青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

18 / 30
18話 進化と覚醒

 

遥か後方から鳴り響いた咆哮に周囲の空気は震え、皆は一斉に振り向くと小高い岩山の上に白く巨大で額に三本の角を生やし、口からサーベル···というよりもどこか刀剣類を思わせる立派な二本の牙を持つ巨狼がドラえもん達一行を殺気に満ちた眼差しで睨んでいた。

 

 

サーベルウルフ達はその姿に怯え、どこか悲しそうな仕草をして忙しなくしている。

 

 

「あ、あれってもしかして君達の···?」

 

 

ドラえもんがサーベルウルフ達に尋ねるとウルフ達は悲しそうにドラえもんに訴える。

 

 

「····ギャウ。ガウガウッ、グルウッ·····」

 

 

「····フムフム。どうやらあの巨大な白いサーベルウルフはこの子達のボスで、少し前から様子がおかしくなったんだってっ」

 

 

「···あの、ドラえもんさんこの子達が何を言ってるのか解るんですかっ?」

 

 

「うん、まあね。翻訳コンニャクを食べていたから会話が出来るんだ。····おっと、そんな事よりもこの子達が言うには3日前当たりから空に奇妙な穴が開いて、ソコから気味の悪い光が洩れだしてその光に当てられてからボスの様子がおかしくてなって狂暴になってこの子達は仕方なく逃げて来たと言っている」

 

 

「空に奇妙な穴···ですか···?」

 

 

「正直何の現象なのかは皆目つかない。けどただ、言えるのはあのボスの狼はとても狂暴になって仲間に対して危害を平気で加える程乱暴になっているってのと、どうやら次の標的が僕らになっているのがわかったんだ。シリカちゃんここは無駄に応戦するよりも空を飛んで逃げよう!」

 

 

「わかりまし···ドラえもんさん後ろっ!!?」

 

 

シリカにとにかく逃げる様に言っているとドラえもんの背後に例の白く巨大なサーベルウルフが迫っていた。

 

 

「なっ!?あの距離を一瞬でっ!?」

 

 

「ドラえもんさーんっ!!」

 

 

シリカが叫び、ドラえもんは余りに突然の強襲に反応出来ずに目を閉じた。だが、何の衝撃もやってこず恐る恐る目を開くとそこには、三頭のサーベルウルフ達が身体から血しぶきと悲鳴を上げている様子が映った。

 

 

白いサーベルウルフの刀剣の様な牙の餌食になる寸前に三頭のサーベルウルフ達が盾となってドラえもんを庇ったのだ。

 

 

「ギャインッ!」 

 

 

背中を牙に貫かれ大地に叩きつけられたサーベルウルフ達の身体からおびただしい血が地面に染まってゆく。

 

 

「そ、そんな····」

 

 

シリカは両手で口元を押さえて目の前の光景に顔を青くし、ドラえもんは目を見開いて傷ついたウルフ達を眺め、歯を食い縛った。

 

 

「み、みんな····僕が強制的に道具で従わせたからこんな事に····くっ、許さない!いくら原因不明の現象のせいで狂っているとはいえ、自分の仲間を手にかけて平然としているお前なんか僕がやっつけてやるっ!!」

 

 

全身に闘志を漲らせてドラえもんはポケットから道具を取り出し、装着した。

 

 

「くらえー!!『空気砲』だぁー!!」

 

 

ドカーンッ!!

 

 

黒い筒から空気の塊の砲弾がボスウルフの顔面に直撃した!!

 

 

····だがっ、ボスウルフは口から生やしている牙で空気の砲弾を切り裂いて防いだ。

 

 

「なっ!空気砲の空気弾を正面から切り裂くなんて···なんて頑丈な牙なんだ···だったらこの電光丸で勝負だっ!!」

 

 

あらかじめフエルミラーで増やしておいた予備の電光丸を握り構えた。

 

 

ボスウルフはその鋭い牙の刃をドラえもんに向けて正面から突進してきた。

 

 

「でやぁー!!」 「ガルヴゥッ」

 

   

     ガキィンッ!!

