青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

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すみません、前話の22話冒頭を加筆修正しました。もしよろしければ本23話を読まれる前にご覧下さい。


23話 雪霞狼

ロゥリィは令呪による急激な魔力ブーストを二つまとめて使用して見事眷獣を一刀両断せしめた。だが、その反動が容赦なく身体を襲い余りの疲労の前に辛うじて意識を保つだけで精一杯だった。愛用のハルバードすら何時もの様に余裕を持って担ぐ事なく放り出し、その場に力なく踞うずくまった。

 

 

「ふぅ···さ、流石に少しだけ疲れたわねぇ···」

 

 

「グゥっ···ぬううっっ···!?」

 

 

理性を失い暴走状態にあるバーサーカーであったが召喚した眷獣があっさりと両断された事にほんの一瞬だけ動揺を走らせた。

 

 

雪菜はその隙を決して見逃がさず、駆け出して攻撃体勢に入った。

 

 

「ドラちゃんを狙ったのは許しませんよ

暁先輩!!しっかり反省して下さい、

はぁーっ(ゆらぎ)よっ!!」

 

 

雪菜は残り少ない体力を費やし、踏み込んで瞬間的に限界まで高めた呪力を両の掌に集約して放った。

 

 

バシィンッッー!!「ゴハァっっ!?」

 

 

暁古城の腹に呪力を込めた両掌底が直撃し、後退しながらも踏ん張る。だがまだ雪菜は攻撃を終らせずに次の攻撃を繰り出した。

 

 

伏雷(ふしいかずち)!!」

 

 

返す刀で身体を捻り、呪力を込めた回し蹴りを放つ。だが、暁古城はその蹴りを寸前でかわし、逆に隙ができた雪菜の喉元ををすかさず掴み、更に左手で彼女の頭を掴んだ。

 

 

「グゥ···ウウゥゥ····」 「ぐっ!せ、先輩·····」

 

 

暁古城は牙の生えた口を開き首元へと寄せる。

 

 

    「「雪菜さーんっ!!」」

 

 

シリカと佐天がそろって彼女の名を叫んでバーサーカーに攻撃を仕掛けた。佐天が近い距離まで接近して瞬間接着銃を暁古城に放ち、シリカはソードスキルのシャドウ・ステッチを発動させ、素早くバーサーカーの背後に忍び寄って首元、背中、腰に容赦なく短剣の柄で3連続の殴打を放つ。

 

 

大したダメージではないが、僅かな隙を作る事に成功し、すかさず雪菜は掴まれていた右腕を振りほどいて呪力を纏わせた肘鉄『土雷(つちいかづち)』を暁古城の鳩尾(みどおち)に喰らわせて距離を取った。そしてダメ押しにドラえもんがタケコプターで上空より接近し、

 

 

「これならどうだっ!!

スーパー手袋・ドラパーンチッ!!!」

 

 

手にはめれば、たちまち怪力を発揮する道具を使用してバーサーカーへ強力なパンチを上空からの落下の勢いも上乗せしてお見舞いした。

 

     「ヌゥゥン!!」

   

 

バーサーカーは咄嗟に反応してドラえもんに合わせるかの様に踏み込んで右のアッパーを放つ。互いの拳がぶつかり合い激しい衝突音が響いた。

 

 

    ガチィィーンッッ!!!

 

 

    「ぐぬぬっ~!!」

   「グウウッッ····ガアッッ!!」

 

 

拳と拳がせめぎ合い、暁古城の足元の地面がひび割れ脚が埋まりながらも更に強く踏ん張り、ドラえもんを弾き返した。それと同時にとうとう足場の地面が崩壊してゆき、咄嗟に野生の獣の如く素早い身のこなしでバーサーカーは後退していった。

 

 

     「うわあっー!!」

 

 

一方、吹き飛ばされたドラえもんは地面をゴロゴロと転がり、雪菜、佐天、シリカの三人は急いで駆け寄った。

 

 

「うぅ~ん!?」

「大丈夫ですかドラさんっ!?」

 

「ありがとう佐天ちゃん。僕は大丈夫だよ。それにしても雪菜ちゃんの先輩さんの事は話しに聞いていたけど本当に強い···!手加減してたらこっちがやられる····!」

 

ドラえもんは必死で必要以上に彼を傷つけずに止める方法を考えた。だが、その考える余裕すらなくなる。バーサーカー暁古城は三度(みたび)令呪によって魔力を注ぎ込まれ、新たな眷獣を召喚しようとしていた。

