青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

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26話 創世セット

  

「はぁぁ·····気持ちいいィィ~·······」

 

佐天涙子が髪をシャンプーで泡立てながら、心の底からドラえもんの道具の有り難みに感謝しながら至福の一時を過ごしていた。

 

初めてのサーヴァントとの戦闘による疲労から、眠気に抗えずに風呂に入りそびれ、今日朝イチからドラえもんにお願いして壁紙ハウスの大浴場バージョンを出して貰って堪能している最中であった。

 

「結局、昨日は食事してから何時の間にか寝ちゃって、ドラえもんさんがその場に布団を敷いてくれてごろ寝でしたもんね」

 

シリカが泡立ったボディタオルで体を心地良さげな顔で洗いながら呟く。

 

「本当にドラちゃんに感謝です。こうやってのんびりと体を清めながら、昨日分断されていた間、それどれ何があったのかの情報の擦り合わせも出来ますからね」

 

昨夜、何の事情も聞けずにいた雪菜は洗髪しながら今日こそはと張りきり、コンディショナーを洗い流し終えて湯船に入る。

 

三人の中で一番髪の長い佐天がようやく洗い終えて一緒に湯船に浸かった。

 

   「「「はあぁぁ~·······幸せ······」」」

 

熱いお湯に肩まで浸かりながら、お互いに昨日のことについて話しあった。

 

 

「ええっっ!?ドラさん壊れちゃったんですかっ!!?」

 

「私がトドメをさしちゃったんですけどね···」

 

「壊れたドラちゃんと移動していて、偶然見つけた洞窟の先に謎の研究施設が放置されていて、そこでミニドラちゃんとポケモンのフリーザー···いえ、ピノちゃんと巡り会えたんですね」

 

樹木の魔物にしつこい黒蛇との戦い・ロゥリィの参戦。壊れたドラえもんにてんてこ舞いだったシリカ。運命とも言えるミニドラとピノとの出会い。

 

三人はお互い無事な再開に改めて喜び合う。

 

「でも、一番危なかったのって雪菜さんですよね。あの黒くて大きな蛇が毒まで持ってたなんて····本当にもう大丈夫なんですか?」

 

「ありがとうシリカちゃん。私は本当にもうどこにも異常なく万全ですよ。ロゥリィさんの飲ませてくれた薬とドラちゃんが出してくれた美味しい食事に、しっかりとした睡眠を十分に取り、温かいお風呂も頂いてますから」

 

心配してくれたシリカに雪菜は優しい顔で答えると浴場の入り口ドアが開かれ、ロゥリィが裸にタオルを巻いて遅れて入ってきた。

 

「ふぅ···残念~ドラちゃんったら、本当に奥手なんだからぁ~」

 

「あれ?ロゥリィさん随分遅かったですね。何してたんですか?」

 

佐天が聞くと長く鮮やかに艶めく黒髪を靡かせて残念そうな顔で答える。

 

「ドラちゃんにぃ···一緒にお風呂に入ってぇ、体を洗いっこしましょう~って迫ったら顔を真っ赤にして逃げられちゃったのよねぇ···

本当にドラちゃんったら恥ずかしがり屋さん♥」

 

「なっ!?ロゥリィさん、ドラちゃんになんてことお願いしてるんですかっ!!いやらしいな真似はやめて下さい!!」

 

思わず湯船から立ち上がってロゥリィに抗議する雪菜だったが、ロゥリィはそれを適当にあしらい、しっかり身体を洗ってから湯船に浸かる。

 

「ふぅ~♥いいお湯ねぇ~ドラちゃんの道具って本当に凄いわね」

 

「····ロゥリィさん」

 

「あらぁ?まだ何か文句を言いたいのかしらぁ?」

 

「いえ···それはそれで言いたいのは山々なのですが···それよりもあの時、私はこの手で先輩の胸を雪霞狼で貫き消滅させました···

でも私の元居た世界から、南宮先生の空間魔術による通信で先輩本人が存在しているのが確認出来ました····上手く言えませんがどちらも本物だと私の中で確信しています」

 

···しばしロゥリィと雪菜の二人は真剣に見つめ合って沈黙が流れる。

 

