ドラえもんはシリカから事の経緯を聞き、平謝りしていた。
「うわあぁ····そうだったのか···ゴメンよシリカちゃん!迷惑かけちゃって····」
「いえ、大丈夫です!元は私が···その、ソードスキルでトドメを刺しちゃったので····本当にゴメンなさい!でも、元に戻ってくれて私本当に嬉しいです。全部、この小さな赤いドラえもんさんのお陰なんです。ありがとう!えっ~と、何て呼んだら良いのかな?」
「ドラッ、ドララァ~····」
「ウフフ。この子は『ミニドラ』って言うんだよ。仲良くしてあげてね!···それにしても何でこの異世界でこんな未来の世界の研究施設みたいなのがあって、しかもこのカプセルの中にお前が保管されていたんだろうねぇ···実に不思議だなぁ」
ドラえもんは研究施設とおぼしき部屋一面を眺めて今までの経験から色んな可能性を思案する。
(もしかして誰かが、
黒焦げボディのまま、アレコレ思案するドラえもんを見て、シリカは心配になってオロオロしながら声をかけた。
「あの、ドラえもんさん。とにかく先にその黒焦げの体を治さないと····」
「ドララ、ドララ!」
シリカの肩に乗っかっているミニドラもシリカと一緒になって訴えた。
「ああ、それもそうだね。よし!あれを使おう。えとえと····タイム風呂敷~!!これを、よっと····」
ポケットから取り出したタイム風呂敷を被って数秒後、見事痛々しい黒焦げボディからツヤのある青色ボディへとドラえもんは回復した。
「僕、復活!」
「わぁ~♪良かった····本当に···元に戻って良かったよぉ~!!」
雪菜、佐天とはぐれ、ドラえもんは壊れて正気を失い、魔物と遭遇したりと苦労と不安の絶えなかったシリカは心から安堵し、喜んだ。つい、嬉しくて元に戻ったドラえもんとお互いに両手を繋いでスキップし、ドラえもんも浮かれてシリカを両手で掴んだままぐるぐると回し始めた。そう···まるで休日のお父さんが子供と戯れるかの様に。
「キャハハハ~!!わーい、わーい♪」
「ドララァ~♪ドララッタァ~!!」
「そぉーれぇ、そぉーれぇ!」
シリカと肩に乗っかっているミニドラも一緒になって無邪気になって喜んだ。だが、不意に掴んでいた手が滑ってしまいシリカは勢いよく明後日の方向へと飛ばされてしまう。
ツルッ「ありゃ?」
「へっ?しょええェェ~!?」
「ドララァー!?」
普段のシリカとしての身体能力ならば容易く着地できるが、浮かれ過ぎてしまっていたので録に受け身を取れずに研究施設の奥の方まで飛ばされて尻餅を着いた。
「うわぁ~!?ゴメンようシリカちゃぁ~ん!!」
「うっ、うぅ~ん···?だ、大丈夫ですぅ·····んっ?何だろう。これ···」
焦ったドラえもんが直ぐ様二人に駆け寄った。幸いシリカにケガは無く、少し目を回しつつ立ち上がって後ろを振り向くとナニやら奇妙な装置に気がついた。
シリカが目にしている装置は台の上に各々3つの球体状の形をしており、コードに繋がれて鎮座してあった。球体は上半分が赤色で、下半分が白色で3つの物体の内、2つは真ん中の境目が開いてあって中身は無く、3番目の球体は閉じたままになって放置されてあった。
「ドラえもんさん、これって何なんですかね?」
「う~ん···これと似たようなのを何処かで見かけた事があるぞ?え~と···確か·····そうだっ!思い出した!これは僕がいた未来の世界で一時期、熱狂的に流行っていた道具に似ているんだ!」
かつて未来世界において、熱狂的に流行ったとされるのは【ポケットモンスター】····略して【ポケモン】と呼ばれる娯楽であった。