 

 

「がぁぁっ····!!ぬうぅぅ····ふうぅ·····」

 

 

「くっ···今、眷獣を呼ばれたら不味いです。何としても阻止しないとっ!う"ぅっ····」

 

 

雪菜は召喚を阻止しようと毒で受けたダメージと疲労で鈍くなる身体に鞭打って動こうとするが、バランスを崩してよろけた所をシリカに助けられた。

 

「雪菜さん無理しないで!」

 

「ありがとうシリカちゃん。しかし、このままでは····」

 

そう呟いた時、突然雪菜の耳元で聞き覚えのある声が響いた。

 

 

『·····い、····おい····聞こえ···るか···剣巫····』

 

 

雪菜は眼を見開いて辺りを見渡すが声の主の姿は全く見えず声のみが彼女の耳元で語り掛けてきた。

 

 

「こ、この声はもしかして···南宮(みなみや)先生!!?」

 

 

突如、雪菜の耳元に響いた声の主の名は南宮那月(みなみやなつき)。彩海学園の女性教師にして国家攻魔官の資格を所持しており【空隙(くうげき)の魔女】の異名を持ち、魔族から恐れられる強力な空間制御魔術の使い手であった。その彼女の声が途切れ途切れに雪菜の耳に届いていた。

 

 

『おま···えの····消えた場所から···僅かに残留してた····霊的パスを辿っていたら····突然空間の強い歪みを感知できたので一時的に空間を繋げて今、声だけ届けている···余り長くは持たないから手早く話すぞ。残念だが、

流石の私でもそこからお前を引き上げる事は難しい。だが、代わりにお前の······を届けてやる。必要だろ?どんな方法でもいいから数秒間だけ歪んでいる空間をどうにか固定しろ』 

 

突然の空隙の魔女からの無理難題とも言える指示に雪菜は迷いなく行動を起こした。

 

 

「ドラちゃんお願いがあります!さっき先輩の眷獣とロゥリィさんが衝突した際に起きたあの空に残っている空間の歪み···あれをどうにか数秒間だけでいいので固定する事は出来ませんか?とんでもない無茶な事を言っているのは承知しています。ですがドラちゃんならきっと何とかできると信じてお願いします···」

 

確かに突然の無茶な願いだった。だが、

 

「あの上空に出来てる歪みを固定すれば雪菜ちゃんがあの先輩さんを止められるんだね?よーし···僕に任せて!」

 

ドラえもんは笑顔でその無茶ぶりな願いを快く受けとめた。

 

「ドラちゃん···ありがとう···」

 

「それじゃミニドラや、みんなを頼むよ」

 

「ドララっ!」

 

ドラえもんはタケコプターで急いで先ほどの生まれた空間の歪みへと飛んで行った。

 

 

「それと佐天さん、シリカちゃん、危険を承知の上で二人にもお願いがあります。ほんの少しだけ先輩の動きを止めて時間稼ぎをしてくれませんか?そうしてくれれば後は私が···」

 

 

体力に余裕が無く、息を荒くしている雪菜は佐天とシリカを頼り、それを二人は快く引き受けた。

 

 

「ドラさんが何か雪菜さんの為に飛んで行ったんですよね?任せて下さいよ!まだ接着銃も残ってますから!ミニドラさんもよろしく!」

 

「ドララッタっ!!」

 

「雪菜さん任されました!よーし、ピノ、イーブイ皆も頑張ろう!」

 

「クピー!」「イーブイっ!」

 

「ありがとう二人共····」

 

「えっへへ···それじゃ行きますかっ!」

 

「はいっ!」

 

 

召喚の為の魔力を高めているバーサーカーに雪菜とドラえもんを除くみんなで一斉に飛び出した。

 

 

「えぇーい!この!この!このぉー!!」

 

「ドララッ~!!」

 

 

佐天は瞬間接着銃を暁古城の足元に集中して連射し、続けてミニドラが二丁のショックガンを撃って召喚の作業の集中の邪魔に成功する。

 

「グウヌゥゥッ!!?」

 

「シリカさん!」

 

「はいっ、任せて下さい!!ピノはれいとうビームを!イーブイはスピードスターをありったけ撃って!!」

 

「クピィー!」「ブイブイっ!」

 

 

シリカは二匹のポケモンに指示を出しつつ、自らもダガーにソードスキルのエネルギーを溜めた。

 

 