「安心なさい。その疑問も何もかも、全てお風呂から上がったら、ちゃあんと答えてあげるわぁ。

まっ、私というよりマスターがねっ♥」

 

「マスター···ですか···」

 

ロゥリィは丁度いい熱さの湯船に浸かり、リラックスしながら答えた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

お風呂から上がり、身支度を整えてテーブルを囲ったドラえもんと三人娘達はロゥリィに注目する。

 

「さぁ、それでは皆さま方お待ちかね。諸々の詳しい事情はこの通信キューブを通してマスターから説明してくれるので何卒ご静聴の程をお願いするわぁ」

 

芝居かかったお辞儀をして手の平におさまる程の大きさの四方形のキューブを取り出しスイッチを押す。

 

     ブウゥゥンッッッ·······

 

キューブから光線が放たれ、たちまち大画面の超空間モニターが現れた。

 

画面に二人の女性の姿が映り、一人は軽い

ウェーブがかかった髪をなびかせて未来的な服装にマントを纏い、歳の頃は18から20歳前後に見える。

 

その隣には黒い髪をシリカ同様にツインテールにし、赤い服に十字架を思わせる意匠をデザインした服装に黒のミニスカートを着用し、太ももまで覆ったニーソックスを履いている。

 

 

「はぁいマスター♥少し遅れたけど、貴女の期待にそえたかしらぁ?」

 

「あぁ、完璧だよ。ありがとう私のルーラー」

 

「あなたがロゥリィちゃんのマスターさんなの?」

 

ドラえもんが画面越しに尋ねるとマントを翻しながら彼女が答えた。

 

「そのとうりだよ初めまして。私が今そちらにいるサーヴァントのルーラー、ロゥリィ・マーキュリーのマスターのノノカだ。以後よろしく」

 

「私は遠さ···カレン・A・トオサカ。彼女の相談役兼、護衛兼、幼馴染みの親友で···今は細々とだけどどうにか命脈を繋いでいる魔術師よ。よろしくね」

 

「初めまして、僕ドラえもんです」

 

「初めまして姫柊雪菜です···」「···シリカです」

 

「私は佐天涙子で~す。よろしくです!」

 

皆が簡単に自己紹介を終えるとノノカは小さいため息をつきながら呟く。

 

「さて···まずは何処から説明すれば良いのやら·····」

 

画面に映し出されているノノカと名乗った女性はどこかソワソワした面持ちでドラえもんを見つめている。

 

「ノノカ、まずは自分の素性をもう少し詳しく話したらいいんじゃないかしら?」

 

画面の隣から黒髪ツインテールの美しい女性カレンこと、【遠坂凛】がノノカにそう促した。

 

「ああ···そうだね。まず私、

ノノカ・F・タチバナは24世紀の未来の人間で、ドラえもんくん···君の親友、野比のび太くんの孫の孫であるセワシくんの更に孫の孫に該当する人間なのだよ」

 

 

「ええっ!?にっ、24世紀の未来人でのび太くんとセワシくんの子孫だってぇ~~~!!??」

 

 

衝撃的な言葉に驚きを隠せず叫ぶドラえもんの隣で、話しを聞いていた佐天・シリカ・

雪菜達の三人はお互いヒソヒソ声で話し合う。

 

「え~とぉ····確か野比のび太さんって人は

ドラさんの親友で···その人の孫のお孫さんがセワシって人でぇ····」

 

「その更に孫の孫なのが今画面に映っているノノカさんという訳ですね·····」

 

「···な、何だか気が遠くなりますね····」

 

いきなり遥か先の未来人と言われてシリカは軽く眩暈を覚えた。

 

「で、でもそんないきなりのび太くんとセワシくんの子孫と言われても簡単には信じられないよっ!!」

 

「まあ、確かにそうだろうねぇ····だがしかし、決定的な証拠としての品物もあるのだよ?ドラえもんくん····」

 

ノノカは(おもむろ)に懐からタイムカプセルとおぼしき物を取り出し蓋を開け、書類らしき物を取り出し画面に映る様に広げた。それは学校のテストの答案用紙でソコにはハッキリと『野比のび太0点』と書かれていた。

 

「あぁ~!?そっ、それはのび太くんの何時もの0点の答案用紙····うん!これは確かに決定的な証拠だっ!僕は信じるよっ!」

 

画面に映る0点のテスト用紙にドラえもんはあっさりと信じて納得した。

そんなドラえもんに雪菜が若干引き気味に訪ねる。

 

「あ、あのドラちゃん?その···あんなので信用していいんですか?」

 

「うん!もちろんさっ!!のび太くんと言えば0点のテストの常連者だからねっ!!

