青い狸猫の異世界冒険記   作:クリスチーネ小林

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30話 アドミニストレーター

時間は少し遡る。

 

通常のワープ空間から外れた斑模様の亜空間に、白・赤・黒・碧の一色にカラーリングされた4隻の巨大な宇宙船が漂い、小型の船を中心にして輪になって取り囲んでいる。

 

それらは地球が消滅する寸前に辛くも脱出するも、ワープ航法の乱れによってこの亜空間に閉じ込められ、漂流している24世紀の

生存者たち総勢約5千人が乗っている宇宙船だった。

 

ホワイトにカラーリングされてある事から白の陣営と呼ばれているノノカ達の宇宙船の乗員数は約700人と一番少なく弱小であった。

 

しかし、この場に居る全ての船の建設に携わり、不完全ながらも創世セットの復元の成功、人工の地球の創造とそれの観測と管理。それら全て、ノノカが行っていた功績から今回の聖杯戦争の監督役に任命され、4つの陣営の唯一中立の立場となり結果、乗員の全てが戦争終結後、無条件で創世セットの地球での移住が約束されている陣営だった。

 

隣に並ぶ船は赤の陣営で、乗員数約1100人と2番目に少数だが、他の船に比べて乗員たち全員の結束はどこよりも固く、一枚岩として強固な陣営だった。

 

更に隣、黒の陣営の乗員数約1400人。

この陣営は派閥が作られ、身内同士でいがみ合っていた。

これから始まろうとしている戦争でどの陣営の味方につけば有利になるかで意見が別れ、未だに争っているのだ。

 

最後に碧の陣営の乗員数は最多の約1800人を誇り、その為一番多くの疑似魔術師たちを有していた。

 

人数のアドバンテージを生かし、複数の疑似魔術師達が1つの英霊召喚儀式シートに集中して魔力注ぎ込み、強力なサーヴァントの召喚を無事に成功させた。

 

召喚したサーヴァントはキャスターのクラスで、とても美しい女性の姿をしており彼女は自らをクィネラと名乗った。

 

その優美な容姿と滲み出る色香で老若男女を虜にし、その優しく麗しい声で紡がれる囁きは聞いた者の心に安らぎを与え、碧の陣営の人間の殆どが彼女に魅了されていった。

 

召喚したマスター達も彼女の美貌に一目で引き込まれ心酔し、骨抜きになり彼女に乞われるまま全ての情報と物資を与え続けた。

 

誰も彼もが、彼女の内に秘めている底知れぬ高い利己心と支配欲、手段を選ばない冷酷さと邪悪さに気づこうともせずに·····

 

置かれている状況を概ね把握したキャスターは上手く立ち回れる算段を計り、行動に移した。

 

まず、手始めに自分を召喚して契約した複数のマスター達を魔術で洗脳や催眠暗示にかけて支配権を奪い傀儡とした。

 

同様の手口でセイバーを召喚した魔術師たちも正常な意識と思考を奪いさり、マスターの命を人質にしてユウキを従わせ、手駒を増やしていった。

 

そんな時、突如何の気配も感じさせずにキャスターの前に奇妙な梟の仮面を被った魔術師が現れ、奇っ怪な笑い声を上げながら自分をトリミーと名乗り、彼女に接触してきた。

 

最初は得体の知れない魔術師に警戒し、排除を試みるが、トリミーはあっさりと自分の正体と企みを明かし、協力を持ちかける。

 

キャスターはトリミーの正体と企みに大変興味を抱き、ドラえもんの存在を知って恍惚とし、その美しい顔を醜悪に歪ませ協力を承諾する。

 

 

キャスターはトリミーと嬉々として語り合い、謀略を巡らせている最中、突然強い爆発音が響き渡り、一時船内は混乱に陥った。

 

トリミーと一緒に爆発音のした現場に赴くと、召喚の儀式用の部屋は黒い煙が燻り、

部屋一面がボロボロに大破しており、床には碧の陣営の魔術師の1人が血を流して倒れていた。サーヴァントを召喚しようと魔力を英霊召喚儀式シートに注いでいた所、原因不明の爆発が起きたのだ。

 

倒れている魔術師の傍らには、紫色の機械の鎧に身を包み、右腕に重症を負って血を流している眼鏡を掛けた妙齢の女性が唸っていた。

 

「ちっ、糞がっ!!実験は失敗かっっ!!

