~クィディッチの専門用語~
・クィディッチ
箒に乗って行うバスケットボール的な魔法使いのスポーツ。
・クァッフル
クィディッチで使用されるボール。ゴールに入ると10点。
・ブラッジャー
両チームの選手を妨害する為に高速で飛び回る鉄球。これをこのスポーツに取り入れた奴は頭が間違いなく狂ってる。常に2個放たれている。
・スニッチ
羽根の生えた小さな金色の球。シーカーが捕まえると150点得点し、試合が終了する。
・チェイサー
クァッフルで得点するポジション。3人。
・ビーター
ブラッジャーから味方を守るため棍棒で打ち返すポジション。2人。
・キーパー
まんま
・シーカー
クィディッチの花形。スニッチ専門のポジション。
原作では第一試合は悪天候を避けたかったスリザリンチームがドラコの腕を言い訳にして後回しにして貰い、グリフィンドールVSハップルになりましたが、この小説ではドラコが包帯を破り捨て箒を乗り回しているので予定のままになっています。
クィディッチの今シーズンの初試合はグリフィンドールVSスリザリン。ホグワーツ全生徒が待望するその日は生憎の土砂降りだった。
クラッブとゴイルが大きな傘をさして競技場に入っていくのを僕は観客席より小高い場所に設けられた実況席の屋根に腰を掛け見下ろす。勿論ゴーストの姿で。
大雨のせいで非常に視界が悪い。3メートルも離れた場所から見れば色の薄い僕を捉えることはできないだろう。
「まったく、魔力を食べさせてくれるのは嬉しいけど今ゴーストになって余計に状態が悪化しても知らないわよ!それに姿を見せないとまたドラコ坊やが拗ねてしまうんじゃない?」
病院から戻ってしばらく再びブルーになっていた僕を心配してくれているらしいリャナンシー。
だが、今日はゴーストになれることを僕は珍しくエンジョイしている。
「去年の試合を見逃してしまった分、最高の席で観戦したいんだ。今日は皆んな傘をさしているから顔なんて見えない。試合の詳細を事細かに語ってやればドラコも納得するだろう」
そうリャナンシーに返す僕の声は、最近声変わりしたはずなのにまた高くなっていて違和感が凄い。
ゴーストになれば食べれないのに持ってきてしまったポップコーンをいるか?と、リャナンシーに差し出してみたが「こんな湿ったの要らないわよ」と断られた上に何故か大きなため息をつかれた。
いよいよ試合が始まった。
両チームの選手達が審判のフーチ先生の合図で一斉に飛び立つ。
選手達は曇った視界の中、何とか纏ったローブの色の違いで敵か味方を見分けプレイしているようだ。風も強くどの選手も見ていてヒヤヒヤさせられる危うい飛行になってしまっている。
グリフィンドールの女性のチェイサーにクァッフルが渡り、彼女がディフェンスをくぐり抜けてスリザリン側のゴールに急接近した。
スリザリンのビーターは慌ててブラッジャーを撃ち込むが軽く避けられてしまう。
もう入れられてしまうか、という時スリザリンキャプテンのマーカス・フリントがその大柄な体躯で右から彼女に突進した。
不意に襲われたグリフィンドールのチェイサーはバランスを崩し、何とか数メートル程先で踏みとどまったもののクァッフルは彼女の腕から掠め取られる。
急に攻防が転じた為グリフィンドールは対応しきれずスリザリンがシュートを決めた。
スリザリンの観客席からは歓声が沸く一方で、グリフィンドールからブーイングの嵐だ。明らかにルール違反だが視界の悪さのせいで下からでは選手の様子が余り見えなかったのだろう。グリフィンドールの打診も虚しくスリザリンの得点となった。
僕の目にはフリントが悪い笑みを浮かべて気分良く一回転する姿がしっかりと映っていた。
「まぁ、随分とセコい奴ね!」
「何でこんな天候の悪い日にスリザリンチームが素直に出場したのか少し疑問だったけど……この大雨に紛れてグレーなことをしてやろう、っていうのが作戦みたいだな」
流石は我が寮。スポーツマンシップなどバジリスクに喰わしてやって代々受け継がれし狡猾の道を極めんとしている。
そんなプレイをスリザリンが連発してリードを取っていくものだから、両チームの観客席は別々の理由に興奮を増していき激しい雨音の中でもそのざわめきが聞こえるまでになった。
コートの中央で泥試合が行われている中、シーカーであるドラコとハリーは離れた場所を様子見するように緩やかに飛んでいる。今回の試合のキーは間違いなく彼らだろう。
