青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

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推敲上がり!!


21話 死神VS第四真祖

 

病み上がりで未だにまともに身体を動かせない雪菜は離れた場所で繰り広げられている戦闘の光景に我が目を疑った。

 

 

「暁···先···輩····?」

 

 

見慣れたパーカー姿の人物と見慣れないゴスロリ少女の二人が互いに殺気を剥き出しにしながらぶつかり合っているのを見つめた。

 

 

「えっ!?先輩って···今戦っているあの人が雪菜さんが言ってた暁古城さんって人なんですかっ!?」

 

 

「はいっ!!私があの人を···先輩を見間違えるなんて絶対にあり得ませんっ!!」

 

 

病み上がりの身体からとは思えない程の覇気のこもった断言に佐天は少したじろぎながらも、目の前のゴスロリ少女は誰なのか、そしてどのような経緯があったのかを佐天は雪菜に簡単に説明した。

 

 

「···概ね事情は把握出来ました。ありがとう佐天さん。私を守ってくれて····」

 

 

「それはお互い様ですよ雪菜さん。それより本当にあの人が話しに聞いていた暁先輩なら様子がおかし過ぎませんっ?いきなり現れて私達に向かって攻撃してきたんですよっ!?」

 

 

「····少なくとも姿形は絶対に先輩です。でも今のあの人からは完全に理性というものが感じられない····」

 

 

「そりゃ、あんな風にロゥリィさんと血塗れになりながら戦っているんだからっ!」

 

 

雪菜は目の前で戦っている暁古城に対して上手く言葉には出来ない強い違和感を感じとっていた。

 

 

突然手にしてしまった第四真祖の能力と特性に上手く対応出来ずに暴走してしまう事も度々あったが(主に女性関係で)ここまで明確に理性を失い闘争本能を剥き出しにして狂気に身を任す行動は彼の事を彼自身以上に知って理解している雪菜からは信じられなかったのだ。

 

 

何とか彼を止めたかったが、今の雪菜は無力だった。ロゥリィがもたらしてくれた万病薬でどうにか毒から命の危機を脱したものの、病み上がりの身体に加え魔力を無効化し、ありとあらゆる結界を斬り裂き、真祖すら滅ぼせる七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)雪霞狼(せっかろう)を所持していない今の自分は悲しい程無力だと誰よりも理解し、悔しさから唇を噛みしめた。

 

 

一方ロゥリィと暴走状態の暁古城との戦いは激しさを増していった。ロゥリィはハルバードをより強く握りしめ、それをあらゆる角度から連続の斬撃を放ち、暁古城はそれら全ての攻撃に対して一切の防御をかなぐり捨てて雷を纏った拳や蹴りを繰り広げていった。

 

 

我が身のダメージを全て無視しての戦闘は通常なら自殺行為だが、最強吸血鬼第四真祖の彼は血塗れになるも傷が煙を上げて目に見えて回復していき、今も変わらずに戦闘を続行し、ロゥリィも亜神としての特性で傷を再生させて互いに互角の条件での戦いに決め手を欠いていた。

 

 

「流石バーサーカーねぇ。とってもタフで素敵だわぁ···♥でもそれだけ回復···いいえ私同様の再生能力があるという事はそれだけマスターの魔力を消耗させてしまうのよぉ?ましてや燃費の悪いバーサーカーのクラスなら尚の事負担が大きいわねぇ。」

 

 

一見互角の様子だったが理性を失い守りを捨て、攻撃のみに特化した戦い方の暁古城に対して武器のハルバードを所持し、一見同じような戦い方をしながらも防御にも手を抜かずに攻めていたロゥリィとでは当然ながらマスターの魔力の負担具合は天地程の開きがあった。

 

 

長期戦になればなる程、魔力の枯渇によりバーサーカー暁古城の敗北は明らかだった·····だが、この【亜種聖杯大戦】は全てが既存の聖杯戦争とは一線を画すイレギュラーで、本来マスターとサーヴァントは1人1体の原則的契約を無視していた。

 

 

暁古城の一撃、一撃の威力が弱まってきているのを感じたロゥリィは頃合いと判断し止めの渾身の一撃を強く踏み込み放った。通常ならば魔力の減少により成す術がなくその一撃で勝敗は決したであろう。しかし·····

 

 

 

「はぁぁ━━━━━━っっ!!!」

 

 

