ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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10話 僕は動物愛護団体に訴えられたくない。

学生の最大の敵、テスト。それはマグル界でも魔法界でも変わらない。

 

「目立ちたくないから平均点取ります」なんて余裕は僕にはない。全力で挑まなければ平均点すら危ういのだ。

 

筆記試験では選択ではなく記述式の問題の多さに思わず顔を引きつらせる。

浮遊呪文はなんだったっけ……。ダメだ、ちっこいフリットウィック先生がピョンピョン跳ねながら"ビューン、ヒョイ"を連呼しているのしか思い出せない。

 

変身術は比較的得意な分野なので実技も上手くいったと思うのだが、天文学はかなり酷かった。自信を持って記入出来たのは自分の名前の由来である星"ポルックス"についてだけだ。

 

ドラコの"りゅう座"はメジャーではなく出題されなかったため、少しばかり拗ねていた。

 

ドラコは魔法薬学が得意科目なので、試験終了後クラッブとゴイルに自慢げに答え合せをしていたが、彼らはまず自分の名前のつづりを間違えずに書けたかが怪しそうだ。

 

 

そして夕食後、僕はホグワーツの廊下を走り回っていた。急に運動に目覚めた訳ではない。目を妖しく光らせたリャナンシーが後ろから迫ってくるからだ。

 

「ダメだ、今日は絶対やめてくれ!あと1日だけでいいから!!」

 

「何よ、意地悪ね!私言われた通り試験中ずーっと我慢してたわ。もう今日で終わったんでしょ?ならいいじゃない!」

 

遂に角に追い詰められた僕はガブリと首筋に噛みつかれる。

へなへなと力は抜け、実態が無くなった僕は床へ沈んでいく。

 

そのまま下の階に落ちていったら、ホグワーツ名物のポルターガイスト、ピーブスが愉快そうに空中でニヤニヤしていた。

彼の視線の先には何も見えない。だが、透明マントで姿を隠したハリー達が潜んでいるのだろう。

 

「そーこにいるのはだーれだ?」

 

「恋の妖精リャナンシーよ!」

 

……何でお前が答えるんだ?

今日はクィレル先生と"例のあの人"が『賢者の石』を求め侵入する日。この妖精といると妙にハリーとの遭遇率が高くなる。

 

「ん?何だ見かけない奴らだな?いくらチョークを投げてもすり抜けちまうゴーストのチビッ子には興味がないんだ、さっさと行きな!」

 

邪険にピーブスは僕らを追い払おうとするが、気づけば背後に回り込んでいたリャナンシーが彼の肩に腕をかける。

 

「あら……そんなに冷たくされちゃ悲しいわ、ピーブス。私はチビッ子じゃなくてよ、素敵なことたくさん知っているわ。それこそこんなお子ちゃま達の相手をしてないで私とお話ししませんこと?」

 

リャナンシーは先程僕の生命力を吸ったばかりなので無駄にツヤツヤしている。ピーブスはポーッと頭のてっぺんから煙をだして硬直した。ポルターガイストにそんな概念があるのかは不明だが、彼は多分童貞だ。

 

ピーブスが口をパクパクさせている隙にハリーが隠れているだろう場所に向かう。

 

「あー、急いでるんだろ?ピーブスは何とかしてやるから今のうちに行きな」

 

「助かったよシグナス!」

 

ハリーのホッとした声がそばから発せられた。

 

足音は遠ざかって行く。

彼らは今から『賢者の石』を守るための戦いに行くのだろう。"例のあの人"じゃなくて、ピーブスの相手をするぐらいなら安いものだ。

 

 

気を取り直したピーブスはしつこく足音を追いかけようとする。

 

流石はプロだ。恋愛にもうつつを抜かさず常にイタズラに全力を注ぐ彼の姿勢はもはや尊敬の域に値する。

 

ならば、そんな彼に丁度良い物がある。

 

「こんばんわピーブス。シグナスって言うんだけど僕は貴方のイタズラの大ファンなんだ!」

 

なんだコイツ、とピーブスは怪訝そうな顔でこちらを向いた。

 

「そこでプレゼントしたい物があるんだよ」

 

僕はローブの内側をひっくり返して仕込んでいた品々を取り出す。

これらは、リャナンシーを振り払おうとした時に使った道具の余りだ。結局どれもリャナンシーには効かなかったが、父上の伝手を使ってまで血眼になって集めた世界中の嫌らしい道具の数々。

 

「きっと気に入ると思うよ!」

 

ニッコリ笑って差し出すと、彼はその価値が分かったのか夢中になって道具を漁り始めた。

 

 

ーー後日、管理人フィルチの事務室前の廊下が異様にニンニク臭くなり、彼の愛猫ミセス·ノリスがその発達した嗅覚が仇となって動物病院送りとなる騒ぎがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後の夜、学年度末パーティーが開かれた。

校長からの終業の話と伴に寮対抗杯の表彰が行われる。大広間に置かれたスリザリンの砂時計の砂の量は明らかに他の寮より多い。

 

部屋はスリザリンのヘビが描かれた巨大な横断幕に覆われており、発表の前からスリザリンのテーブルはお祭り騒ぎになっている。しかし、これから起こることを知っている身としてはシラケた目でその光景を眺めるしかない。

 

壇上に立ったダンブルドアは『賢者の石』の事件の解決に尽力したとしてロン、グレンジャーとハリーに得点を与えていく。遂にスリザリンとグリフィンドールは同点となった。

 

「ーーわしはネビル·ロングボトム君に10点を与えたい」

 

その言葉が発せられた途端、グリフィンドールからは爆発的な歓声が上がり、スリザリン諸君の顔は死んだ。先程のテンションから急降下してお通夜みたいな雰囲気だ。

 

ドラコはショックのあまり固まって動かなくなってしまった。そんなドラコの様子を見つけて向こうのテーブルでロンがとっても嬉しそうに笑っている。

 

それを鋭く感知したドラコは顔には血を昇らせて癇癪を起こし、持っていたゴブレットを投げつけてしまった。

 

机で砕け散ってしまったゴブレットの欠片が気の毒なことに横にいたゴイルの手に突き刺さり、5秒ぐらいたってから彼は小さく悲鳴を上げて涙目になった。

 

「最悪だ!7年間ずっとスリザリンが1位だったのに!!

しかもよりによってアイツらのせいで!!」

 

「……これからはスリザリンらしい賢さだけでは足りないってことじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

こうして、僕のホグワーツでの1年目が終わった。




原作第1巻の分はこれで終了です。とりあえずここま読んでくださってありがとうございました。
『原作改変』のタグがほぼ生かされてないんですが、次の章から大きく変化を入れていく予定をしてます。

てか原作とほぼ同じ性格のドラコsideで『賢者の石』に改変を入れるのは難易度が高めで、下手したら話が崩壊しそうだったのでやめました……。

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