青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

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皆さんお久しぶりです。どうか今後も改めてよろしくお願いします。


20話 バーサーカー降臨

ドラえもん達一行がサーベルウルフ達の道案内で佐天と雪菜達の元へ移動するより少し前、とある場所(・・・・・)では各陣営が数少ない人工の魔術回路に適合した者達が己の命を削る覚悟で平行世界から各クラスのサーヴァントを召喚していた。

 

 

「ゴホッゴホッ····ハァ、ハァ·····や、やったぞ····成功だっ!俺達はサーヴァントを召喚し、契約を結ぶのに成功したんだっ!!」

 

 

「やったなぁ、おめでとう」

 

 

「喜ぶのはまだ早いぞっ!これから他の陣営のサーヴァントと戦い、勝ち抜いて行かなきゃならないんだからな」

 

 

「ああ···わかってるさ···絶対に勝ち抜いて、あの星(・・・)への移住権を勝ち取るんだっ!!絶対に生き抜くぞっ!!」

 

 

 「「「「「「「おおぉぉーっ!!!」」」」」」」

 

 

複数の人間が召喚に喜びつつも気を引き閉め直し、全員が一致団結している所に突然、何の気配も漂わせず空中に髪の長い薄手の衣を身に纏った奇妙なまでにどこか現実感のない女性が現れサーヴァントの召喚に成功した陣営にこう言い放った。

 

 

「ウフフフ····気合いが入っている所悪いんだけど····残念····あなた達には少し眠ってて貰うわ····大丈夫よ。死にはしないわ。今はね···」

 

 

そう言うと軽く右手を横に振るとその場にいた複数の人間全てが意識を失い、一人残されたサーヴァントとおぼしき英霊が彼女を見上げた。

 

 

「貴女は誰だっ!!ボクのマスターに何をしたんだっ!?」

 

 

サーヴァントとおぼしき彼女は薄黒さの混じった紫色の髪を揺らしながら腰に備え着けてあった鞘から剣を引き抜き、臨戦態勢の構えを取る。

 

 

「あらあら····とても勇ましいのね。頼もしいわ。それに可愛らしい···安心なさい、眠らせただけよ。けど···貴女の態度次第でこのまま永遠の眠りに着くかも知れないけど····どうすればいいのかは、解るわよね?」

 

「くっ····!」

 

悔しそうに歯を食い縛って怒りの感情を何とか抑え込み剣を再び鞘へと戻した。

 

「そう、いい娘ね。では行きましょうかセイバーのクラスのサーヴァント、絶剣のユウキ·····」

 

セイバーのクラスとして召喚され、絶剣のユウキと呼ばれた彼女は口惜しさに手を強く握りしめ、渋々ながら目の前の女性に従いついていった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

その頃佐天、雪菜、そしてサーヴァント

【ルーラー】のロゥリィは3体の巨大な魔物に遭遇していた。

 

「ゴルラァー!!」 「ガァーッ!!」 

「グリィィ···」

 

3体の魔物の内、2体は所謂オーガ()と言うべき姿をしており、赤色と青色の敢えて言うならばレッドオーガとブルーオーガが片手にそれぞれトゲ付きの鉄棒を所持し、最後の一体は巨大な一つだけの目玉を持つサイクロプス(一眼鬼)でこちらは巨大な斧を担いで共にけたたましい咆哮をあげている。

 

 

佐天、雪菜、そしてロゥリィ達を獲物として狙い進撃してきた。

 

「ろっ、ロゥリィさんっ!!」

 

「ウッフフフ···これ位問題無いわぁ···♥貴女達はその樹の後ろから出ちゃダメよぉ?」 

 

 

3体の魔物達は自分たちに向かってくる黒服の年端のいかぬ小柄な少女に対してニヤリと笑い容易い獲物として舐めた形で獲物を振り下ろした。

 

 

····だがっ、それは余りに愚かな初手であった。 

 

 

3体の内の一体のブルーオーガの腕がトゲ付きの鉄棒振り下ろした、その瞬間···

 

 

「ピギャアァァー!!??」

 

 

ロゥリィの目にも止まらないハルバードの斬撃がブルーオーガの右腕を切り落とした。

 

 

青い腕から紫色の鮮血が迸り、ブルーオーガの悲痛な叫びが周辺に響き、他の二体も余りに予想外の出来事に未だに現実を直視していなかった。

 

 

なまじ強靭な生命力と巨体に恵まれているが故に「何故、コイツの腕が失くなったのだ?」···と少しも自分たちの認識を改める作業を進める事が出来ていなかった。 

 

 

····そして····ズバシャーッ!!!

