雪霞狼を手にした雪菜によって窮地を脱したドラえもん達だったが姫柊雪菜はその場で力無く倒れてしまった。
「雪菜ちゃん!?取り敢えずこれに乗せて運ぼう!」
ドラえもんはポケットから担架を取り出し雪菜を乗せて急いでどこでもドアでサーベルウルフ達が待機している森林地帯へと移動した。
「ガウッ!ギャウギャウッ!」
どこでもドアから帰って来たドラえもん達一向をサーベルウルフ達は喜んで迎えたが佐天とシリカの表情は明るくなかった。二人は倒れた雪菜に必死で声をかけている。
「雪菜さんしっかり!死なないでぇ···」
「雪菜さん···ドラさんお願い!雪菜さんを助けてぇ!!」
「大丈夫!僕に任せて、雪菜ちゃんは絶対に助けてみせる!」
ドラえもんはポケットから『お医者さんカバン』を取り出して診察しようとするその時、奇妙な音が鳴った。
グウゥゥ~~キュウルルッッ~~
・・・・・・・・・・・
「えっ?」「んんっ?」「この音は····?」
·····深く薄暗い静かな森林の中で、白銀の槍を抱いている少女から大きなお腹の虫のメロディが周辺に鳴り響いた。
担架の上で皆から顔を隠し、耳まで真っ赤にした雪菜が申し訳なさそうに小さく呟く。
「すっ···スミマせん····その、私···お、お腹が空いてしまって···それで····倒れました·····」
グゥゥ……キュルルルル……
ギュルルルル~~グルッ……
~~~キュルルルルル~~~
何とも言えない気まずい沈黙が少しの間続くと、つられて佐天とシリカのお腹からも空腹を訴える音色が奏でられる。
グウゥゥ~ギュルルルル~グルッググゥゥ~
三人のお腹から奏でられたメロディーは一つに重なって
「いやぁー!!恥ずかしいぃぃっ~!!」
佐天は思わず両手で赤面した顔を隠して地面をゴロゴロと転がりだした。シリカも負けない位赤面し、その場でしゃがみ込んでひたすら恥辱に堪え忍んでいた。
その様子を僅かだが堪えていたがとうとう我慢出来なくなったロゥリィの笑い声が打ち破った。
「ぷっ、くっくっくっ····あっははっっ~!!とぉっても愉快で素敵な旋律ねぇ♥」
「うう"ぅ···穴があったら入りたい気分です····」
耳まで真っ赤になっている雪菜は担架の布地に顔を伏せたまま身悶えし、佐天は転がり、シリカは依然しゃがみ込んだまま沈黙を貫いている。
「いやいや···それはしょうがないよ。ぷっ!
お昼抜きでずっとこの世界を走り回ったり、クスッ!戦かったりしてたんだからさ·····
ぷぅ~クスクスっゲラゲラァ~~!!!」
「ドラちゃん、我慢している様で結局盛大に笑ってるじゃないですかっ!!!」
雪菜は笑いを堪えきれていないドラえもんに強く訴えた。
そんなドラえもん達のやり取りが愉快でロゥリィは実に楽し気に笑い続けている。
「フフフ···クスクスッ···ふぅ大丈夫よぉ、お腹が空くっていうのはしっかりと生きようとしている証なのだからぁ。
「ちょっとロゥリィさん。それだけ笑って、今更そんなのフォローになってないですからっ!」
佐天が必死でロゥリィに抗議した。
「まあまあ、佐天ちゃん落ち着いて。みんな本当に無事で何よりだよ。ウルフ達も僕らをここまで乗せてくれたり、待っててくれてありがとうね。良かったらこれを受け取ってよ!」
ドラえもんはポケットから『万能ペットフードグルメン』を取り出した。これはどんな動物でも食べられる22世紀のペットフードで栄養も豊富に富んでいる。
「ワオンッ、ギャウ、ガウガウッ···ウォン」
サーベルウルフのボスである白いウルフが何かを伝えている。
何を言っているのか未だにさっぱり解らないシリカはドラえもんに振り向き頼った。
「····え~っと、ドラえもんさん翻訳をお願いします」
「うん。えっとね、シリカちゃんこのボスは···君達の仲間も無事で何よりだ。美味しそうな食物をありがとう、ありがたく頂いてゆく。他の仲間も我らの帰りを待っているので名残惜しいが、我々はこの辺で失礼させて頂こう。私と仲間の命を救ってくれた恩は決して忘れない···って言ってるよ」
「本当に知性が高いですね····」
感心と少し呆れる気持ちが混ざったシリカは呟いた。