この天候でプレイするのはどの選手にとっても相当キツく集中力を持続出来る時間はそう長くないだろう。互いに望むのは早期決着。
クィディッチの試合はどちらかのシーカーがスニッチを捕まえたところで終了だ。2人に掛かる責任は重い。
スニッチは小さくすばしっこいのでただでさえ捕まえるのが難しい。この視界の悪さで見つけるのは凡人には不可能と言えるだろう。しかし、グリフィンドールチームには100年ぶりに1年生でシーカーとなったクィディッチの選手としての天賦の才を持つハリーがいる。
今はスリザリンがリードしているが一気に150点が得られるスニッチをハリーが手に取れば……。多くの観客がその道筋を胸にして試合を見守っているに違いない。
だが、多くの者は知らない。その技術の差、才能の差を埋めようとしたもう1人のシーカーの努力の結晶を。
――ほぼ同時に2人が動いた。
それに気付いた観客はサァっと波が引いたように静まり帰り、雨音が増して耳に響いてくる。
彼らが向かうのは他の選手達が辺りの静けさに気付かず熱中してクァッフルを奪い合っている遥か上空。確かに金色の球体が羽ばたいていた。
2人は降り注ぐ雨に逆らい、箒にしがみついて高度を上げていく。
「行け!ぶん捕ってやるのよドラコ坊や!!」
「何やってるの、ハリー!!そんな青白いモヤシ打ちのめしてやりやなさい!!!」
すっかり試合にのめり込んで騒ぎ立てるリャナンシーの声とは別に、グリフィンドール側の観客席から金切り声が聞こえたような気がする。
2人が遂に手を伸ばしたその時、僕は体温なんて無いはずのこの身体が芯から冷えわたるような悪寒を感じた。
2人の、いやハリーの前に何か黒いモヤのようなものがいつの間にか立ち塞がっていた。よく見渡せばグランド一帯に奴らは立ち、一心にハリーの方を向いていた。
シリウス・ブラック対策に雇われている黒いベールのような物を纏った人の幸せを糧とし絶望を振りまく生物の様な何か……
ハリーの身体が箒から滑り落ちた。
彼の箒は弾き出され校庭の方向に吹き飛んで行く。
ハリーは数十メートル上空で意識を失ったまま、完全に身一つになり重力に従って落下していく。
「ハリーが死ぬ」と、思ったのは僕だけじゃないだろう。
どんどん勢いを増して地面に近づいていくハリー。しかし、それ以上のスピードで降下してハリーに接近する影があった。緑のローブとプラチナブロンドの髪を翻すのは紛うことなき僕の兄、ドラコだ。
下手すれば、ドラコまでもが止まりきれず地面に激突してしまう勢い。
「無茶だ!止めろ!!!」
思わず僕はそう叫んでしまった。しかし、ドラコがスピードを緩める気配はない。
流星の如く真下に箒の柄を向けるドラコは、脚だけで身を固定し両手を延ばしてハリーの腕を掴む。
そして絶妙なコントロールで箒を水平に戻し、ハリーを見事に引き上げた。
沈黙に浸っていた競技場。だが、しばらくしてから爆発するような歓声が起こった。
この異様な熱気を嫌がったのか吸魂鬼達はどこかへ去っていく。
すると偶然なのかさっきまでの土砂降りが嘘のように雨がピタリと止み、厚い雲の隙間から光が差し込んだ。
スポットライトの様に照らされたグランドにハリーを抱えたドラコはゆっくりと着地する。ドラコのローブにはスニッチが入っていた。
その様子を見たグリフィンドールの観客達は息を呑む。
呆然と突っ立っているフーチ先生にドラコは爽やかな笑みを向けた。
「フーチ先生。事故が起きました。僕はスニッチを捕まえましたが……この試合は無効でお願いします」
この瞬間、全ての人間の思考が真っ白になった。
一番早くに気を取り戻したフリントがドラコに詰め寄る。
「何を言っているんだマルフォイ!!この試合完全にオレたちがリードしていた。スニッチも捕まえたっていうのにお前は……」
ドラコはフリントの言葉を厳しい表情で手を振りかざし遮った。
「違う。さっきのあの瞬間、吸魂鬼が現れなければ確実にポッターが捕まえていた。僕は仮初の勝利なんていらない!」
この瞬間、全ての人間の思考が一致した。
「「「コ イ ツ ハ ダ レ ダ ???」」」
土砂降りの試合の後、ホグワーツではとある噂がされるようになった。
クィディッチの試合の日のみに現れる貴公子。
『
『箒星の王子さま』
スリザリンの試合の日のみ出現するプラチナブロンドの髪でグレーの瞳をこれでもかと言うぐらい輝かせた好青年。常に背後に燃える青春の炎のエフェクトがある。
正体は皆んな知っているが信じたくない。