ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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2話 僕は見て見ぬふりをしたい。

地獄の学園生活が始まった。

 

 

ドラコは家の権力を存分に振りかざし、早速スリザリン1年生のトップとなった。常に子分のクラッブとゴイルを付きまとわせ、彼に黄色い声をあげるパーキンソン嬢もいる。

 

そう、彼は僕とは違い陽キャ中の陽キャなのだ。

弟思いの兄は親切にも僕を気にしてくれるが、人付き合いは苦手だから放って置いてくれていい、と言えばドラコは家での社交パーティーで置物と化していた僕の姿を思い出したのか「次期当主として僕が人脈作りはしてやる!」と胸を叩いて言ってくれた。

 

ドラコは原作のいわばレギュラー。つまりドラコと居れば原作の事件に巻き込まれる可能性が高くなってしまう。

なので僕はドラコとはある程度距離を空けて行動していた。

 

常に人の目に入らない死角を探し、誰とも喋らず、足音すら立たせない。

さながら暗殺者になっていたが一週間たつと誰も僕の存在を気にしなくなった。

 

魔法薬学の授業などペアでする時に、「あー、ドラコの弟か、いたな」ぐらいの感覚で思い出して貰えるのでマルフォイ家のネームバリューも有効活用できている。

 

飛行訓練でドラコがグリフィンドールのロングボトムにちょっかい出しても、夕食時にハリー·ポッターに決闘を申し込んでも素知らぬフリ。

 

確かドラコがロングボトムの『思い出し玉』を取り上げて空中から落とし、それをポッターが見事な箒さばきでキャッチと………うん?

 

思い出し玉、忘れ物を知らせる、忘れ物ー…

 

 

「しまった!」

 

僕は小さく叫ぶ。

前世で読んだ『ハリーポッター』の物語の記憶はあまり鮮明ではない。今後のため少しでも覚えておけるように魔法史の授業の間メモ用紙に書き留めていたのだか、途中で寝てしまいそのまま机の中に忘れてきてしまった。

 

不味い。

この世界の住人にとっては書かれている内容は予言のようなものだ。一見ただの厨二病をこじらせた奴の小説設定になるが、万が一でも気づかれたらいけない。

 

僕は慌ててのこりのスープを喉に流し込み、魔法史の教室へと走った。

 

 

魔法史の教室ではゴーストのビンズ先生がティーカップを前に読書していたが、入室の許可を尋ねるとコクリと頷いたのですごすごと授業で座っていた机からメモ用紙を抜き取った。

 

用紙をローブのポケットにしまい込みホッとしてボンヤリしていたのがいけなかった。

 

僕としたことが何も考えずに階段を降りたのだ。

そう、魔窟のホグワーツの階段を。

 

 

 

その階段は通称"中抜け階段"。

何の嫌がらせか真ん中の段が消えてしまうので、ジャンプしなければならない階段なのだが、「あっ!」と声を上げた時にはもう遅い。

生徒はみな大広間で夕食中。

 

助けてくれる人などいるはずもなく、僕はまっさかさまに落ちる。

 

 

 

 

鈍い衝撃がお尻に響く。

顔を上げればそこは棚が立ち並ぶ埃っぽい部屋だった。

 

ホグワーツにはたくさんの隠し通路、隠し部屋があるとされ教師さえまともに把握していない。

ここも隠し部屋の1つだろう。

 

面倒なことになった。

 

なんとか立ち回り、とりあえずこの部屋の出口を探すことにした。

 

棚には古そうな黄ばんだ本や目をキョロキョロ動かす気味の悪いフランス人形、今にも動き出しそうな角の長い魔法動物の標本など様々な物が置かれている。

 

角を曲がったとき、うっかりと肘を棚にぶつけてしまった。

 

その拍子にガラス瓶が揺れる。

止めようにも間に合わなく、瓶は落下し仰ぎょうしい音を立てて割れてしまった。

 

 

「だ、大丈夫だよな?

こんな部屋のもの使われてないだろうし、しかもたかが瓶だし……」

 

破片などはちゃんと回収した方が良いのだろうか?

恐る恐るしゃがんで割れた瓶を覗き込む。

 

 

カラの瓶だったようで蓋とガラスの破片以外は見当たらなかった。

 

こんな部屋に中々人は入らないだろう。

それなら放っておいて問題無いはずだ。

 

少しばかり気まずいが僕はそのまま出口を探そうと再び立ち上がり角を曲がろうとしたのだが、突然背後からヒュッと風を切るような音がした。

 

「えっ?」

 

振り返ろうとした矢先、僕の視界は暗くなった。

遠のく意識の中で、甲高い少女の声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

「やっーと出れた!くっー、シャバの空気は最高ね!!

ん?こいつは……」

 

 

 

 

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