先制した佐天とミニドラのコンビによる足止めに続く形で、すかさずピノのれいとうビームが魔力に染まった右腕を凍らせ、イーブイはありったけのスピードスターをバーサーカーに放ち続けた。

 

 

「グオォォーッッ!!」

 

 

唯一自由な左手でイーブイのスピードスターを凪払っていた。そこへシリカが短剣のソードスキルを発動させ、追撃する。

 

「はぁー!グラヴィティ・マグナム!!」

 

弾丸の如き速度で暁古城の脇を通り抜け、背後から1撃、2撃、3撃、4撃と本来ダガーでの斬撃を柄での打撃に切り替えて容赦なく浴びせた後、素早く離脱した。

 

 

「ぐうっっ!!?グオッ·········フーッ、フーッ···うぅぅッ····オオオォォォーッッッ!!!」

 

 

足止めと時間稼ぎは成功した。だが再びバーサーカーに魔力が今まで以上に注がれ、新たなる眷獣を召喚しようとしていた。その頃、上空の空間の歪みに到着したドラえもんはポケットをまさぐり、ある秘密道具を取り出した。

 

 

「空間を固定するならこの道具でも可能なはず···あった!『空間接着剤』~!!」

 

空間接着剤。この道具は本来、空間に物や人を固定するための道具だが、『空間』そのものも固定するという用途にも使用できると判断してドラえもんはこの道具を取り出した。

 

「それぇ~!!」

 

ドラえもんは接着剤を専用のヘラで歪みの部分に塗り広げて行った。

 

「よし、完了!上手く行ったぞ。雪菜ちゃーんっ空間の固定が出来たよーっ!!」

 

 

「ありがとうドラちゃん····南宮先生どうにか空間の固定が出来ました。お願いします」

 

 

『····わかった····こちらからも感じ取れたぞ。では···受け取れ····姫柊雪菜!!』

 

 

···ピシッ···パキィ···バッキィィィンンン!!!

 

 

ドラえもんが空間接着剤で固定した空間が徐々に音を出しながら次第にひび割れて行き、そしてそこから白銀に輝く流麗なる一振りの槍がその姿を現した。

 

 

「これが雪菜ちゃんの言っていた槍····確か七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)だったっけ。なんて綺麗なんだろう····あっと見とれてる場合じゃないっ!!雪菜ちゃーん!!」

 

 

ドラえもんの呼びかけに顔を上げた雪菜の瞳に写るは、異なる空間を突き破り、上空よりまるで流星の如き輝きを放ちながら舞い降りる一振りの破魔の槍···その銘は雪霞狼(せっかろう)!!!

 

 

   

  ズドオォォ━━━━ンンッッ!!!

 

 

 

「ガッ!?ヌウウゥゥ····!!」

 

 

白銀の槍が地上に舞い降り、突き刺さった瞬間バーサーカーから発せられていた禍々しい魔力や邪気が引き裂かれたちまち霧散する。

 

 

そして獅子王機関の剣巫、姫柊雪菜はその槍を手にした。

 

 

    「「雪菜さん!!」」

 

 

佐天、シリカの声がハモった。

 

 

「····ありがとう···南宮先生···佐天さん、シリカちゃん、ミニドラちゃん、ピノちゃん、イーブイちゃん···そしてドラちゃん······みんな、後は私に任せて下さい···」

 

 

雪霞狼を手にした雪菜から清廉なる霊気が周囲に渦巻き、燻っていた巨大な力が解放された···それをとてつもなく危険だと感じ取ったバーサーカーは一気に2体の眷獣召喚を行った。

 

 

「ぐっ····ぬうぅぅ····オオォォッッー!!焔光の夜伯(カレイドブラッド)の血脈を継ぎし者····暁古城が汝の枷を解き放つ···来やがれ···1番目の眷獣····神羊の金剛(メサルティム・アダマス)!!来やがれ8番目の眷獣蠍虎の紫(シャウラ・ヴィオーラ)!!」

 

 

   「「グオォォーッッッ!!!」」

 

 

金剛石で構成され、透き通った大小様々な結晶を周囲に浮かべた大角羊の姿をした戦士と紫の炎に包まれた獰猛な虎の姿をした眷獣2体がまとめて現れ、雪菜に迫る。

 

 

       コンッ···

 

 

吠え滾る2体の眷獣の前に雪菜は手にした槍の柄の端の石突(いしづき)部分を大地に軽く一突きすると厳かな霊気の波紋が周囲に広がり、雪菜は祝詞(のりと)を詠唱し始めた。

