暖かい目でよろしくお願いします。
1話 僕は空気になりたい。
僕、由緒正しき純血のマルフォイ家の次男であるポラクス·マルフォイには前世の記憶というものがある。
といっても前世の自分の顔も思い出せないほど記憶はおぼろげだが、3歳ぐらいの頃ふと、自分が今生きている世界は前世で読んだことのある『ハリーポッター』の世界であることに気づいた。
『ハリーポッター』は主人公ハリーが魔法使いの学校ホグワーツに入学し、親の仇"例のあの人"との因縁と対立しながら学校生活を送る児童文学作品だ。
だが、ファンタジーな世界にも関わらず物語が進むにつれて登場人物がどんどん死んでいく危険度MAXな世界。
本来の原作では、"ポラクス·マルフォイ"という人物は登場しない。
つまり、僕がいなくとも物語は勝手に進む。
せっかく2度目の命を授かったのならば無駄にはしたくないし、死にたくもない。
原作に影響を及ぼすと僕に何が跳ね返ってくるか解らない。
安全に生きるには、原作に影響をもたらさない程僕の存在が薄くなればいい、という考えに達した僕は3歳の頃から、周りに前世の記憶が悟られないように言葉の習得、勉強の進度も双子の兄"ドラコ·マルフォイ"をお手本にしながらごく普通で、素直に両親の言うことを聞く大人しい子供を演じた。
兄ドラコは原作では、主人公ハリー·ポッターのライバル役のメインキャラだ。
ライバル役にしては活躍の機会にあまり恵まれず小悪党が出てしまった可哀想な人物だったのだが……。
つまり僕は不味いことにハリー·ポッターと同学年の為、原作の期間ずっとあの魔窟ホグワーツに居なければならない。
「ホグワーツがイギリス1、安全な場所なんて誰が言った!?
スリザリンに冷たい校長だし、トロール侵入するし、三頭犬いるし、ドラゴン持ち込む森番いるし、視線で人殺す化け物いるし、頭のネジ飛んだ教授雇うし、敵めっちゃ侵入するし、てか最終学校を舞台に戦争してもちろん生徒もバタバタ死ぬし……無理、絶対無理!安全な要素が1つも見つからない!安全の"あ"の字もないじゃないか!!」
「ねぇドラコ、アナタの弟大丈夫なの?
目を血走らせてブツブツずっとなんか言ってるけど……」
「大丈夫さ、パーキンソン。ポラクスは昔からたまにああなるクセがあるんだ。多分ホグワーツに行くことに緊張しているんだよ。
普段はしっかりした奴だから今はそっとしといてやってくれ」
僕は影だ、虫だ、透明人間だ。
安全のため、平和のため、僕は空気になってやる!
そう決心しながら僕は戦場、ホグワーツに足を踏み入れた。
まずは組み分け。
マルフォイ家は代々スリザリン。逆にそれ以外だと異端となって注目を浴びる。
ならスリザリン以外は論外。
スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリン、スリザリンー…
ただひたすら念じながら、ドラコに続き組み分け帽子を被った。
「君もスリザリンが希望かね?
というかそれ以外の思考が読めないのだが……。まぁ、スリザリンの素質は充分にある。では……
スリザリン!!」
ということで無事にスリザリンに決まった。
普通、マルフォイ家のネームバリューのせいである程度注目を浴びてしまう。実際名前を呼ばれた時「双子いたんだ……!」的な感じで視線が集まった。
しかし、お前たちは1週間後には僕という存在を気にしなくなり、気づかなくなり空気の様に感じるだろう。
我が圧倒的陰キャスキルに為す術なく呑み込まれるといい!!はーっはははは!!!
1人心の中で高笑いしながら、テーブルに現れた料理にかぶりついた。
うん、このポテトは美味い。
簡単登場人物紹介
・ポラクス·マルフォイ
ドラコ·マルフォイの双子の弟。転生者。
地味に生きれば生き残れる、というポラクス的には完璧な理論のもと常に目立たない努力をしているアホ。
神経質で考え過ぎる性格だが、根っこは単純のバカ。
そのため思考が空回りすることが多い。
ストレスが多い時はテンションの落差がデカい。
見た目は一卵性双生児なのでドラコとそっくり。しかしホグワーツに入学する少し前から"寝てもいられない"気分なので目元にクマが染み付いている。
名前は母方の曽祖父から。
・ドラコ·マルフォイ
皆さんお馴染みのフォイ君。相変わらずの嫌なお坊ちゃまだが、最近テンションおかしい弟を心配している良いお兄ちゃん。