青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

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お待たせしました。お楽しみ下さい。


25話 3つの陣営

時は少し逆戻り、ドラえもん達がバーサーカーとの激しい戦いを繰り広げていた頃、遠くから密かに監視をしていた謎の人物、ミサキと何やら不可思議な存在のカトウと共に研究所への道を急いでいた。

 

「ここから先は森林地帯···よし、なら君に決めた!頼んだぞギャロップっ!!」   

 

「ヒヒィーン!!」

 

ベルトに備え付けてあるモンスターボールを投げると蓋が開き、中から炎を身に纏った馬の姿をしたポケモン、ギャロップが勢いよく飛び出し(いなな)いた。

 

ミサキはギャロップの背に跨がり、強くしがみついて身体を預け、至急研究所への帰還を頼むと指示を出す。

 

ギャロップはマスターであるミサキの期待に答えるべく、火の粉を撒き散らしながら全力で疾走して行った。

 

樹木の蔓延(はびこ)る森を難なく通り抜け、高い丘や崖を越え、険しい坂道を猛速で駆け上がり、岩山に偽装してある研究所へと戻って来た。

 

「ふうっ···流石ギャロップだ。お前のおかげで早く戻れたよ。ありがとな。戻って、ゆっくりと休んでくれ」

 

「ヒィ~ンッ!!」

 

役目を立派に果たしてくれたギャロップを優しく労い、ミサキは腰回りのベルトに備え付けてあるモンスターボールへと戻した。

 

 

岩山に偽装してある扉を開いて地下へと降り研究所へと戻ったミサキは、息を弾ませて白衣に身を包んだ初老の人物の元へと駆け寄る。

 

「はぁはぁ、只今戻りましたフジ博士」

 

「おお、戻ったかねミサキくん。こちらでも高いエネルギー反応を観測したよ。

とうとう奴らはこの星で始めるようじゃ

···亜種聖杯大戦を」

 

フジ博士と呼ばれた人物は悲痛な表情で陰りを見せた。

 

「カトウ君の観測情報によれば、降りて来たサーヴァントは最も厄介なクラスであるバーサーカーだと断定出来たので、危険だと判断して現場から緊急離脱してきました」

 

「うむ。こちらでもそのように判断したよ。ありがとうなカトウ君」

 

「いえいえ。情報収集と分析は私の仕事ですから」

 

空中に浮かぶ真ん丸な物体が綺麗な声で謙遜した。

 

「やあ、ミサキくん無事に戻って来てくれて何よりだ」

「あ、茅場さんありがとうございます」

 

奥からフジ博士同様白衣に身を包んだ学者らしき若い男が歩み、ミサキの無事を喜んだ。

 

「さて、今後の対応なんじゃが、やはりどうしても意見が二つに別れてしまっておる。

1つはこのまま、彼らの驚異が去るのを大人しく待つか、もう1つは積極的にこちらからあのドラえもん君に接触するかに別れとるよ」

 

「僕の意見としては監視していた様子からみて、あの黒いゴスロリ姿のサーヴァントとは、どうにか話せば通じるといった印象を受けましたね。だからと言って、完全に信用出来るかどうかはまた別ですが····」

 

監視する中、佐天とのやり取りを見ていて、ロゥリィとならば普通に話しだけするなら可能とミサキは判断していた。

 

「ふむ···儂としても出来る限り余計な奴らとの接触は避けつつも、どうにかドラえもん君にだけ近づきたい所じゃ。···のう、茅場くん、君の意見も聞きたいんじゃが···どうかね?」

 

「そうですね···正直、このまま静観していても状況は悪くなる一方···やはりここは多少の

リスクを負ってでもこちらから接触するべきでしょう」

 

「ふむ···そうか···では急いでトリノ博士にも連絡を···」

 

      ビービービー!!

 

研究所の機関室内に備え付けてある通信機器から呼び出し音がけたたましく鳴り響く。

 

慌ててフジ博士は画面のスイッチを押すと備え付けてあるモニターから妙に鼻の長く、白い長髪にトンガリ帽子を被っている白眼の老人が映った。

 

  『···フジ博士、今よいかのう?』

 

「おお、トリノ博士!今、ちょうど連絡をしようと思うとった所じゃ。やはり彼らの目的はドラえもん君が目当ての様子じゃ。

儂としては出来れば他のサーヴァントを刺激せずにドラえもん君にだけいち早く接触して話し合いが出来ればいいと思うとるんじゃが···どうだろうか?」

 

