ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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あけましおめでとうございます


33話 僕は僕を知る人がいない地へ行きたい。

ホワイトブロンドの髪をワックスで七三分けにギチギチに固め、皺一つ無い真新しい真っ黒のラウンジスーツを着ていると言うよりは着られてしまっている蝋人形の様に棒立ちした少年。

 

 

細かい彫刻が施された壁掛け鏡に映る自分自身を見詰めて僕は小さく呻き声を漏らす。

 

「あの、母上。どうしても、どうしても出席しなければならないのですか?」

 

「貴方は体が弱いし、今もまた調子が悪いみたいだから私も反対したわ。けれど、お父様は流石にこの時期に世間と関わりを持たないのはいけないと今回ばかりは頑なに言われるから……」

 

 

最後の仕上げとばかりに僕のスーツに清めの魔法をかけながら母上は困ったように眉を下げる。

 

「貴方の将来の為なの。私に続いてお客様に挨拶するだけよ、一度頑張ってみなさい」

 

母上はがっちり僕の手首を繋ぎ、広間へと歩き出す。

逃げ場は無いようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

会場の部屋にはもう多くの客人で溢れかえっていた。

 

「お久しぶりです、マクネア氏。お忙しい中来て下さってありがとうございます」

 

母上は目元が暗く口髭をはやした大柄で男と握手をする。

 

「本当にお久しぶりで、マルフォイ夫人。しかしそのお美しさはお変わりありませんな」

 

男は随分と下手くそな笑みを浮かべ、それからジロっと見定める様に僕へと目を向ける。

 

「そちらは弟君ですかね?兄君とは時々お会いしますが弟君と挨拶するのは初めてじゃないでしょうか」

 

「……」

 

この人、主食にガマガエルの丸揚げとか食べてそうだなーとか考えていたら母上から鋭い視線が送られてきた。

 

僕はひきつる口元を抑えながら渋々相手と目を合わせる。

 

「初めまして。僕はポラクス・マルフォイです。いつも父と……」

 

 

 

こうした会話を幾度と繰り返し、母上に良しと言われる頃にはもう身も心もすっかりクタクタになっていた。

 

そう言えばドラコは何処だろうと部屋を見渡す。すると右奥のソファに親についてきたのだろう見知ったスリザリンの同級生達がドラコを取り囲んでいた。

 

何をしているのだろうかと気になったので会話が聞こえる程度に近づいてみた。

 

 

「僕は新しいペットにサラマンダーを貰ったんだ!ほら、最近予言者新聞で特集が組まれて人気急上昇しただろう?」

 

「私はゴブリン銀製のブレスレット!その模様の美しさといったら……!!」

 

どうやら親から貰ったクリスマスプレゼントを自慢し合っているらしい。ドラコは父上のコネで手に入れたクィディッチ推しチームの選手のサイン入りの自伝を見せびらかしている。

 

たがその輪の中にクラッブとゴイルが見当たらない。彼らだけ何故か少し離れた場所で身をかがめあっていた。

 

 

そういや彼らからクリスマスプレゼントを貰った。嫌がらせ同然の物だったとしても礼を言っておいた方が良いだろうと僕は2人のもとに向かった。

 

 

「やぁ、クラッブ、ゴイル。この間はクリスマスプレゼントありがとう」

 

クラッブは顔を上げてじっと僕の顔を見詰め「ポラクスか……」と小さく呟く。

 

しかしゴイルは何の反応も無く俯いたままだ。何やら文庫本の様な物を持っている。

 

「こいつ、何読んでるの?」

 

そうクラッブに訊ねてみる。

 

「クリスマスに貰った小説らしい。凄いハマったらしくてずっと読んでる」

 

僕は思わず口をあんぐり開けてしまった。

 

「まさか、こいつが15文字以上の英文を読んでいるだって!?何が書いてるって言うんだい?」

 

読むだけでステーキの味がするとか、最新鋭の呪文がかけられているのだろうか。そのぐらいしかゴイルが本を読む理由を思いつけない。

 