ひみつ道具に『クローニングエッグ』という道具がある。これは動物の遺伝子アンプルを注入して望む動物を誕生させるという道具である。だが、この道具の真の特筆すべき点は複数の遺伝子アンプルを混ぜ合わせて本来この世に存在していない動物達を誕生させる事にあった。
遺伝子アンプルを複数混ぜ合わせられて誕生した動物は遺伝子の拒絶反応や成長及び寿命等の不具合も無く元気に生まれるという特徴があった。
これをヒントに既存のクローニングエッグに
これは遺伝子を自らの手で操り、まるでノートに気楽にスケッチにする様に簡単に今まで存在しなかった新しい動物達や種族を創造出来るという正に生命の禁忌や論理に反し、冒涜する道具であった。
当然この道具の開発及び、販売について強い反対意見もあったのだが、そんな反対の声を押しきり、売り出すと猛烈な勢いで広まり、あっという間にブームになって未来社会に馴染んだ。
各々の感性や好みで姿、形、能力や性質を自在に決められ、自分だけの、自分好みの本来存在しない動物達を生み出す事に老若男女はこぞって夢中になり虜となった。
これに気を良くした会社の上層部達は今度は無数のユーザー達が生み出した動物を互いに闘わせ、競い合わせるというシステムを発案し、それに沿った道具の開発を急いだ。そして完成した道具とシステムは【モンスターボール】と【ポケモンバトル】と呼ばれ、更に未来世界全体を熱狂の渦へと捲き込むのに大成功するのだった。
だが、ここで大きな誤算が起きた。ポケモンバトルで負けたポケモンを心無いユーザーが見限ってそこら辺に平気で捨て去る行為が平然と行われる様になったのだ。野良となった
ポケモンは食料を求めてスーパーや飲食店を襲ったり、食べ物を持っていた子供や女性を襲う等といった事件も頻発におこって、深刻な社会問題となっていった。
それと同時に裏社会の住人がポケモンを生物兵器として利用して暗躍し、警察もこれには手を焼き悩まされ、また兵器専用として強力にデザインされて生み出されたポケモンが戦争や紛争に利用される最悪の事態となった。更に裏社会の組織や、それ専門のトレーナーでも録に制御出来ないポケモンが檻を破壊して町へ移動し民家を襲って暴れ出し、治安が度々脅かされる等、最早通常の警察では対処不可能な問題となって急激に世間からポケモンを排除せよとの流れが起きてしまうに至った。
これを受けて政府は対ポケモン用の特殊武装と組織を立ち上げ野良ポケモンや戦争と紛争に利用されていたポケモンを瞬く間に排除する事に成功した。また、ポケモンを生み出す道具を発案、販売した会社は世間と数々の国から一斉に強いバッシングを浴びせられ手痛い目に遭い、その責任を追及された。会社は上層部の間で責任の
道具を発案し、研究していた研究責任者は「こんなはずじゃなかった」と言って上層部の目の前で自殺してその責任を取った·····それを目の当たりにした、ポケモンという存在を純粋に愛し、
上層部達の責任逃れに怒りを燃やしたのはポケモンによって被害を被った被害者達だ。責任逃れの為に国外へ渡ろうとしていた上層部の人間を見つけた被害者達は激怒し、殺してしまう等といった陰惨な事も起きてしまっていた。しかも家でおとなしく穏やかに飼われていたポケモンを見つけて、わざわざ家にまで忍び込んで殺害しようとする過激な行為に走る輩も数多くいた。
こうして人間に勝手に生み出されたポケモンは身勝手な人間の手によって駆逐され、この世から消滅するという未来世界に悲惨な歴史を刻むのだった。
事の顛末を聞いてシリカはどんよりとした気分になった。
「そんな悲惨な出来事が合ったんですね····可哀想····(ピナ···)」
ビーストテイマーのシリカはピナの事を思い浮かべ未来の世界で起きた悲惨な出来事に悲痛な想いを抱く。そんなシリカを気づかってか、ミニドラはシリカの頭の上に乗って撫でてきた。