爆発して終わりなんざっ、安っぽいB級映画かよっ!!!」

 

黙ってさえいれば、理知的な美人といった容姿なのだが、それら全てを乱暴な態度と汚い口調、歪んだ顔が台無しにしていた。

 

彼女の名はテレスティーナ・木原・ライフラインと言い、佐天涙子の元の世界、学園都市にて暗躍する悪名高き狂気のマッドサイエンティスト、木原幻生の実の孫娘である。

 

彼女はかつて学園都市が誇る、レベル5御坂美琴を越える未だに誰もたどり着いていない未知の領域、レベル6を創る実験を手段を選ばず行っていたが、全ての目論見を前述した御坂美琴とその仲間達の活躍によって阻止された経緯があった。

 

事件解決後は隔離施設に独り拘束されていたが、祖父の木原幻生が裏から手を回して解放し、自分の新しい実験につき合わせていた。

 

その実験は時空間の壁を崩し未知のエネルギーを取り出すという内容だったが、実験は失敗。大規模な爆発事故が発生し、テレスティーナはそれに巻き込まれる。

 

幸か、不幸か····様々な物質の化学反応によって生じた爆発の衝撃エネルギーが時空間の壁をほんの一瞬だけ崩壊させ、そこへ何の因果か?碧の陣営の魔術師によるサーヴァント召喚の魔力エネルギーと結びついて彼女は英霊として招かれたのだった···

 

息荒く周囲を見渡し、キャスターらを視認すると先程同様に唾を飛ばしながら口汚く威嚇をする。

 

「あ"あ"ぁっ~!?何だぁテメェらは?

見世物じゃねえぞぉ·····んっ、お前普通の人間じゃ無さそうだな····?周りを見る限り、実験場とは違う場所····何処だここは···」

 

自分が生身の人間ではない事を一目で見抜いた彼女に少しだけ興味を抱いたキャスターは配下にならないかと誘うが当然、

 

「はあっ!?この私に配下になれだぁぁっ···?馬鹿かテメェはっ!!寝言ほざいてんじゃねぇぞっ?カスッがっ!!!」

 

予想どうり罵詈雑言をキャスター・アドミニストレーターに浴びせ拒絶する。

 

そんなテレスティーナに興味を示したトリミーは不気味な笑い声を上げながら懐に忍ばせてあったモンスターボールを取り出す。

 

「ホーホッホッホッ···なかなか活きがよいですなぁ···丁度いい。軍事兵器用として造ったポケモンの出来損ないの実験台として使わせて貰いましょうかねぇ····」

 

モンスターボールを床に放り投げると蓋が開き、中から生物···否、まともな生物とは到底呼べない不気味に蠢く不定形な化物が現れた。

 

それはスライムのようなゼリー状の身体のあちこちから触手に角や翼、目玉に人の歯が生え涎を流す口等が無数に生えて蠢くナニかだった。

 

それ(・・)はテレスティーナを認識すると即座に触手を伸ばし、負傷している右腕に取り憑き、瞬く間に彼女の右半身を掌握していった。

 

「なっ、なんだこれはっっ!!??テメェ、

私の右腕に何を····なっ!?

コイツまさか、アタシの細胞その物に直接侵食していやがるのかぁ!?くそっ、クソッ、糞があぁぁぁー!!!」

 

即座に学者としての経験から正確に分析するが、成す術なく右半身を乗っ取られ融合し、テレスティーナは気を失い、白目になって口から泡を吹き、痙攣して倒れた。

 

「ホーホッホッホッ···これから彼女の身体がどのように変化するのか非常に楽しみで興味深いですなぁ····」

 

「あらあら奇遇ねぇ···私もとても楽しみよ」

 

キャスター・アドミニストレーターは複数の小さな魔法陣を展開し、無数の太い鎖を出してテレスティーナ・木原・ライフラインこと、ライダーを拘束して実験隔離施設の部屋へと運んだ。