ドバアァァァ━━━━━━━━━ンンッッ·····

 

 

 

 

決まった筈のロゥリィ渾身の一撃を古城は真っ正面から片手で受け止めていた。

 

 

「グゥガアッ····ギッギッ·····」

 

 

「なっ!?」

 

 

常に飄々として冷静かつマイペースなロゥリィが初めて動揺する。暁古城の全身から枯渇して弱まった魔力が再チャージされ魔力を溢れんばかりに漲らせていたからだ。

 

 

「フゥーッフゥーッ、ガッ···?ヒ···メ···ラ····?」

 

 

身体に魔力が満たされた瞬間、バーサーカーは何かを感じ取り辺りを見回した。

 

 

「まさかこの坊やに複数のマスターが契約して魔力を送り込んでいるのっ!?」

 

 

自分の推測の正しさを確認する間もなくバーサーカーはありったけの魔力を使って更なる攻撃を仕掛ける。

 

 

「ぐぅぅっ····!!カッ···焔光の夜伯(カレイドブラッド)の···血脈を継ぎし者····あっ、あっ····· 暁古城が汝の枷を解き放つ···きっ···来やがれ····9番目の眷獣····双角の深緋(アルナスル・ミニウム)!!」

 

 

理性を失いながらどこか躊躇い、抗う様子を見せるも大量の魔力を総員して彼は新たな眷獣を呼び寄せた。召喚した眷獣の姿は名のとおり緋色の双角獣(バイコーン)で大きく(いなな)きロゥリィを見るや否や突進してきた。

 

 

ハルバードで双角深緋(アルナスル・ミニウム)の突進を咄嗟に受け止めたが、それは悪手だった。双角深緋(アルナスル・ミニウム)は全身から高周波振動による衝撃波を放ちロゥリィを中心にして周囲に拡散して破壊した。

 

 

正面から直接受け止めてしまったロゥリィはハルバードこそ無事だったものの、物理的攻撃ではない防ぎ様のない衝撃波をマトモに喰らい、所々ゴスロリ衣装は破け、白い肌から深紅の血が吹き出していた。

 

 

「ごふぅぅッ·····!」

 

 

口からも吐血し、致命的とも言えるダメージを初めてロゥリィは味わっていた。身体の内部からも深刻な深手を負ってしまい傷の再生が明らかに遅れている。

 

 

「フフフ····こっ、こんな風に痛手を負うなんて本当に久しぶりだわぁ····」

 

 

軽口を叩くも片膝をついてハルバードを杖代わりにして立っているのがやっとの姿を晒していた。そんなロゥリィに対して一切の容赦なく暁古城は次の行動を起していた。

 

 

「···令呪による強制行動みたいね。本当に哀れだわぁ····」

 

 

どんな想いで言ったかはわからないがロゥリィは彼に対して呟いた。

 

 

焔光の夜伯(カレイドブラッド)の···血脈を継ぎし者····暁古城が汝の枷を解き放つ···来やがれ···2番目の眷獣····牛頭王の琥珀(コルタウリ・スキヌム)!!」

 

 

空間から巨大な牛頭の戦士(ミノタウロス)を連想させる眷獣が出現する。所々身体から炎を吹き出し、己の身体よりも巨大な斧を携えて咆哮し、ロゥリィに情け容赦のない強力な一撃を真上から浴びせてきた。

 

 

 

ドギャアァァァ━━━━━━ンンッッ!!!

 

 

「ぐううぅぅっっー!!!」

 

 

辛うじてハルバードで防ぐも桁違いの巨体からの一撃は彼女の身体をそのまま地面へとめり込ませ、その隙を逃さず双角深緋(アルナスル・ミニウム)が衝撃波で追い討ちをかけた。

 

 

「がっはぁぁっ···!!?」

 

 

常人ならばとうに命を散らしてしまっている程の大量の血が大地に染み広がってゆく。

だが、それでもロゥリィは····

 

 

「フッフフ·····どぉしたのかしらぁ?二匹がかりでも私の命をまだ奪えないなんて、見かけ倒しにも程があるわねぇ····ほらぁ···そこの坊やもまとめてかかってらっしゃいなぁ···」

 

 

バーサーカーを喜々として挑発する。だが坊や呼ばわりされたバーサーカーはロゥリィを無視をし、

 

 

「うっ···ううっっ····があぁぁーーーーー!!!獅子の黄金(レグルス・アウルム)ー!!!」

 

