青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

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16話 佐天涙子の戦い

 

「さて、この研究施設の事は気になるけど、先ずは二人の行方を探そう」

 

 

「はい!」「ドラッ!」「クピッ!」

 

 

シリカ、ミニドラ、フリーザー改め、ピノが元気に返事を返した。ドラえもんはポケットから『お取り寄せバッグ』を取り出して通り抜けフープを回収し、更にどこでもドアを出して地上へ戻った。

 

 

「さてと、二人は今何処かな····えと、えと····『尋ね人ステッキ』~!」

 

 

「ドラえもんさん、その道具で雪菜さんと佐天さんを探せるんですか?」

 

 

「うん!そうだよ。この道具は地面に突き立てて手を放すと探したい人や物の方向へと倒れるんだ。ただ、的中率は70%位で絶対って訳じゃないんだけどね···」

 

 

「70%でも凄く便利ですよ!何しろここは異世界···何処に何があるなんてわからないんですから!」

 

 

「ありがとうシリカちゃん」

 

 

シリカに礼を言ってドラえもんは地面にステッキを突き立てて、倒れた。方角は東方面を指している。

 

 

「うぅ~ん····やっぱり安全ルートから大幅に外れて移動しているか····みんなに大丈夫って、大見得切っときながら僕って奴は·····」

 

 

予想外に巨大で凶悪な魔物の襲撃を受けて仲間と散り散りになってしまったのをドラえもんは責任を感じて、悔やみ自分を責めていた。しょんぼりしているドラえもんにシリカはエールを送る。

 

 

「ドラえもんさん、自分を責めないで下さいっ!!ドラえもんさんが私を····私達を助けてくれたからまだ、こうして此処に無事に居るんですよ!この子達だってドラえもんさんが居なかったらずっとあの暗い研究施設で朽ち果てて居たんです。だから元気を出して早く二人を探して笑顔で迎えましょう!」

 

 

「ドララッ!!」「クピクピッ!!」

 

 

シリカの言葉にミニドラとピノも同意してドラえもんを励ますかの様に鳴いた。

 

 

「シリカちゃん····うん!そうだね!よーし全速力で二人を探そう!」

 

 

「はいっ!」

 

 

気を取り戻したドラえもんはポケットからタケコプターを取り出し自分とシリカの頭に装着した。ミニドラも自分のポケットからタケコプターを取り出して準備を整えみんなで空を飛び立って探索に向かった。

 

 

ミニドラとピノは二人と一緒に空を飛んで移動出来る事に大層喜び二体は二人の間を交互に行き交いながら空の探索を楽しんでいる。

 

 

「ウフフ。ミニドラとピノったらあんなに、はしゃいじゃって····接触事故に気をつけるんだよぉ~」

 

 

(二人共あんなに元気に仲良く楽しんで····本当に良かった····雪菜さん、佐天さん····待ってて、すぐに迎えに行きますからっ!!)

 

 

 

こうして、二人と二体は遥か東の空へと飛び立った·····

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

その頃、樹木の魔物達を切り刻んで全滅させた佐天は能力の一端である遠視を使って何処か雪菜を静かに休ませられる場所を探していた。

 

「草むらを抜けたあっちの方向に綺麗な水辺がある····一先ずそこへ向かおう···」

 

 

場所を見つけヨットに乗り、ハンドルを握ると次第に能力の発現は収まり、佐天は己自身に対して明確な違和感を憶えた。

 

 

「·····なに、何なの?私?私があの木の化け物を電光丸でやっちゃったんだよねっ!?この感覚ドラさんのアスレチックの時と同じ····?あと、念力も使ってたよね?あんな威力を私が····」

 

 

「····はぁ、はぁ、ゴホッゴホッ!」

 

 

「雪菜さんっ!?····今はとにかく静かに休められる場所へ移動しないと。きっと····きっとドラさん達が私達を探し当てて迎えに来てくれる筈。だからそれまで持ちこたえて····」

