野比のび太の子孫、ノノカと魔術師・遠坂凛の子孫、カレンからモニター越しに自分たちを取り巻いている複雑な状況を知り、ドラえもん達はしばし無言になっていた。
そしてふと、雪菜はあることに気づき、カレンに質問する。
「あのぉ···カレンさん私達って、その義理の叔父の方に召喚されたってことはロゥリィさん同様にサーヴァントという存在何でしょうか?」
雪菜の疑問にカレンがあっさりと否定する。
「あっ、それは完全に違うわね。何故ならサーヴァントとはしっかりと最後まで召喚されて、マスターと契約を結んで初めて成れる存在なのだから。貴女達は私とノノカで召喚を途中で阻んだから、れっきとした生身の人間の筈よ。····ただ、召喚を阻止している最中に時空間から別の得たいの知れない奇妙なエネルギーが流れてきたのをノノカと一緒に感じたわ。恐らくそれが原因で元の世界に戻らず、別の世界の召喚に巻き込まれたんじゃないのかしら?」
「奇妙なエネルギー···ですか?」
怪訝な顔で雪菜は聞き返す。
「それが気になって私は『時空間トレーサー』を使い、君たち三人の行方を時空を跨いで探り当てたら、何故かドラえもんくんが君たちと一緒に召喚されたのを超空間モニターから確認して心底興奮したよ···!」
巴マミの淹れた、芳醇な香り漂うハーブティーを片手にノノカは画面に無理やり割り込みながら、軽くその時の興奮を伝えてきた。
「ちょっ、コラッ、ノノカ!?行儀悪いわよ!!全くしょうがないんだから···」
呆れながら、年齢を重ねても変わらない幼馴染みにどこか嬉しそうにするカレン。そんな二人のやり取りを眺めながら、シリカは恐る恐る手を上げて画面越しに質問する。
「あのぉ···私の場合、何故かゲームのアバターと生身の身体が混ざっている状態だってドラえもんさんの道具で判明したんですけど···
もしかしてその奇妙なエネルギーと何か関係があるんでしょうか···?」
シリカは元の世界から此方に召喚された際、人間綾野珪子の身体とMMORPGのシリカの能力が混ざり、容姿と装備がSAO時代のアバター姿になっている事に常々不思議に感じていた。その為、説明に出てきたその奇妙なエネルギーが何か関わっているのか気になり、カレンに聞いてみた。
「···残念だけど流石にそこまでは私達でも皆目がつかないわね」
残念ながら期待していた回答は得られず、シリカは少しガッカリして肩を竦める。
「だがしかし、『聖杯』的存在のドラえもんくんが一緒に君たちと召喚されたのを考えるに、決して無関係とも言い難いね」
すかさずノノカが自分の見解を述べる。
「えっ?僕が『聖杯』的存在ってどうゆう事なの?」
「本来の聖杯戦争は聖杯という万能の願望器を巡って争う魔術による戦争だってさっき説明したわよね?
簡単に言ってしまえば聖杯とは聖杯戦争という儀式を通して作られる膨大な魔力エネルギーの塊で、それを用いれば大抵の願いを叶えられるの。聖杯と呼んではいるけど形は実に様々で、天に輝く星のような物だったり、
特別な力を持った人間だったりと色々な形状をしているって
「そんな物が存在していたのか···」
ドラえもんはのび太とその仲間達と過去、実に様々な世界へ行き大冒険を繰り広げてきた経験があったが、流石に聖杯については初耳であった。
「そして今回、数百年ぶりに行われようとしている聖杯戦争は過去に例を見ないイレギュラーまみれの例外中の例外で、私はあなたが聖杯にしてEXクラスの
遥かな過去、聖杯戦争を駆け抜けた遠坂凛の子孫、カレンは魔術師という観点から、先祖の書き記して残してくれた文献と照らし合わせてドラえもんこそが今回の聖杯にして、あらゆる事象の特異点だと考えていた。
「いきなりそんな、聖杯だと言われても実感がわかないなぁ····それとフォーリナーとか
EXクラスとか言ってるけど何なの?」
「あら、ゴメンなさい。説明不足だったわね。そもそもサーヴァントには呼び出した
英霊それぞれの能力や逸話に応じて基本的に7つのクラスに分けられるのよ。
剣士のクラスで剣を得意とし、最もステータスバランスが良い、最優とされるセイバー。
槍兵のクラスで槍を巧みに操り、機動力に秀でたランサー。
弓兵のクラスで遠距離からの弓矢や銃による射撃が得意なアーチャー。
騎乗兵のクラスで様々な乗り物に乗って天地を駆け抜けるライダー。
狂戦士のクラスで理性を失う代わりに高い戦闘力を得られるバーサーカー。
暗殺者のクラスで隠密行動が得意の別名マスター殺しとも言われるアサシン。