『ワシの方でも一部始終を監視(・・・・・・・)していた様子から判断するに、あのドラえもんとだけ接触するなら問題ないじゃろう。だが、あの黒髪の巨大な武具を持つサーヴァントには注意するべきとワシは判断するわい』

 

「やはりそう思うかね····どうにかドラえもん君とだけ話しが出来れば···」

 

「では、少々手荒いやり方ですが、彼ドラえもん君をこちらで強引に鹵獲するという手段はどうでしょうか?」

 

茅場が湯気の立つ珈琲の入ったカップを片手に持ってミサキに差し出しながら冷静な顔で提案してきた。

 

「珈琲、ありがとうございます茅場さん。

しかし鹵獲···ですか?···確かに少々手荒い案ですね。でもサーヴァントとイタズラに敵対してこの星に被害が及ぶよりはずっとマシかもしれませんね····

せっかく苦労の末にバリアで覆い被せて囲った、あの空間の歪みが頻繁に発生する

【災禍の森】で下手に暴れられたりでもしたら、また環境が不安定になりますし、何よりとり残されてしまっているポケモン達を無事に回収するのも困難になりますからね····」

 

茅場から珈琲の入ったカップを礼を言って受け取りながら手荒いやり方だとミサキは感じたが、最悪の事態を考え、茅場の提案に賛同しようとした矢先にトリノと呼ばれる博士が特徴的な笑い声を上げて呼びかけた。

 

『ホーホッホッホ···では一つ、ワシに任せてみてくれんかね?丁度お誂え向きの試してみたい道具があるんでな。少々手荒くなってもいいんじゃろう?なに、彼の命···自立活動には支障のない範囲でやるさね』

 

フジ博士はしばし、腕を組んで顎に手をやり思考した後、茅場の提案に賛同し、その実行をトリノ博士に託した。

 

「···ふむ。この星とポケモン達との理想郷の為にやむを得まい。少々乱暴だが、超常的な力を持つサーヴァント相手ではで仕方がないのかもな···決めましたぞ。ではトリノ博士負担をかけますが、よろしくお頼みします」

 

『ホーホッホッホ。わかりましたぞ。

では早速あの道具を試してみますかねぇ····』

 

こうして未だその正体と全貌のハッキリとしない学者らしき人間がドラえもんを狙って動き出すのだった····

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

そして時は現在、キャンピングハット内にて、ドラえもんが取り出したグルメテーブルかけから料理が出され、たちまち部屋中に美味しそうな香りが漂ってくる。

 

「はい、注文の料理だよ。みんなお腹いっぱい食べてね!おっと、君達にはこれだよ」

 

ピノとイーブイのポケモン達には先ほど別れたサーベルウルフ達に餞別として渡した

『万能ペットフードグルメン』を専用皿に盛りつけて与えた。

 

「クピピッピィィ~♫」 「イ~ブイィ~♪」

 

1つ口にすると二匹はたちまち気に入り、上機嫌になって踊り出して美味しさをアピールし始めた。

 

「良かったね、ピノ、イーブイ」

 

食欲旺盛な二匹にシリカもホッとした顔で喜んだ。

 

「ふふっ、気に入りって貰えて何よりだよ。それじゃミニドラとロゥリィちゃんも席に座って一緒に食べよう」

 

 「ドララッ♬」 「悪いけど私は····」

 

ロゥリィ・マーキュリー···彼女はサーヴァントと呼ばれる特殊な存在で、通常の人間の様に食事を摂取する形での生命維持は一切不要であった。だからと言って別に飲食が不可能という訳ではなく、趣味、嗜好としての飲食は可能だった。

 

だが、そんな事を知らずに危うい所を助けてくれたロゥリィに佐天は一緒に食事を楽しもうと積極的に背中を押した。

 

「もう!ロゥリィさんたら、なに遠慮してるんですか?席に座って一緒に食べましょうよ!ドラさんのこの道具から出て来る料理はどれもみぃ~んな美味しいんですよ!!」

 

「そうですよロゥリィさん。温いうちに一緒に頂きましょう」

 

佐天同様、命を助けられた雪菜も一緒になって食事を勧めた。

 

(私はサーヴァントだから食事の類いは不要なのよねぇ···)

 

「ねえロゥリィちゃん、あれだけ激しく戦った後何だから、ちゃんと食事をしてしっかりと休もうよ!色々な事情も気になるけど先ずはしっかりと体と心を休ませなくっちゃ!」

 