 

 

刻一刻と黒蛇から受けた毒で雪菜の容態は悪くなる一方で佐天は祈る様にドラえもん達が来てくれるのを信じてハンドルを握りしめて移動した。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ふう····やっと着いた····こんなに離れた場所を私が自分の目で見つけたんだよね·····本当に私どうしちゃったんだろう····?····ううん、それより今は雪菜さんを····」

 

 

佐天が見つけた場所は静かで荘厳さすら感じられる湖で体を休ませるのに持ってこいの場所だった。

最初に確認の為、手で少し掬って少量の水を口に含ませてみた。

 

 

「匂いも味も問題無し。良かった····早く雪菜さんに····」

 

 

スカートのポケットからハンカチを取り出し濡らして絞り雪菜の額に当てて、更に手で水を掬って雪菜の口元に寄せた。

 

 

「雪菜さんお水ですよ。さっき飲んでみて大丈夫でしたから、安心して飲んで下さい」

 

 

佐天は雪菜の頭を少し持ち上げて水を飲みやすくして唇へと運んだ。

 

 

「····ゴクッ····ゴクッ····はぁ····」

 

 

「良かった、飲んでくれた····でもこのままじゃ····

私、やっぱりバカだ。いくらあの蛇に追いかけられたからってドラさんが示してくれた安全ルートを完全に離れて····もう少し、どうしてもう少しだけ上手く出来なかったんだろう····」

 

 

今の状況を招いたのは明らかに自分だと責任を感じ一人自分を責めて悔やむ佐天の左手を雪菜が握った。

 

 

「雪菜さんっ?」

 

 

「····はぁ、はぁ···佐天さん····お水ありがとう····それと余り自分を責めてはいけませんよ·····今まであんな魔物に遭遇した経験などなかっ···ゴハッ、ゴホッゴホッ······!!」

 

 

「雪菜さんもう喋っちゃ駄目!安静にしてて、きっと····きっとドラさん達が助けに来てくれますから····だから、だから······」

 

 

佐天は声を絞り出して祈る様に呟いた。

 

 

ズッズズンッ········

 

 

ふと、気がつくと地面が少し揺れているのに気づいた。昨日の地震の続き?と佐天は思ったが、それが間違いだと次の瞬間気づいた。地面が震動し、佐天達の居るヨットから少し離れた場所の地面が盛り上がり、勢いよく何かが這い出して来た。

 

 

「シィヤァァァー!!」

 

 

「なっ!?さっきの黒蛇!?こんな距離を地下から追いかけて来たって言うの?」

 

 

先ほど襲ってきた巨大な黒蛇が再度、襲撃を仕掛けてきた。逃した獲物に執着してここまで追って来たのだ。佐天は咄嗟に雪菜を抱き抱えてヨットから迅速に離れた。間一髪難を逃れたが、黒蛇が頭ごと突進してヨットを粉々に粉砕し、最早逃げる事も叶わなくなってしまった。

 

 

何とか雪菜を引きずりながらも周りの太い樹木に身を隠しながら移動するも鋭い嗅覚で正確に佐天達を追撃してくる。

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ·····駄目だ、逃げ切れない!!」

 

 

激しく息を切らしながら必死で逃げていると雪菜が佐天の耳元で囁いた。

 

 

「····佐天さん、私を囮にして先に逃げて·····後は私が·····」

 

 

その言葉を聞いた佐天は思わず感情のままに大声で雪菜に怒鳴った。

 

 

「馬鹿なんですかっ貴女はっ!!それを本気で言ってるんなら私も本気で怒りますよっ!!そんな真似を本当に私がすると思ってるんですかっ?見くびるのも大概にしてっ!」

 

 

「さ···てん····さん····」

 

 

普段は務めて明るく軽く、朗らかにしている彼女が本気で怒っているのに雪菜は意識が朦朧としながら驚いた。

 

