ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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7話 僕は頭1つのキバがないペットが欲しい。

布団が恋しくなる寒い冬の季節。

僕の場合は恋しい所では無い。自身の低体温と寝不足と冬の寒さが合わさると、朝はベッドから1歩出ただけで震えが止まらなくなる。

 

布団の中で服を6枚、7枚と重ね着してからではないとマトモに歩けなかった。

 

元から冷え性なところはあったが、今年ほどではなかった。

明らかに取り付いている妖精……いや、妖怪のせいだろう。

 

 

僕はリャナンシーをなんとか追い払おうと躍起になった。

自分が今使える全ての魔法をかけようとしても余裕しゃくしゃくの顔でヒラリとかわされ、父上に頼みフクロウ便で届けてもらったあらゆる魔除けグッズも効かなかった。

 

「なんでニンニクスプレーを散布するの!?私は吸血鬼じゃなくて妖精よ!てかクッッサ!!」と、中国産のニンニクスプレーだけは物理的に非常によく効いたのだが、常に身の回りにしないと意味が無いのでリスクがデカすぎた。

 

ドラコに「クィレル2号になるつもりか?」と鼻をつまみながら言われたので即座に利用は中止した。

 

手の打ちようがなくてリャナンシーを引き剥がすことは結局出来なかった。

 

 

かじかむ指をなんとか動かし、僕は衣服や教科書をトランクに詰め込む。

 

「あら、これからお出かけなの?」

 

「今日は家に帰るんだよ、クリスマス休暇だ」

 

ポケットから顔を出したリャナンシーは僕の言葉を聞いてパッと顔を輝かせる。

 

「まぁ!ポラクスのお家に行けるの!!

あぁー…髪をちゃんと整えなきゃね。お義父さまとお義母さまに挨拶していい?」

 

何をほざいてんの、コイツ。

 

「頼むから僕の両親に絶対に、絶対に見つかるなよ!

というか休みの間ぐらい僕から離れてくれても良いんじゃないか?」

 

「イヤ!

ポラクスと私の仲じゃない!地獄へのバカンスにだってついて行くわよ♡」

 

やっぱりコイツは妖精なんて可愛いものじゃない。タチの悪い悪霊の類だ。

 

「おーい、ポラクス!いつまで準備してるんだ。

もう時間だぞ!!」

 

「もう終わったよ、今行く!」

 

談話室の方からドラコの呼び声がしたので、慌ててコートを着てトランクを抱える。

 

もうどうしようもない。

ペチャクチャ喋っているリャナンシーの顔をポケットの中に押し込み階段を慎重に降りた。

 

せっかく魔境ホグワーツから離れられるっていうのに、どうしてこうも安心できないのだろうかー…

 

 

 

 

 

クリスマス休暇は夏の休暇と違い任意で帰るか、ホグワーツに留まるか選択出来る。

と言ってもやはりクリスマスは家族で過ごしたい者が多く、特にスリザリン生はほとんどの生徒が汽車に乗っていた。

 

キングクロス駅では父上と母上が今から社交パーティーにでも行くのかというぐらい着飾った服装で迎えに来てくれていた。

 

「お帰りなさい!ドラコ、ポラクス。

元気にしてたかしら?何か嫌なこともなかった?」

 

母上は僕らの頬にキスをして心配そうな顔でホグワーツでの様子を細かく聞いてくる。

なんか、戦場の死地から帰ってきた気分だ。あながち間違いでもないが。

 

「2人とも少し背が伸びたか?ポラクスのクマが酷くなっているように見えるが……。

まあいい、土産話は屋敷に帰ってからだ。

ドビー!!」

 

父上が声を上げると、僕らの胸辺りの背丈しかない、大きな耳をしたみずぼらしい人型の生物が突然現れた。

 

マルフォイ家に仕える屋敷しもべ妖精、ドビーだ。

 

屋敷しもべ妖精はその貧相な見た目に似合わず魔法に長けている。家に帰るには姿現しの術で移動するのが速いのだが、難しい魔法なので僕らはまだ使えない。

だから彼の付き添いで帰るようだ。……だが、不安だ。

 

「マルフォイお坊ちゃま、ポラクスお坊ちゃま、失礼します」

 

ドビーが僕らの身体に触れた途端、バチン!と音がして景色が変わる。

 

 

 

……目の前に小鳥が飛んでいる。

ヤバい、と思った時には僕の身体は重力に従って落下していた。

 

幸い高さは3m程でなんとか受け身は取れたが、僕とドラコはマルフォイ家の庭、ペットのクジャク達がくつろぐ中に墜落した。

 

ピクピク身体を震わす僕らの周りを仰天したのだろうクジャク達が「キオーン!キオーン!」とけたましく鳴きながらぴょこぴょこ跳ねている。

 

後から現れた父上は、この惨劇を発見し「ドビー!!」と怒鳴り声を上げる。

 

「ドビーは悪い子!ドビーは悪い子!」

 

ドビーは気が狂ったようにそばに落ちていたマフラーで自身の首を絞めようとする。

 

「おい、やめろ!それは僕のマフラーだ!!」

 

なんとか立ち上がったドラコは、自分のマフラーが自殺道具として使われていることに気付き慌てて取り返そうとする。

確かパーキンソンが編んでくれたとかいうマフラーだ。ショッキングピンクのその色合いは余りセンスがいいとは思えないのだが……。

 

「父上、昔から思ってたんですけどドビーは解雇した方が良いんじゃないですか?お互いの為に」

 

「世間体がある。それにアイツはあれでも魔力が特に高い方なのだ。広い我が屋敷の家事をするにはうってつけだと雇ったのだが、どうしてこうも不器用なのか……」

 

苦笑いしながらローブについた草を払い立ち上がると、僕の目には愛しい我が家が映った。

 

広大な庭の奥に建つ我が家は屋敷どころかちょっとした城だ。

純血の名家マルフォイの威厳と財力を示している。

 

僕は喜びで舞い上がりそうな気分だった。

なんせ、愛して止まない安心、安全の我が家なのだ。

……少しばかり危なっかしい屋敷しもべ妖精がいるが、ホグワーツよりは断然マシだ。マルフォイ家の階段は中抜けしないし、ペットは三頭犬じゃなくてクジャクだもの。

 

「あなた達が好きな料理を用意してるわ、早く行きましょう」

 

母上のその言葉にいくらか機嫌を良くしたドラコと共に屋敷へと駆け込んだ。

 

 

 

 

 

 




クジャクの鳴き声って合ってるんだろうか?
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