 

 

刃と刃がぶつかり合い火花が散った。ボスウルフは力任せに強引に押し進み、ドラえもんは電光丸からの自動動作で身体を捻ってこれをさばき、カウンターでボスウルフの後頭部を狙った。

 

 

だがその攻撃に素早く反応し、ボスウルフも身体を捻って回避して距離を取った。

 

 

「は、速いっ···!!」

 

 

電光丸に内蔵されているコンピューターは相手の動きを瞬時に分析して、握っている人物の身体を半ば強制的に効率よく、効果的に動かせて敵を討ち果たす二十二世紀の近接戦用の道具だが、この目の前のサーベルウルフのボスは容易く電光丸の素早い反応を敏感に感じ取って攻撃をかわした。

 

 

その事実にドラえもんは頭の中で今までの大冒険の経験からどの様に対処するかを導き出していた。

 

 

(こいつ、とんでもない反応速度で電光丸の攻撃をかわした···!なら先ずは奴の動きを止めるか、こちらも道具で素早さを上げるかしないとマトモに相手出来ないぞ···)

 

 

ボスウルフはドラえもんを威嚇し続けゆったりと周りを行き来し、攻撃に移る距離とタイミングを計っていた。

 

 

そこへシリカがドラえもんの隣へ逆手で真剣のダガーを構えてやって来た。

 

 

「シリカちゃん!?」

 

 

「ドラえもんさん、わ、私も戦います!何時までも怯えていたって何も変わらない····。だから···一緒に戦わせて下さい。お願いします!」

 

 

巨大な黒蛇、巨大な角ウサギ、そして巨大な白いサーベルウルフと遭遇し、弱気になっていたシリカだが、勇気を奮い立たせてドラえもんの隣に立った。

 

 

その姿にドラえもんはかつての大冒険で普段はバカでドジでマヌケでのろまのおっちょこちょいの意気地無しのアンポンタンだが、友を守り助ける為、勇気を振り絞って立ち上がって行動する親友(のび太)の姿が重なって見えた。

 

 

 

(フフフ···いくら何でものび太くんの姿を重ねたらシリカちゃんに悪いな····プー、クスクスッ)

 

 

つい、微笑ましく笑ってしまう。

 

 

「うんっ、わかった!それじゃ一緒に戦おう!」

 

「はいっ!頑張ります!!」

 

 

シリカの姿を見たボスウルフは更に警戒心を強め、様子を伺っていた。

 

 

「私が先に仕掛けます。ドラえもんさんはその隙を狙って下さい」

 

「うん!わかった。任してっ!」

 

「お願いします、ふぅー····てりゃあーっ!!」

 

 

ソードスキル発動のエネルギーをダガーに込めながらシリカは素早く駆け出した。

 

 

ボスウルフはこれに反応して、シリカに刀剣の牙を向けて襲いかかってくる。その動きを読んでいたシリカはソードスキルを発動させた。

 

 

「サイド・バイト!!」

 

 

ダガーが光輝き、スキルが発動された。シリカは半強制的に滑らかな動きに変化してボスウルフの身体の右側面へと移動し最初の一撃を入れ、その流れのまま、Uターンの動きでボスウルフの後方から今度は左側面へとダガーの一撃を入れた。

 

 

「ギャウワッ!?」

 

 

普通(・・)に素早いシリカの動きから一種の『型』の動きへの急激な変化に、さしものボスウルフも戸惑い反応が遅れ、両サイドからのダガーの2連撃をマトモに喰らった。

 

 

ドラえもんはその隙を逃さずポケットから取り出した『瞬間接着銃』をボスウルフに撃ち放った。

 

 

「これならどうだっー!!」

 

 

ビュッ、ビュッ!ドロォ~ンッ!!

