ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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お久しぶりです!


37話 僕はテスト勉強を頑張りたい。

午後の授業が終わり生徒達が夕食のために大広間へ向かう中、僕は一人その群れを抜け寮の自室へと向かった。

 

肩掛けの鞄に羽根ペンと大量の用紙を詰めフードを深く被る。

 

「リャナンシー、頼む」

 

そう声を掛けると鏡を見ながら髪を整えていたリャナンシーは呆れた様に振り返る。

 

「別にいいけど……何というか、凄く必死ね」

 

「当たり前だよ。もう僕に手段を選べる余裕なんて無い。何が何でも乗り越えてみせる…――期末試験を」

 

今僕はおそらくどの他の同級生よりも早く、そして真剣(ガチ)に期末試験を見据えている。

 

学生が試験で良い成績を修めたい時いったい何をするだろうか?

 

グレンジャーに代表される優等生という人種は早く対策を始めることで多くの問題に対応出来るようにする。それが第一手段だ。

 

しかしそれは優等生においてしか成績に直結しない。いくら時間があっても一年分の教科書の内容を隅から隅まで暗記するのは常人には不可能だ。そのため多くの学生は第二の手段として情報を収集する。先生の何気ない呟き、先輩からのアドバイス、同級生との等価交換……あらゆるヒントを掻き集めそこから勉強範囲を絞り効率的に対策をする。

 

だが世の中には優等生でも常人でもない底辺が残念ながら存在する。試験当日を空っぽの脳みそで清々しく迎える愛すべき馬鹿どもだ。しかしこんな奴らにも試験という絶望からの救いである最終手段が残されているのだ。失敗すれば全てを失うリスクはあるが、成功すれば一、二の手段すら超越しえる効果を生み出す禁じ手(ギャンブル)。そう、カンニングだ。

 

僕は元々は常人だった。それなりにコツコツやって頑張ってきた。しかし杖を取り上げられた今の僕は優等生は勿論常人の方法でも底辺の悪あがきさえも許されていない。

 

だが、どうしても僕は期末試験を打破しなければならない。

 

ならばなりふり構わず使えるものは使うしかない。三つの方法を全て利用すればそれは究極の試験対策へと昇華するだろう。

さあ、やってやろうじゃないか……

 

早めのカンニング(最終奥義)を!!」

 

 

「ねえ、アナタやっぱりまだ可笑しいじゃない?」

 

「失礼な。限りなく真剣に現実を見た上での行動さ」

 

はいはい、と僕の言葉を軽く流しながらリャナンシーは僕の首にかぶりつく。

 

視線が低くなりローブはぶかぶかになっていく。自分の身体が透けたことを確認すると僕は意気揚々と石造りの壁をすり抜けた。

 

 

冬休みが明け少し過ぎた年度の後半期。先生方は恐らく6月の試験の内容をほぼほぼ決めている。これはジニーを通して聞いた彼女の兄パーシーにフリットウィック先生が漏らした情報だ。僕に頼りになる親しい先輩なんていない。何なら同級生もドラコ以外いない。クラッブとゴイルは試験においては論外だ。良い後輩を持って本当に良かった。

 

人気を確認しながらそれぞれの先生の書斎や研究室に忍び込む。ここホグワーツで教師を勤めている以上どの先生も生徒が万が一でも触れないよう書類が入った引き出しなどには軽い探知魔法がかけていた。スネイプ先生だけ割とシャレにならない呪いだったりしたが、流石にどれもゴースト対策はしていなかった。

 

呪文学は「元気の出る呪文」、魔法薬学は「混乱薬」、変身術はティーポットを陸亀に変えるといった実技課題の内容だけではなく、筆記試験の問題も父上に強請って送って貰った゛高級自動速記羽根ペン゛を駆使しメモしていく。

 

「ズッル……」というリャナンシーの声を無視して僕は作業を進める。筆記試験の対策をしている余裕もないのだ。今このように魔法道具の羽根ペンを使えることからも分かる通り僕は杖は使えないが魔法は使える。それを不幸中の僅かな幸いと思うしかない。試験課題の魔法だけをひたすら杖なしで練習する。それが僕が見出した試験突破の唯一の可能性だった。

 

ゴーストのビンズ先生は勿論食事なんて摂らないので、ずっと本を読んでいて書斎から動いてくれない事件があったが、堂々と侵入しても彼は全く僕に反応しなかった。本に集中していて気がつかなかったのか、気がついている上で関心を持たなかったのか定かでは無いが無事全教科カンニングすることに成功した。

 

「あとは魔法の練習するだけさ……。うん、そう。魔法を、うん」

 

とりあえず今日の収穫を喜ぶことにしよう。

 

 

 

 

 

 

次の日の授業終わり、僕は湖の畔を訪れていた。リャナンシーが湖の浅瀬から手のひらサイズの亀を捕まえてきて僕の前に差し出す。

 

「さあポラクス、このコに元気のでる呪文をかけてみなさい!」

 

僕は人差し指を亀に向る。自分の杖も、ドラコ達から借りた杖も言うことを聞いてくれなかった。頼れるのは自分自身だけ。呪文を唱える。すると亀は甲羅に頭、手足を引っ込めて静止した。

 

「……死んでないよな、この亀」

 

「大丈夫よ。ほら、亀って元気なときでも大して動かないじゃない。それより次よ、このコをティーポットにしてみなさい!」

 

僕は母上が紅茶を淹れるのに使っていたシンプルな白いティーポットを頭に思い浮かべながら亀にまた指先を向ける。

 

亀が頭を出し白く染まったところまでは良かった。しかし亀の形は変化せず口から水を垂れ流し始めた。リャナンシーの手のひらの上から水を流し続ける亀。さながらマーライオンの亀版のようだが、実際にはそんな優雅なものではなくこのままでは脱水症状の亀ができるだけだ。

 

リャナンシーに魔法を解いてもらった亀は先程までとは違い機敏な動きで湖に逃げていく。そんな亀の背中を眺めながら僕は自分の目尻が潤っていくのを感じた。

 

「やっぱ無理だ、絶対無理」

 

「ま、まあ初めはこんなもんよ。亀の色を変えれてたじゃない!希望は大いにあるわ。杖の爆発よりマシ。これからよ、これから」

 

テンパったドビーだってもっとマシな魔法を使う。リャナンシーは慰めてくれてるが僕は成功と余りにも程遠い結果に打ちのめされた。

 







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