ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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30話 僕は絶毛剤をお見舞いに渡したい。

ハロウィンの土曜日。この日はホグワーツの近隣にある魔法使いだけの町、ホグズミードに行くことが許可された。

 

ホグズミードに行くのはは3年生からの特権だ。僕らにとっては初めてのホグズミード週末という事もあり同学年の生徒達はほとんど寮から出払ってしまった。

 

ドラコがクラッブとゴイルがズボンを履いているかしっかり確認してからホグズミード行きの列に向かうのを玄関ホールで見送ってから、僕は人混みをくぐり抜け階段を登る。リャナンシーは先程何やら用事があると酷く楽しそうな様子で飛び去っていったので今はいない。

 

僕も他の生徒達と同じ様に私服姿だが、出かけ先は違う。

僕は職員室の隣にある応接室の扉を開けた。

 

中に居たのは、赤い座り心地の良さそうなソファに腰をかけ優雅に紅茶を飲む母上と傍に見事な立ち姿で控える屋敷しもべ妖精のアディ、そして母上の反対のソファに座るのは相変わらず不機嫌そうな顔をして腕を組むスネイプ先生だった。

 

僕に気付いた母上は調度飲み干したティーカップをスネイプ先生の顔に放り投げてこっちに駆け寄って来る。

 

「ポラクス!!魔法が使えなくなったと聞いて心配で心配で……。熱は無い?食欲はある?ちゃんと寝れてる?あぁ、私が夏の間に気づいてあげられなかったばかりに不安な思いをさせてしまって!」

 

目に涙を貯め僕を抱き締める母上に胸が少し痛くなった。どうも、去年から気苦労ばかり掛けてしまっている。

 

ちなみに、空中を舞いまだ何が起きたか理解しきれていないスネイプ先生の顔にダイブッ!しようとしていたティーカップは既の所でアディの魔法により止められた。何とも素晴らしい召使いを持ったものだ。

 

 

スネイプ先生は気を取り直すように咳をついて立ち上がり、僕らに紙を差し出した。

 

「ナルシッサ、マダム・ポンフリーからの診療書だ。それに校外への外出許可証……行先は『聖マンゴ魔法疾患損害病院』。これで十分ですかな?」

 

「ええ、ありがとう。セブルス」

 

母上は僕を抱き締める腕を解きその紙を受け取った。

 

「アディ、行きましょう」

 

「はい。奥様」

 

アディはティーカップを丁寧にテーブルに置いてから、部屋の奥にある暖炉に灰……"煙突飛行粉(フルーパウダー)"を投げ入れた。

 

燃え上がったエメラルド色の炎に、僕は母上と共に足を踏み入れた。

 

視界がうねり、やがて落ち着く。

灰を払いながら暖炉をでると、そこは清潔感漂う病院の受付。僕は魔法が使えない症状を細かく検査する為に"聖マンゴ病院"へと連れてこられたのだ。

 

母上が受付の女性に診察書を見せた。予約していたのだろう、女性は手際よく僕らを診察室に案内してくれた。

 

「聖マンゴに来たのは随分久しぶりね。昔はポラクス、身体が弱かったから何度も来たものだけど……」

 

昔、というのはまだ僕が3歳にもならないぐらいだろう。実質僕がここに来たのは初めてだ。思わず当たりを見渡してしまうが、やたらスマイルが輝く男性が視界の端に入った途端反射的に首を真っ直ぐに戻した。

僕はいまだにあの愛すべき聖職者の記念日に起きた悲劇を整理しきれていない。

 

非常に残念な事に奴の毛根は健在だった。

 

 

案内された部屋で待っていた"癒師(ヒーラー)"は得体の知れない奇妙な色をした薬品を飲ましてきたり、杖で僕の身体のあちこちをつついたりしてきた。魔法を使ってみてくれと頼まれたので浮遊魔法の呪文を唱え杖を振るが、癒師のメガネが犠牲になっただけだった。

 

前髪を少しばかり焦がした癒師はカルテを眺めながら困ったように口元を歪める。

 

「うーむ。マルフォイ夫人、こちらでやれるだけの診察をさせて頂きましたがお宅の息子さんは至って健康状態なのです。ただ、魔法を使用する時に体内から杖先に放出される時、エネルギーが真っ直ぐ杖に流れず殆どが放散されてしまっているのが観測されました。魔法が上手く使えないのはこのせいでしょうねぇ……」

 

エネルギーの流れを阻害しているのが、リャナンシーが言っていた不味い魔力なのだろうが、

 

「治療法は無いのですか?」

 

と、尋ねてみるが前例が見当たらない症状なので判断出来ないと返される。

 

結局命に別状は無いからと極論を言われ、様子見ということになった。

 

 

不満な様子の母上と心配そうな顔をするアディと別れ、ホグワーツ城に戻った頃にはすっかり日が暮れ生徒達もホグズミードから戻り大広間へと集まっていた。

 

 

 

大広間は何百もの蝋燭が灯り、コウモリがその間を飛び交っていた。

 

毎年楽しみにしているかぼちゃパイを頬張るがどうも普段程美味しく感じられない。

宴の締めくくりのゴースト達の余興。しくじった打ち首の場面を渾身の演技で再現する「ほとんど首なしニック」の隣で非常に嫌そうな顔のピーブスを相手役に『貴公子と妖精の禁断の恋』とやらの演目を披露するバカ妖精は無視することにした。

 

その後、殺人鬼シリウス・ブラックによりグリフィンドールの扉番の絵画"太った婦人"が襲われた事件が起こり大広間に並べられた寝袋で寝ることとなった。他の生徒たちが不安で中々寝付けずざわめく中、ブラックの無罪を知っている身としては彼による恐怖より今年自分が単位を確保出来るのがどうかが心配で眠れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、11月に入るともっと心配すべきことができてしまった。

 

 

「ポラクス、知ってるか?クィディッチはこの世の真理なんだ。クィディッチを極めし者こそ全ての結末へと辿り着く。何故そんなに熱中出来るのかって?僕は探求者(シーカー)。スニッチが僕を呼んでいる……それだけさ」

 

クィディッチの試合が近づくにつれ、グレーの瞳に妙なハイライトを灯していき、頬をピンクに染め訳の分からないことをのたまうようになったドラコについてだ。

 

 

聖マンゴ病院に連れて行くべきなのか、教会やらどこかで憑いてる何かを払って貰うべきなのか僕には判断がつかなかった。




突然始まるおまけコーナー

『キャプテンまるふぉい・燃えろ!3年生編』
~とある先輩の小さな予感~より抜粋

今年でいよいよ最終学年となったオレは例年より更に決意を強くし、クィディッチメンバーを呼び出した。

オレが率いるスリザリンチームは身体のガタイの良さ、タフさを売りにした攻撃力ある自慢のチームだ。しかし、選手を並べてみると1つだけ凹みが出来てしまう。最年少メンバーであるシーカーのドラコ・マルフォイが立つ場所だ。

もっと上手い奴は上級生に他にもいるのだが、ニンバスの最新シリーズを差し出されたらメンバーに入れるしかない。
正直この時オレはコイツに大して期待を抱いていなかったのだが、オレを見る奴の瞳が輝いていることに妙な胸騒ぎを感じた……。




次回、みんな大好き(というか作者が大好き)クィディッチ回です!
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