 

 

「グルガァッ!??」

 

 

ボスウルフの身体に瞬間接着銃がヒットし、取り餅の様なネバネバした液体が絡みつき動きを封じる事に成功した。必死で抜け出そうと、もがいているが無駄だった。

 

 

すかさずシリカはトドメの為のソードスキルを発動する。

 

 

「最後はこのスキルで····えっ!?」

 

 

シリカがトドメのソードスキルをボスウルフに放とうとするが、そこへさっきのソードウルフ達が立ち塞がり、何か懇願するかの様に喚き出した。

 

 

実はシリカはミニドラに頼んでひみつ道具でソードウルフ達の治療を頼んでいたのだ。ミニドラはポケットから『なんでもキズバン』を取り出してウルフ達の傷を治した。そして回復してドラえもん達の戦闘に気がつき、トドメを刺されそうになっているボスの命を助けて欲しくてシリカの前に立ち塞がったのだ。

 

 

「えっと····ど、どうしましょうか····?ドラえもんさん····?」

 

 

シリカはオロオロと困り顔になってドラえもんに答えを求めた。そこにミニドラがドラえもんに何やらアドバイスをする。

 

 

「ドララ、ドラァ·····」

 

 

「フムフム····あっ!成る程ぉ~その手が合ったかっ!!」

 

 

「えっ!?何々?なんてミニドラさんは言ってるんですか?」

 

 

シリカが困惑して尋ねるとドラえもんはこう答えた。

 

 

「ミニドラが言うには、ウルフ達の話しによると、元々あの白い狼はリーダーとして立派な狼だったんだって。そこを奇妙な光で狂暴になっただけだから、タイム風呂敷で狂暴になる前の優しいリーダーだった時に時間を巻き戻してやればいいんだよ!」

 

 

「あっ!そうか!あの例の風呂敷で元の普通だった時に戻すんですね!良かった!!」

 

 

シリカはホッとして思わず笑顔になった。

 

 

「よーし!そうと決まれば早速···」

 

 

ドラえもんがポケットからタイム風呂敷を取り出そうとしていると瞬間接着銃で身動きの取れないボスウルフはその口を大きく開いて咆哮を吐き出した。

 

 

「グルオオオォォォーーー!!!」

 

 

けたたましい咆哮が周囲に鳴り響き、ドラえもんとシリカはその声に思わず耳を塞ぐが、一瞬強い眩暈を感じて頭がグラグラした。

 

 

「な、なんて雄叫びなんだっ!目の前が···回るぅ~···」

 

 

「くっ、立って居られない····!?」

 

 

耳を塞いで尚も咆哮が頭の中を揺らし、両膝を地面について耐え忍ぶ。

 

 

意識が朦朧とする中、ボスウルフに視線をやるとみるみる内にボスウルフの身体のアチコチから刃が生えて行き、ボスウルフの顔の両端から新しい顔が生まれ、まるでケルベロスを連想させる姿となった。

 

 

背中、四本足の関節部分から刃が飛び出し、爪と角と牙は益々凶悪な形に変化した。3つの顔の口からは涎を垂れ流してドラえもん達を睨んでいた。

 

 

敢えて今のこの形態を呼称するならブレイドケルベロス(刃を持つ地獄の猛狼)と言った感じに進化したボスウルフは3つの口から炎を吐き出し、粘着液を容易く溶かして自由を取り戻してしまった。

 

 

「な、なんてこった····あんな訳のわからない姿に成長···いや、進化するなんて····奴を元の姿に戻したいけどあれじゃ、大人しく風呂敷を被らすのは難しいぞ····」

 

 

ドラえもんはボスウルフの変化に驚愕し、シリカは震えながらも必死で立ち上がって心を強く保ち、ダガーを構えた。

 

 

「ドラ、ドララッ!!」

 

「クピ、クピピッ!!」

 

「ブイ、ブブイッ!!」

 

 

そんな二人の姿にミニドラ、ピノ、イーブイの3匹達はまるで自分たちも一緒に戦う、だから負けないでっ!····と励ましているかの様にシリカには聞こえた。

 

 

「ははっ···うん!ミニドラさん、ピノ、えっと、イーブイ···だったけ?みんなありがとう···私、負けないよっ!」

 

 

暖かい安心感がシリカの心を包み、身体の震えが止まる。····するとシリカの中で唐突に何かが繋がった感覚が芽生えた。

 

 

(えっ····なに、この感覚····何だろう。まるでSAO時代とALOの世界でピナと想いが繋がっていた時みたいな不思議な感覚·····ピノとイーブイの想いと情報が頭に流れ込んで来る····)