魔術師のクラスでその高い魔力で防衛戦や強力な魔術を駆使するキャスター。
以上がサーヴァントの基本7つのクラスよ」
「何だかゲームみたいな設定でワクワクしちゃいますねっ!」
ゲーマーなシリカはカレンの説明に思わずウキウキして心を沸き立たせる。
「そしてその基本7つのクラスに該当しないのがEXクラスと呼ばれるサーヴァントで、今貴女達の側に居るロゥリィがそれに該当するわね。
ロゥリィはルーラーと呼ばれる裁定者のクラスで、今回の聖杯戦争を敢えて言い換えるなら【亜種・聖杯大戦】をしっかりと成立させる審判と管理者的役割を持ち、監督役にして中立の立場にある私達、白の陣営にとって最も相応しいサーヴァントだと言えるわ」
ドラえもん達全員に視線を向けられたロゥリィは、クスッと艶のある笑みを浮かべ、どこか誇らし気にしている。
「そして···ドラえもんくん!!君こそが規格外のエクストラクラス、
落ち着く所か益々、興奮の度合いを高める
ノノカをカレンは両頬を掴んで変顔に仕立てて、とどまることを知らない彼女の勢いを強引に止めた。
「こぉらっー!!少しは落ち着きなさいって言ってるでしょがっ!!何の為にマミにお手製のハーブティーを淹れさせたのよっ!?
冷めない内にちゃんと全部飲み干しなさいっ!!!いいわねっ!?」
「ふぁい····」
そんな二人のやり取りを呆然と見つめるドラえもん達と堪えらきれずにクスクスとお腹を押さえて静かに笑うロゥリィだった。
「それで結局フォーリナーってどんなクラスなの?」
「あっと···ゴメンなさい、自分から言い出しといて何だけど、実は私にもハッキリとはわからないの···残ってる聖杯戦争にまつわる色んな文献を探して読んでも、しっかりとした記述が不思議と載ってなくて、私のご先祖様の書き記した文献から辛うじてその名が記載されている程度だわ。でもだからこそ、ノノカ同様に私もあなたが召喚されたのは奇跡で皆の希望で、これから始まろうとしている人類の生き残りを掛けた悲惨で不毛な争いを止められる唯一の存在だと信じているの·····
だからお願いドラえもん···どうか私達、白の陣営の宇宙船に出来るだけ急いで来て欲しいのよ···!」
「カレンさんとノノカさんのいる宇宙船?
確かワープの失敗で、亜空間を彷徨っているんだっけ?」
「ああ、そのとうりだよドラえもんくん···
今現在、亜空間を4つの宇宙船が輪になって揃い、その真ん中に小型の宇宙船を設置し、中に君たちが居る人工の地球···復元した創世セットを置いて、各陣営が着々とサーヴァントを召喚して聖杯大戦の準備を整えている最中なんだ。でも君の秘密道具の力があれば、きっとこの戦争を回避できるっ!!」
ハーブティーを飲み干し、少し落ち着いた
ノノカが先ほどとは売って変わって真剣な顔つきでドラえもんに現状を伝える。
「よーしっ!だったらこの
『宇宙救命ボート』を使って···」
宇宙救命ボート。この道具は地球に何らかの異変が起きた際、お手軽にボタン1つで地球から宇宙へと脱出し、安全に住める惑星を自動的に探して移動できる秘密道具だ。最も星に着陸する時は勢いよく地面にぶつかる為、その辺の安全面は保証できない道具だが、
今回は出番が無さそうであった。
「残念だけど、その道具ではこちらには移動出来ないんだ···」
「えっ?何でだい?」
「私が先ほど説明した時、復元した創世セットは不完全だと話したよね?それが原因なのか、頻繁に空間に歪みが生じてしまい、その影響で惑星に元々存在する生物や植物が邪悪な意思を持ち、姿が変貌するといった事例を数多く目撃しているんだ」
「私達を襲ってきたあの霧の化物に、大きな黒蛇···」
「樹木の姿をした怪物に、赤と青と目玉の鬼···」
「大きな角の生えたウサギにブレイドウルフのリーダーさん···!」
雪菜・佐天・シリカがそれどれ遭遇し、魔物と言って差し支えのない位に変貌した生物達を思い返す。
「君たちが今居る【災禍の森】は特に強い歪みが生まれており、偶然その地に降り立ち、私と協力関係を結んでいる博士らがそれ以上被害が及ばないようにと特殊なバリヤーをその場所を中心に惑星全土に張り巡らしてあるんだ。従ってバリヤーに遮られて直接宇宙を渡って私達の元へ行くのは難しい···」
「バリヤーが張ってあるのか···それじゃ宇宙救命ボートは使えないなぁ···んっ?それじゃ雪菜ちゃんの先輩さんはどうやってこの地球に降りてきたの?」
「恐らくバリヤーにある、ほんの小さな隙間を複数人の魔力でごり押しして拡げてネジこんだに決まってるわっ!
