からない事だらけだよ····とにかく今は何とかして雪菜さんと佐天さん達に合流しないと····」

 

 

疑問を振り払い、目的を明確にしたシリカだったが目の前の兎達が残していった所謂ドロップアイテムを前に、ゲームプレイヤーとしての(サガ)なのか、どうにか持って行こうとしてドラえもんのポケットに頼ろうとするがお腹に触れるとドラえもんはシリカを突飛(つきと)ばし、

 

 

「キャー!!ちかん!エッチ、スケッチ、

ひだまりぃ~!!」と、叫んで取り付く島さえなかった····

 

 

「うぅ、しょうがない····アイテムは諦めよう····って、ドラえもんさん私から離れないでぇー!?」

 

 

一難去ったと一息ついたら、またも無軌道な行動をするドラえもんを何とか首輪を引っ張ったりして足掻いて移動した。途中で洞窟らしき穴を見つけたので、引きずって一旦休息を取る事にした。

 

 

「はぁ、はぁ···うんしょ、うんしょ····ドラえもんさん、お願いだから少し大人しくしてて下さいよぉ~」

 

 

「オッケー!オッケー!シェスタ、シェスタ!お昼寝だぁー!!グーグーグー·······」

 

 

シリカの言葉を理解したのかは分からないがドラえもんはさっきまでの無軌道な行動を止めてその場に勢い良く寝っ転がり、赤い鼻から鼻提灯(はなちょうちん)を出してグースカと眠りについた。

 

 

「はぁ、はぁ·····ようやく一息つけた····凄く疲れたよぉ····はぁ····よく考えたら二人を探す処か、道もよくわからないんじゃどうしようもないし、本当にどうしよう·····」

 

 

シリカは洞窟の壁にもたれて膝を抱えて途方に暮れていた。だがふと、気がつくと洞窟の少し先の地面が妙に整地されている事に気がつく。

 

 

「あれ?何だか妙に地面がツルツルしてる様な····?」

 

 

ゲームプレイヤー特有の好奇心に刈られて少し先へと歩くと薄暗いもののハッキリと下に降る階段を発見した。

 

 

「こっ、これってもしかしてダンジョンへの階段!?やっぱりこの世界はゲームの世界!?」

 

 

思わぬ発見で、益々この異世界が自分が元の世界でプレイしていたMMORPGとよく似た仮想空間なのでは?という疑惑が高まる。

 

 

下へ降りてみようとも考えたが正直今の自分だけではどうする事も出来ず手に余ると考え、入り口へと戻ろうとするが何故かドラえもんが鼻提灯を膨らまし眠りながら此方へ歩いて来た。

 

 

「フンゴーゴゴゴ····待て待てドラヤキー♥スピー、スピー·····」

 

「眠りながら歩いてる·····!?」

 

 

呆然としてつい、見送るが真っ直ぐダンジョンの入り口らしき階段へと歩むドラえもんを見て、慌てて首輪を後ろから全力で掴んで引っ張った。

 

 

「ちょちょ、ちょっと待ってドラえもんさーん!!どら焼きなんて飛んでませんよぉ~!?この先何が起こるか分からないから戻ってぇ~!!」

 

 

願い虚しく小柄で軽量のシリカを簡単に引きずって目を覚ます事なく進み、案の定階段を踏み外してシリカを巻き込みながら階段を転がり落ちていった。

 

 

「ひゃあァァ~!?!?」

 

「ゴロン、ごろーんっ!!」

 

 

かなり長い階段を転げ落ちて、ようやく階段が終わって止まった。

 

 

「マワッタ、トマッタ。····グーグー」

 

「う"う"ぅぅ~今日はこんな事ばっかりぃ~····もうやだぁ~····」

 

 

昨日まで皆と和気あいあいで楽しかったのが、今日は打って変わって散々な状況に弱音を吐くシリカだった。だが、地面の少し先の壁が気になり立ち上がって暗い中、よく目を凝らすとそこは只の壁ではなく扉だった。

 

 

但し、自分の元居た世界よりも更に未来的(・・・)な作りの扉だった。

 

 

「こ、こんなハイテク染みた扉がこんな所に有るなんて····?中には一体何が眠っているの?····少し怖いけど調べてみよう」

 

 

シリカは恐る恐る扉に手をやって調べてみたが、やはり鍵穴やカードを通す装置の類いは見つからず、諦めかけていると目を覚ましたドラえもんも扉をまさぐる。

 

 

「····ドラえもんさん、この扉は開きそうにないです。何処にも鍵穴やカードを通す装置に音声認識する類いの機器もついてないんですよ。もうここは諦めて出ましょうよ」

 

 

「イキドマリー!すすめ!ススメ!ふーぷ!ふーぷ!」

 

 

未だ正気を失っているドラえもんは扉が閉まっていて開きそうにないと聞くと、ポケットの中から黄色くて大きい輪っかを取り出した。それはどんな強固な壁でも取り付けると穴が出来て、自在に行き来が出来る様になる便利なひみつ道具『通り抜けフープ』だった。

 

通り穴が出来るとドラえもんは

「イッテミヨー!!」と勢いよく扉の向こうへと進んで行った。

 

 

「まっ、待って、一人にしないでぇ~!?」

 