他の何よりも説得力があるよ!!」

 

「そっ···そうですか····(親友の野比のび太という人はどんな信用のされ方なんでしょうか···?先輩より酷いですね····)」

 

「さて···とにかく私が子孫だと信じて貰えた所で、此方の事情と君たちが今いる世界について語らせてもらうよ」

 

深く息を吐いてノノカは更に信じ難い真実を語り始めた。

 

「まず···今、君たちのいる世界は···私が

『創世セット』で創りだした人工の地球なのだよ。」

 

「ええっ!?創世セットだってぇ~!!??」

 

「何なんです?その創世セットって?」

 

「うん、佐天ちゃん創世セットというのはね····」

 

創世セット····それはかつてドラえもんがのび太の夏休みの自由研究の為に出した秘密道具だ。

 

複数の道具で構成されていて、材料を混ぜ合わせて新しい宇宙そのものを作り出すという、もはや神のごとき御業をも可能にする道具であった。

 

ソコでは通常の人類に加え、独自に進化した昆虫人なる存在までおり、更には22世紀の科学技術に引けをとらない道具すら発明されていたのだ。

 

 

「····うっひゃあ~~~!!!新しい宇宙と地球を創り出すなんて···スケール大き過ぎませんかぁっ!?」

 

科学の最先端をいくであろう学園都市の住人の佐天は余りのスケールに腰を抜かす程驚き、シリカも何やら思案顔で驚愕している。

 

「もう自由研究の範囲に収まるようなレベルじゃないですね···(キリトさんが巻き込まれて、そしてアリスさんが生まれた故郷の壮大な規模の仮想空間、アンダーワールドみたい。ううんっ、それよりも遥かに·····

でもそれがドラえもんさんの秘密道具だと夏休みの自由研究レベルでしかないんだ···二人がこれを聞いたらどんな顔するんだろう?)」

 

 

かつてシリカの元いた世界において量子的な要素を組み込んだ壮大なプロジェクトが進められていた。それは新機軸のAI「人工フラクトライト」達が暮らす第四の仮想世界アンダーワールドである。

 

一種の文明シミュレータだが、そこに生きている者達は現実と何ら変わりのない人間であり、確かな生命と意思が育まれた世界であった。シリカ自身、知らされていないが真の目的は無人兵器に軍事転用することであり、キリトはやむに負えない事情により巻き込まれる事件があった。

 

それはプレイヤーキルを喜々として行っていた犯罪者ギルド、ラフィン・コフィン(笑う棺桶)の逃げ延びた幹部が現実世界のキリトに毒物を注入し、殺そうとしたのだ。

 

かろうじて一命を取り留めるも、従来の医学で治療不可能な脳のダメージを負った彼は、回復のために半ば強制的かつ秘密裏にアンダーワールドにダイブさせられてしまう。

 

キリトはそこで約2年間仮想世界で過ごし、アンダーワールドで生きる人間と交流を深めていたが、過去の因縁が複雑に絡み合い、やがて壮絶な戦いにまで発展し、かつて共に

SAO時代を過ごした仲間達と共にアンダーワールドを救う戦いへとシリカも参戦した経緯があったのだった。

 

 

「ドラちゃんの道具は本当に私達の想像の遥か先を行ってますね···それで、何故私達三人とドラちゃんが貴女の創った惑星に召喚されたのですか?」

 

やや、呆れた顔で雪菜がノノカに訪ねる。

 

「その説明の前にまず私の、イヤ私達の陥っている現状について語らせてもらうよ···少し長くなるがね」

 

「それじゃお茶とお菓子の準備をしよう!」

 

ドラえもんはグルメテーブルかけから、お茶とどら焼きを出して準備した。

 

 

ノノカは思わず苦笑いをした。

 

 

 

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