「ドラ、ドラァ~♪」
「····ミニドラちゃん····ありがとう」
ほっこりとした二人を見てドラえもんは微笑ましく思った。そして改めてこのモンスターボールとおぼしき物を凝視した。
「う~ん···しかし何でこんな物が異世界の地下に置いて在るんだろう····?んっ?閉じてあるモンスターボールの下に名前が書いてあるぞ。え~と····フリーザー····」
ボールが設置してある装置の下にネームプレートらしき物が張り付けてある事に気づいてドラえもんは読み上げた。隣二つのネームプレートを確認すると一番右端がファイアー。真ん中がサンダーとネームプレートに記載されていた。
「この閉じてるボールの中にフリーザーと呼ばれるその、ポケモン····?が入ってるんでしょうか?」
「うん···恐らくそうだと思う···けどかなりの年月が経ってて、ミニドラが眠っていたカプセルは機能が生きていたけど、このモンスターボールの装置は恐らく大分前に止まってたみたいだ。だから多分中のポケモンも恐らく·····」
ドラえもんの説明により、目の前のボールの中のポケモンは生きてはいないと示唆され、シリカはかつてSAO時代の事を思い出していた。PTメンバーとの諍いから、ケンカ別れをして単身で危険な森を抜けようとしていた際、手強いモンスター達に襲われ、その時使い魔のピナがシリカを庇って消え去るといった過去があった。
(最もその後、偶然通りかかったキリトによって救われ、ピナの蘇生に成功して現在でも仮想空間で楽しんでいる)
その為、目の前のモンスターボールをピナの残した羽と重ねて何とかしてあげたいと考えていた。
そんなシリカを察したドラえもんはこう提案した。
「ねえ、シリカちゃんはこのモンスターボールの中で朽ち果てているポケモンを甦らせたいかい?」
「はい···出来る事なら·····」
「さっき話したけどポケモンは生体兵器としてデザインカスタマイズされているのも数多く存在している。甦らせたとしても決して簡単に懐くとは限らない····それ所か襲いかかって来るかも知れない····それでもやるかい?」
「すみません····正直迷っています····それに、これは単なる私のワガママで独善なんですけど、こんな所でずっと1人で放って置かれて寂しく朽ち果てて····人間の身勝手さに翻弄されて····そんなの余りに酷くて悲しいじゃないですかっ!どうなるかは本当に私には分からないです····無責任な事かも知れないけど···けど、こんなのは絶対に嫌なんです!!だから···だからドラえもんさん····この子を蘇生させてあげて下さい。私は非力だけど、持てる力を注いでこのポケモンを守ってあげたい、救ってあげたいんです!お願い····します····」
気がつくとシリカの瞳から熱い涙が流れ頬を濡らしていた。ミニドラもシリカと同じ想いで賛同していた。
「わかったよシリカちゃん····」
二人の熱い眼差しに答えてドラえもんはポケットを
「それじゃ···いくよシリカちゃん····いいね?」
「はい!お願いします!!」
「ドララッ!!」
ミニドラも一緒になってドラえもんにお願いした。
「よし!わかった、行くよ!!それぇー」
タイム風呂敷をモンスターボールに被せて僅か数秒後····ボールは真新しい感じになって甦えった。ドラえもんはシリカの隣に立ってモンスターボールを解き放つ為、ボールの真ん中のボタンを押して地面に軽く放り投げた。
ボールの境目が開くと中から勢い良く雪の結晶が舞散り、辺り一面を輝かせながら一匹の美しい鳥が飛び上がった。大きさはミニドラよりやや全体的に大きく、体躯は全体的に水色をしており、青白い羽毛と三対の鶏冠を持ち優雅にボールの周りの天井を飛び、尾をたなびかせながら飛んでいる。