 

心細く不安に苛むシリカを無視してドラえもんはひたすらフープで出来た空間を進み、出口へと出た。

 

「デグチ、デグチでたーデター!」

 

「やっぱりここも真っ暗で何も見えないですよぉ~。ドラえもんさん何処ですかぁ~?」

 

 

扉の向こう側へと出たはいいが真っ暗で何も見えず手探りしながら進むとナニやら小さく不気味な稼働音だけ鳴り響いている。

 

 

「この音って何か機械の音?何か施設の機能がまだ生きてるの?ドラえもんさーん何か明かりをつける道具は無いですかぁー?」

 

 

不安ではあるがもしかしたらこの世界について何か分かるかもと中へと進んだがやはり暗くて周囲の様子は一切わからずドラえもんに頼った。

 

 

「おーけー、オーケー、アッカリーン!」

 

 

ドラえもんはポケットから『打ち上げライト』を打ち上げ、周囲を明るく照らした。

 

 

「わあ~明るくなったぁ!これなら何があるのか見えます·····っえ、この部屋の施設って····!?」

 

 

シリカは明るくなった部屋の周囲を見て酷く驚いた。何故なら外は異世界らしく魔物達が活動しているのに、この中はまるで未来の研究施設としか言い様のない有り様だったからだ。そして機械の稼働音を辿ってよく見るとそこには小さい透明の長細いカプセル内に小さなドラえもんが眠っていた····

 

 

「えっ、えっ!?こ、これってドラえもんさん?赤くて凄く小さいけど····」

 

 

シリカが驚ろき、困惑していると正気を失っているドラえもんが其処らのスイッチを手当たり次第に押して遊んでいた。

 

 

「ちょっ、ちょっと待って!?ドラえもんさん勝手に弄っちゃ不味いですよっ!?」

 

 

すると、偶然なのか?導きなのか?赤く小さいドラえもんが入っているカプセルは静かに開き出し、中のドラえもんが元気に動き出した!

 

 

「ドラァー!ドララァー!!」

 

「めっ、目覚めちゃった····」

 

 

シリカは目の前で目覚めた小さいドラえもんを凝視しする。元気よくラジオ体操染みた動きをして調子を整えてるかに見えた。

 

 

「(かっ、可愛い♥)

あ、あのぉ····貴方もドラえもんさん何ですか····?」

 

「ドラァッ!ドララ、ドララー♪」

 

 

手を胸にポンッと叩いて肯定する仕草をした。それを理解したシリカは必死になって懇願する。

 

 

「そっ、それじゃ、お願いしたい事あるんですけど!あ、あの···向こうの青くて大きいドラえもんさんが私のせいで壊れちゃって困ってるんです。何とかなりませんかっ····?」

 

 

小さいドラえもんはほんの少し思案顔になり、直ぐに朗らかな笑顔を見せて更に小さなポケットに両手を突っ込んだ。

 

 

(小さくてもやっぱりドラえもんさんだなぁ、何だか安心する·····でも、もしかしてドラえもんさんの弟なのかな?だとしたら、何でこんな所に眠ってたのかな?)

 

 

一人アレコレ想像してると小さいドラえもんはポケットからナニやら黒い雲の塊を出した。

 

「ドラドラッ、ドララッタァ~!!」

 

「あ、あのぉ····ゴメンなさい。なんて言ってるのか、わかんないです·····」

 

 

小さいドラえもんが出した道具は

『カミナリ雲』と言って小さな人工の雷雲で備え付けてあるプルスイッチのヒモを引っ張ると雷が落ちるひみつ道具であった。取り出したのが小さいドラえもんなので更に輪をかけて小さかった。

 

 

「ん~····それって何だかカミナリ雲みたいですよね?····って、まさかそれをドラえもんさんにっ!?ま、待ってー!!?」

 

 

小さいドラえもんは可愛くウインクして直ぐ側で、まるでバレエの白鳥の湖を踊っているドラえもんの頭の上に乗り、プルスイッチのヒモに付いている威力を調節するメモリーを最大出力にしてヒモを引っ張りつつ、巻き込まれ無いように、青いドラえもんから離脱した。

 

 

ミニカミナリ雲からミニでは無い、特大のカミナリがドラえもんの頭上に降りかかったっ!!

 

 

 

    ドギャーンッ!!

 

 

 

「ひいいィィー!!ど、ドラえもんさーん!!」

 

 

 

「うぎゃぴノバラリあばばばばー!?!?」

 

プシュ········

 

最高威力に設定したカミナリ雲のカミナリの直撃を受けたドラえもんは口から黒い煙を吐き、青色のボディも黒々と変化していた·········

 

 

シリカは泣き叫びながら真っ黒になったドラえもんを抱きしめた。

 

「ドラえもんさ~ん·····」

 

もう完全にダメだと思った····だが、

 

 

「ううぅ~ん····?はれあれ·····?ここは何処?僕は今まで何をしてたんだ?」

 

 

「あ····あ"ぁ·········ど、ドラえもんさーん!!」

 

 

「えっ!?シリカちゃん!?どうしたのそんなに泣いて?何があったの?」

 

 

シリカはドラえもんに強くハグして泣き叫んだ。ただし、それは歓喜の涙であった·····

 

 

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