「ふぅ···わかったわぁ。ちゃあんと食事を頂くわ。愛しのドラちゃんにそこまで言われたら惚れてる弱味で従うしかないしねぇ···♥ 

(これ以上、無理に断るのもヤボってヤツよねぇ)」

 

こうしてみんな揃って食事を楽しみ、満足した佐天とシリカの二人は揃って猛烈な眠気に襲われ大きなあくびをしてしまう。 

 

「ふあぁぁ····ダメ···お腹が満たされたら、急激に眠気が···」

 

「わ、私もです···あふぅ~お風呂に入って···歯磨きをしないといけないのに····」

 

「二人ともしっかりして下さい。ロゥリィさんから色々とお話を聞かないと···ふあぁ~······ハッ!」

 

雪菜も強制的にやってくる心地の良い眠気には抗えず、二人に負けない位のアクビを思わずしてしまい、自己嫌悪に襲われる。

 

「フフフ···みんな今日1日凄く頑張ったからね。しょうがないよ。ロゥリィちゃん悪いんだけど気になる話しは明日にして貰っていいかな?僕も疲れてて、頭に入ってこないからさ?」

 

「ええ、私は構わないわ。そうねぇ·····

どうせこのまま寝るんなら私はドラちゃんと添い寝させて貰おうかしらぁ···ねぇ、いいでしょう。ほらぁ···ドラァちゃぁん···♥」

 

寝転んで色っぽく片足を上げ、自らのセクシーな脚線美をアピールし、ウィンクしながら投げキッスまでして誘惑してくるロゥリィに、ドラえもんはタジタジになるも、

 

「え、え、えぇっ!?そんなぁ···照れくさいなぁ···デヘデヘ~」

 

結構満更でもないドラえもんの顔は実にだらしなく、しまりのない顔になり、ヒゲもダラリと垂れ下がっていった。

そんなみっともないドラえもんの態度に雪菜は大声を張り上げ、二人を驚かせた。

 

「言い訳ないでしょう!!!ロゥリィさん、あなたという人は何を考えているんですか!

はしたないっ!!それとドラちゃんデレデレし過ぎですっ!!それじゃまるで先輩みたいじゃないですかっ!!」

 

「しょえぇぇ~っ!!ゆ、雪菜ちゃん少し落ち着いて!?」

 

「いいえ、このままではドラちゃんが先輩のようにやらしい人間···いえ、ロボットになってしまいますっ!!こうなったら2ページ分位まできっちりとお説教です!ロゥリィさんもですよ!!」

 

雪菜は眠気が吹き飛ぶほど憤慨し、ロゥリィに目くじらを立て、ドラえもんに到っては

先輩である暁古城の姿が重なってしまい、

とうとう説教まで始める始末だった。

 

そんな雪菜達を余所に佐天とシリカは、

 

「うへへ···初春のおパンちゅ大胆~····クゥー」

「ぬふふ···キリトさんったら大胆~····スゥー」

 

二人仲良くテーブルの前に身体を支えあうようにして座ったまま瞼を閉じ、スヤスヤと幸せそうに夢の世界へと羽ばたいていた。

 

こうして困難を乗り越えたドラえもんと三人娘達は再び集い、ロゥリィも含めて四人一緒に夜はふけていった·····

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

とある空間、とある施設内にて【碧の陣営】のキャスタークラスのサーヴァント、アドミニストレーターが【人工魔術回路】に適合した複数の人間達を召集し、新たなるサーヴァントを召喚しようとしていた。

 

広く、豪華に儀式として整えられた一室に集った多数の人間達は、皆共通して一様に正気とは思えない虚ろでどこか微睡んでいるかのような顔をしており、全員が右手の甲に様々にデザインされた赤色の刺青、令呪が刻まれている。

 

「フフフ····ようこそ···疑似魔術師となり、令呪を獲得したマスター達よ。よく集まってくれました。さあ、この【英霊召喚儀式シート】に己の魔力を注ぎ、サーヴァント達を召喚なさい」

 

キャスター・アドミニストレーターの美しく、優しくて安らげる声に心酔するかのように皆は従い、床に広げられた幾何学的模様の描かれている複数の魔法陣のシートに向かって全員が一斉に右手を掲げ、召喚の詠唱を唱え始めた。

      

 

「「「─素に銀と鉄、礎に石と契約の大公、

手向ける色は【碧】───

 

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

閉じよ満たせ、閉じよ満たせ、閉じよ

満たせ、閉じよ満たせ、閉じよ満たせ───

 

繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。

 

