ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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22話 僕は鏡で顔を見たい。

「幸せにする?僕がドラコを?

そんなこと……出来るのか??」

 

「ええ、出来るわよ。アナタが望むなら」

 

そんな簡単なことな訳が無い。

 

「けど、僕には何かを動かせる力は無い。だからずっと隠れていたんだ。変えない方が、家族は幸せになれると思って。今更どうかしようにも僕は身体さえ1ミリたりとも動かせないザマさ」

 

怖い。怖いんだ。自分が居ることで変わってしまうのが。

 

「アナタにもっと、魔力、生命力を返せばアナタは動ける」

 

「動けるからって、どうするのさ」

 

僕は脆い物語(せかい)の破片を知っているだけ。それ以外はビビりの根性無しの才能がある訳でもない、大した魔法も使えないまだ2年生のちっぽけな人間だ。

 

「私が知るわけないじゃないの。けど、アナタはこのままベッドで寝ているのが嫌だ、って顔をしてるわよ」

 

嘘だ。だって僕は怖い、何もしたくない。

 

「今、僕の顔なんて無いだろ。バジリスク見た瞬間の間抜け面なら君が触っているけど」

 

「私には分かるの!だってアナタを愛してるから」

 

「どういう理屈なんだよ」

 

けど……僕が怯えているのも、葛藤しているのも全部そのあやふやな理屈のせいだ。

 

 

「僕はドラコを失うのが嫌だ。だって僕はドラコを愛しているから。本当に大切な家族だから不幸にさせたくない」

 

「なら、行きなさい!ドラコ坊やの元へ。愛しいアナタが幸せでいる為にドラコ坊やが必要なら、私はいくらでも力をあげる」

 

リャナンシーは妖しく微笑む。

 

「本当なら自然回復させないといけない所を無理矢理イジるからリスクはある。それでも、アナタは動きたい?ドラコ坊やの元へどうしても行きたい?」

 

悪魔が契約を持ち出すように、彼女は僕に尋ねる。

 

けど、それなら彼女はとても親切な悪魔だ。

薄っぺらい恐怖から意味もなく逃げる虚無への切符か、僕の"のぞみ"へ向かえるかもしれない切符。どちらが良いか見え透いた選択肢を教えてくれたのだから。

 

 

「僕は家族と過ごす時間が幸せだった。ホグワーツに来てから、それが失われないかとても怖くなったんだ。その恐怖から逃げる手段として僕は隠れようとした。

けど、その手段は逃げる為のものじゃ無いんだ!僕の"のぞみ"を叶える為のものだったことを忘れていた。今、行かないと僕の"のぞみ"は一生叶えられなくなるかもしれない。

だから、お前の手を貸してくれないか?」

 

「もちろん!!」

 

今度は無邪気な子供のような笑顔を彼女は浮かべてから、僕の顔を撫でるのを止めて首筋に噛み付いた。

 

視界がぼやけたかと思うと、何か強い力に引っ張られるように感じた。

 

 

 

 

気付けば、僕は天井を眺めていた。

 

身体に戻れたらしい。

しかし、銀色がかった透明のゴーストのような身体だ。

 

ひょこりとリャナンシーが顔を覗き込んできた。

その幼い顔は更に色を失っていた。

 

「ごめんなさい。私の魔力では完全には蘇生させられなかったみたい」

 

力尽きたかのように彼女は僕をすり抜けてベッドに倒れる。

 

「動けるんだから問題ない。むしろこっちの方が都合がいいかもしれない。けど、お前は大丈夫なのか……?」

 

「大丈夫。ただの、貧血みたいなもんよ」

 

僕はベッドから離れて、彼女の小さな身体に布団をかけ直す。

 

「貧血で人間は死ぬんだぞ」

 

リャナンシーはギュッと手繰り寄せた布団に顔を埋めた。

 

「本当に大丈夫なんだから。最も大丈夫じゃない大切な人がいるんでしょ?早く行きなさい」

 

「うん……行ってくる」

 

 

マダム・ポンフリーの姿が見えないことを確認してから壁に足を踏み入れる。

だけど、もう一度後ろを振り返る。今、彼女に言わなければならないことがあった。

 

 

「ありがとう。君って、僕が思っていたより何倍も素敵な悪魔だった!」

 

ふんっ、と鼻を鳴らす音がした。

 

「バカね!私は悪魔じゃないわ。

恋の妖精、リャナンシーよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この1年、僕は決して近付かなかった2階の女子トイレへ向かう。

 

中に入ると丁度ロックハートがロンに秘密の部屋へと繋がるパイプに突き落とされた所だった。

 

少し離れた所でその光景を眺めていたこのトイレに住み憑くゴーストの少女、嘆きのマートルと目が合った。

 

「あら、また男子?しかも私と同じで死んでるじゃないの!」

 

その声に反応したハリーとロンも僕に気付いた。

 

「あっ、シグナスじゃないか!どうして君がここに?」

 

「君達が秘密の部屋に向かうって話しているのが聞こえたものだから……。連れ去られたのはスリザリン生なんだろ?僕はスリザリン出身なんだ。彼を助けたい。一緒に行かしてくれないかい?」

 

それっぽい理由を並べてみた。

 

「マルフォイを助けたいだって?スリザリン出身にそんな誰かの為に行く気概のある奴がいるとは思ってなかった!」

 

ロンは少し疑うような目で僕を見る。

 

「根性無しも確かにいるけど、皆んな無謀なことはしないだけさ。けど、僕はもう1度死んでるものだから。ちょっとした無謀なら許容範囲なんだ」

 

そのパイプの下にいるのがドラコならね。

 

僕の言葉にロンは困ったようにハリーを見た。

 

「どうする?ハリー」

 

ハリーは明るい緑の瞳でじっと僕を見つめてきた。僕に穴が空いてしまいそうなぐらい見てくるものだから、何だかもどかしくて思わずフードを更に下へ引っ張った。

 

「良いよ、行こう!僕らはこの事件を解決したい。マルフォイは嫌な奴だけど死なれたら良い気分にはならないし、中にはきっと怪物がいる。怪物の相手をして、マルフォイを助けるのは大変かもしれないし……君が手伝ってくれるなら助かるよ!!」

 

そう言ってパイプに飛び込んだ。慌てて追いかけるロンの後に僕も続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




すいません。今日で2章完結させるとか言っておきながら改めて編集してたら書きたいことがどんどん増えて……。もう少しだけ書かせてください。
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