恐らくクロウの仕業ね。よくもまあ、
取り決めた協定を早々に破ってくれたものよねっ!」
カレンはノノカの義理の叔父クロウの仕業だと決めつけ、1人憤慨していた。
「協定って?」
「【亜種・聖杯大戦】を行うに当たって最低限取り決めたルールだよ。各陣営が疑似魔術回路で魔術師となり、英霊召喚儀式シートでサーヴァントを召喚し契約を結び、揃った所で博士らに被害が及ばない場所で設置した塔の内部の専用のゲートでサーヴァント達を降ろして戦争し、勝ち残った陣営がその地球に移住するという取り組みだよ」
「そういう仕組みだったのか···」
ドラえもんが納得している隣で、雪菜が険しくやや殺気染みた視線を送ってノノカに訪ねる。
「····ノノカさん先輩を都合よく利用したのはどの陣営か、分かりますか?」
少し気後れするも、淡々とノノカは答える。
「すまない。残念だが、巧妙に魔力の残滓を消されてどの陣営がフライングしてバーサーカーを降ろしたのかは判別出来そうにないんだ···」
「そうですか···」
嘘か真実なのか判らず、少し納得のいかない顔で雪菜は返事する。
「雪菜さん、貴女の気持ちは理解出来るが、変な考えは起こさない方がいい。元々こんな争いには無関係なのに、今回私の叔父の強行と不運が重なって巻き込んだ件は心よりお詫びしたい。少し時間はかかるが時空間トレーサーを使って元の世界を探り当てて三人共無事に帰すのを約束する。だからどうか心を鎮めて欲しい」
「···わかりました。すぐには難しいですが、そのように対処します···」
雪菜は深呼吸しながら雪霞狼を抱き抱え、
やさぐれたような空気を出しつつも無理やり自分の感情を圧し殺した。
「ありがとう···それじゃ、ドラえもんくん達にはその専用ゲートを設置してある塔を目指して貰いたい。道案内はロゥリィを頼るといい。彼女もそこから雪菜さん達の元へ向かったからね」
「ウフフゥ···お任せよぉ。ドラちゃんと仲良くイチャイチャしながら目指すわぁ···♥」
ノノカは自分のサーヴァントの受け答えに苦笑いする。
「あのっ、ノノカさん博士ってピノとイーブイを創った科学者の人達の事なんですよね?」
ピノとイーブイを撫でながらモニター画面に映るノノカにシリカは聞いた。
「そうだよシリカさん。彼らは私が不完全に生み出した地球の環境を整え、惑星を発展させてポケモンとの理想郷を作る活動をしているんだ。だけど空間の歪みによる被害から逃れるため、やむなく研究施設を放棄し、
バリヤーで包囲して被害を押し留めた後、
今は必死で取り残されたポケモン達の回収に勤しんでいるよ。聖杯大戦と君たちの事は博士達にも通達してあるから、もし出会っても無下にはしない筈だ」
「そうなんですか···良かったねピノ、イーブイ···もう少しで仲間や博士と再会できるよ」
「クピィ···」「イーブイ···」
シリカは二匹のポケモン達にやがてそう遠くない未来に訪れるであろう別れの悲しさを胸にそっと秘めながら語りかける。
そんな二匹もシリカの気持ちが伝わり、寂しげな声を出した。
そんな何とも言えない、しんみりとした雰囲気を壊すように佐天が頭を抱えて唸り声を上げていた。
「ん~っ····あぁーっ!!沢山色んな情報が飛び交って、もう私頭がパンパンですよぉーっ!!!」
「ドララァ~···」
佐天は自分と仲間が召喚された理由と未来の人類の陥っている事情など数多くの様々な情報量に困惑していた。そんな佐天を気にかけるようにミニドラが頭を撫でている。
