11月の最後の週のスリザリンVSレイブンクローの試合はドラコが試合開始10分程でスニッチを捕まえるという偉業を成し遂げスリザリンの圧倒的勝利となった。
すっかりスリザリンの英雄となったドラコは周りにチヤホヤされ、鼻高々に自分のキャッチがいかに素晴らしかったかを自慢するのが最近の日課になっている。
しかし、一つ下の男子生徒ハーパーがハリーが箒から落下する様子を間抜けな演技で再現してみた際には、途端に真顔になり焦点の合わない目をして吸魂鬼が現れるまでの戦況の緊迫さ、ハリーの箒さばきの分析、それへの対策を事細かに語り始めるのだ。
もはや多重人格を疑うほどのドラコのクィディッチの熱の入れように、自慢話を聞きに来ていた後輩達は怯えて逃げていったという。
学期末の休暇、殺人鬼に狙われているということでホグワーツ城内から出られないはずのハリーをホグズミードの街で見かけたと訴えるドラコに、皆は遂に可笑しくなってしまったのだと不憫なものを見る目をした。
必死でハリーが規則違反をしたことを訴えたのに、スネイプ先生にすら元気爆発薬が入った瓶を片手に医務室を指で示されていたのは流石に気の毒だった。
もう12月も大詰めとなりクリスマス休暇が目前となる中、僕は寒さに身を震わせながら朝食のために大広間へと向かう。
途中で分厚い本をどっさりと抱えたハリー達にすれ違いざまに鋭く睨みつけられた。
そこまで恨まれることをした覚えは……とその威圧に目をさ迷わせたが、彼らの腕に抱えられている本のタイトルを見て恨みの原因を理解した。
魔法動物飼育学の時間にドラコの腕を傷付けたハグリッドのヒッポグリフが父上によって裁判にかけられたのだ。
今回の事件大体はドラコの自業自得なのだが、ドラコが軽傷だったことが判明しているのにも関わらず簡単に訴えが受け入れらているのは、少しばかりお茶目な森番の日頃の行い故からなのだろうか……。
肝心のドラコ自身はクィディッチのことで頭一杯であの事件のことなんてすっかり忘れているだろうに。親馬鹿&ダンブルドアの落ち度を作りたいという父上の策略だろう。
ちょっとした罪悪感を抱いたが、大広間に着けばそんな暗い気持ちは吹き飛んでしまった。
愛梟ネストラが運んで来てくれた手紙を読み終えた時、口角が上がるのを抑えることが出来なかった。
軽い足取りで大広間を後にする僕に、リャナンシーは気味悪いものを見るかのような視線を送ってきた。
「まぁ、ポラクスが鼻歌なんて!……酷い音痴だけど。
誰からの手紙?何が書いてあったの?」
かなり心をえぐる小言が混ざっていたが、それをスルー出来るぐらいには気分が良い。
「母上からだよ。今年は父上の仕事も落ち着いているから家でクリスマスを過ごせるって!!」
「それは良かったじゃない!去年のクリスマス休暇はちょっと刺激的過ぎたものね。クリスマスぐらいは穏やかなのが1番よ」
ドラコにも同じ手紙が届けられていたようで、寝室で早速ニンバスをケースに収納していた。
そしてクリスマスイブ、僕らはホグワーツ急行に乗りキングスクロス駅で降りた。
「お帰りなさいませ。ドラコお坊ちゃま、ポラクスお坊ちゃま」
ホームで待っていたのは深々と優雅に頭を下げるアディと、旅行用のローブを纏い相変わらず険しい顔をした父上だった。
しかし、その隣にはいつもなら出会い頭抱き着いてきて僕らの頬にキスをする母上の姿は見当たらない。
僕らの姿を僅かに目を細め眺めてから父上は軽く頷く。
「よく戻った。ドラコ、ポラクス」
「お久しぶりです、父上。母上はどうされたのですか?」
ドラコも同じことを疑問に思ったようだ。
「ナルシッサは夕食の準備中だ。今年はお前たちの手料理を沢山振舞ってやろうと張り切っている。期待しておけ」
父上は去年の家族で過ごせなかったクリスマスを思い出したのか、少しバツの悪そうな顔をする。
「それは楽しみだ」
ドラコと目を合わせ微笑みながら、僕らはアディの姿くらましでウィルトシャーの屋敷に向かった。
……到着の際、シートベルトなしフリーフォールを味わう羽目にならなかったことへの感動を追記しておく。
この日の晩は好物のかぼちゃパイや2年ぶりとなる母上特製のフォアグラといったご馳走を堪能し、チェス盤を抱えて迫ってくるリャナンシーを無視して暖かい毛布に潜り込んだ。
目が覚め、下に降りるとクリスマスツリーの傍には沢山のプレゼントが積まれていた。
この光景を見て悲しめと言われても無理な話。僕はまだ瞼の重そうなドラコを揺り起こして意気揚々と一緒にプレゼント箱の紐を解く。
あっ、今年はクラッブとゴイルからプレゼントが来ている。やっと僕の存在をハッキリと認識してくれたようだ。
ただ……貰った物に文句を言うのもあれだが、正直"ゴキブリ・ゴソゴソ豆板の詰め合わせ"、"百味ビーンズ下手物スペシャル"を贈るセンスは控え目に言って最悪だと思う。
「パーキンソンからは今年は手袋か……何で毎年ショッキングピンクなんだろう。
こっちの箱はポラクス宛?女友達なんていたのかい??」
ドラコが怪訝な表情で包装紙に結ばれたメッセージカードを読む。
『ポラクスと師匠、メリークリスマス!
昨日は素晴らしい夜を過ごせたかしら?私は……えぇ、それはそれは素晴らしかったわよ。詳しい事はまたホグワーツで話すわ。2人にはお揃いのペンダントを贈るわ。高い物は買えないから私の手作りなんだけど、結構自信作だからデートの時は是非つけてね!
貴方達の親愛なる恋の同士より』
セーターのポケットの中でリャナンシーが喜びに震えた。
「……えっ、まさかポラクス本当に女いるの?」
ドラコの言葉にテーブルで談笑していた父上と母上が物凄い勢いで振り返ってきた。
「まさか、僕が一番話す女性は母上を除いたらマクゴナガル先生だ。誰かのイタズラだろう」
僕がそう言ってその包装紙を後ろに放り投げると、同情に満ちた目線が突き刺さる。
ジニーめ、余計な物を……。
投げた筈の包装紙がフワフワと浮いて廊下に出ていくのを後目に、別のプレゼントを開けようと手を伸ばした時。父上がああ、と思い出したように口を開いた。
「明後日に縁深い家の客人達を招待してパーティーを開く予定だ。部屋の片付けなどの準備をしておけ」
……
絶望にうちひしがれる僕にドラコは呆れたように苦笑する。
「そろそろいい加減に人付き合いっていうのをしてみたらどうだい?これ、僕からのプレゼント」
そう言って押し付けられたのは『レタス食い虫レベルから始める社交界』という異様に分厚い本だった。