サーベルウルフ達はドラえもんから貰ったグルメンを口に咥え、他の場所に居る自分達の仲間の元へと帰るべく別れを告げる。
「サーベルウルフさん本当にありがとう。またどこかで····お元気で···」
ウルフ達との別れに寂しい気持ちがこみ上げてしまい、思わずシリカの目尻が滲む。
「ガルゥ!」「ワオン!」「ギャウッ!!」
「グッピーッ」「ドララッ」「イーブイッ」
ピノとミニドラ、そしてイーブイも寂しい気持ちがヒシヒシと伝わってくる鳴き声で別れの挨拶をして見送った。
皆はサーベルウルフ達の姿が見えなくなるまでじっと静かに向こう側を眺めていた。
寂しい気な姿のポケモン達を眺めた雪菜はシリカに言葉をかける。
「とても素敵な出会いがあったんですね
シリカちゃん···」
目尻に零れる僅かな涙を拭っているシリカは雪菜に返事をした。
「はい雪菜さん。でも、最初は本当に大変だったんですよ···」
「そうそう、私も大変でしたよシリカさん!変な木の怪物と遭遇したり、私達が別れる原因になった黒くて大きな蛇がしつこく追いかけてきたりして。そしたら···」
お互い分断させられた後、如何なる困難に遭遇したかをシリカと二人、話し合おうと勢いづく佐天をドラえもんが割って入った。
「二人共ちょっとタンマ。とにかく今は落ち着ける場所に移って食事してから話そうよ。なんせ雪菜ちゃんのお腹の虫が鳴いてペコペコだからね」
「···私を腹ペコ代表にしないでくれませんか
ドラちゃん!?」
雪菜が納得いかないとばかりに軽く憤慨してドラえもんに訴える。
「あはは、ゴメンゴメン雪菜ちゃん。えっと···確かポケットのこの辺に···あったあった。
『キャンピングハット』~!!」
ドラえもんが取り出したこの道具はかつてのジャングルの大魔境へ冒険した際に使用した道具で、普段は何の変哲のない帽子だが、ボタンを押すと部屋が五つもある巨大なキャンピングハウスになる道具だ。
ドラえもんが帽子の真ん中のボタンを押すと帽子はムクムクとたちまち大きくなり、立派なキャンピングハウスへと変化した。
「わぁ~凄い、凄い!!帽子がキャンプハウスになっちゃった!!」
佐天が驚きと歓喜の声をあげる。
「フフフ···さっ、みんな入って」
ドラえもんが先頭になって登り、天辺の蓋を開いて中へ入ってゆく。
全員キャンピングハットの中に入ると中は意外に広く、床はふかふかの絨毯が敷いてある。
「この中には真ん中の部屋を中心に五つの個室があるから好きな部屋を選んでね!それからこれを····」
更にドラえもんはポケットから丸いテーブルと人数分の椅子、そしてお馴染みのグルメテーブルかけを出した。
「これで準備OK!さあ、みんな何が食べたい?」
ドラえもんのこの言葉に雪菜、佐天、シリカの三人はお互いの顔を見合せてニッコリと笑い合う。
「····そうですね···まずは熱々のお茶と豚汁に」
「美味しいお握りと」「甘い卵焼きにタコさんウィンナーをお願いします!」
「フフフ···よーし任せて!!」
ドラえもんはニッコリと優しく笑ってテーブルかけから料理を注文した。
◇◇◇
とある空間、とある施設の通路にどこか現実感の薄い女性が剣士といえる装いをした少女を連れて歩いていた。
「此処には何があるのさ、キャスター?」
黒紫を基調にした髪色に尖った耳をしている彼女の名はユウキ。この
「フフフッ···あなたのお仲間よ···取り敢えず顔見せ位はしておいた方がいいと思ってね···
曲がりなりにも同じ陣営なのだから」
キャスターと呼ばれた女性はとても美しい容姿をしており、身体を覆い隠す程の長さの淡い紫色の髪色と同じ色合いの薄衣のドレスを着用しており、後頭部周辺にヒラヒラとしたカチューシャらしき装飾が浮かんでいる。
厳重に幾重にも警戒して閉ざされている未来的な扉を幾つか開き、奥の方へと歩いて行くと薄暗い部屋の壁に何か人のようなモノが蠢いていた。
「····あれは····!?」
勘と視力の良いユウキは何が蠢いているのかをいち早く気づき、所持している剣の柄に手を掛け警戒態勢を取った。
蠢いているのは人···否、人というには半分正解で半分間違っていた。
「ウフフ···ご機嫌よう。気分は如何かしら?
ライダー」
「···あ"あ"っ~!?気分は如何かしらだぁ?