 

 

一秒にも満たない時間でシリカは二匹の能力を、技を知り、理解した。

 

 

「·····うん解ったよ。ピノ、イーブイ···一緒に···行こう!」

 

 

「クピィッ!」「ブイブイッ!」

 

 

 

シリカの中で何かが芽生え、覚醒した······

 

 

 

ブレイドケルベロスに進化したボスウルフは全身から飛び出した刃を広げ、ドラえもんに襲いかかろうとした。

 

 

「わっー!!よーしだったらコッチはあの道具で···」

 

 

だがっやはり内心焦っているため、出て来るのはガラクタばかりだった。

 

 

「何で僕は何時も肝心な時にこうなっちゃうんだー!!」

 

 

ブレイドケルベロスが全身の刃の切っ先を向け動こうとする瞬間····

 

 

「ピノっ、こおりのつぶて!!」

 

「クッピィー!」

 

 

シリカはフリーザーこと、ピノに指示して『技』を出させた。

蒼く涼やかな両翼から氷の礫が生成され、ブレイドケルベロスの目と鼻に直撃し出鼻を挫いてたたらを踏ませた。

 

 

「グルガァァ~!?」

 

 

ダメージこそ大した事は無いがいかに魔物といえど不意討ちで目鼻に攻撃されれば隙が出来る。その間を逃さずにシリカは今度はイーブイに指示を飛ばした。

 

 

「イーブイっ!でんこうせっかっ!!」

 

 

「ブイブイブイッー!!」

 

 

不意討ちを喰らって、たたらを踏んでいる所にイーブイが高速で体当たりを顔面に喰らわし、その隙をついて更に追い討ちをかける為、シリカは二匹に指示を出している間にダガーにエネルギーを溜めてソードスキルを発動させ、駆け出した。

 

 

「でやぁー!トライ・ピアース!!」

 

 

トライ・ピアース。本来は鎧の合間を縫う様に3箇所を突き刺す短剣のソードスキルで今回相手の身体のアチコチに刃が生えてきているのでその隙間を狙ってシリカは放った。

 

 

ズガッズガッズガッ!!

 

 

「グガアァァーッ!!」

 

 

 

見事、魔物の刃の隙間に命中させてマトモなダメージを与えた。

 

 

攻撃を命中させたシリカは直ぐ様身体を跳躍し、宙返りさせてその場を鮮やかに離れ、ドラえもんの側に降り立った。

 

 

「す、すごい···しっかりと連携してあの狼を翻弄しているぞ。そしてシリカちゃんも凄いぞっ!」

 

 

「ありがとうドラえもんさん。今の内に何か道具を出して態勢を整えて下さい。そして何とか動きを弱らせてタイム風呂敷で元の狼に戻してあげましょう!」

 

 

「うんっ!わかった。任せてっ!よーしミニドラ、僕達も負けていられないぞっ!」

 

 

「ドララッ!」

 

 

少しの間見とれていたドラえもんとミニドラは我に帰り、シリカの作戦を成功させる為の打ち合わせをする。

 

 

「よし、ミニドラ。僕はシリカちゃんと一緒に道具を使って攻撃を仕掛ける。その間お前はタケコプターで上空から待機して、決定的に大きな隙が出来たらこのタイム風呂敷を被らせるんだ。お前なら小さいから隙を伺いやすからね。それじゃよろしく頼むよミニドラ!」

 

 

「ドララッター!!」

 

 

ドラえもんとミニドラは作戦どうり動き始めた。ミニドラはタケコプターで上空から待機して、ドラえもんはポケットから『ひらりマント』と『ころばし屋』に『オモチャの兵隊』、『ホームミサイル』そして『ラジコンロボ』を取り出しセットし再び、空気砲を左手に装着、右手に電光丸を握り、ひらりマントを装着して準備を整えた。

 

 

「ありがとうシリカちゃん、これでバッチリ、レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整った)だよっ!みんな一緒に頑張ろう!」

 

 

「はいッ!それじゃ···みんな行くよ!!」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。