ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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3話 僕は実家に帰りたい。

「あぁー、お腹いっぱいいっぱい!」

 

誰の声だ?

僕に姉妹も女の子の幼なじみなんていないし、母上の声はこんなに甲高くない。

……そう言えば僕は家じゃなくてホグワーツにいたんだ。

そう、魔窟のホグワーツに。

あぁ帰りたい。布団に潜り込みたい。暖かいココアを飲みたい。入学してまだ1週間程だけどホームシックがヤバい。

 

って待て。

確かに僕はホグワーツにいるが、女の子となんて一切話してない。ガチめに1度たりとも。いや、1度は話したかも。マクゴナガル先生を女の子のカゴテリーに入れるなら。

 

僕はボッチの陰キャを貫いている。

じゃあ、誰だと言うのだ。僕の目の前で喋っている女の子は。

 

 

……僕は何故か石畳の上に倒れていた。

わけも分からないまま起き上がると声の主の女の子がお腹を叩きながら壁に持たれていた。

 

真っ白な滑らかな肌に、細い首筋にかかる金色の髪。

愛らしいブラウンの大きな瞳はマヌケな顔をしている僕を映していた。

 

「あら、起きた?」

 

そう言いながら少女は熱でピンクに染まった頬を覚ますように、手でパタパタと顔を扇ぐ。

見た目は僕と同じかそれよりも幼いのに、その姿は随分と色っぽかった。

 

「えー、ドナタサマ?

僕、確か変な部屋に迷い込んで……」

 

そう、瓶を割ってしまった後に意識が無くなった。

視界が暗くなる中で聞いた声はこの少女のものだったのか。けど、部屋には僕以外誰もいなかったような……?

 

「ふふっ、アンタ何が何やらって顔してるわね。もとは良いんだから、もっとシャキッとした顔しなさいよ。

私の名前はリャナンシー。恋の妖精よ」

 

「妖精だって!?」

 

ならば言葉や仕草に似合わない幼い見た目にも納得だ。

人とは歳の取り方が違うのだろう。ホグワーツには様々なものが存在するのだから妖精も1匹や2匹ぐらいいるのだろう。多分。

 

「もしかしてこの隠し部屋、君の部屋だったりした?

それなら悪かった。迷い込んでしまったんだよ。よければ出口教えてくれないかい?」

 

「出口ならあのオッサンの絵の裏よ」

 

リャナンシーはあっさりと教えてくれた。殺意満々な魔法生物じゃなくて良かった。

 

彼女が指を指した先には確かに髭を蓄えた男性の肖像画があった。絵を傾ければ出口があるのだろうか。

僕は動かそうと額縁に手をかけた。そう、手をかけたハズだった。

 

 

……なのに僕の手は何故か壁にめり込んでいた。

 

「はぁ???」

 

待て待て、次こそ理解が追いつかない。

僕の手には壁をぶち破った衝撃なんてこなかった。そんな筋力ない。というか今、僕の手は空気を触るように何の感覚もないのだ。

 

あれ、なんか腕とか身体の色素、薄くない?

なんか透けてる?えっ??

 

キギギと僕は首を半回転させる。僕が気絶している間、傍にいただろう妖精。

 

「君さ、なんかやった?」

 

犯人、お前以外いないよね。

 

「テヘペロ♡」

 

あざとらしく舌をだすリャナンシー。

やっぱり?

 

「何やったわけ??どうして僕の身体透けてるの?なんかゴーストみたいになってるんだけど!?」

 

喚き立てる僕に対し、彼女はなんとでもないかのようにのんびりとワンピースのポケットからクッキーを取り出してボリボリ頬張りだす。

 

「えーっとねぇ。ほら、ちょっとだけアナタの生命力頂いただけよ。お腹空いてたから」

 

「生命力頂いたって……えっ、僕生命力吸い取られて死んだの?ねぇ、コレ僕もう死んじゃったパターン?」

 

 

僕、生き延びるために必死になってたのにホグワーツに来て1週間で気がついたら死んでました、って?

そんなのありなのかよ。

……苦しくなかったしそれならありか?いやけど生きてた方がいいよね。死んじゃだめだよね??

 

2枚目3枚目と物凄い勢いで食べながらリャナンシーは言葉を続ける。

 

「私は男の生命力を糧にする妖精なの。けどずーっと瓶に封印されてお腹ペコペコだったところに瓶が割れて出てこられたの。そしたらなんか前にアンタがいたから……」

 

「いたから?」

 

「食べちゃった♡」

 

「食べちゃった♡じゃねえよ!この悪魔!!」

 

 

あーあ、僕死んじゃったんだ。2度目の人生もう終わった。享年11歳で。やっぱりこの世界は魔境だったんだ。僕なんかが無事でいられるわけなかったんだ。あーあ、あーあ、あーあ。

なんかめっちゃ泣きたい。

 

膝を抱えてメソメソし始めた僕にリャナンシーは少し慌てだした。

 

「だ、大丈夫。死んでないわよ!ゴーストみたいになってるのは今はちょとエネルギーが足りてないだけ。

男の生命力は陽のエネルギー。太陽が昇れば元に戻るわ!!」

 

「ホントに?」

 

「ホントにホントよ」

 

「なら……まぁ、いいけど。僕はもう寮に戻るよ。皆が起きる前には元に戻るんだろう?

もう迷惑かけないでくれよ?」

 

なんかもう、混乱し過ぎてどうでも良くなってきた僕は思考停止気味になりながら絵をすり抜けようとした。

 

だけど、どうやって今の僕に触れているのか分からないが、リャナンシーは僕の左手をキツく握りしめてきた。

そして眉を下げながら少し申し訳なさそうな顔で言うのだ。

 

「そのことなんだけど……これからもしばらく分けてくれちゃ、ダメ?」

 

 

えぇ?

 

 

 

 

 

 




・リャナンシー
アイルランドに伝わる美しい女性の姿をした妖精。けどこの小説のリャナンシーは幼女姿。
男に詩才や美しい声を与えるがその代わりに精気を吸い取ってしまうらしい。
この小説はR18ではないです。幼女リャナンシーは生命力です。大丈夫、健全です。
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