ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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13話 僕は地に足を付けてボールを触りたい。

今日はクィディッチ選手の選抜試験があった。ドラコが得意顔で戻ってきたので無事受かれたようだ。

 

確かにドラコは小さい頃から箒好きで乗りなれているが、グリフィンドールのメンバーに1年生で選ばれたハリーとは違い天性の才は無い。

ガタイのいい6年生の先輩が恨めしそうに後ろからドラコを睨んでいること、スリザリンチームのキャプテン、マーカス・フリントががホクホクとした様子でいくつかの長細い包みを抱えている様子から完全な正攻法ではないのは確かだ。

魔法界でも世の中は金らしい。

 

だからといってドラコも夏休みの間、真面目に練習していたし全てが金のお陰ではないことを僕は知っている。祝いの言葉を言ったら、彼は心の底から嬉しそうに笑った。

 

「ありがとう。ところで、ポラクスもクィディッチ好きだろ?クィディッチ観戦はいつも乗り気じゃないか。なんで試験うけなかったんだ?」

 

「観戦とプレイは別だよ。あんな危険なスポーツ、命がいくらあっても足らないよ。ドラコも死なない程度に頑張って」

 

「大袈裟だな……」

 

ドラコは呆れた顔をするが、あれは間違いなく寿命が縮むものだ。まず、上空でやること自体がいけない。それだけで致死率は大幅アップ。

なんで魔法界にはメジャーなスポーツがクディッチだけなんだろう。卓球ぐらいお手軽に出来るものがあってもいいのに。

 

 

 

この日の夜も、リャナンシーに生命力を吸い取られた。ホグワーツに入学してから僕はそこそこ背が伸びたがゴーストの姿ではリャナンシーに合わせて姿が幼くなるので目線が低くなる。変化の光景を1匹目撃したネストラはギョッとしたように羽を膨らましたが、すぐにどうでも良くなったようでエサをついばむ作業に戻った。メスのくせに、なんだかクラッブとゴイルに似ている。

 

しかし……今日は一段と体が透けている気がする。明らかに吸い取られた量が多い。

 

「リャナンシー、まだ怒ってるのか?牛乳を拭いたハンカチをお前が入っているポケットに突っ込んだこと。ちゃんと謝ったじゃないか」

 

「謝って済むなら闇祓いはいらないわ。貴方のした行為はまさしく悪逆非道よ」

 

ふん、と彼女は鼻を鳴らす。

口ではずっとこの調子のくせに、それでも僕のもとを離れようとしない。嫌なら離れてくれていいのに。

 

「けど、今からデートに付き合ってくれるっていうなら許してあげてもいいわ」

 

別に許されなくても良いのだが、腹いせで今日みたいに生命力を余分に吸い取られて日中体調が悪くなってしまうのは毎日授業がある学生の僕には死活問題だ。

なので大人しく言うことを聞くことにし、用心のためにゴースト時は常に被るようになったフードを深く降ろして意気揚々と外へ向かうリャナンシーを追いかけた。

 

巨大イカが住む湖のほとりがリャナンシーお気に入りのスポットだ。憧れのシュチュエーションなの、と彼女が「えい!」と言って僕に水をかけてきたが勿論ゴーストの体に空を切って再び湖に還元されるだけ。

何とも言えない沈黙が過ぎる。

 

リャナンシーはげんなりした様子で眠っている巨大イカの顔に強力な油性ペンで落書きをし始める。それをぼんやりと眺めているうちに僕の懐中時計の示す時間は4時になった。

 

巨大イカにピカソ系統の先進的な芸術を施し満足そうなリャナンシーを引っ張って城に戻る最中。

 

鶏小屋の前でポツンと暗闇の中に立つ女生徒がいた。

 

虚ろな目で血塗られたロープを持つ自身の手をひたすらながめている。ホラー映画の序盤辺りで映し出されそうな光景。

 

しかし、彼女は僕と違って怨霊でもゴーストでもない。

返り血を浴びたように見えてくる真っ赤な髪もウィーズリー家のトレードマーク。ウィーズリー兄弟の末っ子ジネブラ・ウィーズリー。

 

彼女は生身の人間だが、悪霊に取り憑かれたような状態ではある。"例のあの人"の分身体のようなものに操られているのだ。

彼女の足元に落ちているのは人間の死体ではなく、雄鶏の死体だ。充分ホラーだけど一線は超えていない。

 

何かヤバい現場を見てしまった感覚で思わず足を止めてしまった。

ふと彼女と目があうと、淀んでいた青い瞳が光を取り戻していく。

 

「貴方、ゴースト?なんでゴーストが寝室に……あれ、外?私また……!」

 

ジニー・ウィーズリーは頭を抱えてしゃがみ込む。

 

「アナタ、随分変わった趣味してるのね。日が昇る前から鶏狩りなんて」

 

面白いものを見た、という様子で突然鼻先に現れたリャナンシーにジニー・ウィーズリーは悲鳴をあげて後ずさる。

 

「お、女の子?」

 

「リャナンシー、もう時間だ!今時の生徒では……ほら、朝から鶏の丸焼きにかぶりつくチキ活が流行ってるんだよ。気にしなくていい。さっさと行くぞ!」

 

ああ、やっぱりこの悪霊といると嫌な場面に出くわす。しかもそこに突っ込んで行くのだから僕はたまったもんじゃない。

 

「ちょっと、置いていかないでよシグナス!!」

 

リャナンシーが慌ててこちらに戻ってきたのでそのまま立ち去ろうとしたら急にジニー・ウィーズリーが「あっ!」と声を上げた。

 

 

「貴方、シグナスなの?私知ってるわ、ハリーの友達なんでしょ!」

 

……向こうは僕を知ってしまっているらしい。

 

 

 

 

 

 




あったらそこそこ好評かもしれないものパート2


フクロウ便講座
『ドビーによる働き方講座』

・講座紹介
ストレスの何かと多い職場。しかし表立って反抗するのは経済的、社会的に厳しいことでありますよね。ですが、真面目に仕事をしながらも上司に不快感を抱かせる方法があるのです!職場の環境は変わらないかもしれない。しかし「ざまぁ」と内心で上司を見下すということは時には他のあらゆることに勝る快感になります。憂鬱な人生の中で小さな楽しみ、見つけませんか?

・担当者紹介
マルフォイ家に長年勤務の屋敷しもべ妖精。屋敷しもべ妖精では珍しく"仕えるが至高"の考えを持たない。彼は心の底から真面目に仕事をしていますが、それでも主人一家に大小の被害を与えることに成功しています。内心面において参考にするのは難しいですが、彼のわざとじゃない嫌がらせの数々は非常に参考になることを保証します。


注意 : あくまでもこの講座はさり気ない嫌がらせをコンセプトとしています。真っ向的な嫌がらせ、職権乱用については『ホグワーツの森番による働き方講座』に詳しくあります。

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