 

「···確かに私はおバカなお調子者で楽しい事最優先にして、ついつい、雪菜さんやシリカさんをからかったりとかしちゃいますよっ?···でも友達で、仲間で、運命共同体の貴女を平気で見捨てる様なダサい奴だなんて思われてるなんてっ···

馬鹿にするのもいい加減にしてっ!!私は···私は友達を、仲間を、見捨てたりなんて絶対にしないっ!!何が何でも二人一緒に生き延びてドラさん達と合流するんですからねっ!わかりましたかっ?!」

 

 

佐天の本気の本心の怒りの感情をぶつけられ雪菜は少しだけ困惑し、そして小さく消え入りそうな過細い声で、

 

 

「····私の方が馬鹿でした····ごめんなさい····そして、ありがとう····佐天さん····」

 

 

雪菜の瞳から涙が流れ、頬を伝って地面にこぼれた····

 

 

雪菜相手に本気で怒って啖呵を切った佐天だったが、現実は極めて非情で黒蛇は淡々と先回りして二人の目の前にその巨体を現して感情の読めない冷淡な眼で獲物を定めた。

 

 

 

黒蛇の眼を佐天涙子は両の目で見つめ、そして·······

 

 

「いい加減にしてよっ!!なんでっ突然あっちの勝手な都合で異世界に召喚されて、何故デカイだけの蛇にしつこく追い回されなくちゃならないのよっ!!

迷惑かけられっぱなしでいい加減イライラするわよっ!!·····段々頭にきて、腹も立ってきた····非っ常にムカついてきたわ·····だから····

さっきの分もまとめて借りを返させて貰うわね······」

 

 

 

佐天涙子の両の瞳が深紅の輝きを放った。

 

 

 

「さっ、佐天···さん、その両目の変化は·····?」

 

 

「·····悪いけど、今は邪魔になるからあっちへ避難しますよ?」

 

 

やけに冷静な、冷めた感じの口調で雪菜を抱えて足下に念力を集約させ地面との反発力を生み出し、雪菜に負けず劣らずの跳躍力を発揮させて一時離脱し、周りで一番太い樹木の根元に雪菜を下ろし右手で腰に着けていた電光丸を握り雪菜に、

 

 

「それじゃ···暫くそこで大人しくしてて下さいね·····何処までやれるかわからないけど、少しアレの相手をしてきますから·····」

 

 

と、言ってまたも念力を足下に集約して黒蛇を雪菜から引き剥がす為に反対方向へと跳躍して行った。肝心な時に役に立てない己の不甲斐無さを呪い、祈る様に声を絞り出して彼女の名を呟いた。

 

 

「····くっ、佐天さん·····」

 

 

佐天と雪菜の後をつけてきた黒蛇は戻ってきた佐天の姿を確認して軽く警戒感を現した。最初に襲った時は、以下にも美味しい獲物だと判断したのに今、再度目の前に戻って来たこの獲物は、獲物と呼べないナニカに変貌していると感じ取ったのだ。

 

 

「じゃっ、ヤろうか····」

 

 

僅かな時間、睨み合い····そして黒蛇の方から口を開いて毒の牙を剥き出しにして突進してきた。先ずは弱らせてから確実にしとめようとしてきたのだ。だが····

 

 

「····その牙の毒で雪菜さんは苦しんでいるの··········だから」

 

 

佐天の瞳が一層の輝きを放って黒蛇の突進を僅かな小さい動きで避けつつ、その動きの流れのまま上顎の牙を電光丸の一閃で横に綺麗に皮膚ごと斬り裂いた。

 

 

「ヒッシャァァー!?!?」

 

 

黒蛇はたまらず首を捻って地面に頭を擦りつけた。予想外な反撃に明らかに狼狽えている様子を見せる。

 

 

