ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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39話 僕は彗星が輝く理由を知りたい。

あの騒動以来ヒッポグリフの控訴のために大量の本を険しい顔をしながら抱え込むロンとグレンジャーをよく見かけた。ハリーだけは迫るクィディッチ決勝戦に向けて練習に駆り出されているようだ。

 

そう、今年勝ち進んだのはグリフィンドールとスリザリン。つまりその決勝戦は全校が忘れられない大雨の日の試合の決着を意味する。学校中が早くも決勝戦の話題でもちきりだ。

 

その一番の的であるドラコもイースター休暇が始まってからはずっと練習に励んでいる。朝はニンバスを抱えながら瞳にギラギラのハイライトを宿し練習場に出ていく。帰りは自室に戻りニンバスをケースにしまった途端に目元を暗くしブツブツとその日の反省点、課題を唱えながら手帳に記していく。

 

「絶対に絶対にポッターに勝つんだ。今回の作戦はどうするか……。スリザリンは合計点グリフィンドールに200点差でリードしている。つまりスリザリンが更に50点差をつけて維持し続ければポッターがスニッチを取ろうがスリザリンは勝ちだ。だけど純粋な攻めは今までの試合からしてグリフィンドールの方が上。だとしたら学校の奴らが期待している通り僕とポッター、シーカーの一騎打ちになる。僕はもちろん全力でスニッチを探すが他にはやはり得点よりもポッターのかく乱を優先させるべきかもしれない」

 

ドラコは寝る前に僕らに作戦の概要を教えてくれたが、クラッブとゴイルは息継ぎなく続くドラコの言葉に圧倒されるだけで頭に入ってきてなさそうだ。

 

「つまり今悩んでいるのはポッターの妨害の仕方ってことかい?」

 

僕の問いにドラコは頷く。するとクラッブが簡単じゃないかと声をあげた。

 

「弱虫ポッターは吸魂鬼に怯えて何度も気絶している。真っ黒のローブを着て急に現れたらアイツきっと泣き出して動けなくなるぞ!」

 

ゴイルは力が抜けて落下していくハリーを真似して自分でゲラゲラ笑っている。だがドラコはダメだと静かに首を振った。

 

「お前にしては名案だったが遠慮しとくよ。以前プロの試合で似たようなことをして失格判定されたチームを見たことある。明確なルール違反は危険だ。僕が欲しいのは文句のつけどころのない勝利だから」

 

ドラコは普段の冷ややかな瞳でもなく、箒を握っている時の炎が燃える瞳でもなく、自信なさげながらも何かを覚悟したかのような瞳で僕を見る。

 

「去年、僕は怖くて不安で君に八つ当たりして弱みを突かれて利用されて君を傷つけた挙句いけ好かない奴に助けられて。父上がおっしゃっていた通りポッターは運よく“例のあの人”から助かったお陰で周りから英雄と持てはやされて良い気になってる勘違い野郎だ。その筈なのに、アイツは僕を良い様に利用した怪物を倒して僕を助けた。僕は全部負けたんだ……最悪の気分だった」

 

ドラコは作戦手帳を握る力を強くする。

 

「僕は勝つ。何がなんでも今度こそ。クィディッチはスポーツでポッターの特技、しかも同じポジションに僕は就いている。クィディッチで勝てば、僕はポッターより優れていることをハッキリ示せるんだ。そしたら僕はきっと――」

 

「きっと?」

 

不自然に言葉を詰まらすドラコにゴイルが続きを促したが、ドラコは下唇を噛みそれ以上は語らずベッドに入ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イースター休暇が終わり決勝戦が間近に迫る頃。

 

グリフィンドールとスリザリンの間の緊張はとんでもないレベルになっていた。スリザリン生はハリーにあの手この手で怪我を負わせようとし、グリフィンドール生がそれを全力で護衛する。ハリーは常に親衛隊に取り囲まれて疲れた表情をしている。

僕も僕でドラコと間違われて何度も小競り合いに巻き込まれかけた。肝心のドラコは授業が終わったら一直線に練習場に向かってしまう為、完全に僕は身代わりだ。

 

 

 

 