 

 

「·····獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る·····破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて····我に、悪神百鬼を討たせ給え!!」

 

 

眩い光が剣巫を包み、姫柊雪菜の類いまれなる霊気が止まることを知らずに上昇して行く。

 

1番目の眷獣神羊の金剛(メサルティム・アダマス)が結晶を弾丸として撃ち放ち、8番目の眷獣蠍虎の紫(シャウラ・ヴィオーラ)がそれに追随する形で襲いかかってくる。

 

 

槍を通して全身から霊気を漲らせ、雪菜は

雪霞狼を横凪へと一閃した。

 

 

「はぁぁーっ!!」

 

 

眷獣の放った結晶の弾丸を瞬時に消滅させ、雪菜は槍を構え直して突撃した。雪菜の高まった呪力に呼応して銀色の穂先に刻印されている幾何学模様の神格振動波の術式が現れ、聖なる光が輝きを放つ。

 

 

「雪霞狼!!」

 

 

ズドムッッ!!「ゴガアァァ━━━!!?」

 

 

そして瞬時に2体の眷獣がなす術なく圧倒され、まとめて貫き消滅させた。雪菜は勢いを止めずにその突きをバーサーカーに向けた。

 

 

     「オオォーッッ!!」

 

 

眷獣をまとめて消されたバーサーカーは自らの身体能力を武器に剣巫へ対峙し、吸血鬼の膂力を全開にした右拳を振り上げて強襲してきた。雪菜はそれを剣巫の未来視によって紙一重で見切り、鋭く踏み込み懐へと間合いを詰めた。そして······

 

 

 

      「暁···先輩·····」

 

 

 

雪霞狼の穂先が迷いなく暁古城の胸を貫いていた。

 

 

      「ゴッ···ハァッ·······」

 

 

 

刺さった胸を中心に白いパーカーを深紅に染め上げ···暁古城は吐血した。力無く立ちすくみ、しばらくその場を静寂が支配した。

 

 

 

ドラえもんと佐天、シリカ達は固唾を飲んで見守り、やがて····バーサーカーの両目から凶気とも言える殺意が消え失せて雪菜を真っ直ぐに見つめた。

 

 

「···ごめんなさい···先輩···私は···ここで巡り会った今の大事な仲間を···皆を守るために···あなたを···」

 

 

彼から顔を背け、槍を握る両手は震え、後から後へと止め処も無く熱い涙が頬を伝ってこぼれ落ちた。

 

 

やがて、胸を貫かれた暁古城は血塗れた口から優しい声で彼女に語りかけた。

 

 

「···す···まない···雪···菜····」

 

 

「先輩····!?」

 

 

普段名字でしか呼ばない自分を名前で呼んだ先輩に背けていた顔を向けると、そこには何時ものどうしようのない、それでいて····とても優しい眼差しで見つめる暁古城の姿があった。

 

 

「迷惑かけちまったな····俺を止めてくれて····

ありがとな····」

 

 

「先輩····暁先輩·····」

 

 

かすれる声で何度も何度も先輩と囁き、どうしようもなく涙を溢れさせる。

 

 

やがて彼の、サーヴァントだった暁古城の身体は薄れ、まるで霧靄の様にこの世界から消滅していった·····

 

 

虚空を指している槍を下げて雪菜は打ちひしがれた。

 

 

ドラえもんと佐天、シリカ、ミニドラとポケモン達が心配して駆け寄った。

 

 

「雪菜ちゃん····」

 

 

掛ける言葉が見つからずに迷っていると周辺から女性の声が響いた。

 

 

『···おい、姫柊雪菜。どうやら無事に届いた様だな····ぬうぅっ!?····おいコラ!暁古城(・・・)!慌てるなっ!!』

 

『·····姫柊!!姫柊、聞こえるか!?····』

 

 

「えっ!えぇっ!?あ、暁先輩!?なっ、何で?先輩は私がたった今、この手で消滅させたのにっ!?」

 

 

雪菜はひどく混乱した。何故ならつい今しがた自らの手で引導を渡した筈の暁古城の声がはっきりと耳に届いていたからだ。

 

 

『はぁっ?消滅って何の話しだよ?イヤ、今はそんな事よりお前、どこに居るんだ?隣で一緒に歩いてたら突然お前の姿が消えて·····』

 

『えぇーいっ邪魔をするなっ!この馬鹿者がっ!ペシンッ!!』

 

 

雪菜の脳裏に何時ものように南宮那月に扇子で額をはたかれる場面が鮮明に浮かんだ。

 

 

『痛ってて····すんません、つい慌てちまって···それより早く姫柊を助けてやってくれよ

那月ちゃん········ベチイィィン!!