「雪菜さんが矛の攻撃をした時私、怯えながらだけどちゃんと観てたんだ(・・・・・)····頭部を始めとして全体に生えている鱗は恐らく鋼鉄よりも強靭で硬い·····けど口周りは意外なほど柔らかいよね·····そうでなければあれだけ馬鹿みたいに大きく口を開くなんて出来ないもの·····」

 

 

淡々とした様子で佐天は黒蛇の弱点を突いた。緋色に輝く瞳が黒蛇を映し、更なる弱点を暴こうとしている。

 

 

黒蛇は初めて無機質の瞳に感情を宿した。さっき迄は本能の赴くまま獲物を狩ろうとしていたが、今は明確に目の前のこの不気味で、底知れない人間に対する怒りと殺意に溢れ、必ず仕留めてやるという気迫の様なモノが芽生えていた。

 

 

黒蛇はシリカを襲った時の様に尻尾をしならせて鞭として扱い、佐天の頭上へと掲げ一気に振り下ろしてきた。

 

 

「····当たればヤバいね。当たれば····」

 

 

自分の胴体よりも遥かに太く、巨大な尻尾の鞭を佐天は軌道を完璧に読みこなし、電光丸が導いてくれる動きを阻害する事なく全身を程よく脱力させ、寧ろ刀が誘導してくれる動きに同調して身体をしなやかに無駄なく運用して回避及び跳躍して黒蛇の背後を取った。

 

 

緋色の両の瞳は黒蛇の背全体を映し、丁度首元あたりにうっすらと光が見えた。

 

 

「硬い鱗のほんの僅かな隙間部分····ソコが弱点で柔いのね·····」

 

 

弱点を看破した佐天は念力を両足に集中させ、一瞬だけの足場を作り上げ勢いよく蹴り電光丸を両手で握りしめ力と全体重を乗せて突き下ろし、その僅かな小さい弱点部分を精密に貫いた。

 

 

 

ズブゥゥッ······!!

 

 

 

「ギィシャアァァァーー!!!??」

 

 

 

深々と弱点とおぼしき部分に電光丸が突き刺さり黒蛇はまるで断末魔のごとき咆哮を上げ、漆黒の鱗は急激にその色を失って白く染めていった。

 

 

「·····やった?·····イヤ、違う····さっきの樹木みたいなのを斬った際には消滅していったのにコイツは消えずに変色した····何かがおかしい····?」

 

 

奇妙な変化に危険を感じ、急いで黒蛇だったモノから離脱すると電光丸で突き刺した部分を起点にして縦状に身体がひび割れてゆく。

 

 

「····蛇らしく脱皮でもするつもり?」

 

 

一切気を抜かずに電光丸を両手で握り、切っ先を向けて臨戦状態を保つ。佐天の深紅の眼に映ったのはパックリと裂けた首元の部分からナニカが蠢くのを捉えた。

 

 

白く染まった元、黒蛇だったモノから誕生したのは上半身が女性で下半身が黒蛇といういかにも異世界ファンタジーで出てくる定番とも言える怪物だった。大きさは普通のごく平均的な女性の体格で、頭髪全体が一見ウェーブ状のソバージュに見えるがそれは髪の毛ではなく、細く無数に蠢く蛇だった。

 

 

 

「確か弟のゲームにあったな···そう、メデューサ····だったっけ······?」

 

 

佐天は弟のゲームに出てきたビジュアルと名称を思い出しつつ、しっかりと相手を見据える。そしてメデューサ(もど)きは佐天とその遥か後方の太い樹木にもたれて意識を朦朧とさせている雪菜を見定めた。

 

 

佐天の眼にメデューサは怒りと殺意に満ちた顔を見せ、普通に人間の形の右手を牙の鋭い蛇へと変化させ、目の前の佐天ではなく、雪菜に狙いを絞りその蛇腕を異常に伸ばして襲ってきた。

 

 

「ジャアァァー!!」

 

 

深紅の瞳でいち早くメデューサの狙いを看破した佐天は雪菜を庇う様に直線上に移動し、ヤツの攻撃を両手で電光丸を支えて刀身の腹で受け止めた。

 

 

ガキィィンッ!!