 

 

あくる日、アドミニストレーターは強力な手駒を更に増やすため、傀儡状態にした疑似魔術師の少女に新しいサーヴァントを召喚させた。

 

するとそこに現れたのは伝説の第四真祖・

暁古城であった。

 

暁古城はバーサーカーとして召喚されたが、至って普通に正常な意識と理性を持っていた。

 

アドミニストレーターは彼を一目で気に入り、手篭めにしようとするが、彼女から滲み出る邪悪さを敏感に感じ取った暁古城は全力で拒絶する。

 

「悪りぃなっ、配下になる話しは断らせて貰うぜっ!!

あんたからは妖しい匂いがプンプンするんでなぁっ!!!」

 

拒絶されたキャスターはほんの一瞬だけ残念そうな顔になるが、すぐに冷酷な顔を取り戻し、排除しようと攻撃を仕掛けてきた。

やむなく暁古城は戦闘を始めるが、全てが彼にとって不利な環境だった。

 

宇宙船内というハンデから強力な眷獣を録に呼べず苦戦し、更に自分を召喚して契約を結んだマスターは、妹の凪沙と同じ位の年齢の少女で、彼女を人質に取られた暁古城はあっけなく敗北し拘束された。

 

令呪によって狂化スキルを解放して理性を奪い取られ、バーサーカーらしく狂気に身をゆだねる伝説の第四真祖・暁古城をアドミニストレーターは貴重なサンプルとして検証実験動物にして扱う事を決めた。

 

まず複数の魔術師と再契約させて、膨大な魔力を注ぎ、どの程度まで肉体が耐えられ、能力を上乗せ出来るか限界まで行った。

 

向上した戦闘能力と、理性を失い暴走状態のまま、実際どの程度操れるかの検証を行いたかったキャスターにトリミーはある提案してきた。

 

既に人工の地球に降りて行動している白の陣営のサーヴァント、ロゥリィ・マーキュリーにぶつけて戦わせてみようと言うのだ。

 

次元の歪みの対策として特殊なバリアーが惑星全土に張り巡らしてあるため、今現在、降りるには地上に立てられた塔内部に設置してあるゲートを利用しなければならない。

 

そして各陣営のゲートの解放は赤・黒・碧の陣営全てがサーヴァントを召喚し準備が整えられる迄は自由に使えないという制約があった。

 

白の陣営の監督役のノノカだけが、地上で活動している22世紀からやって来た博士らと連絡して唯一自由に使用する権限が認められていた。

 

だが、トリミーは知っていた。惑星全土に張り巡らしてあるバリアーには小さな隙間がある事を···

 

キャスターの協力の下、多数の疑似魔術師らが限界まで魔力を行使し、一時的にバリアーの小さな隙間を拡げ、バーサーカー暁古城を降ろした。

 

地上に降りたバーサーカーはキャスターからの令呪による支配に一瞬だけ抗うが、複数の契約した疑似魔術師達の令呪から送られる膨大な魔力に理性を失わされ命令のまま、ロゥリィに襲いかかる。

 

そして合流したドラえもんとその仲間たちと戦い、雪霞狼を再び手にした雪菜によって、正気を取り戻した暁古城は彼女を優しい眼差しで見つめ、名字ではなく名前で呼び、この世界から消え去るのだった·····

 

 

キャスター・アドミニストレーターとトリミーの二人はその様子を超空間モニターで眺めていた。

 

「····それなりに成果はあったみたいね」

 

アドミニストレーターはそれっきり興味を失い、踵を返して自室へと戻っていった·····

 

1人残ったトリミーは何時もの笑い声を上げて愉悦に浸る。

 

「ホーホッホッホッ·····!!アレも案外、可愛い所がありますなあ···実にゆかい、愉快っ!

····さてさて、次はどのように奴を···あの青狸を翻弄し、意趣返しをしてやりましょうかねぇ····」

 

梟の仮面の魔術師、トリミー···()はモニターから離れず、じっとしばらくの間ドラえもんの姿を見据えていた····

 

 

 

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