 

再び雷光の獅子を召喚し、その身に宿してやたらと周囲を見渡した。そして何かを感じ取ったバーサーカーは目標を定めた。

 

 

「ハッ!?いけないっ!!佐天さんっ!!」

 

「えっ!?」

 

 

自分達の存在を感知されたと感じ取った雪菜は佐天の手を取って今居る場所からの離脱を試みるが、獅子の黄金(レグルス・アウルム)の力を宿した暁古城はとてつもない猛速で二人の前に立ち塞がった。

 

 

「くっ····!佐天さん、私の後ろに」

 

「ゆっ、雪菜さんっ!?」

 

 

逃げられない事を悟った雪菜は佐天を自分の後ろに追いやり、彼女は暁古城に正面から対峙した。

 

 

正気を失った瞳に雪菜と佐天の姿が映り雷撃が迸る右手を苦しみが伝わってくるうめき声を上げながらゆっくりと二人の前に突き出してきた。

 

 

「せっ····先輩···暁先輩····」

 

 

瞳から涙を滲ませながら雪菜は暁古城の側にゆっくりと歩み寄る。

 

 

「なっ、何をしてっ····ぐうっっ!」

 

 

マスターの願いに応えて佐天と雪菜を守る為に遥々やって来たのというのに戦いにのめり込み過ぎて二人の事を頭の隅に追いやってしまった自分をロゥリィは深く恥じていた。

 

 

何とか彼女をバーサーカーから引き離さねばと動こうとするも牛頭王の琥珀(コルタウリ・スキヌム)の追撃の巨大な斧に動きを押し止められ、身体のダメージと重なり身動きが録に取れない状態だった。

 

 

彼女···姫柊雪菜の姿を見てから、バーサーカー暁古城は頭を両手で抱え込んで息を荒く吐いていた。

 

 

「ぐうぅぅ···ハァ、ハァ····」

 

 

「先輩·····大丈夫ですよ。私がついていますから···」

 

 

姫柊雪菜は暴走を止めようと両手を広げ彼を受け入れる姿勢を見せた。

 

 

「···ひっ、ヒッ、ヒメ···ラギ·····ッ!?」

 

 

「先輩っ!」

 

 

何時もの様に自分の名前を呼んでくれた雪菜は弾けるばかりの笑顔を見せた。

 

 

·····しかし

 

 

「グルオォォォ━━━━━━━━ッッ!!!」

 

 

 

一瞬だけ正気を戻したかに見えたが再び強い狂気に全てを飲み込まれ殺意に満ちた眼を彼女に向け、そして····雷を纏わせた右手を広げ雪菜の胸元に目掛けて突き放とうとする。

 

 

雪菜の背後に守られていた佐天はバーサーカーから発する威圧感に飲まれ身体が動かせずにいた。

 

 

唐突にポンプ地下室で先輩の惚気話しをした時の雪菜の何とも言えない幸せで喜びに溢れた笑顔が脳裏に浮かび上がり、佐天は力の限り叫ぶ。

 

 

「そんな···だ···だめ···だめだよぉっー!!雪菜さぁぁーんっっ!!!」

 

 

悲痛な叫びが空しく響き渡り····

 

 

 

そして····姫柊雪菜は彼の全てを受け入れようと瞼を閉じて微動だにせず静かに佇んだ。

 

 

    

      「暁···先輩········」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ドッドッドッドッドッドッドッドッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐天、雪菜、暴走状態の暁古城達のいる小高い丘目掛け、突然青くて丸い何かがとてつもない速さで駆け抜け突進してきたっ!!

 

 

 

「石頭ロケット━━━━━━━━っ!!!」

 

 

 

ドッゴ━━━━━━━━━━ンッッ!!!

 

 

 

「ゴガァッッ━━━━━━━!!??」

 

 

 

【青い狸猫】が猛烈な勢いで飛んでやって来て自慢の石頭をバーサーカー暁古城のドテッ腹に命中させて遥か彼方へとふっ飛ばしたっ!!

 

 

「···ギリギリだったけど····何とか間に合った!」

 

 

「あっ·····あ”あ”ぁぁ······」

 

 

佐天涙子が感激の涙をとめどめもなく流しながら彼の名前を叫んだ。

 

 

 

「ドラさぁーんっっ!!!」

 

 

 

 

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