 

 

(·····くっ!お、重いっ·····!?)

 

 

辛うじて食い止めたものの、黒蛇だった時と比べて普通の女性の体格に縮小した身体から放たれたとは思えない程の重く、殺意の籠った一撃だった。

 

 

桁違いの威力に、その場に踏ん張れ切れず、地面に靴裏を擦りながら後ろへと押しやられてしまう。

 

 

「····ぐうぅっ、うあぁぁっー!!」

 

 

佐天は電光丸の腹に押し込んでくるメデューサの蛇腕に念力を展開して咄嗟に右斜め上に振り払ってしのぐのに成功した。

 

 

「ハァッ、ハァッ····(なんて威力の攻撃····!まだ両手が痺れて····明らかに黒蛇の頃より格段に強くなっている·····んっ?あれっ?何だか万能感というか、無敵感が薄れてきてる!?)」

 

 

両手の痺れよりも深刻な事態が佐天涙子を襲い始めていた。敵が強く進化して危うい最悪のタイミングで能力の発動時間の限界がやって来てしまったのだ。更にまだ慣れない能力の発動状態での実戦を間を置かずに行ってしまったので脳細胞に負担がかかり、頭痛までもがおきていた。

 

 

ズキズキ「···痛っ!····や、ヤバいよねコレ···早く片をつけないと····よしっ!一気に攻めるっ!!」

 

 

能力発現の代償を抱えながら佐天は覚悟を決めて、残りの僅かな時間で一気に勝負に出た。

 

 

メデューサが今度は左腕を無数の蛇の形に変化させ佐天に手数で襲ってきた。

 

 

「ジャアァァー!!」

 

 

変化した無数の蛇腕は佐天に四方八方に枝分かれして向かってくる。それを薄れ始めている深紅の瞳で捉え、電光丸から導びかれる動きで閃光を疾らせ斬り裂き、僅かな隙間をしなやかな動きで突破し念力で地面と両足を反発させて高く跳躍。メデューサの背後へと回り込んで電光丸に全てを込めて一撃を振るう。

 

 

「てぃりゃあァァァー!!!決まれぇっ~!!」

 

 

何とか反応したメデューサは自分の脳天に振り下ろされる刀を右腕の蛇腕で防ぐ。

 

 

「····こ、のおォォォー!!!」

 

 

今の自分の全てを込めた渾身の一撃だった······だがっ!!

 

 

パキィィィッッー!!!

 

 

期待と希望虚しく、電光丸は真っ二つに折れ、砕けた······

 

 

「なっ、そんなっ!!?(まさかっ!もしかして最初の右の蛇の腕を刀身の腹で受けたあの時にっ!?)」

 

 

佐天は雪菜を狙った攻撃を電光丸の腹で受けたあの時に、既に道具の耐久値を越える致命的なダメージを与えられていたのに気づいた。

 

 

そして····遂に能力の発動も完全に消え両目は元の黒目に戻り、右手には折れてその機能を失い、骸と化した電光丸が力無く握られていた。

 

 

反撃する手段が失われ、最悪な状況となった現実の前に佐天は呆然として敵の前で棒立ちになってしまっている。

 

 

下半身が黒蛇のメデューサは卑しく、下卑た顔をして尻尾の先端から蜂の様な棘を剥き出しにしてその尖った先から紫色の毒液を滴らせて佐天に突き刺さそうとする。

 

 

「···えっ?あっ、あ"あ"ァァ····」

 

 

素の状態に戻り、ようやく目の前の魔物が自分に毒液を滴らせた尻尾の棘を突き刺そうとしているのに気づいたが、体力と気力を著しく失い頼みの電光丸も壊れ、佐天は絶望感に支配され逃げ出すことすら、おぼつかずに立ち尽くしていた。