────────告げる。

 

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ───

 

誓いを此処に。我は常世総の善と成る者、

我は常世総ての悪を敷しく者。

 

汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より

来たれ、天秤の守り手よ──────」」」

 

 

詠唱の声が響き渡る度にシートに描かれている魔法陣が(あた)かも心の臓の鼓動の脈動の如く呼応し、光を放って輝く。そして詠唱が終わり、召喚シートの上に眩い光の柱がのぼり、部屋に一陣の風が吹き上げ、召喚された新たなるサーヴァント三体が、遂にその姿を現した。

 

 

 「ようこそ···我が愛しのサーヴァント達。

 ランサー、アーチャー、アサシン···」

 

 

「···ふむ。成る程···そういう事ですか。

いいでしょう。我が悲願の成就と因縁の輩との決着の為、貴女に私の力、惜しみなくお貸ししましょう。我が槍、零式突撃降魔双槍・冥餓狼(メガロ)に誓って」

 

最初にランサーと呼ばれた男は、年の頃は

二十歳前後の青年で、眼鏡をかけ冷静で知的な面構えをしたインテリと呼べるような風貌の男だった。

 

中華風の服装をしており、右手に黒く塗り潰され、上下に大きな穂先を結合させた奇妙な形状の槍を携えて現れ、頭の中に自動的に流れ込んでくる情報を即座に理解し、現状に納得した上で彼女に従う意思をみせた。

 

 

「あ"あ"っ?なんだぁ、テメェは····

誰が何だって···んんっ?頭の中に妙な情報が入って来やがる··········ハァンッ、成る程。

聖杯大戦かぁ···いいねぇ···丁度、浜面(はまづら)の野郎にムシャクシャさせられていた所だ。

このモヤモヤを存分に発散させるにはお(あつらえ)え向きじゃないか」

 

次にアーチャーと呼ばれたのは妙齢の女性で、スラリとした長身にふわふわとした茶髪をしており、スタイルも肉付きは豊かでモデルのようなプロポーションの持ち主であった。

 

ライダーに負けず劣らず、荒々しい口ぶりと好戦的な眼と表情が肉食動物の如き野性的な魅力を醸し出している。その反面、仕草の一つ一つに隠しきれない気品さも映り、それらが相反して彼女の美くしさをより一層際立たせていた。

 

 

「おおっ····なっ、なんという美しさだ····!

キャスター様···いや、アドミニストレーター様とお呼びすればよろしいでしょうか?私のことは出来れば是非ともクラディールとお呼び下さいませ。我が力、我が剣、我が命運の全てを貴女様に捧げ、絶対なる忠誠をここに誓いましょう!」

 

最後にアサシンと呼ばれたサーヴァントは男性で、白をメインとし、赤いラインの入っている甲冑にマントを身に付け、立っている姿だけならまさに清廉なる騎士といった出で立ちであった。

 

だが、それらも本人の見るからに神経質で、陰鬱とし、卑しさが滲み出ている顔つきのせいで全てが台無しになっていた。

初対面のアドミニストレーターの美貌に一目で心酔し、虜になったアサシンは(うやうや)しく平伏し頭を垂れ、他の二人と違い、始めから忠実な部下として仕える明確な意思を示した。

 

「フフフ···良い子達ね。とても頼もしい限りだわ」

 

アドミニストレーターは三人のサーヴァントに満足気な妖しい双眸を向け、翻ってサーヴァント召喚に貢献した疑似魔術師達をどこか塵芥を見るような視線で一瞥して声をかける。

 

「皆の者、よくお聞きなさい。あなた達は

サーヴァントの召喚を見事に成功させ、その役目を果たしました。そして辛く、厳しい苦難を乗り越え、残された人類の生き残りを掛けた聖杯大戦はここに終結し、我ら

【碧の陣営】は勝利したのです。皆の悲願は無事に果たされました····

故に約束どうり、残っている令呪は全て私に明け渡して貰うわね····」

 

虚ろな表情の疑似魔術師達は皆、何一つ疑問を抱かず、命じられるまま、揃って赤い刺青が刻まれた右手をキャスターの前に掲げ、

緋色の閃光を発すると、一度たりとも使用してない令呪は全てアドミニストレーターの

身体に刻まれ、回収されいった·····

 

 

「さあ、それじゃ本格的に始めましょうか···

私の亜種・聖杯大戦を····」

 

 

 




すみません、他の作品も執筆しなければならないので次回も少し遅れてしまいます。どうか気長にお待ち下さい。
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