こんな身体でよぉ···良い訳ねえだろがぁ、
このアバズレがぁー!!!」
血眼になって怒気を伴い、汚く喧嘩越しの荒々しい口を開いたのはライダーと呼ばれたサーヴァントだった。
妙齢の女性で髪をハーフアップ気味のポニーテールにし、眼鏡をかけていて黙っていれば知的美人と言っても間違い容姿だ。しかし今の彼女は全てがマトモではなかった。身体の左半分は何かしらの機械の装甲を身に纏い、もう右半分は何か別の生物が混ざっていた。
右半身の身体には多数の目玉と涎を垂らしている唇と、小さな触手やら、翼やら角やらが飛び出して各々が不気味に蠢いている。そして暴走して動かぬ様にと見た目からして頑丈そうな太い鎖で壁に縫いつけられてるかのように拘束されていた。
「アラアラ····ご機嫌斜めねぇ?何時になったら素直にこちらの話しを聞いてくれるのかしら?余り貴女ばかりに時間を割いても居られないのよねぇ·····」
頬に手をやり、明らかに余裕がありながら、敢えてわざと困り顔で目の前のライダーに挑発めいた言動を放つ。
「くそが、クソが、糞がっ!!とっとと
この拘束を外しやがれぇ!!外してくれたらよぉ···一番にテメエのその澄ました面をグチャグチャにすり潰してやるからよぉ!!!」
「あらあら···怖い怖い···有益な話しはちゃんと聞いた方がお得よライダー?確か貴女の真名は···テレスティーナ=木原=ライフラインだったわよね?···無駄に長くて珍妙な感じがよぉく貴女に似合っていて素敵だわぁ···」
「···殺すっ!テメエは絶対に殺すっ!
生きながら腹を裂いて、悲鳴をBGMにしながらハラワタ引きずり出して前衛的なオブジェにして飾ってやっからなぁっ!!!」
不毛な罵り合いに辟易としたユウキがキャスターの服の裾を引っ張り、本題に入る様に促す。
「あらいけない、ついつい反応が楽しくて忘れちゃってたわ。それじゃ遅くなったけど紹介するわ。こちらが私達【碧の陣営】になったセイバーのクラス、絶剣のユウキよ」
「ど、どうも初めまして。よろしくお願いします···(う"う"っ···どう考えても仲良く出来そうにないなあ····)」
礼儀正しく頭を下げてようやく顔合わせはしたもののキャスターとのやり取りを見る限り、とてもこれから仲良くやって行けそうにはないと感じていた。
「はぁ?こんなチンチクリンがセイバーとかいう最優のクラスなのかよ?···つーかよぉ、そもそも私は元の世界で革新的な実験の最中に予想外の事故に巻き込まれて気づいたらこんな訳の解らん場所に1人跳ばされて来ただけで、テメエらの世界の人類の生き残りを賭けた戦争なんぞにこれっぽっちも興味なんざねえんだよっ!!ライダーとか妙な呼称で呼び腐りやがって····オマケに美しい私の身体がこんな有り様だ!とことん舐め腐りやがって·····!!」
「ここに来た理由は単にこの娘の紹介だけじゃないわ。貴女の身体を治し、元の世界へ帰れるだけじゃなく、貴女が遥か夢想して止まない秘めた願望も叶えられる存在が出現したのよ?」
「あ"あ"っ···!?何だその無駄に都合の良い存在ってのは?」
「あらゆる願いを叶えてくれる万能の願望機、【疑似聖杯】にして時空の因果の理すら操り、自身が特異点にして【
常に物静かで優雅な佇まいを崩さなかったキャスターが、やたらと興奮して言い終えた。
「私を謀ってんのかぁ···?チッ、どっちにしろ何時までもこのままじゃ埒があかねぇ。
····ドラえもん?とか言うふざけた名前の奴を手に入れる為に不本意だがテメエの下についてやるよ····キャスター・アドミニィ···」
「変に略さないで貰おうかしら?私の事は、そうねぇ···キャスターか『猊下』、もしくばちゃんとアドミニストレーター
「ハッ!調子のってんじゃねえぞっ、この
年増ババァがぁ?」
「···一度しっかり調教しないといけないみたいね、この獣は····貴女にお似合いの首輪を見繕ってあげるから感謝なさい」
「上等だテメェ、私の前を歩く時は背中に気をつけろよぉ?隙を見せたら即潰すからなっ!せいぜい覚悟しとけやっ!」
「はぁ····(これからはこの人達と一緒に動かないといけないのか···僕、もう今から疲れてきたよ···)」
二人のやり取りに深いため息をつき、疲労が増すユウキだった。
申し訳ありません、次回も遅くなりそうです。気長に待って頂けたら幸いです。
感想もどうかよろしくお願いします。