 

 

小柄で可愛らしい少女の振り回すハルバードによってブルーオーガとレッドオーガの首が身体から永遠に別れた···· 

 

 

「···フフフッ···あははははぁぁー♥♥♥」

 

 

特地と呼ばれた世界において死と狂気、そして戦いと断罪の神「エムロイ」に仕える亜神たるロゥリィ・マーキュリーは歓喜に身を委ねる。

 

 

「···ほらぁ、ほらぁほらぁっー♥どぉしたのぉ?呆けてる余裕なんて無いわよぉ?命のある限り抗ってご覧なさぁい···それが無理ならぁ···今すぐ貴方も気持ち良くしてあげるぅぅ~♥♥♥」

 

 

二体の首から噴水の如く流血が迸り、1人残されたサイクロプスが恐怖と怒りにその巨体を奮わせ、此処に到ってこの目の前の小さく可愛らしい少女が見た目どうりの存在ではないとようやく認識を改めた。

 

 

サイクロプスは自分の武器である斧を両手で目一杯握り締め、最大級の破壊力のある一撃を放った。

だがロゥリィはいとも容易くハルバードで弾き返した。サイクロプスの両手に鈍い痛みにも似た痺れが伝わってくる。

 

 

「ウッフフ····どうしたのぉ?もっと全力でかかってきなさいなぁ」

 

 

「グギャッ!?···グオォォォー!!!」

 

 

ロゥリィの挑発を皮ぎりにサイクロプスは持てる全ての力を振り絞り、連撃を叩き込む。

 

 

一撃、二撃、三撃、四撃·······

 

 

真上から、斜め右から、斜め左から、横から···と斧による攻撃を繰り出すも、そのことごとくをロゥリィは鼻歌混じりに弾き返し、目の前の巨大な魔物に遥かなる高みに君臨する己を見せつけた。そして·····

 

 

「ご機嫌よう·····♥」

 

 

一つしかない瞳で最後に映った少女の顔は冷たくも何処か優し気で妖艶なる微笑みを浮かべてサイクロプスを2つに斬り裂いた。

 

 

返り血の一滴すらも浴びずに微笑する彼女は何処か儚く、そして美しかった。

 

 

 

大樹の影から戦闘····と呼ぶには余りに一方的なゴスロリ少女による蹂躙劇に佐天は呆気に取られていた。そんな佐天に毒の症状が緩和して一先ず命の危機を脱っして眠りにつく雪菜、そして巨大なハルバードを軽々と肩にやるロゥリィの姿を遠くから眺めている正体不明の存在がいた。

 

 

機械を通して監視している人物はタメ息をつきながら録画したロゥリィの戦闘記録映像に目を見張はる。

 

 

「はぁ···成る程。あれがサーヴァントと呼ばれる者か···凄まじい強さだ。惑星全土に張り巡らしてあるバリアフィールドの隙間を見つけて上手い具合に降り立ったんだな。

カトウ君、キミの情報どうりだ。あんなのが何体も来られたらせっかく安定させた地上···いや、この惑星に悪い影響が起こりかねない。急いで博士に連絡して対策を練らなければ···」 

 

 

「はいミサキさん」

 

 

ミサキと呼ばれた青年はこの異世界(・・・)において明らかに場違いな未来的な道具を使ってロゥリィ達に存在を察知されない程の遠距離から監視していた。監視任務の為、目立ちにくい服を着用し、腰のベルトにはモンスターボールらしき球形のモノを複数所持している。

 

 

また、カトウと呼ばれた者は人間ではなかった。真ん丸とした形状で敢えて例えるならスライムと表現して差し支えなく、空中に浮かんでいる正体不明の存在だった。

 

 

ビービービー!!

 

 

カトウと呼ばれた奇妙な存在は体からけたたましい警戒音らしき音を発した。

 

 

「み、ミサキさんっ!!もう一体、強力なエネルギーを持つサーヴァントの降臨を確認しました!!この魔力量からみて恐らくクラスはバーサーカーッ!!完全に理性というものが感じ取れませんっ!!ヤバァいです!早くここから離れるのを推奨致しますっ!!」

 

 

「バーサーカーだって!?くそっ!情報収集どころじゃないな。わかった直ぐここから離れよう」

 

 

ミサキは機材を身体に張りつけてあるポケット(・・・・)に全てしまいこんでカトウと共にその場から離脱していった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

「ロゥリィさんありがとうございます!」

 

 

ロゥリィの活躍に元の世界のひとつ年上の友達の姿を重ねながら佐天は礼を言う。

 

 

「フフフッ···この程度大した事ないわよぉ♪さぁて、マスターの計算によればもうすぐドラちゃん達に····」

 

 

そう言い終わろうとする瞬間、地面が大きく揺れ彼女達の足元がみるみる内にヒビ割れてゆく。

 

 

「地震?いえ、これは···!!」

 

 

地面のヒビ割れから突然強力な雷が迸ったっ!!

