ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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8話 僕はドラゴンのぬいぐるみを抱きしめたい。

まずはトランクを置きに、自室へと向かった。

部屋が腐るほどあるのでドラコとはそれぞれ個別の部屋を貰っている。

 

「ポラクス、あなたって本物のお坊ちゃまだったのね。

私ったら優良物件を当てちゃったみたい!あっ、もちろん私が愛してるのはあなたの中身(魔力)よ!!」

 

ポケットから飛び出たリャナンシーは元の少女の大きさに戻ると、天蓋付きの僕のベッドに飛び込みトランポリンのように跳ね出す。

 

「いいか、絶対に僕の部屋から出るなよ!大きな物音も立てるな。屋敷しもべ妖精が掃除に来たら隠れろ。僕以外の前に姿を現さないでくれ」

 

「本当に家族にすら私を紹介してくれないの?私、色んな人とおしゃべりしたいのに……。

あっ、もしかして独占欲?」

 

「んなわけあるか!

……僕の家はこれでも色々事情があるんだ。君は自覚していないのかもしれないが人間には扱えない魔法だって使えるだろう?生命力を吸い取るのだって本気を出せば僕をミイラにすることぐらい出来そうだ」

 

数ヶ月共に過ごせばわかる。この妖精は頭がお花畑なだけであって、その能力は決して人畜無害ではない。

 

「そんなこと私しないわ!」

 

「君がそう言っても、君を悪用しようとする輩もいるだろう。……父上がそうかもしれない。

君も道具にされるのは嫌だろ?僕も父上が君を知ることを望まない。だから大人しくしていてくれ」

 

僕の言葉にリャナンシーはムスッとした顔をしながらも頷いた。マルフォイ家は原作通りに行けば全員生き残る稀有な存在だ。だからこそ下手に何かを起こすのは得策じゃない。

 

 

 

 

 

クリスマスの朝、窓を覗くと辺りは一面の銀世界だった。

 

リビングへ向かうと、ドラコはだいぶん前から起きていたらしく、クリスマスツリーのもとに積まれたプレゼントの山を漁っていた。

 

「メリークリスマス、ドラコ」

 

「メリークリスマス、ポラクス。やっと起きたのかい?見てみなよ、プレゼントがいっぱいだ!

こっちの分がポラクスのだよ」

 

ドラコに来ているプレゼントは僕のプレゼントより2倍ぐらい多い。理由は単純明快。

みんなマルフォイ家に次男がいることを知らないか忘れているからだ。

 

しかし真に出来るお偉いさんの方々は、いてもいなくても気づかないような僕の存在をちゃんと把握している。

 

「ポラクス、今年は誰から届いている?」

 

父上の問いに僕は自分の分のプレゼントのメッセージカードを確認する。

 

「えーっとね、毎年くれている人以外には……このザガリー·バシールっていう人は初めて見るよ」

 

「ああ、確か最近事業を拡大した商人だったか……。意外に情報収集をするタイプらしい」

 

こんな感じに、ドラコだけではなく僕にも忘れずにプレゼントを贈ることが、父上の人間の識別の判断基準の一つになっている。

 

僕に届くプレゼントはほとんどが社交辞令のようなものだ。顔も知らないおじさん達から贈られてくる。一応どこかで血が繋がっていたりするのだろうが……。ああ、ネクタイはこれで何個目だろう?こんなにあると、ドビーの自虐用のマフラーの代わりぐらいしか使い道が思いつかない。

 

数少ない知り合いからのプレゼントは全て近しい親戚からのものだ。ドラコはホグワーツで出来た友人からも貰っていたが、僕は計画通りに全校生徒の意識から自分の存在を消すことに成功したのでそんな相手はいない。

 

父上と母上からはP·C·Mとイニシャルが彫られた上品な金の懐中時計。ドラコからは『トロール並でも出来る友達テクニック』という本。余計なお世話だ。

 

クリスマスのご馳走は素晴らしいものだ。

マルフォイ家のルーツはフランスなので、ホグワーツでは中々出てこないフランス料理も出される。

フォアグラに舌鼓を打ちながらドラコの話すダンブルドアの愚痴、ハリーの愚痴、ロンの愚痴、クラッブとゴイルの愚痴(これは切実)を聞いていた。

 

父上がホグワーツの理事会で言っておこう、と頷いてくれたのでドラコはご機嫌になった。

 

「ポラクス、あなたは学校どうだった?」

 

「うん、まぁ楽しいよ」

 

妖怪女に取り憑かれて寝不足だけど。

そのことが頭によぎったのが顔に出てしまっていたのか、「本当に大丈夫?」と母上に心配気に覗き込まれる。

 

「大丈夫じゃないよ、母上。ポラクスずっと隠れていて友達を1人もつくっていないんだ!」

 

僕が口を開く前にドラコが僕のボッチぶりをベラベラ喋り出す。自分からそうなるようにしているのだが、それを両親の前であっけらかんに暴露されるのは気持ち良いものじゃない。

 

「プレゼントもお友達から来ていないみたいだし……。クマがこんなにも濃くなって!

悩みがあるなら隠さなくてもいいのよ、ポラクス」

 

物凄く優しい声で母上にそう言われ、父上からは新聞の間から可哀想な奴を見るような視線。

すっかり両親の頭の中で僕は友達関係に悩むあまり眠れていない気の毒な息子になっている。

 

「悩みなんてないよ!僕は好きで1人でいるんだ。イジメもないから安心して。

それより、夜は必ずテディベアと一緒に寝ているドラコの方が母上に話したいことがきっとたくさんあるよ」

 

「なっ!?」

 

僕は知っている。僕がゴーストとなって夜中にドラコの身体を通り抜けてしまったあの日から、彼が寝る時ずっと母上お手製のテディベアを抱きしめていることを。

 

顔をピンクに染め上げるドラコ。ちょっとした仕返しだ。

 

 

必死に誤魔化そうとするドラコと、ハイハイと生返事で微笑む母上。父上さえも「ドラコ、いい加減に成長しろ。そろそろドラゴンのぬいぐるみにするべきだ」と笑った。

 

 

とても素敵なクリスマス休暇だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・ルシウス·マルフォイ
権力に保身的なドラコ、ポラクスの父親。

作者はハリポタの悪役(もちろん特にマルフォイ家)が好きでこの小説を書き始めました。
ルシウスは名誉とか肩書きが大好きな人間なのに、永遠の命とかそんなんじゃなくて目の前のことに振り回されているどこまでも小悪党(褒め言葉)なところが好きです。


・ナルシッサ·マルフォイ
過保護気味なドラコ、ポラクスの母親。

原作最終巻でのナルシッサの在り方に凄い衝撃を受けた記憶がある。物語のテーマに彼女の名前からして大きく関わっているんじゃないかなー、って個人的に思ってます。
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