「僕も正直、色んな事に驚きすぎてお腹が空いちゃった。説明が気になって朝ご飯もまだだったから、一旦食事でもして気分を変えようか?」
「それ賛成!さっすがドラさん!!それじゃ···気分転換を兼ねて私に作らせて下さい。グルメテーブルかけも便利で美味しいですけど、頼り過ぎると料理の腕鈍っちゃいますから。ドラさん、キッチンと食材って、お腹のポケットの道具で用意出来ますか?」
もう
「フフフ···大丈夫だよ佐天ちゃん。この『壁紙キッチンルーム』に全て揃っているから」
ドラえもんは最早お約束の壁紙シリーズの1つを取り出し貼り付けると実体化して飛び出してきた。
「おおぉっ!?これは凄いですよーっ!!!」
思わず歓喜の声を出す佐天。
無理もなかった。設置されたキッチンは高級感溢れる造りになっており、大型冷凍庫の中には新鮮で豊富な食材がわんさか収められ、隣の3つのユニットにはそれどれ水周りのシンクにガスコンロ、調理台が広く整えられ、上に換気扇、下の戸棚には包丁一式に各鍋、フライパン等の調理器具が全て揃えられており、佐天の主婦魂に火がついた。
そんな佐天に思わずシリカは何気に辛辣な事を言ってしまう。
「佐天さんって料理作れるんですか?」
「あっ、それヒドイですよシリカさん!私、寮生活だから一通りの家事は何でもこなせる自信あるんですからねっ!!」
「佐天さん、どのような料理を?」
佐天の明るさに少し気持ちが解れたのか、
雪菜が献立を聞いてみた。
「そうですね···色んな情報が沢山飛び交って、もう頭がごちゃごちゃしちゃってますから···ここはズバリ、鯖を使った料理ですかね。
何たって鯖は頭に良いですし、美容と健康の全てにも効果的な万能な食材ですから。
ドラさん鯖缶ってありますか?」
「うん!沢山あるから遠慮なく使ってよっ!それとこれ、エプロンね!」
ドラえもんはお腹の四次元ポケットから可愛らしいエプロンと大量の鯖缶を取り出し並べた。
「わっ!可愛いエプロン、おおぉ~っ!?
これはまた、お高そうな鯖缶で···♪
よーしっ、メニューは決まりましたよっ!!ずばり、鯖カレーに決めました!!」
「えっ!?カレーに···鯖ですか?佐天さんっ!?」
鯖というと塩焼きに定番の味噌で煮付けた
物と、以外に固定概念に縛られているシリカだった。
「ふっふっふっ····シリカさぁん···鯖とカレーは以外と相性がいいんですよっ!!まあ、私に任せて下さいなっ!」
自信満々の笑みを浮かべて、ドラえもんに渡されたエプロンを着け、鯖カレーに必要な材料を手慣れた様子で冷凍庫から取り出し、
まずお米を研ぎだした。
雪菜も槍を置いてドラえもんからエプロンを貰い、手伝いに行った。
「クスッ、佐天さん私も手伝いますよ。私の方で野菜を洗って食べやすい大きさに切りますね」
「はい♪是非お願いします!」
「わっ、私も手伝いますっ!!えとえと···
うぅっ···何をしたらいいんでしょうかぁ···?」
慌てて二人に続くシリカだったが、何をどのように進めたらいいか判らず、ほんの少しだけ涙目になりながら両肩をガックリと落として佐天に指示を求めた。
「ウフフフ····」 「クスッ」
そんな微笑ましい光景をドラえもんとロゥリィは優しい顔で眺めていた。
本作品のナレーションのイメージは中田譲治さんを、ノノカのイメージCVは斎賀みつきさんをイメージしております。