「僕も今覗いてみたけど、よく分からない。さっき"乙女小説"とか言ってたけど」

 

僕はしゃがみ込んでゴイルが握り締める本のタイトルを読む。

 

「『妖精とゴースト貴公子の恋物語』??」

 

何処かで耳にしたようなタイトルを脳内で反復しながら僕は廊下に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、リャナンシー。さっきの本って……」

 

ジャケットのポケットから飛び出したリャナンシーは誇らしげに胸を張る。

 

「私が書いた本よ。雑誌の週間魔女に寄稿したら見事に採用されて連載化、そして今年の秋に書籍化したの!スゴいでしょう!!」

 

コイツ、最悪だ。

 

「ハロウィンの昼に出かけてたのってもしかして……」

 

「ええ、書籍化の事を話しにロンドンの週間魔女の本社に行ってたの。夜のハロウィンパーティーでそれの告知をしたらホグワーツの女子生徒の間で結構流行ったの!まさかあのウスノロまで読むとは思わなかったけど……トロールまでに純愛の素晴らしさを伝えられるなんて、さっすが私!!」

 

あのピーブスを相手にした馬鹿らしい舞台は小説の告知だった?

 

 

「かつては"詩人の恋人"とも呼ばれたこのリャナンシーの文才を舐めちゃいけないわよ!イギリス魔法界はもちろん、マグルの書店にまで読者層は拡大、印税もホクホク。主な話しのモデルは当然私とポラクスのラブロマンス溢れる華麗な日々にしたわ」

 

 

「……」

 

 

 

どうしてコイツはいつも、いつも……。

 

僕には全くコイツとラブロマンス溢れる華麗な日々を送った覚えがない。恐らく相当内容は盛っているだろう。

もう絶対、コイツの隣にいるゴーストが僕だとバレてはいけない。バレた暁には僕は恥ずかしさのあまり悶えて飛び降り自殺を決行してしまいそうだ。

 

ホグワーツの生徒、イギリス中の女性達で僕をモデルにした何かが噂されている様子を想像したらもう既に死にたくなってきた。

 

 

 

自分でもよく分からない感情に手足が震えるのを抑えようとした時。

 

 

突然風圧が襲ってきたかと思うと机に積まれていた本、壁に並べられていたドラコのニンバスシリーズの箒コレクションといった辺りの物が吹き飛ばされていった。

 

 

 

 

明らかに僕を中心として。

 

 

 

 

魔力暴走だ。

 

 

普通は力を上手く扱えない魔法族の子供達が起こしてしまう、いわば癇癪のようなもの。

 

呪文が使えなくなってから、コップにヒビを入れてしまったりスプーンを捻らしてしまうことが多くなったがこれ程の暴走を起こしてしまうとは。しかも原因がリャナンシーの戯言だなんて。

 

 

驚きと情けなさ、不安に呆然としてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

沈黙が流れる荒れた廊下。そこに、鈴のような少女の声が響いた。

 

 

「……何、してるんですか?」

 

 

 

 

角から現れたのは、困惑した顔を浮かべるアストリア・グリーングラスだった。

 




あったらそこそこ好評かもしれないものパート8


『スーパーマルフォイブラザーズ』

・商品説明
毒蛇愛好会会長の魔王.お辞儀様に我が家をアジトにと乗っ取られたマルフォイ兄弟が数々の困難を乗り越えながら、我が家解放を目指す冒険アクションゲーム。
家で待つ金ピカのシャンデリア、クジャク、父上の毛根が失われる前に魔王を打ち倒せ!!


・注意事項
敵モンスターの蛇がうろちょろしているので下水管からの侵入は大人しく諦めましょう。




原作とか映画見てても、お辞儀様が居座っている間のマルフォイ邸の扱いが気の毒でしょうがない。
高そうな家具バンバン壊されるわ、勝手に訳あり物件にされるわ……。チャリティ・バーベッジがナギニにお食事された部屋って戦争終了後どうしたんだろうか…?
マルフォイ一家には強く生きて欲しいですね。
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