「この鳥がポケモン····綺麗····」
余りの美しさにシリカはこのポケモンに見とれていた。
「鳥の姿をしたポケモンか····設定されている属性はどうやら氷タイプみたいだね」
ドラえもんが持ち合わせている知識から目の前のポケモンの属性を呟いた。
しばらく周辺を飛び回っていたこのポケモンは三人に気がついて、シリカ達の近くに舞い降りた。両足を揃えてステップしながら近づいてくる····ドラえもんはポケットに片手をやって何か準備をしている様子を見せ、僅かに緊張が走った。
シリカは静かに片膝を床につけてしゃがみこみ、鳥の姿をしたポケモンと目を合わせた·····
ほんの僅か数秒間だが互いを見つめ合い、そして何気なくシリカは右手を拡げて差し出す様に伸ばした。
緊張してはいたが、ミニドラの存在の助けもあって柔和な、ごく自然な微笑みが出来た。
·····そして、そのポケモンはシリカの手のひらに乗り、腕を伝って肩に乗って明らかにご機嫌な鳴き声を発してシリカの頬に身体を預けた。
「きゃっ!くすぐったいよう。ドラえもんさん····私、
「····うん!やったねシリカちゃん。
(フフフ···この道具は必要無かったね)」
ドラえもんが片手をポケットの中に突っ込んで用意していたのは一個でも食べさせればどんなに凶暴で荒れ狂っている猛獣も大人しくなって従順になるひみつ道具
『桃太郎印のきび団子』だった。
生体兵器や、抗争の為に凶悪に生み出されたポケモン達を制御する為に後に開発されたひみつ道具で、あらかじめ、タイム風呂敷を取り出す際に一緒に用意したのだがその必要は無くなり、最高の結果となった。その事を心から密かに喜び、戯れている三人をドラえもんは暖かく見守った。
すっかり懐いたポケモン、フリーザーはミニドラとも仲良くなり一緒に戯れている。
「ドラ、ドララァ~♪」
「クピッ、クピピィ~♬」
「アハハッ♪もう二人共すっかり仲良くなっちゃって···かわいい♥」
シリカは二人の様子にすっかりメロメロになっていた。
「もうすっかり仲良しさんだね」
「はい!これも全部ドラえもんさんのお陰です。本当にありがとうございます!」
「ウフフ。僕はきっかけを作っただけさ。シリカちゃんとミニドラの決意が実を結んだんだよ」
「い、いえ、そんな私なんて····そんな風に言われたら照れちゃいます。あ、そうだこの子に名前をつけてあげないと···」
「名前かぁ····そういえば、モンスターボールが設置してある装置の下にネームプレートがあって、フリーザーて、明記されてたなぁ···でも、この名前って個人の名前じゃなくてって種族の名前みたいな感じ何だよなぁ····」
「フリーザー····ですか····う~ん。それじゃ私が、この子に新しい名前をつけてあげてもいいですか····ね?」
「うん!いいと思うよ!きっとシリカちゃんに名付けて貰った方がこの子も喜ぶよ」
「わかりました。え~と····(氷タイプで涼やかな印象があるから、それに色合いもピナと同じだから····)【ピノ】····ってどうかな?」
その名を聞いたフリーザーは歓喜して研究室の天井を飛び回ってシリカの頭の上に乗っかり一際美しい鳴き声を放った。
「アハハッ♪良かったね!どうやらこの子は気に入ってくれたみたいだよ。それじゃ改めてよろしくね!ピノちゃん!」
「クッピィ~♥」
こうして本来誰にも気づかれぬまま、朽ち果てて行く筈だったポケモン、フリーザーはドラえもんとシリカ、ミニドラ達のお陰で甦り、新たに名を【ピノ】と名付けられドラえもん達と共に元の世界への帰還を目指して一緒に歩むのだった。