のわーっっ!!もっと痛てぇー!!』

 

『·····だから教師をちゃん付けで呼ぶな!何度言えば解るっ!』

 

 

二度目の扇子で叩く音が聞こえた。向こうの元の世界から普段と変わらぬ自分の日常風景の様子にどこかほっとする雪菜だが、やはり大きな疑問が心中を支配する。

 

 

ついさっきまで殺意にまみれた赤い眼で凶気に狂った先輩を消滅させたのに空隙の魔女の空間魔術から聞こえてくるのは自分のよく知る何時もの暁先輩だったからだ。

 

 

『···たくっ要らん世話を焼かせおって!すまないが姫柊雪菜、さっきも言ったが私の力を持ってしてもお前をそこの空間からこちらへ引き戻すのは難しい。奇妙な空間の歪みを利用してどうにか槍を送るだけで精一杯だった。私としては正直、不本意だが····に連···絡して····』

 

 

再び声が途切れ途切れになって届く。

 

 

雪菜は頭の中で必死で答えを出そうとしていた。

何故元の世界から先輩が無事で存在しているのか?さっき消滅した先輩は確かに本物の先輩なのに?

 

 

どんなに考えても明確な答えが出そうになかった。

 

 

『···どうやら···そろそろ···時間切れみたいだ。獅子王機関に連絡して対策をこうじてやるから、それまで何処にいるかは知らんが生き延びろ····そんな顔をするな、ほれ、変わってやる』

 

『·····姫柊!聞こえるか?姫柊!!』

 

 

「先輩···暁先輩···ちゃんと聞こえてますよ。私は大丈夫です。突然見知らぬ世界へ飛ばされちゃいましたが、そこでとても素敵な仲間と巡り会えましたから····それより先輩!ちゃんと課題と追試をしっかりと受けて下さいよ!もし、留年でもしたら私と同学年になっちゃうんですからね。それと私が居ないからって他の女の子にデレデレして、いやらしい事やハレンチな行為は断じて許しませんからねっ!」

 

 

『····いや、お前なぁ、こんな時にそんな事言ってる場合か?はぁ···全く姫柊は何時もの姫柊だな····とにかく何処に居るかはわからんが···大丈夫そうで、ひとまず安心したぜ····

必ず、必ず···俺がお前を····助け出してやるからな·····』

 

 

「その前に私が先に先輩の所へ戻りますよ。····何たって私は先輩の監視役何ですから!」

 

 

どこか吹っ切れた清々しい笑顔で元の世界の暁古城に声を届けた。

 

 

『····姫···柊·····・・・プツッ』

 

 

そして完全に元の世界との交信は終わりを告げたのだった。

 

 

 

「雪菜さん、今の声ってもしかして元の世界からの····」

 

シリカが悲しそうな顔で訪ねる。

 

 

「はい、そうです。何だか私だけすみません···」

 

 

罪悪感に曇った顔をした雪菜に佐天は慌ててみんなが思っている疑問を口にする。

 

 

「いえいえ、気にしないで下さいよ雪菜さん。それより今の聞こえてきた声って暁っていう先輩さんですか?それじゃさっき消えちゃったあの人は一体?」

 

 

「それは私にもわかりません····」

 

 

「それについては、まとめて説明してあげるわぁ」

 

 

何時の間にか雪菜達の所へハルバードをかついでいるロゥリィが居た。佐天は喜び近寄った。

 

「ロゥリィさん!無事だったんですね、良かった!」

 

「肝心な時に動けなかったけどねぇ···」

 

 

「そんな事ないですよ。ロゥリィさんがあの空から落ちてくる何だか凄く大きな剣みたいなのを真っ二つにして私達を助けてくれたんですから」

 

 

シリカはその時の事を思い出し、感謝を述べた。

 

 

「とにかくみんな無事で何よりだよ。取り敢えず一旦どこでもドアでここから離れよう。ウルフ達も心配してるだろうし···」

 

 

ドラえもんがみんなの健闘を労ってこの場から離れるのを提案した。

 

 

「そうですね。そうしま···しょう·····」 ドサッ

 

 

その時、姫柊雪菜は力無く倒れ、地面に付した。

  

 

   「「ゆっ、雪菜さーん!!?」」

 

 

 

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