僕は葬式会場に間違えて入ってしまったのだろうかと疑った。談話室のスリザリン生全ての顔が死んでいた。
そこであっ、と思い出す。今日がクィディッチの試合だったことを。この様子からにグリフィンドールに負けたことは一目瞭然。下手に刺激しないよう壁にへばり付きながら寝室への階段を登った。
部屋に入るとドラコが僕のベッドに腰をかけてぼんやりと壁を見つめていた。相当落ち込んでいるのだろう。気まずい空間をなんとか誤魔化そうと僕はクラッブとゴイルが居ないことに目を付けた。
「お疲れ様、ドラコ。クラッブとゴイルはどうしたんだい?」
声をかけるとドラコは今僕が居ることに気づいたようでビクンと身体を跳ねさせた。
「アイツらは多分まだ談話室の何処かでお菓子を食べてるんだと思う」
「それはなんと言うか……相変わらず空気が読めない奴らだな」
落ち込んでいる時には友達が励ましてくれるものなのだろうが、あの2人に期待するだけ無駄だろう。
「その、試合の結果は気の毒だったな。けど頑張ったんだろう?あれだけ練習も熱心だっし」
僕がそう言った途端、ドラコの目には感情が灯り頬にピンクに染まった。
「あぁ、見苦しく負けたよ!そしてポッターは英雄さ!!そうだ、そうだ僕は恥をかいたさ。けど、その時ポラクスは一体何をしてたっていうんだい?」
もしかして怒ってるのだろうか。約束したのに僕が試合に来なかったことを。
「空中から君の顔は見えなかった。スリザリン生の誰も君を見てないって言う!……確かにポラクスは影が薄いけどスネイプ教授だって見ていないって!」
どんどん興奮していくドラコに僕は慌てて弁明しようとする。僕だって好きでマダム・ポンフリーのお世話になっていた訳じゃない。
「違うんだ、ドラコ。僕はー…」
「何が違うって?じゃあこれは何だ!」
こちらに投げ捨てられたのはノートの切れ端。ジニーからのメモだ。
「ベッドの下に落ちていたこれ。『次は土曜日に会いましょう byジネブラ・ウィーズリー』。まさかと驚いた!君があの血を裏切る者の女と付き合ってたなんて!!クディチの試合を蹴ってまでとは相当お熱みたいだな」
ドラコは狂ったように笑う。しかしその目は怒りに満ちていた。
ポケットの中でリャナンシーが痙攣しているのが伝わるがまったくもって笑い事じゃない。昨日、記憶を書き留めたメモ用紙を引き出しに急いで入れた際にベッドの下に落ちてしまったのだろう。
「君がちょこちょこ夜にベッドを抜け出しているのは知っていた。最近その頻度が多くなったのも。夜這いしてるとは思っていなかったけど」
口を挟もうにもドラコの言葉は止まらない。
「ホグワーツに入学してから君は何故か僕を避けている。人見知りなのは分かっていたから他人と関わりたくないのだろうと思っていた。けど、違ったんだ!君は僕の事なんてどうでも良かったんだろう!他の奴らと一緒に出来損ないだと見下していたんだ。ああ、ああ。悪かったね。血を裏切る女の方が良かったんだろ!!」
一気にそれだけ怒鳴り散らすとドラコは僕を置いて寝室を出ていってしまった。
僕は
数日経ってもドラコが口を利いてくれる気配はない。
僕が起きる前にクラッブとゴイルを無理やり叩き起こして朝食に行き、離れた席を陣取る。授業中でも僕と決して目を合わせようとしない。その態度に流石のクラッブ達も違和感を感じたようで不思議そうに僕を横目で見ながらもドラコに着いて行く。
「すっかりドラコ坊やに嫌われちゃったわね、ポラクス」
可笑しそうにからかってくるリャナンシーに思わずムッとして言い返す。
「半分君のせいだろ」
「あら、責任転嫁は良くないわよ!メモをちゃんと仕舞わなかったアナタの注意不足のせいね」
思い当たるところがあるので口を噤んでしまう。だが、それにしても嫌な形に物事が重なってしまった。
ドラコとの関係だけでも神経がすり減るというのに、秘密の部屋に関しても原作通りグリフィンドールの1年生コリン・クリービーが石となった。犯人とされるスリザリンの後継者とやらにホグワーツの生徒達も流石に好奇心より恐怖心が勝るようになり、神経を尖らすようになっている。
そんな中『決闘クラブ』が開かれると知ると生徒らは防衛術が少しでも多く学べるのではないかと思ったのか、多くの者が申込用紙に名前を記入していた。
これ以上の厄介事はゴメンだと行かなかったが、次の朝には『決闘クラブ』で起こったことはホグワーツ中に広がっていた。
聞き耳を立てたところ、噂は「ハリー・ポッターが決闘で蛇語を操ったことから彼がスリザリンの後継者なのではないか」と言った物が殆どだったが、時々「ドラコ・マルフォイが苛立ちの余りロックハートを吹き飛ばした」というのもあった。
学校の雰囲気も合わさってドラコはかなりイライラしているらしい。
「困ったな、どうやったら口を利いてもらえるのか……」
「ずっとそのことばかりね……。普段は他人の事なんて全然気にしないくせに。私、ドラコ坊やに嫉妬しちゃうわ!」
「流石にずっと一緒に過ごしてる家族と仲をこじらせるのは嫌だよ」
結局、ドラコに勘違いを説明出来ることなく今学期は終わってしまった。