ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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29話 僕はやれば出来る子だと信じたい。

午後の魔法史という睡眠時間以外の何物でもない授業もやっと終わり、生徒達があくびをしながらノロノロと夕食に向かおうと立ち上がる中、1人ドラコが見ているこちらの目が醒める程の勢いで教室を飛び出して行った。

 

ドラコが使用していた机の上には乱雑に包帯が投げ捨てられている。

 

寝起きで状況が掴めていないらしいクラッブとゴイルは半開きの目でボッーとドラコが去っていった扉を眺めて突っ立ったまま動かない。

 

「クラッブ、ゴイル。多分ドラコはクィディッチの練習に行ったと思うよ。遅くなるだろうから先に大広間に食べに行っていいんじゃないか?」

 

魔法薬学の教室で少女に言われた言葉が引っかかったドラコは、いてもたっても居られなくなったのだろう。

僕の言葉にクラッブは不思議そうに顔を傾ける。

 

「えっ?手を怪我しているから箒は握れないんだろ??」

 

……どうやら、こいつはドラコがハリーを煽るために大袈裟に怪我を語っていることにも気がついていなかったらしい。ドラコに喋りかけられたら嫌らしい笑みを浮かべて頷いておけば大丈夫だと思っているのだろう。まぁ、大体の場合間違えてはないけど。

 

「腕の怪我の一個や二個、自尊心があれば人間すぐに治せるものなんだよ」

 

コイツら相手に説明するのは面倒くさかったため適当に返せば、「人間凄いんだな」と感心したように頷かれた。

僕は魔法界にすら『バカにつける薬』が存在しないことを非常に残念に思う。

 

 

「じゃあ大広間に行ってくるぞ、マルクス」

 

だからマルクスって誰だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ポラクス、今日はその階段大広間の方向じゃないわよ!」

 

"曜日によって繋がる先が変わる階段"を登ろうとするとリャナンシーに止められた。

 

「いや、いいんだ。今向かっているのは図書館だから」

 

「あら、そうなの。何か調べ物?」

 

リャナンシーの呑気に訊ねてくる様子に自分の額に青筋が立つのを感じる。

 

「僕が魔法を使えない理由を本で調べるんだよ!昨日ジニーに相談していた筈が誰かさんのせいで恋愛講座にすり替わってしまったからね」

 

女があそこまで打算的に恋愛をすることにどう思ったかだって?

 

……ショックなんて受けてないし?ホントったらホントだ。

 

 

「充実した話し合いだったと思うけど……。ほら、ジニーから『闇の魔術に対する防衛術の先生と話してみたら?』ってアドバイス貰ったじゃない!図書館も良いかもしれないけど、先生の所に言った方が何か分かることがあるかもよ?」

 

うーん、あの先生今年の重要人物だからなぁ。それに、

 

「初対面の人に込み入った話をするのは、ちょと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リャナンシーがコミュ障、ヘタレと連呼してくるのを無視して図書館に入る。

 

夕食の時間の為か利用している生徒の姿は殆どない。向かう先は医療関係の本棚。ページをめくる音をたてることすら許してくれない程厳しいと評判の図書館の司書(ばんにん)、マダム・ピンスの鋭い目線を感じながらも無事医療関係の本が並ぶ列を見つけることが出来た。

 

エルンペントの毒、バ(魔)クテリア性疾患、精神に害を及ぼす呪文、黒斑病、龍痘ー…

 

病気だけではなく魔法界に存在する様々な生物の毒、強力な呪文の後遺症、呪われたアイテムなどについて乗っている本を何冊か読み漁ったが、やはり僕の今の状態に似た症状は見つけられない。

 

魔法が使えないことと、寝不足を除けば僕は至って健康状態なのだ。まず、病気なのかどうかすら分からないのだから困ったものだ。

 

「見て、ポラクス!『トロール並でも出来る友達テクニック』ですって!!これを読んだらアナタの"コミュニケーション障害"も治るかもしれないわ!」

 

「生憎だけど僕が治したいものではないんだ。それに、その本はドラコからプレゼントされたからとっくに持っている」

 

そう小声で返した時、こちらに近づいてくる足音が聞こえた。

 

もう手遅れなのね……と、わざとらしく涙を拭うリャナンシーをポケットにねじ込み振り返ると、本棚の影から姿を現したのはなんと、魔法薬学の教室にいた少女アストリア・グリーングラスだった。

 

僕に気付いた彼女は怪訝そうな目をこちらに向けてくる。

 

「……ドラコ・マルフォイ先輩が1人でこの時間帯にまで勉強していらっしゃったとは驚きです」

 

いつものことであるが、彼女は僕をドラコと勘違いしているらしい。

 

「残念ながら人違い。僕はドラコ・マルフォイじゃなくてその弟のポラクス・マルフォイだ、ダフネの妹」

 

彼女は一瞬気まずそうに口元を歪めたが直ぐに仏頂面へと戻る。

 

「失礼しました、ドラコ・マルフォイ先輩に双子の弟がいらっしゃるとは知らず……。言われてみれば、あの人は腹ただしい方ですが、こんなカビが生えてきそうなジメジメとしたオーラは纏っておられませんでしたね」

 

さっきから、どいつもこいつも僕に対して酷い物言いだ。

 

「まぁ、お兄様のように突っかかってこられないなら結構ですが。私もこの本棚に用がありますのでお隣失礼いたします」

 

と言いつつ3席も間を開けて座るのはどうなんだ?そんなに僕はカビ臭いのか?

 

 

 

 

何か居心地の悪い沈黙の中、ふと彼女は視線は本に向けたまま口を開いた。

 

 

「何故貴方はこのような……病気についての本を読んでいるのですか?」

 

突然の問いに思わずしどろもどろになってしまう。

 

「最近、調子がどうも悪くて。杖を振っても魔法が使えないんだ」

 

 

「そう、ですか」

 

 

彼女は短く相槌を打ったっきり、特に会話を続けることはなかった。

 

 




あったらそこそこ好評かもしれないものパート7

『あつまれ 禁じられた森』

・商品紹介
『フォイフォイ開発』の事業の一環、『禁じられた森移住パッケージプラン』に参加するTPSバトルロイヤルゲーム。人狼、ヤバい蜘蛛、誰かさんの車、後頭部に顔面引っつけた不審者、誰かさんの弟など愉快な面々の中開拓なんて可能なのかだって?
大丈夫!!基地もパパ上社長から費用は前借りで作れるし、親切で頼れるサポートキャラの森番もいるのだから!
えっ?借金の利率はどのぐらいか??……君のような勘のいいガキは嫌いだよ

のんびり殺伐ライフ、送ってみませんか?



注意 : ゲームバランス調整の為、アバダケタブラ連打は禁止です。

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