 

 

「ひっ、きぃあぁぁー!!??」

 

 

佐天が雪菜を強く抱き寄せながら大きく悲鳴をあげる。ロゥリィはハルバードを盾の様に構えて佐天と雪菜の前に素早く立ち塞がった。

 

 

「あらぁ?随分とお早いお着きねぇ····」

 

 

一見変わらぬ軽妙な口調だったが明らかに警戒が増していた。

迸った雷は明確な意思を持って集まり、何かの形に変化し始める。

 

 

 

····それは余りに危険で強力で凶悪な獅子の姿をした獣だった。黒い体表を頭の立て髪を中心に眩い雷光を身に纏っている魔獣であった。そしてその傍らには何時の間にか一人の青年になり始めといった感じの人間(・・)が居た。

 

 

その人間は白いパーカーを着用しフードで顔を覆い隠し表情は伺えないが明らかにおおよそ理性というものが欠如しており、その口元から牙らしきものが見え隠れし、隣の雷の獅子同様に獣のごとき唸り声を発していた。

 

 

「えっ···えっと····?もしかしてロゥリィさんのお知り合い····って、流石に違いますよね···

ははは···」

 

「いいえ、完全に初対面よぉ。でも、仲良くお喋りとかは出来そうに無いのは確実ねぇ」

 

 

佐天は狼狽えながら自身を落ち着かせる為、敢えて何時もの感じにおどけて見せた。

ロゥリィも警戒を高めながらそれに合わせる。

 

 

突然現れたパーカーを着た人間の身体から明確な殺意と狂気が渦巻き、そして······

 

 

 

 

「···フーッ、フーッ···うぅぅッ····オオオォォォーッッッ!!!レ···獅子の黄金(レグルス・アウルム)ー!!!」

 

 

 

 

ズギャアアァァ━━━━━━━━━ンンンッッ!!!!!!

 

 

 

 

凄まじい雷鳴音が鳴り響き、轟雷が周囲に広がり、たちまち大地を擂り潰していった。

 

 

この明確な攻撃をいち早く察知して反応したロゥリィは佐天と雪菜の二人を抱き抱え驚異的な跳躍力で攻撃範囲から辛くも逃れた。

 

 

轟雷の走った周囲の地形は形を変え、周辺からは煙が立ち揺れ、まっさらな更地へと変貌していた。

 

 

ロゥリィに抱き抱えられて小高い丘に避難した佐天はこの光景を見て声もあげられず、

震えながら必死で雪菜の身体を抱きしめるしか出来なかった。

 

 

フードがはだけて顔を晒した少年の両の眼は赤く輝き殺気に満ち溢れ、雄叫びを出しながらとてつもない速さでロゥリィに襲いかかってきた。

 

 

既にそれを察知していたロゥリィもハルバードを振るって応戦する。

 

 

   ガキイィィンンンッッ!!!

 

 

小柄で華奢な見た目とは思えない凄まじい膂力を誇るロゥリィの斬撃をその少年は真っ向から素手で受け止めた。彼もまた、怪物····!

 

 

マスターからの頼みを決して忘れてはいないがワクワクする気持ちを堪えきれずに目の前の敵に無駄と解っていても問いかける。

 

 

「わざわざ確認するのもヤボだけど貴方恐らくクラスがバーサーカーのサーヴァントよねぇ?ウフフ···良いわよぉ坊や····お姉さんが相手して···ア・ゲ・ルゥ···♥」

 

 

「オオオォォォーッッッ!!!」

 

 

雷を纏った獅子が少年の身体に入り込み全身から雷を発しながら凄まじい連打(ラッシュ)を仕掛けてきた。ロゥリィも正面から受けて立ち戦闘が始まった。

 

 

バーサーカーは雷を伴った右と左のフック、左のニーキック、右ストレート、左エルボー、右のローキックと五体を余す事なく使い、全てがフルパワーの打撃を浴びせてきた。

 

 

ロゥリィも彼の攻撃を巧みに捌きながらお返しと言わんばかりのハルバードの斬撃や蹴り等をお見舞するなどして周囲に炸裂音が響き渡った。

 

 

防御にも手を抜かず対応するも全てを防げずに互いに攻撃を喰らい、鮮血を流しながらも攻撃の手は一切止めずに肉薄する。ロゥリィはようやく互角に立ち回れる存在に巡り会えた事に歓喜し艶のある喘ぎ声を上げ、対するバーサーカーも全身の所々にロゥリィの攻撃を喰らい流血するも、一切気にかけず攻撃の手を休めず雄々しい獣のごとき咆哮を上げて戦闘を続けていた。

 

 

そんな激闘の中、佐天に抱きしめられていた雪菜の瞼がゆっくりと開き、潤んだ瞳で周囲を見渡した。

 

 

「んっ?あっ···!ゆっ、雪菜さん!!」

 

 

意識を取り戻した雪菜に佐天は安堵し涙を堪えきれずに頬を濡らした。

 

 

「さっ····佐···天さん····私は一体····?」

 

 

未だハッキリとしない、ぼんやりとした彼女の意識は剣巫としての本能なのか?無意識に遠く離れた戦いに向けられ、そして小さく呟いた。

 

 

 

      「先···輩····?」

 

 

 

 

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