ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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19話 僕は若年期男性型脱毛症呪いを開発したい。

クリスマス休暇が終わっても僕の生活は大して変わらなかった。主に悪い意味で。

 

ドラコは僕が視界に入った途端に回れ右して去っていくので話しかけるタイミングすら無い。ただ黙々と先生達が大量に出してくる学年末テストに向けての課題と格闘する日々は憂鬱だった。

ただ1つ良かったのは、ハリーをストーカーする任務から解放された事だ。どうやらジニーはハリーと顔を合わせても会話が成り立つぐらいには進歩して、僕を頼らなくてもハリーの口から直接話を聞く事が出来るようになったらしい。

 

 

 

2月の中頃になったがコリン・クリービーが襲われて以来、秘密の部屋の新たな被害者は出ていないので幾らか学校の雰囲気は良くなっている。

 

周りにつられてドラコの機嫌も良くなるかもしれないと期待していた。が、ある日の朝に僕の浮かれた気分は真っ逆さまに転落した。

 

 

「♪嗚呼、愛しいポラクス 神に愛された子!

雪のように真っ白な肌

シルクの如きプラチナブロンドの髪

ひねくれた性根が映るグレーの瞳

高貴なる純血の美味しい魔力

わたしは貴方のことしか考えられない

貴方の財力も魔力も情けなさも全部、全部

わたしは身を焦がす程に愛してる」

 

 

朝一番、朝食を食べに大広間に入った途端これだ。

金色の羽を付けた小人が手紙を見ながら、腹式呼吸を使ったそれはそれは美しい歌声で部屋中に響き渡るラブソングを歌ってくれた。

 

入口で硬直する僕の横をヒソヒソと喋りながら通り過ぎていく生徒たち。

 

壇上でハート型の紙吹雪を舞い上がらせるロックハート。

 

「バレンタインおめでとう!

今までのところ46人の皆さんが私にカードをくださいました。この素晴らしい日の喜びを分かち合おうと、私の愛のキューピットが皆さんにバレンタイン・カードを配達します!」

 

ロックハートはそう大声で喋ったが、僕の前の小人の歌声が余りにも大きいので聞き取り辛い。

 

「おや?もう愛の告白を受けた生徒がいるみたいですね。よっぽど彼を愛おしく想っている女性がいるのでしょう!彼に遅れず皆さんも今日と言う日を謳歌してください!」

 

現実逃避していたがスリザリンのテーブルに座る兄のゴミを見るような顔を見つけてしまった瞬間、僕は杖を構えて呪文を唱えていた。

 

「デューロ、 固まれ!」

 

庭の飾り人形のようになった小人を放置して、僕は群がる生徒を掻き分け廊下に飛び出る。

 

魔法史の教室の前に辿り着いた所で足を止めた。

 

ローブの中からリャナンシーを首根っこ掴んで取り出す。

 

「あの歌、作ったのお前だろ!!」

 

「いやね、昨日の夜あの教師が何か面白そうな事してるなぁ……、って思ったからつい……」

 

親愛なる聖バレンタインの記念日。その日に行われる恋のイベントと僕は無関心に前世含めこれまでの人生過ごしてきた。

 

しかし、今日、たった今、この瞬間。僕はこの記念日を盛大に呪った。

 

 

ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ドビー辞めろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろ、ロックハート禿げろー…

 

「まさかあんな人前でやるとは思ってなかったのよ!……それで、あの歌の感想はどう?」

 

「ああ、最高だったとも!おかげで全校生徒から注目を浴びれて、ドラコとも2割増に気まずくなれたさ!!」

 

その後、教室以外で魔法を使ったとして罰を受けるかと思いきや、寮監のスネイプ先生からは肩を叩かれ、マクゴナガル先生からは「素晴らしい石化呪文だった」と逆に点数を与えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「師匠!私、ハリーにチョコレート風味糖蜜タルトを渡せちゃったの!!しかも、大好物だってとっても喜んでくれたのよ!」

 

ロックハート禿げろ

 

「まぁ、ジニー!『ハリーの胃袋メロメロ作戦』大成功じゃない!!」

 

ロックハート禿げろ

 

「で、どうしてシグナスはこんなにもブルーなの?ゴーストのクセにチョコ1つも貰えなくて落ち込んでいるの?」

 

ロックハート禿げろ

 

「いいえ、逆よ。私からの贈り物が刺激強すぎたみたい」

 

「そういうのでお前は誤解ばっか生むんだよ!頼むからいっそ何も喋らないでくれ!!」

 

リャナンシーはお口はチャック、と口をわざとらしく閉める。

 

「この悪霊は余計なことしかしない。コイツのせいで……大切な人に嫌われたというか、何と言うか」

 

君を彼女にしていると勘違いされて。

 

「ふーん、シグナスも悩みがあるのね。けど良いじゃない、貴方には師匠がいるから。私なんて貴方たちと出会うまで"日記"が相談相手だったんだからー…」

 

その言葉で、若年期男性型脱毛症呪いの開発の仕方を考えがいい所まで行っていたのに全部吹き飛んでしまう。

 

「日記!?ジニー、日記を使ってたんだな?」

 

「ええ、そうだけど……」

 

突然大声を出した僕にジニーは怪訝な顔をする。

 

「その日記、会話機能付きのやつだったりする?」

 

「何で知ってるの!……もしかして、私の事もストーカーしてた?」

 

数歩後ろに退られた。

 

「僕は断じてストーカーの趣味は無い!!ハリーの頼んできたのは君だろ!えーとな、会話機能付きの日記が数年前に流行ってたんだよ」

 

「えっ、あれ商品だったの!……じゃああのリドルとか言ってたのはそういう設定だったのかしら。だからママが用意してくれた本の中に混じってたんだ」

 

納得したように頷くジニーに、僕はフードの下でダラダラと汗をかいていた。

 

「それで、その日記まだ持ってる?」

 

「いや、だいぶ前に奪われちゃったの」

 

「誰に?」

 

 

「ドラコ・マルフォイよ。スリザリンのハリーを目の敵にしてる嫌な奴。ハロウィンより少し前ぐらいに、廊下でぶつかったら落としてしまった時にひったくられたの!なんかあの日記嫌な感じがしてたから、まぁ良いかなって思って放っておいたわ」

 

 

「……」

 

 

わーお。マジで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




人生の何にも得にならない話ですが、wikiで「脱毛症」と調べたら1番上に俳優のパトリック・スチュワートとショーン・コネリーの写真が出てきます。ハゲに実例写真は要らないだろ…
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