 

 

だがっ············ドシュッ。

 

 

「ギィリィリィリィッ~!!??」

 

 

メデューサの右目に矛が突き刺さっていた。

 

 

メデューサの痛みを叫ぶ声に正気を取り戻した佐天は後ろを振り返ると、そこには呼吸を荒くし、満身創痍の身体を引き摺りながらも無敵矛を投擲した姫柊雪菜の姿があった····

 

 

「····雪菜さん!?そんな身体で···」

 

 

「ハァ···ハァ···さ、佐天さん····早く···こっちへ···」

 

 

ふらついて倒れそうになった彼女を佐天は素早く駆け抜けて支えた。

 

 

「···雪菜さん無茶しすぎです。···でもありがとう···」

 

 

「ハァ···ハァ···無事でなにより·····」

 

 

無理を押して動いた為か、とうとう限界を越えてしまい雪菜は再び意識を失う。

 

 

(蛇のヤツがジタバタしている内に早く此処を離れないと····)

 

 

メデューサは右目に突き刺さった矛を抜くと不気味な煙を吹き出して潰れた筈の右目が再生した。治った目で佐天と雪菜の逃げようとする二人の姿を見たメデューサは今度こそ逃すまいと両手を無数の蛇へと変化させ速く強く、大量の手数で二人の背後から襲ってきた。

 

「シィヤァァァー!!!」

 

 

メデューサの咆哮に思わず後ろを確認すると無数の蛇腕が二人の目前まで迫って来てた。

 

 

「···なっ!?くぅっ····(雪菜さんっ、ゴメンなさい。私やっぱり無能でした····せめて貴女だけでも······)」

 

 

絶対に逃れられないと悟った佐天は無駄と理解しながらも雪菜を守ろうとして庇い、身体を盾にしてメデューサからの襲撃を受けようとしていた。

 

 

メデューサは口を両端まで裂かさて歓喜の笑みをみせた·······

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドバアァァァーーーンンンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

猛烈な勢いで何か、硬く、重く、速く、強い衝撃が無数の蛇の両腕を両断せしめたっ!!!

 

 

 

「ギィッ!?ギィシャアァァ~~~!!!???」

 

 

 

メデューサは突然の事態に理解が追いつかず、混乱していた。

 

 

雪菜を抱えていた佐天も同様だった。訳もわからず目線をキョロキョロと(せわ)しなく動かし、現状を把握しようと躍起になってしまっていた。

 

「なっ·····何が起こったのっ!?」

 

余りに強い衝撃が放たれた為、辺り一面土埃が舞っていたが少し経つと落ち着いてきて何かの人影が確認出来た。

 

 

「はぁ~いィィ♪どうやらギリギリだったけどぉ、間に合ったみたいねぇ~♥」

 

 

佐天は思わず我が目を疑った。何しろ目の前にいる人間は年の頃は自分と同じ位で自分の元居た世界でのファッション····所謂ゴスロリの服を着用し、シリカと同じか、もしくばもう少し小柄な少女がその体格に不釣り合いで異様にデカく重そうな斧の様な武器を片手で担いでいたのだから······

 

 

「あっ、貴女は一体······?」

 

 

「ウフフゥ。初めましてぇ、私の名はロゥリィ・マーキュリー。断罪の神エムロイに仕えし亜神にして、今はマスターにも仕えし

【ルーラー】のサーヴァントよぉ。よろしくねぇ♪」

 

 

場違いな程に陽気に明るく、コジャレた感じで自己紹介する彼女に目を離せなかった佐天だった。

 

 

 

 




すいません、急遽12話でサーヴァント『ランサー』と記載してたのを、『ルーラー』に変更させて頂きました。後からアイデアが湧いて来たので誠に申し訳ありません。何時も楽しく読んで下さる皆様にはご迷惑おかけしますがどうかよろしくお願いします。
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