ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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5話 僕は日刊予言者新聞のクロスワードを解きたい。

しばらくの沈黙。

しかしポッターが深く息を吐いて意を決したように口を開いた。別に無理して話しかけてくれなくていいんだけど。

 

「た、助けてくれてありがとう。僕はハリー・ポッター」

 

恐る恐るながらも手を差し伸べてくる。

こいつ、さては陽キャだな。いくら助けられたとはいえ初対面のゴーストに握手を求めるなんて並のコミ力じゃない。

目の前に出されたものは仕方がないので渋々応じる。

 

「感謝されるほどのことじゃないよ。あぁ……僕のことはシグナスと呼んでくれ」

 

名前をバカ正直に言うわけにはいかないので、ミドルネームを名乗ることにした。

 

「君の手って他のゴーストより温かいかも、ほんの少しだけだけど。あっ!隣はロンで、まだ倒れてるのがネビル。そしてー…」

 

「私はハーマイオニー・グレンジャーよ」

 

食い気味に名乗ったのは4人の中で唯一の少女。

 

「助けてくれて感謝するわ、シグナス。けど、貴方見かけたことのないゴーストね。普段はレイブンクローの"灰色のレディ"と同じようにあまり人前に出ないのかしら?この部屋は物がいっぱいね……倉庫のよう。貴方の住処かしら。その姿、ホグワーツの生徒みたいね、"嘆きのマートル"みたいに学校で死んじゃったの?ーーああ、ごめんなさい。これは無遠慮だったわ。けどこの部屋凄いわ。あの標本なんてユニコーンより希少と言われてるバイコーンじゃない、確か角はー…」

 

まるでショットガンのような勢いで言葉を連射してくる。ただポカーンと口をあけるだけで相槌する余裕すらない。

 

「ーーもうフィルチは行ったかしら?この部屋は興味深い物がたくさんあるわ!じっくり見ていきたいけれど、誰かさん達のせいで明日は変身術の小テストがあるのにすっかり遅くなってしまったから私は寮に帰らせてもらうわ。また後日この部屋に招待してくれないかしら?じゃあさようなら、シグナス」

 

1人で喋って勝手に帰っていった。まるで嵐のような少女だ。マルフォイ家の屋敷しもべ妖精、ドビーだってこんなにせわしっこくない。僕が少し苦手の類の女性だ。

 

スタスタと出ていったグレンジャーの後ろ姿に赤毛の少年が鼻を鳴らす。

 

「アイツが勝手についてきただけだってのに!

……ああ、ごめん。ハリーが言った通り僕はロン、ロナルド·ウィーズリーだ。よろしく」

 

ウィーズリーは僕の半透明な腕をチラッと見て、握手は求めてこなかった。

 

ウィーズリー家と言えば非魔法族であるマグル大好きな一族であり、それに対してマグル大っ嫌いな我がマルフォイ家とは反りが合わない。

 

この前ウィーズリー氏が闇の魔術の品があると噂の我が家に家宅捜査に訪れた時は父上と魔法の撃ち合いを始めたほどだ。

その余波で母上お気に入りの花瓶が割れて、鬼婆のような顔になった母上に2人で仲良く家から追い出されたのだが。

 

 

「悪いね。あのハーマイオニーって女、少し……いや、だいぶ嫌な奴なんだ。

ああ、明日の小テストでアイツが自信顔でマッチ棒をクソ爆弾に変身させたら僕、タップダンスを披露してやるよ!」

 

ウィーズリーは相当苛立っているらしい。この先の展開では彼らは親友になるのだが、確かに今のグレンジャーはトゲトゲしく面倒臭い女でしかない。苛立つのも当然だろう。

 

「大丈夫だよ。まず僕、彼女と会話のキャッチボールが出来なかったし。けどまぁ……僕も気の強すぎる女の子は苦手かな」

 

と、ウィーズリーに返したのだが

 

「ホントいけ好かない女ね。この部屋に招待して欲しいですって!?誰がするもんか!!」

 

やはりコイツが付きまとってくる。

 

「僕は君の方が苦手だよ……」

 

これ以上、変なことをしないで欲しい。切実に。

どこからか突然現れた少女に目を白黒させるポッター達。

 

 

「うわっ、浮いてる!

君もゴーストかい?けどちゃんと色がついてるね」

 

2人の興味津々の視線を浴び、満足そうに奴は口角を上げる。

 

「私は妖精、恋の妖精リャナンシー。そして彼、ポル……じゃなくてシグナスのイケてる彼女よ!!」

 

何言ってるんだ、コイツは。

ウィーズリーはしげしげと僕とリャナンシーを交互に見る。

 

「妖精とゴーストの恋って初めて聞いたや!死んでもなお恋人つくるってちょっと尊敬するよ……。

週刊魔女に投稿依頼してみたら?きっと特ダネとして扱ってくれるよ」

 

「あら、それいいわね!」

 

名案だとばかりに紙とペンを探し出したリャナンシーの首根っこを掴む。

 

「誰が彼女だ!!!つい数分前に会ったところだろ!

ポッター、ウィーズリー。僕はこのバカ妖精を少しばかり痛い目に合わせてくるから!

床に倒れてる子が立てそうなら早めに寮に戻りなよ」

 

「痛い目って……。いったい私に何をしようっていうのかしら!いいわ、なんでも受け止めてあげる!!」

 

「お前は黙ってろ!!」

 

これ以上、彼らと同じ場所にいるのは危険だ。しかもこの何をしでかすか分からない妖精もいる。

リャナンシーを引きずりながら一刻も早く立ち去ろうと壁に半分足を踏み入れた。

 

だが、「待って!」とポッターに呼び止められる。

 

「待てない!」という言葉を何とか飲み込み、渋々振り返ると彼は照れくさそうに頭をかく。

 

「あの、ポッターじゃなくてハリーでいいよ!

ハーマイオニーじゃないけど……これからも仲良くして欲しいな」

 

「ぼ、僕もロンでいいよ!シグナス」

 

僕は務めて内心の動揺を表情に出さないようにしながら、手だけを彼らに振り次こそ隠し部屋から逃げ出した。

 

「あーらシグナスったら。お友達が出来て嬉しいのでしょ?

晩御飯にローストミートでも用意しなきゃね!」

 

「黙れ!!」

 

 

 

 

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