ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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43話 僕は夜のデートに誘いたい。

 

 

「ポラクス先輩。今、借りを返してください!!」

 

 

彼女の急な言葉に僕は狼狽えた。

 

 

「突然どうしたんだ?そりゃあ君には世話になったから少しは何かしようと思っていたけど……」

 

 

「では、貴方の力を貸してください。私では無理だったんです、貴方しかできないことなんです」

 

アストリアは非常に興奮した様子で僕に詰め寄ってくる。……今にも泣きそうな顔をして。

 

 

「ヒッポグリフ、ハグリッド先生のヒッポグリフの死刑を止めてください。貴方の御父上なら止められるはずです、貴方からの願いであれば!!」

 

 

「ええ!?」

 

本当に突然な話だ。僕はひたすら困惑するしかない。

確かにヒッポグリフはドラコに怪我を与たことで、親バカの父上の手回しによって死刑の危機に瀕している。それを食い止めるためにハリーたちが動いているのは知っているが、どうして飼い主の森番と親しいわけでもない彼女が気にかけているのだろうか?

 

 

「そんなこと急に言われても僕はその件について詳しく知らないし……。それにどうして君が他人のヒッポグリフで必死になっているんだい?」

 

ヒッポグリフについてはハリーたちの様子をみていると少しは申し訳なく思うが、僕が何もしなくても助かることを知っていたので特に気にしていなかった。そんなことより僕は自分のことで手一杯なので完全放置していた事柄だったのだが……。

 

 

「……貴方の兄の、家の横暴が許せない。だから止めたいんです。逆に貴方はおかしいと思わないのですか?貴方には常識があるのに、どうして家族の過ちを見過ごせるのですか?」

 

 

そ、そこまでドラコの偉そうな態度に怒ってたの?

そういう年頃なんだ程度にしか考えてなかったが、確かにヒッポグリフについては動物とはいえ命がかかっているし先のことを知らなければ結構残酷なことをしているように見えるか。そうにしても、僕には彼女の怒りの熱量を理解するのは難しい。

 

 

「どうしてって言われても……」

 

僕の曖昧な答えにアストリアは歯を食いしばりひどく失望したような顔をした。

 

 

「ええ、ええ。そうでうか。……貴方の心根がどうであっても協力はしてもらいます。この間のクィディッチの試合で賭けをしましたよね?スリザリンは負けました。だから私の勝ちですよね?私が勝ったら手伝ってもらいたいと言っていたことはこのことです。なので貴方に拒否権はありません!」

 

そういえばそういう話も……。それにしても本当に何が彼女をここまで必死にさせているのか。

 

 

「本当に僕にはどうしようもないよ?処刑日は確か今日の日暮れ、もう1時間ほどしかない。急過ぎるんだ。父上に手紙を送って、すぐに父上が納得したとしても魔法省に連絡がいくまでは更に時間がかかる。とても間に合わない」

 

ただの現実を並べた言葉。しかし、だからこそアストリアには効いたらしい。彼女の瞳にはみるみる大粒の涙が溜まっていった。

 

 

「役に立たないお人ですね!ええ、そうです。ええ、知ってた。でも、でも……!」

 

今までの彼女の姿からは想像もできないほど弱弱しい声と姿。

しかし、うつむいた顔を上げた彼女の充血した瞳には何か覚悟を決めたような強い光があった。

 

 

「……私が直接処刑を止めたらいいんだ。止めなきゃいけないんだ」

 

 

そう言って彼女は身体を翻しフラフラと歩きだした。

 

 

ポケットの中に潜んでいたリャナンシーがおかしそうに僕の耳元で囁く。

 

「あーあ、ポラクスったら年下の女の子を泣かしちゃって!」

 

「人聞きの悪いことを言わないでくれ!どちらかというと彼女が一方的に話していただけじゃないか」

 

うふふ、と性悪の妖精は愉快でたまらないと言わんばかりにほくそ笑む。

 

 

「でも、本当にあの子を放っておいていいの?彼女は”処刑を止める”なんて言ってたわよ。今はもう城の外に出るのは禁止の時間だし、シリウス・ブラックなんていう脱獄囚のせいで警備のためのディメンターが徘徊しているしねえ……」

 

リャナンシーはそう言って僕の頬をつつく。

 

「上級生にいじめられて傷心の状態でさ迷う小さな可哀そうな女の子……ああ、なんて気の毒な!」

 

わざとらしく歌劇のようなセリフ回しをするリャナンシーに僕はげんなりする。

 

 

「あーはいはい。追いかければいいんだろ!」

 

確かにこれでアストリアに何かあれば後味わるいし……だけど、本当に僕は何も悪くないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

玄関ホールに向かうとやはりアストリアはいた。

 

「ねえ、アストリア。君は賢いから分かっているだろう?今外に出るのが危険なこと、処刑現場に行ってもどうしようもないこと、後から先生たちから罰則を受けること、僕の家に歯向かうことで君の家族が困ること。全部分かっているんだろう?」

 

僕の呼びかけにアストリアは俯いたまま振り返らず答えた。

 

「でも、行かなくちゃ」

 

 

その後ろ姿はまるでゴーストのようで今にも消えそうだった。

頭では理解していても受け入れられない、激しい後悔、先への恐怖。

 

そんな感情が彼女に纏わりついているように僕の目には映った。

そして、そんな姿に見覚えがあった。

 

 

 

去年の僕の姿だ。

 

 

ああ…嫌だ。本当にその姿を見るのは気分が悪い。

 

 

そんな小さな嫌悪感から、僕は言葉を口にした。

 

 

 

 

「君の抱える怒りはよく理解できない。ただ、その恐怖は少し理解できる。だから、それを呑み込む手伝いならしてあげる。僕についてこい、外に連れ出してやる」

 

 

 

恐怖は未知からくる。だから未知を既知に変えられれば克服できるのだ。

まあ色々言ったけど……つまりヒッポグリフが助かるところを見せて落ち着かせる作戦!だ。

 

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