そして試合当日。その日は以前と真逆で晴天の朝だった。

真っ青な顔をしたドラコを見送ってから自分も観客席に向かう。人が少ない場所を探し先生方の席の後ろの方に座ることにした。ドラコの顔色はそれはもう酷いものだったが、いつも箒を握った途端血色の良い好青年になるのでまあ心配は無いだろう。

 

『我がスリザリンに栄光を』と書かれたお手製の横断幕を飾るドラコの取り巻き筆頭パーキンソンをぼんやり眺めていると誰かに肩を叩かれた。

 

「お隣、失礼しますよ」

 

こちらの了承も待たず気づけば隣に座っていたのはアストリアだった。

 

「何でわざわざ僕の隣に……」

 

「空いている席がもうここしか無かったので。貴方のお兄様の勇姿をぜひ拝んでみようと。『箒星の王子さま(コメット・プリンス)』の噂は良く聞いていたので楽しみです」

 

ちっとも楽しみじゃなさそうな真顔でそんなことを言うアストリア。毎度ながらマルフォイ家を好んでないであろうアストリアが何故僕に話しかけてくるんだ?彼女の真意はよく分からない。

 

正直かなり居心地が悪い。しかし彼女の言う通りもう空いてそうな他の席は無い。試合の注目度が凄いせいでほとんどの全校生徒がここに集まっているのだろう。逃げ場なんてなく、僕はこの愛想のない後輩と試合観戦をすることになってしまった。

 

 

気まずい無言の時間が流れる中、やっとファンファーレと共にそれぞれ深紅と緑のローブを纏った選手たちが現れた。

 

「さあ両チームの入場です!」

 

解説役のグリフィンドール生ジョーダンの声が響く。

 

「まずはグリフィンドールチーム。今年はどのポジションも非常にレベルの高い選手が揃いホグワーツに何年かに一度出るか出ないかのベスト・チームとして広く認められています」

 

瞳孔がガン開きになっているキャプテンのウッドという選手に続きハリーらグリフィンドールの選手たちが緊張した面持ちで出てきた。

 

「そして対するスリザリンチームはメンバーが多少入れ替えたようで、腕より図体のデカさを狙ったものかと――」

 

スリザリンのブーイングにかき消されそうになった解説だが、ジョーダンは声を張り上げ無理やり言葉を続けた。

 

「ああ、良かった。彼らの見た目は非常にトロールに似ていますが流石に奴らよりは賢かったようです。小柄ながらシーカーのマルフォイ選手は続投。これは因縁のシーカー対決が期待出来そうです!」

 

一斉に観客たちはスリザリンチームの列に目を向ける。

先頭はキャプテンのフリント。そしてその後ろは……輝いていた。

 

どういう原理なのか、眩しい炎を背中に纏いドラコが爽やかな余裕のある笑みを浮かべていた。

 

両チームが向かい合った時ドラコが一歩前に出た。

 

 

「ポッター、君に勝つ」

 

見慣れないドラコの透き通る目にたじろぎながらもハリーは小さく頷いてくれた。いい奴だ。

 

そしてキャプテンがお互いの手をへし折……握手して審判のフーチ先生の号令で試合は始まった。

 

横をちらりと伺うとアストリアは世にも奇妙なモノを見たというようにポカンと唯々ドラコを凝視し固まっていた。

 

「すごく……気持ち悪い」

 

初見の彼女に『箒星の王子さま(コメット・プリンス)』は少々刺激が強すぎたようだ。

 

 

 




『キャプテンまるふぉい・燃えろ!三年生編』
〜とある寮監のささやかな期待〜より抜粋

吾輩は担当である寮のクィディッチチームからお願いがあると申し出が来たため研究室に来るように伝言した。

キャプテンのフリントが来るものと思っていたがやって来たのはまだ三年生のドラコ・マルフォイだった。

クィディッチの練習時間の延長を認めて欲しいとのことだった。余りにも真っ直ぐな目に心臓がざわつくような不快感があったが、吾輩としても是非ともグリフィンドールには勝って貰わなければいけないので勿論許可は出した。

許可書を与えると勉学も疎かにしないように、と言いつける間もなくマルフォイは部屋を飛び出していた。
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